#TB字書きネタ交換会 でふにゃたさんとネタ交換させていただきました!!!
いやぁ...ね...いいですね...。
こんなふうにネタ交換してちょっと自家発電しちゃうとか...いいですね!!!
本当に楽しかったのでふにゃたさんに大感謝です!!!
ちょっとだけネタバレ
無音の衝裂の元ネタは、
我招く 無音の衝裂に 慈悲はなく 汝に普く 厄を逃れる 術もなし メテオスウォーム
からきています。
虎徹さんにとって、友恵さんから、バーナビーから、の愛しているって言葉はそれだけの衝撃ってことでw
ちなみに。
夢瑠が元気よく詠唱するのが大好きです。
魔女っ子みたいでwwwwwwwww
ダタタタタ...
自動小銃の稼働音が鳴り響く中、虎徹もバーナビーも姿を隠しつつ慎重に廃屋内を進んでいた。
斎藤さん開発のスーツは、ちょっとのことでは破れない代物だが。
それでも銃撃戦の真っ只中に躍り出るのは気が引ける。
もし狙撃手が潜んでいて、装甲貫通弾でも撃ち込まれたら。
能力発動時ならいいが、生身では確実に助からないだろう。
かれこれテロリストたちは三時間も粘っている。
そろそろ四回目の能力発動が出来る頃合いだ。
近くに潜むバーナビーに目配せをして、頷く。
決着を着けようと、蒼の光に身を包む。
そして、態勢を低くして駆け出す。
まずは果敢にも自動小銃を向ける者をタックルで気絶させる。
仲間を助けようと駆け寄った者を足払いで動きを止める。
逃げたほうがいいと判断した者は拘束用ワイヤーで絡め取った。
虎徹に向かってきた者はなんとか撃退し、別場所に応援に行ける。
バーナビーを振り返り、様子を見れば。
鮮やかに蹴りを決めた姿が見れた。
だが、彼の真後ろ、視界の死角にNEXT能力を発動せんとする者が一人。
「バニーッ!」
叫ぶより早く虎徹の体は動いていた。
得体のしれない能力に、バーナビーを晒すわけにはいかない。
バーナビーは虎徹にとって大切な相棒だけでなく。
大切な存在でもあった。
彼に向けた一方通行の感情だけで、虎徹は突き動く。
バーナビーを突き飛ばし、効果もしれないNEXT能力から体を張って護る。
蒼の光が虎徹を包み、突き飛ばした勢いを殺せず、体を滑らせた。
そして、視界には虎徹に顔を向けてすぐに能力を使った犯人を取り押さえるバーナビーがいた。
なのに。
広がるのは静寂。
一切の音が排除された、静かで孤独な世界。
体を起き上げるにしても、あるはずの感覚がなく己の居場所が不確定だ。
ここはどこだ、と虎徹は思う。
こんな場所を虎徹は知らない。
視界に広がるモニタは目まぐるしく変わっていくものの。
取り残された気分に酷い吐気を覚える。
その場から動けなくなって、指一本動かせない。
「......。」
助けを求めて相棒を呼ぶ。
だが、己の声が聞こえなかった。
声が出なかったのか、出せなかったのか。
今、自分がいる世界に身の置き所がなくて視線を彷徨わせる。
と、引き起こされる感覚とフェイスカバーをオープンにされ、生身の視界が飛び込んできた。
目の前でバーナビーが何かを言っている。
口が動いているのだけは確認出来るが肝心なものがない。
空気を振動させ、伝わる音。
虎徹が受けたNEXT能力は、聴覚を一時的に奪うものだった。
虎徹は戦線離脱を余儀なくされた。
聴覚は判断材料の1つであり、虎徹の勘は全ての五感を研ぎ澄ませた結果に齎されるものだった。
残りの四つの感覚で補えるのではないか、といえば実は決して補うことはできない。
肌の触覚で空気の振動を感じはするが、速さは聴覚に頼る部分が大きい。
第六感とも言われるように、勘とは五感に支えられてこそのものだった。
己の息遣いすら音として掴めず、虎徹は静寂の中に完全に取り残されていた。
どんなに生身の瞳で周囲を視覚として飛び込んでも。
間延びしていくように、世界は虎徹から遠ざかる。
バーナビーに引き摺られるようにして、虎徹はなんとかレスキューへと歩みを進めた。
皆が何かを声にしているが、決して聞こえることはない。
音のない世界は、どんなに周囲が足掻いても虎徹を孤独に突き落とす。
じわりと恐怖が虎徹の心を過ぎった。
NEXT能力だから一時的なものだとは思うが。
体全身に穿たれた静寂は心に闇を落とし込む。
そして。
世界に独りきりということを突きつける。
握る手が震える。
声が聞きたい。
とてつもなく、声が聞きたい。
聴覚を奪われるというのは、これほどまでに恐怖であることを知らないでいた。
声を、と唇を動かしてみる。
喉に振動があったから、己の声は出ているはずだ。
だが、巧く言えたのかは定かではない。
声が欲しい、と虎徹の傍らに立つバーナビーを見上げる。
彼の声は、今となってはかつて独りで戦ってきた虎徹にとって頼りともなるべき道標になっていた。
なのに。
その道標が見つけられない。
恐怖と焦燥、そして絶望。
一時のこととは承知していても、それでも、もし、元に戻らなかったら。
もう二度と、彼の声を聞けなくなってしまったら。
己の声すら分からず、道標を失くして、そして二度と。
失うものばかりだ、と虎徹は項垂れる。
と。
バーナビーの腕が虎徹を引き寄せる。
手を掴み、そして唇へと当てた。
唇の動き、息遣い、音の振動。
聴覚はなくても、触覚がまだ声を伝える。
『大丈夫ですから。』
ゆっくり動いた唇は、力強く虎徹を励ます。
すぐに、この効果も消え失せる。
頼りの声はまだ、虎徹を見放していない。
慣れることのない静寂な世界。
それでも、バーナビーは虎徹に手を差し伸べてくれた。
手に触れる唇の感触に安心して、少しだけ笑えた。
バーナビーの唇はとても、暖かい。
虎徹を安心させるように振舞うその姿が嬉しかった。
まるでそれは。
大切な人を守ろうとするかのような。
バーナビーに触れて、虎徹の恐怖は和らいでいく。
不安ばかりが先に立って虎徹を追い詰めていたというのに。
ああ、バーナビーのことが好きなのだ、と改めて思い知らされる。
大丈夫。
大した言葉ではないのに、彼がくれるだけでこんなに心強い。
虎徹はただ、ありがとう、と声にできたかも判らない言葉を贈る。
聞こえたのか、それとも理解してくれたのか。
その言葉にバーナビーが微笑む。
守ると気概を込めた、そんな微笑み。
今は、今だけは。
その微笑みに甘えようと、虎徹はバーナビーの手を離そうとはしなかった。
その日はずっとバーナビーと一緒に行動した。
着替えに始まり、シャワーまでもついてこられて虎徹は慌てた。
男同士なのだから遠慮はないのだが、それでも引け目というものがある。
嫌がる虎徹の手を唇に当て理由を伝える。
と、今度は喉仏の上下すら音を伝えてくれた。
バーナビー曰く、水の音と湯の音を聞き分けにくいからと理由を貰ったが。
触覚はあるのでそこまで過保護になるなとブースから追い出した。
狭いブースの中でバーナビーと一緒にいるのは気が気でない。
平静を装えないからこそ、虎徹はバーナビーと一緒を拒絶した。
追い出されたバーナビーはブースの外から影をちらちらと覗かせる。
捕縛した犯人が述べたように。
虎徹の聴覚は最高でも四十八時間以内には戻るという。
限定的な能力だが。
麻痺させるにはもってこいの能力でこれからは危険視される能力になるだろう。
無事シャワーも浴び、会社に戻って報告書だけは書かされた。
それを提出すれば、お決まりの渋い顔をした上司がいたが。
バーナビーが何かを言えば、効果が失われるまでは有給扱いにするというメモを寄越してきた。
そのメモには但し書きがあってバーナビーと一緒という条件があったけども。
いざ帰るとなってバーナビーは虎徹を自宅へと連れて行きたがったが、頑として虎徹は首を縦に振らなかった。
バーナビーの自宅も慣れたものだが、やはり自分の家がよかった。
慣れきった、自分の匂いが染み付いた部屋。
何かがあっても慣れた場所のほうが対処は易い。
だからこその虎徹の望みだった。
音が聞こえない所為で運転も出来ず、半ば押し込められるようにバーナビーの車の助手席に収まる。
静寂に流れる光景を見つつ、無音の世界をぼんやりと眺める。
馴染んだ感覚がないいつもの世界はどこか違和感があって。
じわりと恐怖を呼び戻す。
その度に虎徹はバーナビーを横目で盗み見る。
大丈夫。
彼はそう言ってくれた。
約束にもならない、それでも確かな言葉。
音で聞いたわけではない。
だが、初めて触覚と視覚で伝わったバーナビーの言葉。
もう二度とこんな機会はないだろうけれど。
それでも。
その言葉は虎徹の心に刻まれた。
自宅へと戻ればいつものソファへと陣取り、ぼんやりと部屋を見渡す。
こうやって急な休暇の場合だと何をしていいのか思いつかないから困ったものだ。
それに、自分の部屋にバーナビーがいるのも落ち着かない。
それでも、手持ち無沙汰を解消しようとテレビのリモコンを取った。
クセと言うのは怖いもので。
こうして聴覚が麻痺しているにも関わらず、その行動をさせる。
ふと気付いたが別のリモコンを取って映像を再開させた。
"聞こえないでしょう?"
バーナビーはどこからか見つけてきた紙とペンで走り書きを寄越す。
だから虎徹はこう返してやった。
"頭ン中で再生できるぐらいに見てるンだよ"
虎徹が流しているのは大好きなレジェンドの映像。
何度も何度も呆れるほどに繰り返しに見て、もう声までも脳内で再生できる。
記憶に残された、脳内の音は消えていなくて少し安心もした。
食い入るように見れば、いつものように夢中になる。
隣でバーナビーもその映像を見ていた。
ことりと置かれたのは、ペリエの瓶。
遠慮なく受け取って、栓を開ける。
何気なく、バーナビーを見れば。
【愛しています、虎徹さん】
バーナビーの唇が、そう軌跡を描いた。
音は聞こえない。
だが、確かに、そう言ったのだ。
心臓を掴まれた気分に拳を握った。
無音の衝裂。
それはかつて。
かつて亡くなった妻が。
【愛しているわ、虎徹くん】
じくじくと虎徹の目頭が熱くなる。
写真立ての中で笑う亡き妻が。
決して、どんなことがあろうとも。
ヒーローとして立たねばならない恋人に、夫に。
堂々と声援を送れない代償として、贈ってくれた音無き言葉。
唇だけで言葉の軌跡を描き、虎徹を何度も奮い立たせてくれた無音の衝裂。
ぱたり、と涙が零れる。
あの日、あの時の友恵。
この日、この時のバーナビー。
聞こえずとも、言葉は届く。
音はなくとも、決意は届く。
懐かしさと寂寥と、戸惑いの渦に放り込まれて虎徹は泣いた。
声を聞きたかった、声を聞きたい。
もっと彼女の声を、もっと彼の声を。
止まらない涙を見てバーナビーの腕が虎徹を抱きしめる。
振り解こうとも思った。
だが、振り解けなかった。
大切な、愛おしい存在なんだ。
君と、同じことをしたよ。
そっと、飾った写真を見る。
彼女は笑ったままだ。
虎徹を抱きしめた体を抱き返す。
「...こえますか?」
バーナビーの腕の中で目を閉じる。
「聞こえていますか、虎徹さん?」
聞こえてる。
聞こえているよ。
「僕にも、ずっと聞こえていたんですよ。」
身を呈して彼を全ての攻撃から庇う理由はただ一つ。
「貴方の、僕への無音の告白。」
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