原稿しろよ!!!
視線が合う度に顔を真っ赤にして俯く生き物が隣にいる。
鏑木・T・虎徹はいい歳をしたおじさんなのだが、酷い赤面症とおどおどとした態度は彼の実年齢を忘れさせる。
長めの前髪で顔の半分を隠し、その上黒縁の大きめの眼鏡。
普段のオフィスではエアコンが辛いからと、キャメルのニットのアウターを着込んでいる。
アウターのサイズは彼の体には大きく、実に合っていない。
袖に至っては、長すぎて指先しか出ていない。
所謂「萌え袖」 というのだが40手前のおじさんとだけ聞くと、誰しもが気味悪がるだろう。
現に、この今ですらも彼は萌え袖状態の右手を口許に運んでおり、時折カシカシと微かな音をさせて爪を噛んでいるところだった。
ぼんやりした表情でいるのだろう、バーナビーは無防備さを嗜めるべく隣に視線を合わせた。
珍しく視線がかち合った 。
普段なら、視線を合わせた瞬間に顔を逸らすはずだが。
少しだけとろんとした表情が、 バーナビーに向けられていた。
無防備にも程がある。
瞳は柔らかな金色に濡れ熱のある圧倒的な色気を醸している。
口許は指先で隠れてはいるが僅かばかり覗いた部分は柔そうだ。
そう言えば、爪を噛む場所は犬歯の部分か。
それはもう、襲って下さいと誘っているとしか考えられない。
それがバーナビーの妄想であるとしても、だ。
バーナビーは思わず歯を食いしばる。
「休憩に行ってきます。」
思い切りよく席を立ち上がり、パーティション越しに虎徹の腕を掴む。
「行きますよ、虎徹さん!!!」
そのまま引き摺るように虎徹を強引に立ち上がらせる。
「ふぇ?お、俺も...?」
急な行動についてこれないのか、虎徹はもがくが大した抵抗はしない。
掴んだ腕はかなりの力を入れている。
「ば、バニー、どした...。」
大股に突き進むバーナビーの後ろを小走りに彼はついて来る。
バーナビーが目指したのは、今では滅多に使われていない書類の倉庫室。
中からも鍵がかけられるその部屋はいろいろと都合がいい。
「え、あれ、休憩なんじゃ...。」
虎徹は一度もこの部屋に入ったことはないだろう。
バーナビーのほうも、実は使ったことはないが何件かを感知したことがある。
何故と問いかけてくる虎徹を扉の内側に引き摺り込んで、鍵を掛ける。
実際は気休めにもならないのだが、何をしようとしているのか知らしめるために掛けた。
「貴方、誘っているんでしょう?」
言いがかりにも程があるのは解かっている。
それでも、あの表情はないだろう。
壁に追い詰め、逃げ場所を閉じる。
壁を背にした虎徹は、バーナビーの顔を決して見ないままに答える。
「さ、誘ってるって...何処にも...誘ってないぞ?」
返ってきた答えは斜めの方向。
それも予測済みだ。
なかなかに地味な印象と性格の彼だが、実は悪目立ちしているのだと思い知らせてやらなければ気がすまない。
「いい加減にして下さい。」
虎徹が唯一のこだわりだと言った特徴的に整えた髭のある顎を掴む。
思い切り視線が絡み、顔を赤くした虎徹は慌てて顔ごと視線を逸らそうとするが。
バーナビーの手によって阻まれる。
目線だけでもと逸らすといくらかは安心するのだろうが。
それが仇となることを彼は知らない。
「困った人だ。」
ぼそりとバーナビーは呟いて、虎徹の唇を奪う。
「...ッ!!!」
不意打ちのような出来事に、虎徹は唖然とした表情に変わる。
だが、薄く開いた口内は蹂躙し放題だった。
どうやら硬直して動けないらしい。
ぬるぬると舌を差し込み上顎や歯列、歯茎まで舐め上げる。
ようやっと何をされているのか気付いて、歯列が僅かに震え始めるがバーナビーはお構いなしだった。
逃げ惑う舌を追いかけ、己の舌で絡め取る。
暖かい感触は背中に程よい戦慄を齎す。
強く彼の舌を吸い上げると、体がずると沈んでいく。
細い腰に腕を回し、支えればまるで腕の中に閉じ込めたと錯覚する。
角度を変えてバーナビーは虎徹の口内を嘗め回してやった。
ときに己の唾液を分け、ときに虎徹の唾液を啜る。
小刻みに体を震わせながら、虎徹は大人しくバーナビーの口付けの洗礼を受けていた。
「...ふ...んぅ...ぅ...」
この地味で無防備な男が、ヒーロースーツを纏った瞬間から別人となるのが未だに信じられない。
現にこうしてバーナビーに言われなき言いがかりを付けられ襲われている状況にも関わらず震えるだけで抵抗の気配はない。
抵抗する気がないのであれば、それでもいいだろう。
衣服越しに、その辺りにあるはずだと胸の飾りを弄ってやる。
「ふぅ...んッ...んんっ!!!」
初めての抵抗らしい抵抗だった。
だが、それも大した威力はなく、バーナビーにとっては何の問題にもならない。
やがて、本当に反応してしまったのか、バーナビーの指先にぷくりとしたものが触れる。
すりすりと指の腹で擦ってみると、確かな反応が返ってきた。
嫌だと言いたいらしいが、虎徹の口の中を犯すバーナビーの舌が許さない。
ひくりと大きく体を震わせる反応は、恐怖の震えよりも性的な反応に近い。
立っていることも辛いらしく、バーナビーの腕に体重を預けてくるが、何かが許さないのか必死で体勢を保とうともしている。
虎徹の体を壁に押し付け、体を支えていた腕でトラウザーズからシャツを引き抜く。
直接的な愛撫をすれば、どんなことになるのか興味があった。
遠慮なしに素肌に手のひらを這わせる。
大きめのアウターで隠したのは鍛え上げた体だった。
美しい筋肉の浮き出た体を舐めるように撫で上げる。
ビクビクとした反応が返る。
ぎゅうっと目を閉じ、必死でバーナビーを押し退けようとはしている。
だがそれも適わず、バーナビーの蹂躙を許している。
流石に衣服を破り去ることは躊躇われたので、口内を犯したままでベストのボタンだけは外した。
アウターは大きめなので捲くり上げればいい。
シャツは乱暴に前を広げた。
いくつかのボタンが飛ぶが、気にしていられない。
露になった肉体は熱を持っていた。
口付けだけでは、満足などできない。
唇をようやっと離し、首筋に噛み付く。
「...ひぅ...バニ...なんで、こんなこと...」
抗議の声だったが、吐き出す声に艶が潜む。
「言ったでしょう。誘っているんですかって。」
わざと音をさせて首筋を吸い上げる。
「さ、誘ってなんか...。」
誘っているつもりがないのは百も承知だ。
だが、その表情が本人の意思とは関係なくバーナビーを誘った。
「な、バニー...やめよう?な?」
声が震えていた。
一児の父であるのだから、この行為がどんなものか解からないはずはない。
「お断りします。」
どうせまともな抵抗をする気はないのだ。
抗議の声を塞ぐためにも、反応しきった乳首に直接触れる。
「あッ...あぁッ...あ...あ...」
とうとう、虎徹はその場に座り込んだ。
「どうしました、虎徹さん。」
嫌味を込めて、くすくすと笑いながら膨らんだ股間を掠める。
「ひいぃぃッ!!!」
熱をたっぷりと含んだ悲鳴が上がった。
「ココ、辛いんでしょう?」
ベルトのバックルを手にし、器用に外す。
ぴったりとした腰回りであるせいか、その膨らみはどこか不自然なものに感じられた。
金具を外し、チャックを下げる。
ローライズの下着が見え、グレーの布は一部分が水分を含んで色が変わっていた。
「キスと、乳首だけでこんなに?」
バーナビーが言うと、虎徹の顔色がざっと青褪めた。
「あ...あの...俺...あ...ぅ...」
あからさまにオロオロとすると、金色の瞳がじわりと涙を帯びた。
妻を亡くして5年。
その間に女の匂いがしたことはないと誰もが口を揃えて言う。
性的にかなり淡白なほうだというのは想像しなくても解かることだった。
「ご...ごめん、なさい...」
小さな声が何故か謝罪となった。
俯いて、震えながらの謝罪だった。
謝る必要があるというなら本来ならばバーナビーだろう。
それが何故か虎徹のほうから。
ほろほろと涙を零し始めてしまった虎徹の顔を見て、バーナビーの理性が耐えられなかった。
目尻には僅かに赤が乗っているが、蒼白な表情に涙が乗る。
嗜虐心をそそる表情だった。
黒縁の眼鏡の奥で、金色の瞳が歪んでいる。
トラウザーズに手をかけ一息に引き抜く。
片足に纏わりついたが、動きを制限する意味でなら好都合だ。
「え、あ...何...」
全裸とはいかないが、肌蹴た上半身と下着だけの下半身というのは酷く淫靡な姿だ。
下着の中に手を差し込み下着をずらしながら勃起してしまったペニスを握る。
「や...やめ...ヤダッ...」
強めの力で下から上へと扱く。
「や、いや...ぃやぁ...」
ゆっくりと上から下へと柔らかく握って擦る。
性器を握られたままでの抵抗という馬鹿な真似はしないぐらいの理性はあるらしい。
決して同じ力にならないように上へ下へと扱いてやる。
いやだ、と拒否の声を止めようと僅かに揺れる上半身に舌を這わせた。
何度も指で弄った乳首を舌先でつつく。
「あぁんッ...ん...んぁ...」
乳輪ごと舐めてみれば、鼻にかかる甘い喘ぎに変わった。
「あっ...あぁ...はぁんッ...」
がくがくと腰が揺れている。
「やッ...ごめ...ごめんな...さいッ...」
ほろりと謝罪が零れる。
性的なことに関してあまり話題にしたことがないが、淡白というより性的なことに対して罪悪感でも感じているらしい。
「ひぁ、あ...あぁ...」
キツめに乳首を吸ってその謝罪を消す。
痕になるほどに吸い上げてみれば、虎徹の腰が明らかに揺れた。
扱く早さを少し上げれば。
「らめっ...らめ...らめぇッ!!!」
痙攣するように腰を揺らして、射精を耐えていた。
一際強く握って促すように下から上へと包皮ごと扱けば。
「ひぁぁあぁッ!!!」
悲鳴ともつかない喘ぎを零して虎徹は吐精してしまった。
バーナビーの手の中に生暖かい虎徹の精液が零れていく。
「これならローション、必要ないですね。」
わざとくちゅくちゅと音をさせて虎徹が吐き出した精液を指で混ぜる。
何を意味する言葉なのか、虎徹は青褪めたままでバーナビーを見上げた。
「何をされてるか、わかってますよね?」
バーナビーには虎徹をレイプしているという自覚はある。
だが、虎徹の表情は青褪めてはいるがバーナビーの想像するものではなかった。
もしかすると、虎徹にはその自覚があまりないのかもしれない。
下着を摺り降ろし、たっぷりと精液が絡んだ指を尻の割れ目に差し込む。
「あ...や、やだ...」
自分ですらも触らないような場所に他人の指が入るのだ。
それでも、バーナビーは容赦なくその出口を見つけ無理矢理精液を塗り込める。
ぬるぬると指が這い、気持ち悪さを感じたのか虎徹の声が掠れる。
「ひ...」
つぷりと指の先を入れるとその狭さを実感した。
本来なら時間を掛けてと言いたいが、残念ながらそこまでの時間はない。
それより、バーナビー自身の余裕がなかった。
痛みは覚悟して貰うとして、虎徹が乱れるであろう前立腺を早々に探り当てねばならない。
「やめ、て...たのむ、から...そこ...は...」
息苦しさと、何よりも異物を受け入れる恐怖からか、虎徹の顔は更に青褪めていた。
「力を抜いて。痛い思いしたくないでしょう?」
痛い思いをさせるのはバーナビーだというのに。
だが、その言葉に虎徹は素直に従った。
なんとか必死で力を抜き、二本目の指の侵入を許した。
「ふ...ぅ...う...ん...」
ガタガタと膝が震えていた。
ぐちゅ、ぐちゅと派手な音をさせて指を奥まで進めていく。
「...ん...くぅ...」
虎徹の顔が苦痛に歪んでいる。
慣れない感覚に苦しむ姿は、虎徹が男性経験のなさを物語った。
ぐにぐにと内側を犯しながら、虎徹の体が悦ぶはずの部分を探る。
「...はぅッ...あ...あぁ...や...」
がくりと体を震わせて、掠めたことを訴える。
「ここ、ですね?」
ぐっと反応した部分を押えると、あからさまな反応が返ってきた。
「...や、め...そこ...やだ...」
もう少し入り口になるはずの肛門をほぐしておきたいが、限界だった。
指を引き抜き、素早く己の前を寛げる。
天を仰ぐほどにまでバーナビーのペニスも勃起していた。
その姿を見つけて虎徹が萎縮する。
バーナビーのペニスは虎徹と比べれば明らかに大きい。
だからといってここで止められるほど聞き分けがいいつもりはない。
受け入れるのに一番楽な体勢にするため、恐怖に竦む虎徹の体をいとも簡単にひっくり返す。
己の精液に塗れた虎徹の尻がバーナビーの目前に晒された。
きゅっと閉じる肛門目掛けてバーナビーは己のペニスを滑らせる。
「ひ...くぅ...」
尻の割れ目に沿って、ペニスを擦り付ける。
「おねが、い...許し...て...」
その言葉を聞き入れるつもりはない。
「力を抜いて。」
ぬめった感触に助けられて、ペニスの先端が入り口に迫る。
ぐっと力を込めて突き入れば、僅かだがその先が中へと沈んだ。
「く...ん...んッ...」
塗り込めた精液は充分に潤滑剤となったようだ。
指二本と比べるには些か問題のある太さの凶器を受け入れさせるのだから、ここだけはバーナビーも慎重になる。
レイプだといっても傷付けるのは不本意だ。
ゆっくり、ゆっくりと突き入る。
虎徹が反応した部分を掠めることも忘れない。
「ひはッ...ん...んぅ...」
喘ぎは息を潜め苦しいという悲鳴しかない。
少しは楽にしてやろうと、少しだけ硬さを残したペニスを握る。
「...あ...ゃ...」
じわじわと腰を進め、とうとう限界まで突き入った。
ここまで入れば、あとはバーナビーが無理なことをしなければ虎徹を手酷く傷付けることにはならないだろう。
僅かに腰を引き、ずくりと穿つ。
「...いぁぁ...や...いた、い...」
涙ながらに虎徹は訴える。
初めての行為で、慣れるということもさせられずここまで受け入れたのだから痛みがあるのは当たり前のことだった。
バーナビーは柔らかく虎徹のペニスを陰嚢ごと掴みもみ込む。
ゆっくりと腰を引き、再び中へと突き進む。
「んぁ...あ...あぅ...」
できる限り前立腺を刺激するように突き入るが、思う様にかき混ぜたい欲求のほうが強い。
悲しい男の性なのか、虎徹のペニスが再び硬さを保持し始める。
「あ、あ...あん...」
悲鳴が鳴りを潜め、再び虎徹の口から甘い喘ぎが零れ始めた。
なんとか馴染んできたらしい。
激しいことはできないが、ある程度までなら許されるだろうとバーナビーは手加減を忘れる。
限界まで引き抜き、奥まで突き入る。
「...あ...あぁあッ...」
大きく動けばそれだけ中を擦られて虎徹は乱れた。
ずん、ずん、と大きく動きバーナビーは己の快楽も追いかける。
「や...あ...ごめ、ん...なさい...」
ガクガクと体を震わせて再びの謝罪だった。
「淫乱...で...ごめん...なさ...」
僅かにバーナビーに向けられた顔に涙が幾つも伝っていた。
虎徹を突き上げながらバーナビーは苦笑する。
虎徹が淫乱だというなら、バーナビーを誘惑してくる尻軽な輩はどうなる。
だが、己を淫乱だと揶揄するなら、そのように仕込んでみるのも一興だ。
虎徹の肉体と己の肉体を繋げる派手な音をさせて、ほくそ笑んだ。
ぐちゅぐちゅと中をかき混ぜてやれば、初めてであることが嘘のように中が絞まる。
熟れていないせいで後ろだけで絶頂を迎えるのは難しいようだが、前を弄りながらであれば問題はないようだ。
何度も虎徹の中を往復し、バーナビー自身も射精の欲求を募らせる。
「んぁ...あッ...あ...」
ぬるぬるとした動きが一層強くなる。
初めてでここまで感じることができるというなら、己が淫乱だというのも間違いではないのかもしれない。
虎徹の背に体を這わせ、耳元で囁く。
「本当に...淫乱ですね、虎徹さん。」
甘く低い囁きに、虎徹の中が絞まる。
「ふぁ...あ...ごめ...んなさ...い...」
嗜虐心を持ち合わせてはいないつもりだったが。
どうやら彼は全くその気のない者の嗜虐心を煽るようだ。
「も...やら...らめぇ...」
虎徹のペニスも再び張り詰めるように勃起していた。
カリ首や裏筋を弄れば、腰を無意識に揺らしている。
ならばと、バーナビーは己の動きを早くした。
思う様に腰を突き入れれば、絶頂が近くなる。
「貴方の中で、受け止めて。」
裏筋を強く摘む。
「いぁっ...あぁ...あぁぁんッ!!!」
その刺激に耐えられなかったのか、虎徹は再び絶頂を迎える。
ぱたぱたと少量の精液が零れるが、体は先ほど以上に震わせていた。
バーナビーを受け入れた内側も、うねるように震えた。
促されるままに、バーナビーも虎徹の中へと精を吐き出す。
勢いのある射精は、虎徹の中に熱を叩きつける。
じわりと広がる熱に、虎徹は体を竦ませた。
「...あ...あ...ぅ...」
がくがくと痙攣するように震えたのち、その震えが治まってからバーナビーのペニスが引き抜かれた。
「んんぅ...」
肩で息をしつつ、虎徹はその場で蹲る。
「あ、あの...ご...」
「ごめんなさい、は必要ないですよ。」
虎徹の言葉を遮って、バーナビーは言う。
自分に自信がないのはいいとするが、罪悪感を感じなければならないバーナビーに謝ることだけは止めたい。
「本当に困った人だ。」
汚れた下着はもう使えないので抜き去ってしまう。
下着なしで申し訳ないが、そのままトラウザーズを履くよう指示する。
もそもそと乱れた上半身の衣服を整える。
シャツはどうしようもないが、大きめのアウターが何とか惨劇を隠してくれた。
自分はトイレの個室で下着を脱げばいいだろう。
「動けますか?」
時計を見れば定時前だが、トレーニングとでも言えば捌けてもいい時間だ。
「う、うん...。」
だが考えればかなりの無理をさせているのだから動けないはずだ。
強がった結果の返事であるのは確かなので、この反応に溜息をついて軽々と虎徹を抱え上げる。
「え、あ、ちょ、うわ...」
言葉にならない声を上げるだけなので無言でこの体勢を押し通す。
彼をこうしてお姫様抱っこするのは嫌いではない。
閉じることができないシャツが気になるのか、胸元をしっかりと隠し俯きがちでいるその表情は。
いつも通り真っ赤に染まっていた。
「な、バニー...なんで、こんなこと...したの?」
未だに解かってないらしい。
定時前に捌ける理由を素早く「虎徹さんの体調が悪い」に切り替える。
「僕の家でじっくり解からせてあげますよ。」
不安げな視線が絡み、いつものように顔ごと視線を逸らした。
解かった暁には、少しぐらいは視線を逸らすのを止めてくれるだろうか。
その思いをこめて、彼の額にキスをした。
鏑木・T・虎徹はいい歳をしたおじさんなのだが、酷い赤面症とおどおどとした態度は彼の実年齢を忘れさせる。
長めの前髪で顔の半分を隠し、その上黒縁の大きめの眼鏡。
普段のオフィスではエアコンが辛いからと、キャメルのニットのアウターを着込んでいる。
アウターのサイズは彼の体には大きく、実に合っていない。
袖に至っては、長すぎて指先しか出ていない。
所謂「萌え袖」 というのだが40手前のおじさんとだけ聞くと、誰しもが気味悪がるだろう。
現に、この今ですらも彼は萌え袖状態の右手を口許に運んでおり、時折カシカシと微かな音をさせて爪を噛んでいるところだった。
ぼんやりした表情でいるのだろう、バーナビーは無防備さを嗜めるべく隣に視線を合わせた。
珍しく視線がかち合った 。
普段なら、視線を合わせた瞬間に顔を逸らすはずだが。
少しだけとろんとした表情が、 バーナビーに向けられていた。
無防備にも程がある。
瞳は柔らかな金色に濡れ熱のある圧倒的な色気を醸している。
口許は指先で隠れてはいるが僅かばかり覗いた部分は柔そうだ。
そう言えば、爪を噛む場所は犬歯の部分か。
それはもう、襲って下さいと誘っているとしか考えられない。
それがバーナビーの妄想であるとしても、だ。
バーナビーは思わず歯を食いしばる。
「休憩に行ってきます。」
思い切りよく席を立ち上がり、パーティション越しに虎徹の腕を掴む。
「行きますよ、虎徹さん!!!」
そのまま引き摺るように虎徹を強引に立ち上がらせる。
「ふぇ?お、俺も...?」
急な行動についてこれないのか、虎徹はもがくが大した抵抗はしない。
掴んだ腕はかなりの力を入れている。
「ば、バニー、どした...。」
大股に突き進むバーナビーの後ろを小走りに彼はついて来る。
バーナビーが目指したのは、今では滅多に使われていない書類の倉庫室。
中からも鍵がかけられるその部屋はいろいろと都合がいい。
「え、あれ、休憩なんじゃ...。」
虎徹は一度もこの部屋に入ったことはないだろう。
バーナビーのほうも、実は使ったことはないが何件かを感知したことがある。
何故と問いかけてくる虎徹を扉の内側に引き摺り込んで、鍵を掛ける。
実際は気休めにもならないのだが、何をしようとしているのか知らしめるために掛けた。
「貴方、誘っているんでしょう?」
言いがかりにも程があるのは解かっている。
それでも、あの表情はないだろう。
壁に追い詰め、逃げ場所を閉じる。
壁を背にした虎徹は、バーナビーの顔を決して見ないままに答える。
「さ、誘ってるって...何処にも...誘ってないぞ?」
返ってきた答えは斜めの方向。
それも予測済みだ。
なかなかに地味な印象と性格の彼だが、実は悪目立ちしているのだと思い知らせてやらなければ気がすまない。
「いい加減にして下さい。」
虎徹が唯一のこだわりだと言った特徴的に整えた髭のある顎を掴む。
思い切り視線が絡み、顔を赤くした虎徹は慌てて顔ごと視線を逸らそうとするが。
バーナビーの手によって阻まれる。
目線だけでもと逸らすといくらかは安心するのだろうが。
それが仇となることを彼は知らない。
「困った人だ。」
ぼそりとバーナビーは呟いて、虎徹の唇を奪う。
「...ッ!!!」
不意打ちのような出来事に、虎徹は唖然とした表情に変わる。
だが、薄く開いた口内は蹂躙し放題だった。
どうやら硬直して動けないらしい。
ぬるぬると舌を差し込み上顎や歯列、歯茎まで舐め上げる。
ようやっと何をされているのか気付いて、歯列が僅かに震え始めるがバーナビーはお構いなしだった。
逃げ惑う舌を追いかけ、己の舌で絡め取る。
暖かい感触は背中に程よい戦慄を齎す。
強く彼の舌を吸い上げると、体がずると沈んでいく。
細い腰に腕を回し、支えればまるで腕の中に閉じ込めたと錯覚する。
角度を変えてバーナビーは虎徹の口内を嘗め回してやった。
ときに己の唾液を分け、ときに虎徹の唾液を啜る。
小刻みに体を震わせながら、虎徹は大人しくバーナビーの口付けの洗礼を受けていた。
「...ふ...んぅ...ぅ...」
この地味で無防備な男が、ヒーロースーツを纏った瞬間から別人となるのが未だに信じられない。
現にこうしてバーナビーに言われなき言いがかりを付けられ襲われている状況にも関わらず震えるだけで抵抗の気配はない。
抵抗する気がないのであれば、それでもいいだろう。
衣服越しに、その辺りにあるはずだと胸の飾りを弄ってやる。
「ふぅ...んッ...んんっ!!!」
初めての抵抗らしい抵抗だった。
だが、それも大した威力はなく、バーナビーにとっては何の問題にもならない。
やがて、本当に反応してしまったのか、バーナビーの指先にぷくりとしたものが触れる。
すりすりと指の腹で擦ってみると、確かな反応が返ってきた。
嫌だと言いたいらしいが、虎徹の口の中を犯すバーナビーの舌が許さない。
ひくりと大きく体を震わせる反応は、恐怖の震えよりも性的な反応に近い。
立っていることも辛いらしく、バーナビーの腕に体重を預けてくるが、何かが許さないのか必死で体勢を保とうともしている。
虎徹の体を壁に押し付け、体を支えていた腕でトラウザーズからシャツを引き抜く。
直接的な愛撫をすれば、どんなことになるのか興味があった。
遠慮なしに素肌に手のひらを這わせる。
大きめのアウターで隠したのは鍛え上げた体だった。
美しい筋肉の浮き出た体を舐めるように撫で上げる。
ビクビクとした反応が返る。
ぎゅうっと目を閉じ、必死でバーナビーを押し退けようとはしている。
だがそれも適わず、バーナビーの蹂躙を許している。
流石に衣服を破り去ることは躊躇われたので、口内を犯したままでベストのボタンだけは外した。
アウターは大きめなので捲くり上げればいい。
シャツは乱暴に前を広げた。
いくつかのボタンが飛ぶが、気にしていられない。
露になった肉体は熱を持っていた。
口付けだけでは、満足などできない。
唇をようやっと離し、首筋に噛み付く。
「...ひぅ...バニ...なんで、こんなこと...」
抗議の声だったが、吐き出す声に艶が潜む。
「言ったでしょう。誘っているんですかって。」
わざと音をさせて首筋を吸い上げる。
「さ、誘ってなんか...。」
誘っているつもりがないのは百も承知だ。
だが、その表情が本人の意思とは関係なくバーナビーを誘った。
「な、バニー...やめよう?な?」
声が震えていた。
一児の父であるのだから、この行為がどんなものか解からないはずはない。
「お断りします。」
どうせまともな抵抗をする気はないのだ。
抗議の声を塞ぐためにも、反応しきった乳首に直接触れる。
「あッ...あぁッ...あ...あ...」
とうとう、虎徹はその場に座り込んだ。
「どうしました、虎徹さん。」
嫌味を込めて、くすくすと笑いながら膨らんだ股間を掠める。
「ひいぃぃッ!!!」
熱をたっぷりと含んだ悲鳴が上がった。
「ココ、辛いんでしょう?」
ベルトのバックルを手にし、器用に外す。
ぴったりとした腰回りであるせいか、その膨らみはどこか不自然なものに感じられた。
金具を外し、チャックを下げる。
ローライズの下着が見え、グレーの布は一部分が水分を含んで色が変わっていた。
「キスと、乳首だけでこんなに?」
バーナビーが言うと、虎徹の顔色がざっと青褪めた。
「あ...あの...俺...あ...ぅ...」
あからさまにオロオロとすると、金色の瞳がじわりと涙を帯びた。
妻を亡くして5年。
その間に女の匂いがしたことはないと誰もが口を揃えて言う。
性的にかなり淡白なほうだというのは想像しなくても解かることだった。
「ご...ごめん、なさい...」
小さな声が何故か謝罪となった。
俯いて、震えながらの謝罪だった。
謝る必要があるというなら本来ならばバーナビーだろう。
それが何故か虎徹のほうから。
ほろほろと涙を零し始めてしまった虎徹の顔を見て、バーナビーの理性が耐えられなかった。
目尻には僅かに赤が乗っているが、蒼白な表情に涙が乗る。
嗜虐心をそそる表情だった。
黒縁の眼鏡の奥で、金色の瞳が歪んでいる。
トラウザーズに手をかけ一息に引き抜く。
片足に纏わりついたが、動きを制限する意味でなら好都合だ。
「え、あ...何...」
全裸とはいかないが、肌蹴た上半身と下着だけの下半身というのは酷く淫靡な姿だ。
下着の中に手を差し込み下着をずらしながら勃起してしまったペニスを握る。
「や...やめ...ヤダッ...」
強めの力で下から上へと扱く。
「や、いや...ぃやぁ...」
ゆっくりと上から下へと柔らかく握って擦る。
性器を握られたままでの抵抗という馬鹿な真似はしないぐらいの理性はあるらしい。
決して同じ力にならないように上へ下へと扱いてやる。
いやだ、と拒否の声を止めようと僅かに揺れる上半身に舌を這わせた。
何度も指で弄った乳首を舌先でつつく。
「あぁんッ...ん...んぁ...」
乳輪ごと舐めてみれば、鼻にかかる甘い喘ぎに変わった。
「あっ...あぁ...はぁんッ...」
がくがくと腰が揺れている。
「やッ...ごめ...ごめんな...さいッ...」
ほろりと謝罪が零れる。
性的なことに関してあまり話題にしたことがないが、淡白というより性的なことに対して罪悪感でも感じているらしい。
「ひぁ、あ...あぁ...」
キツめに乳首を吸ってその謝罪を消す。
痕になるほどに吸い上げてみれば、虎徹の腰が明らかに揺れた。
扱く早さを少し上げれば。
「らめっ...らめ...らめぇッ!!!」
痙攣するように腰を揺らして、射精を耐えていた。
一際強く握って促すように下から上へと包皮ごと扱けば。
「ひぁぁあぁッ!!!」
悲鳴ともつかない喘ぎを零して虎徹は吐精してしまった。
バーナビーの手の中に生暖かい虎徹の精液が零れていく。
「これならローション、必要ないですね。」
わざとくちゅくちゅと音をさせて虎徹が吐き出した精液を指で混ぜる。
何を意味する言葉なのか、虎徹は青褪めたままでバーナビーを見上げた。
「何をされてるか、わかってますよね?」
バーナビーには虎徹をレイプしているという自覚はある。
だが、虎徹の表情は青褪めてはいるがバーナビーの想像するものではなかった。
もしかすると、虎徹にはその自覚があまりないのかもしれない。
下着を摺り降ろし、たっぷりと精液が絡んだ指を尻の割れ目に差し込む。
「あ...や、やだ...」
自分ですらも触らないような場所に他人の指が入るのだ。
それでも、バーナビーは容赦なくその出口を見つけ無理矢理精液を塗り込める。
ぬるぬると指が這い、気持ち悪さを感じたのか虎徹の声が掠れる。
「ひ...」
つぷりと指の先を入れるとその狭さを実感した。
本来なら時間を掛けてと言いたいが、残念ながらそこまでの時間はない。
それより、バーナビー自身の余裕がなかった。
痛みは覚悟して貰うとして、虎徹が乱れるであろう前立腺を早々に探り当てねばならない。
「やめ、て...たのむ、から...そこ...は...」
息苦しさと、何よりも異物を受け入れる恐怖からか、虎徹の顔は更に青褪めていた。
「力を抜いて。痛い思いしたくないでしょう?」
痛い思いをさせるのはバーナビーだというのに。
だが、その言葉に虎徹は素直に従った。
なんとか必死で力を抜き、二本目の指の侵入を許した。
「ふ...ぅ...う...ん...」
ガタガタと膝が震えていた。
ぐちゅ、ぐちゅと派手な音をさせて指を奥まで進めていく。
「...ん...くぅ...」
虎徹の顔が苦痛に歪んでいる。
慣れない感覚に苦しむ姿は、虎徹が男性経験のなさを物語った。
ぐにぐにと内側を犯しながら、虎徹の体が悦ぶはずの部分を探る。
「...はぅッ...あ...あぁ...や...」
がくりと体を震わせて、掠めたことを訴える。
「ここ、ですね?」
ぐっと反応した部分を押えると、あからさまな反応が返ってきた。
「...や、め...そこ...やだ...」
もう少し入り口になるはずの肛門をほぐしておきたいが、限界だった。
指を引き抜き、素早く己の前を寛げる。
天を仰ぐほどにまでバーナビーのペニスも勃起していた。
その姿を見つけて虎徹が萎縮する。
バーナビーのペニスは虎徹と比べれば明らかに大きい。
だからといってここで止められるほど聞き分けがいいつもりはない。
受け入れるのに一番楽な体勢にするため、恐怖に竦む虎徹の体をいとも簡単にひっくり返す。
己の精液に塗れた虎徹の尻がバーナビーの目前に晒された。
きゅっと閉じる肛門目掛けてバーナビーは己のペニスを滑らせる。
「ひ...くぅ...」
尻の割れ目に沿って、ペニスを擦り付ける。
「おねが、い...許し...て...」
その言葉を聞き入れるつもりはない。
「力を抜いて。」
ぬめった感触に助けられて、ペニスの先端が入り口に迫る。
ぐっと力を込めて突き入れば、僅かだがその先が中へと沈んだ。
「く...ん...んッ...」
塗り込めた精液は充分に潤滑剤となったようだ。
指二本と比べるには些か問題のある太さの凶器を受け入れさせるのだから、ここだけはバーナビーも慎重になる。
レイプだといっても傷付けるのは不本意だ。
ゆっくり、ゆっくりと突き入る。
虎徹が反応した部分を掠めることも忘れない。
「ひはッ...ん...んぅ...」
喘ぎは息を潜め苦しいという悲鳴しかない。
少しは楽にしてやろうと、少しだけ硬さを残したペニスを握る。
「...あ...ゃ...」
じわじわと腰を進め、とうとう限界まで突き入った。
ここまで入れば、あとはバーナビーが無理なことをしなければ虎徹を手酷く傷付けることにはならないだろう。
僅かに腰を引き、ずくりと穿つ。
「...いぁぁ...や...いた、い...」
涙ながらに虎徹は訴える。
初めての行為で、慣れるということもさせられずここまで受け入れたのだから痛みがあるのは当たり前のことだった。
バーナビーは柔らかく虎徹のペニスを陰嚢ごと掴みもみ込む。
ゆっくりと腰を引き、再び中へと突き進む。
「んぁ...あ...あぅ...」
できる限り前立腺を刺激するように突き入るが、思う様にかき混ぜたい欲求のほうが強い。
悲しい男の性なのか、虎徹のペニスが再び硬さを保持し始める。
「あ、あ...あん...」
悲鳴が鳴りを潜め、再び虎徹の口から甘い喘ぎが零れ始めた。
なんとか馴染んできたらしい。
激しいことはできないが、ある程度までなら許されるだろうとバーナビーは手加減を忘れる。
限界まで引き抜き、奥まで突き入る。
「...あ...あぁあッ...」
大きく動けばそれだけ中を擦られて虎徹は乱れた。
ずん、ずん、と大きく動きバーナビーは己の快楽も追いかける。
「や...あ...ごめ、ん...なさい...」
ガクガクと体を震わせて再びの謝罪だった。
「淫乱...で...ごめん...なさ...」
僅かにバーナビーに向けられた顔に涙が幾つも伝っていた。
虎徹を突き上げながらバーナビーは苦笑する。
虎徹が淫乱だというなら、バーナビーを誘惑してくる尻軽な輩はどうなる。
だが、己を淫乱だと揶揄するなら、そのように仕込んでみるのも一興だ。
虎徹の肉体と己の肉体を繋げる派手な音をさせて、ほくそ笑んだ。
ぐちゅぐちゅと中をかき混ぜてやれば、初めてであることが嘘のように中が絞まる。
熟れていないせいで後ろだけで絶頂を迎えるのは難しいようだが、前を弄りながらであれば問題はないようだ。
何度も虎徹の中を往復し、バーナビー自身も射精の欲求を募らせる。
「んぁ...あッ...あ...」
ぬるぬるとした動きが一層強くなる。
初めてでここまで感じることができるというなら、己が淫乱だというのも間違いではないのかもしれない。
虎徹の背に体を這わせ、耳元で囁く。
「本当に...淫乱ですね、虎徹さん。」
甘く低い囁きに、虎徹の中が絞まる。
「ふぁ...あ...ごめ...んなさ...い...」
嗜虐心を持ち合わせてはいないつもりだったが。
どうやら彼は全くその気のない者の嗜虐心を煽るようだ。
「も...やら...らめぇ...」
虎徹のペニスも再び張り詰めるように勃起していた。
カリ首や裏筋を弄れば、腰を無意識に揺らしている。
ならばと、バーナビーは己の動きを早くした。
思う様に腰を突き入れれば、絶頂が近くなる。
「貴方の中で、受け止めて。」
裏筋を強く摘む。
「いぁっ...あぁ...あぁぁんッ!!!」
その刺激に耐えられなかったのか、虎徹は再び絶頂を迎える。
ぱたぱたと少量の精液が零れるが、体は先ほど以上に震わせていた。
バーナビーを受け入れた内側も、うねるように震えた。
促されるままに、バーナビーも虎徹の中へと精を吐き出す。
勢いのある射精は、虎徹の中に熱を叩きつける。
じわりと広がる熱に、虎徹は体を竦ませた。
「...あ...あ...ぅ...」
がくがくと痙攣するように震えたのち、その震えが治まってからバーナビーのペニスが引き抜かれた。
「んんぅ...」
肩で息をしつつ、虎徹はその場で蹲る。
「あ、あの...ご...」
「ごめんなさい、は必要ないですよ。」
虎徹の言葉を遮って、バーナビーは言う。
自分に自信がないのはいいとするが、罪悪感を感じなければならないバーナビーに謝ることだけは止めたい。
「本当に困った人だ。」
汚れた下着はもう使えないので抜き去ってしまう。
下着なしで申し訳ないが、そのままトラウザーズを履くよう指示する。
もそもそと乱れた上半身の衣服を整える。
シャツはどうしようもないが、大きめのアウターが何とか惨劇を隠してくれた。
自分はトイレの個室で下着を脱げばいいだろう。
「動けますか?」
時計を見れば定時前だが、トレーニングとでも言えば捌けてもいい時間だ。
「う、うん...。」
だが考えればかなりの無理をさせているのだから動けないはずだ。
強がった結果の返事であるのは確かなので、この反応に溜息をついて軽々と虎徹を抱え上げる。
「え、あ、ちょ、うわ...」
言葉にならない声を上げるだけなので無言でこの体勢を押し通す。
彼をこうしてお姫様抱っこするのは嫌いではない。
閉じることができないシャツが気になるのか、胸元をしっかりと隠し俯きがちでいるその表情は。
いつも通り真っ赤に染まっていた。
「な、バニー...なんで、こんなこと...したの?」
未だに解かってないらしい。
定時前に捌ける理由を素早く「虎徹さんの体調が悪い」に切り替える。
「僕の家でじっくり解からせてあげますよ。」
不安げな視線が絡み、いつものように顔ごと視線を逸らした。
解かった暁には、少しぐらいは視線を逸らすのを止めてくれるだろうか。
その思いをこめて、彼の額にキスをした。
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