完結までにいつまで時間がかかってるのよ!!!
ということで、reason of tearsの完結です。
長い道のりでしたが、完結できてほっとしています。
こんな兎虎もいいなぁと漠然と始めたにも関わらず、結構長くなったのもびっくり。
人を愛すること。
当たり前のようで、実はすごいことなんですよね。
兎虎の二人にはいつまでも幸せでいてもらいたいものです。
そっと腰に回された手は酷く緊張しているみたいで、虎徹のベストをしっかり握っていた。
彼でも緊張することはあるのか、と思うと本当に愛おしく感じる。
大丈夫だよ、と言うつもりで彼の背を摩ってやった。
嬉しい、という素直な感情が気配で流れてくる。
だが、緊張は消えないようで、寄り添うというより大きな息子が道に迷わないようにと父親の服の端を握っているというほうが早い。
仕方ないな、と虎徹は穏やかに笑う。
こんな、些細ではあるが優しい時間を知らなかった青年を思い切り甘やかしたくなった。
「バニー。」
腰に回したはずのバーナビーの腕を外させれば、どうしたのかと青年は眉を顰める。
「手を繋ごう。」
そっと、掌を差し出せば、言葉より先に表情が明るくなった。
最初は普通に。
それ以上踏み込んでもいいと知っているから、指を絡めるように深く繋ぐ。
人の目がないような場所ではないのに、バーナビーと堂々と虎徹は手を繋いでいる。
虎徹は気恥ずかしくなって、繋いで歩く道に目線を落とした。
それ以上にむずむずとにやけてしまいそうになる唇を隠したい。
愛しい人が隣にいること。
これ以上の幸せがどこにあるだろう。
繋いだ手だけでなく。
腕も肩もくっつけて、長くない道を進む。
少し肌寒い夜の空気が頬を刺すが、もうそれすら気にならない。
握る手のひらは二人分の熱を受けて温かい。
寄り添う温もりを確かめるように虎徹が僅かに力を入れて握れば。
応えるようにバーナビーも握り返す。
緊張が漸く解けたのか、やがてはバーナビーが今度は虎徹の手を引っ張って。
二人でバーナビーの自宅を目指す。
エントランスを抜け、コンシェルジュの「おかえりなさいませ」も聞こえない。
するりとエレベータに乗り、目的の階を抜け。
そして、バーナビーの自宅の玄関を潜って漸く。
「ははっ!」
「へへっ!」
目線を合わせて、無邪気に笑った。
気恥ずかしさと、嬉しさと。
ごちゃまぜになった感覚が心を浮つかせた。
「見られたよな。」
「えぇ、きっと見られています。」
バーナビーと虎徹。
虎徹は別としてもあのバーナビーが男と手を繋いで街中を歩いていた。
それを通り過ぎた者は誰しもが見ただろう。
恥じることはどこにもなかった。
だから、バーナビーは笑う。
「虎徹さん。」
呼びかけて、両手で虎徹を捕まえる。
体を引き寄せて、変わらない身長の虎徹を抱き締める。
「我儘を、聞いてくださって、ありがとうございます。」
ことりと虎徹は頬をバーナビーの肩に寄せる。
「うん。」
存在を確かめるようにバーナビーの手が虎徹の背中に触れている。
バーナビーの手は本当に優しい。
人を愛するということを、初めて知った手。
くすぐったいような感触に、じわりと浸る。
終わりにしましょう。
辛辣な言葉を投げつけたいつかの彼はもういない。
臆病の欠片もなく、虎徹の愛情を素直に受け取る。
「寒いな。」
エアコンは適温のはずなのに、わずかに寒いのは気温差の激しいこの季節の所為。
「お風呂に、しましょうか。」
虎徹が湯に浸かることが好きなことを覚えていたらしい。
「おう。」
片時も離さないと言わんばかりに。
手を繋いで、バスルームに向かった。
ぱしゃり。
お湯の遊ぶ音が、バスルームに響く。
浴槽にたっぷりと張った湯の中に、虎徹はゆったりと浮かんでいる。
しゃこしゃこと音がするのは、虎徹が歯を磨く音。
のんびりとした空間は、湯の熱気に包まれてぼんやりと熱い。
ざばりと湯から上がり、少しぬるめのシャワーを浴びる。
のぼせるまではいかないが、湯に浸かるのが慣れない所為か感覚が覚束無い。
ただ、一日の疲労がとろりと溶け出して心地は良い。
億劫に体を洗い終われば、虎徹が浴槽の縁に座って手招きをしていた。
「髪、洗ってやるよ。」
シャンプーとトリートメントのボトルを持って、バーナビーはふらりと虎徹の側へとくれば。
座れ、と縁を指されて素直に従った。
浴槽の湯に脚だけ浸けたまま、虎徹はバーナビーの後ろに立つ。
かこかことボトルからシャンプーを押し出して、そろりとバーナビーの髪に指を差し入れる。
見なくても、虎徹の手はどんな手か思い浮かべることが出来る。
男性的ではあるが、指は少し細くて長い。
節くれ立った関節、少し形の変わった拳、いつかの傷痕。
一つ一つが虎徹の手だと物語る。
マッサージするように、緩やかに指が滑っていく。
「お前、猫っ毛だなぁ。」
わしゃわしゃとシャンプーを泡立てて一言。
細く頼りない金色の髪。
どこか懐かしさを込めて、優しく指を動かす。
「楓もな。」
声に嬉しさが乗る。
虎徹が家族の話をする時は、震えるような優しい感情が乗るのだ。
「こんな髪でさ。セットが決まらないってよく泣いてたっけな。」
虎徹が唯一無二と愛した女性が遺した愛娘。
幼い頃の娘の髪もこうして洗っていたのだろう。
慣れた手付きで頭皮が洗われる感触が気持ちいい。
泡をざっと切り、手桶の湯で流す。
耳に湯が入らないようにと塞ぐ手は、父親そのものだ。
あぁ、彼は。
甘やかすことが得意なのだ、と唐突に理解した。
甘やかして、与えて、何の見返りも求めずに。
辛辣な態度ですら、受け入れて。
トリートメントを広げようと、手のひらがすり抜けていく。
こうして、彼の手で洗われていく感触が気持ちよくて。
彼の愛娘に嫉妬してしまいたくなった。
この手をもどうか独り占めにしたい。
虎徹は、優しくて、優しくて、優しくて。
もう受け取ることは怖くない彼の無償の愛情が、バーナビーだけのものではないことが悔しい。
"貴方の娘さんに嫉妬しそうです"
そう言えば、彼は何と言うだろう。
きっと、困った顔をして優しく微笑むだけに違いない。
でも、分かってくれるだろう。
娘さんと同じぐらいに愛情を注いで欲しくて、また愛情を注ぎたいことを。
丁寧に、丁寧に、トリートメントを拡げて馴染ませてくれる。
彼の手と気持ちよさに任せて、バーナビーは瞼を閉じたままでいる。
この時間がずっと続けばいい。
「眠るなよ。」
くすくすと虎徹が笑っている。
「だって、気持ちがいいんですよ。」
素直に言えば、肩に小さくキスが一つ。
「眠るのはベッドの中だ。もっかい湯船に浸かったらベッドへ行けよ。」
小さな子を諭すように、穏やかに。
「俺もすぐに行くから、な?」
今夜は一緒にいて欲しい。
その願い通りに彼は来てくれると言う。
「はい。」
父親と約束をする子供のように。
バーナビーは素直に返事をする。
全てを洗い流して。
まっさらになってベッドへ行こう。
そして、貴方と明日の夢を見よう。
虎徹に言われた通り、体をもう一度湯船で暖めてからベッドへごそごそと入った。
さらりとしたシーツが、ふやけた肌に気持ちいい。
背中だけでも洗うと言ったが、「いいから」、と早々にバスルームを追い出された。
暫くもしないうちに、風呂から上がった虎徹が寝室へと入ってくる。
バーナビーが貸したスウェットは少し大きいらしい。
もたつく袖を折っていた。
「隣、いいか?」
ベッドの縁に座って、確認してくる。
「もちろん。」
彼一人分の毛布をはいで、促せば。
長身をそろりと滑り込ませた。
「シーツ、気持ちいいな。」
「えぇ。」
本当に何でもない、ささやかな会話だ。
その会話がこれほどまでに心弾むとは知らなかった。
気持ちよさそうに、虎徹はシーツに頬ずりして目を細めている。
「シーツに嫉妬しそうです。」
半分本気でバーナビーが冗談を言えば、虎徹らしく「だっ!」と笑う。
互いの視線を合わせて、ただ穏やかに微笑みを返す。
「おやすみなさい、虎徹さん。」
するりと意識の別れの挨拶を告げる。
「うん、おやすみ、バニー。」
穏やかな顔が、バーナビーを見送った。
その顔を見たまま眠ろうと思って そろりと身じろぐ。
眠りに入ろうとしていたバーナビーの手に、虎徹の手が触れた。
バーナビーは、かぁっと体が熱くなるのを感じていた。
隣に虎徹が眠るというだけで、興奮を覚えて。
その為に、眠ってしまおうとしていたのに。
「...もう少し、そっちに行ってもいいか?」
たおやかに虎徹は残酷なことを言う。
「...ダメ、です。」
じくじくと膿んだような熱が、消えてくれない。
のそり、と虎徹の体が寄れば、じわり、とバーナビーの体は逃げる。
「バニー?」
心許ないように、眉を顰めて虎徹が呼ぶ。
「ダメ、です。」
虎徹の温もりがバーナビーを興奮の渦へと飛び込ませた。
「仕方ないでしょう?隣に貴方がいるんだから。」
男の欲目、と言えばまだ聞こえはいいが、直結する回路が申し訳ない。
兆すどころか、すでにペニスは腹につく程に育っている。
凶器といってもいいかもしれない。
「明日も仕事ですし、その...。」
言い訳にも言葉が詰まる。
張り詰めて痛いほどだが、我慢すればいいだけなのだ。
虎徹はそんなバーナビーを咎めることはない。
逃げるのは暴走して負担を掛けさせない為の配慮だと解ってくれているのが嬉しい。
「だから、ダメ、なんです。」
今、貴方に触れてしまったら。
きっと、自分を止められない。
愛しい人の為の我慢なら、それすら甘い。
「バニー。」
柔らかなふわりとした声が呼ぶ。
「おいで、バニー。」
ぶわり、と体全身が粟立った。
微かに困ったような表情で、ただ微笑んで。
おいで、と彼は受け入れてくれる。
握った拳がこれでもかと震える。
あぁ、この人は。
彼の腕を掴み、性急にベッドへと押し込める。
虎徹の体の上に圧し掛かり、大丈夫と言うような微笑みに満ちた顔にぶつかる。
無我夢中で、口付けていた。
食らいつくように唇を食み、口を開けとせがむ。
隙間にぬっと舌を差込み、歯列をすり抜ける。
ぬるり、と虎徹が舌を絡めてくれた。
深く、深く、唇を重ね、口腔を抉っていく。
どろどろと溶けたように、中は熱い。
唾液に塗れた舌をただ絡めあって、抑え切れない衝動を知る。
愛しているという想いに、全てを捧げたい。
「...ふ...ん...んぅ...」
時折漏れる呼吸の音。
全て、全て、全て。
叶うことなら、食べてしまいたい。
スウェットの上着をめくって、素肌を求める。
どこかしっとりとした肌は、滑らかで張りがある。
筋肉の凹凸を指で辿って、触れた。
腹直筋と腱画の窪み、外腹斜筋と前鋸筋の重なり、そして大胸筋。
理想的なほどに美しい筋肉に、震える指先を滑らせる。
やがては一際柔らかな場所を捉え、むにりと押してみる。
「...んん...ぅ...」
ひくり、と虎徹の体が竦んだ。
丁寧に丁寧にその部分に触れる。
耐え切れない、と虎徹はバーナビーの唇から逃げた。
「ぷは...バニ...」
じわりと硬くなっていく小さな乳首が姿を見せていた。
やけにゆっくりとバーナビーの指が触れる。
「あ...あぁ...」
じくじくと快感は膿んでしまい、虎徹の体にも異変を齎す。
下着に押し込めたペニスはむくむくと大きくなっていくばかりのようだ。
虎徹の手が自らのスウェットと下着をずらす。
バーナビーの腹に、一際熱く硬いペニスが触れた。
肉欲の証拠ともとれる昂ぶりは、押し潰されることなくそのままの形を保つ。
身動ぎして、そのペニスを擦り付けた。
その動きにバーナビーも下着をずらして、ペニスを露出させる。
互いのペニスを合わせて、じわりと動く。
「あぁっ!...あ...あん...」
張り詰めたペニス同士が擦れて、深い快感を引きずり出す。
「ばに...あ...あぁ...」
虎徹の両腕がバーナビーを求めてしがみつく。
「...ふ...虎徹、さん...」
突き上げるような動きに、全てを狂わせた。
虎徹の中へ入りたくて堪らない。
スウェットと下着を奪い去り、ローションのボトルを探す。
余裕すらなくて、中身を二人の間に零す。
残った理性で、虎徹の後肛を解さなければと尻に指を差し込んだ。
ぬるり、と簡単に指が沈む。
虎徹を抱かなくなってどれだけが過ぎただろう。
その場所は余程のことがない限りは固く閉ざしたままの場所だ。
そのはずが、僅かに柔らかい。
ローションの潤いを借りて、するりと指は沈む。
「...ばに...いいから...」
男に対し、淫猥に抱けと脚を開いて。
反対にこれでもか、と羞恥に頬は朱に染まって。
「...風呂で、解した...から...」
早々にバスルームを追い出した理由が、これと言うなら。
ただ静かに涙が零れた。
ぼたぼたと、水滴は眦を伝って落ちていく。
「...ばに?」
みっともなくも泣きはじめたバーナビーを見て、虎徹が不思議そうな顔をする。
止めようにも、止められる理由が見つからない。
何の見返りも求めず、全てを捧げてくれる一途な人。
俺はお前のものだ、と言葉にすることはないが確かに示してくれる。
真実のはずの愛の言葉すらも、厚みを持たなくなる。
この人に純粋なまでの愛を告げるには、どうすればいいのだろう。
甘えて、虎徹の脚を抱える。
拡げた先の深い場所へと体を進めた。
バーナビーのペニスの先が虎徹の中へとじわりと沈む。
「...は...く...」
かつてを思い出すように、虎徹は呼吸を制御する。
バーナビーに力が抜けるタイミングを伝えるように。
虎徹の誘導に合わせて、バーナビーはペニスを奧へと突き進めた。
「...あ...ばにが、中に...いる...」
ぽつりと言う虎徹の目尻にも涙が浮かんでいた。
「バニー...バニィ...」
名前を呼ぶ虎徹の表情が涙に崩れる。
だが。
寂しいと泣いた表情ではない。
心の奥底からの、湧き上がる想い。
体を軽くし、体毛を逆立て、声を上げてしまいたい程の。
愛するという喜び。
愛し、愛されるという奇跡の体験。
一つに繋がるという甘い束縛が、二人を祝福する。
鏡を見るように、バーナビーも虎徹も同じく涙を零しては微笑む。
「あいしています、こてつさん。」
心の全てを見せるには程遠くても。
その言葉しかない。
「...おれも、だよ。」
包み込むように、虎徹も告げる。
ゆっくりと身を引き、力強く押し上げる。
「...ふぁ...あ...」
虎徹の感じる場所を探り、気持ちよさを引き出す。
己の気持ちよさなどどうでもいい。
この行為には、絶対に恐怖を感じさせてはならない。
脈打つペニスで中を探り、切なく声を上げる虎徹を追い上げる。
「...あぁ!...んぅ...あ!」
一際大きく体を跳ねさせる場所があった。
そこをじっくりと攻めれば、虎徹の体内がねっとりとバーナビーのペニスを咀嚼する。
ペニス全体に余すことなく絡みつかれて、バーナビーも腰を震わせた。
虎徹の体内が射精しろと迫る。
だが、まだ耐える。
虎徹を、気持ちよくして、快感に溺れさせるのが絶対だ。
ずん、と虎徹が気持ちよくなる場所を抉る。
「...くぁ...あ!あぁ!」
ペニスの先端で押し上げ、陰茎で擦る。
絶え間なく嬌声を零す虎徹の頬は朱に染まり、とろんとした瞳でバーナビーを見ている。
「気持ち...いいです?」
そう聞けばこくんと首を縦に振った。
ままならない呼吸で微かに「お前は?」と聞き返してくる。
僕のことなんてどうでもいいから、と笑って虎徹の中を突き上げた。
「ひっ...あ...あ!」
甘ったるい嬌声が響く。
ひくりひくりと虎徹の体が跳ねる。
もう、これは性欲を発散するはずだけの行為ではなくなった。
相手を思いやって、愛を確かめる為の行為だ。
「虎徹、さん...こてつさん...」
追い縋るように、虎徹の体をかき抱く。
深く、深く繋がって、繋がった先を蕩かせて。
離さないとばかりに、抱き締めて。
そんなバーナビーの背に虎徹の腕が伸びる。
「ばに...バニー...」
二人で抱き合って、頂点を目指す。
虎徹が善がる一点を責め上げる。
バーナビーの動きに反応して、虎徹の中がうねる。
ペニスにねっとりと絡みつき、バーナビーを追い上げる。
照れたように、一緒がいいと虎徹は笑った。
全てを赦して、虎徹はバーナビーを選んだ。
一際激しく奥を目指した。
無我夢中で、ただ。
「...い!...あ!」
もう耐えられないと虎徹の体は、仰け反っては張り詰める。
「あぁ!ばにぃっ!」
限界を訴えた体が、ぎゅう、とバーナビーを締め付ける。
虎徹に促されるままに、バーナビーも体の中で暴れていた熱を吐き出そうと決意する。
「...虎徹、さんっ!」
欲しいと請うように、奥へと誘い込まれ限界が見える。
「あぁッ!...っああぁぁぁッ!」
最奥の埋め込まれる感覚に虎徹の体は堕ちた。
じわりと腹の間にあった虎徹のペニスが精液を吐く。
体全身を震わせて、バーナビーのペニスを絞り上げる。
抗うことは出来ずに、バーナビーも虎徹の中へ精液を放った。
どくり、どくり、と脈の音が強く聞こえる。
びゅくびゅくと長い射精が続いた。
愛おしい人の体を、愛を確かめる為に抱いたのはこれが初めてだ。
今までに感じたことのない甘い余韻に浸って、繋がったままで抱き合う。
この世界に必要とすればお互いだけでいい。
それがどうしても嬉しい。
視線を合わせては、ただ無言で微笑みと小さなキスを交す。
言葉も何も必要ない。
互いの感触を確かめ合いながら。
今度こそ、今日に別れを告げた。
抱き合ったままで目を覚ませばもういい時間だった。
「バニー、起きろ。」
簡単な朝食は作ってやるから、と虎徹はのそりとベッドを抜け出す。
「行かないで。」
未練がましくバーナビーが言えば、鮮やかに笑ってキスを一つ寄越した。
「今日も仕事だ、バニー。」
タフな人だ、とバーナビーは関心する。
本当はかなりの体の負担があるだろうに。
虎徹の手を煩わせまいと、必死でベッドから抜け出す。
まずは、虎徹がセットしたモーニングコーヒーを受け取って啜っていれば。
「昨日の、パパラッチされてるかな。」
と、気まずい顔を虎徹が見せた。
バーナビーは高らかに笑う。
「いいじゃないですか。」
もう、迷うことはない。
もう、逃げることもない。
「貴方は、僕の公私のパートナーだって言えば。」
打ち立てられた無償の愛は、そこにある。
「言ってろ。」
悪態を吐いて、嬉しそうに頬を染めて。
そして。
幸せな笑顔を映す。
reason of tears
涙の理由。
その理由がどうか、哀しみだけではなく。
喜びに満ちたものがありますように。
そして。
哀しみの数を、どうか喜びが越えますように。
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