九郎を探してうろうろとしていると、ざわついている一団を発見した。
弁慶は闇に身を隠し遠くから聞き耳立てる。
どうやら丁度、偵察が帰って来たらしい。
「御苦労だった」
「九郎殿はどちらに?」
偵察も、彼を出迎えた男も、どちらも弁慶がよく知った男だった。
時間と超えているというのだから、ここは実際の過去なのかもしれないけれど、こんな光景は生々しくて、弁慶は肩をすくめてしまう。
「九郎殿は先刻森の奥へと入られてしまった。急ぎ報告するようなことか?」
「いえ、敵の陣には全く動きがありません」
「だったら少し、ひとりにしてあげてくれ。どうやらなにか集中しておられるようだ」
「はっ」
そして集まっていた武士たちは散っていった。
弁慶は外套をかぶり直し、思案する。
九郎はひとりでなにかに集中している、という。
九郎が? 策でも練っているのだろうか?
A 九郎のことだからまた鍛練でもしているのかもしれないですね
B 九郎はひとつのものに集中すると本当に何も見えなくなるから