虎徹さん孕む-08-

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おわったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

すみません。

最後の最後は伏線の回収程度となりました。

まぁこんなNEXT能力あってもいいんじゃない、とか。

そんなカンジで推し進めてみた話ですが、書いててすんげー楽しかった!!!

原案の真一朗氏に大感謝です。

真一朗氏

http://www.pixiv.net/member.php?id=1505959

 

あとは。

ラクウェル・アノーに助演女優賞をw

虎徹さんが初めてって症例にしようかとも思ったのですがもっと話を膨らませたいというところから彼女の登場となりました。

もし本にするなら、兎さん視点、そしてラクウェル視点をもっと織り交ぜたものにしたいなと思っています。

というか。

兎さん視点を一切省いているのはそのためだったりして!!!

 

あとは番外編!!!

きちんと鞘に収まって、子供の誕生を楽しみにしてる夫婦な兎虎とか、正宗君とかアストレアちゃんとか書いてみたいんだよ!!!

ちりりとした痛みを覚えて、虎徹は目を醒ました。
下腹部に経験したことのない内側からの痛みが競り上がる。
「...つぅ...」
背中にはバーナビーの温もりがあることに、安堵するがそれでも痛みがじわじわと駆け上ってくる。
「虎徹さん、大丈夫ですか?」
ずっと、虎徹を腕に抱いていたのだろう。
虎徹が痛みに身動ぎするのに気付いて、バーナビーが虎徹の顔を覗き込む。
『大丈夫、ちょっと痛いだけ。』
そう言おうとするものの、内側の痛みは大したことがないようにみせて虎徹を苛んだ。
どうしよう。
もしかして?
もしかして、抱かれたのがまずかったのか?
どん、どん、と暴れまわる痛みが、虎徹の言葉を失わせていく。
「虎徹さん、看護師呼びますよ。」
枕元に置いてあるナースコールを手にバーナビーが看護師を呼び出す。
それだけは何とか把握できたが、痛みが酷い。
虎徹が少しでも動けるようにとバーナビーの体温が離れていく。
それが酷く怖くて、手を確りと握った。
「大丈夫、俺はココにいます。」
解ってる、解ってるけど...。
正体不明の痛みが、虎徹の内側で渦巻いてこのまま失ってしまうのではないかと考える。
どうしよう。
子供たちがいなくなったらどうしよう。
怖くて、怖くてたまらない。
「虎徹さん、俺が付いてますから。」
バーナビーの声が頼りだった。
その声を頼りにまだ、虎徹は絶望に沈まずにいられる。
ガタガタと音がして、誰かが入ってくる。
あぁ、レイノルド看護師長さんだ。
「鏑木さーん、どうしましたー。」
レイノルド看護師長さんの声が遠い。
そして、どんどん遠くなっていく。
一人残される恐怖が、虎徹の中に蘇る。
皆、虎徹を置いていってしまうのだ。

「虎徹さん。」

虎徹の恐怖が一瞬で消える。
恐る恐る目を開ければ、そこは病室で虎徹はいつも通りベッドへ寝ている。

「誰も、置いていったりしませんよ。」

横を見れば。
バーナビーが虎徹の手を確り握ってそう囁いてくれた。

「虎徹さん、深呼吸できますか?」

こくこくと虎徹は頷く。

「じゃ、一緒にしましょう。」

バーナビーの呼吸の音につられて、虎徹も深呼吸を1つ。
すると、ゆっくりと部屋の中の喧騒が聞こえる。
もう1つ。
そして、自分の感覚が再び虎徹に戻った。
「うん、鏑木さーん、私の声聞こえるー?」
腹のほうでもぞもぞとしていたのはアノー医師だった。
「ちょっと失礼。」
そう言って彼女は虎徹の手首を取る。
「ちょぉっと早い、けど...」
ふっと彼女が能力を使うところを初めて虎徹はまともに見た。
「うん、心臓に問題はないみたいだね。」
愛嬌のある眼鏡が笑っている。
痛みは多少は引いたが、それでも虎徹には罪悪感があった。
「でも...先生...お腹が...子供たちが...」
俺は悪い母親だ。
やっぱりバーナビーを突き放してれば良かった。
真っ青になる虎徹とは裏腹に、アノー医師は全くと言っていいほど顔色を変えない。
それどころか、神妙な顔をして笑っていた。
「うん、鏑木さん、いい旦那さんだったんだね。」
アノー医師の言葉の意味を解りかねて、虎徹はアノー医師の顔を伺う。
「お腹が痛いのは張ってるから。うん、ちょっと頑張りすぎちゃったね。」
そう言われて、何とか意味の糸口を見つける。
途端に恥ずかしくなって、虎徹は顔を真っ赤にした。
「あと、胎動。元気に動いてるよ。」
思い出せば、そろそろ感じてもいい頃だと言われていた。
だが、一向に動く気配がなく、大人しく眠っているようだった。
「胎動?」
虎徹はもう一度聞き返す。
「うん、胎動。初めて感じたからパニックになっちゃったね。」
ちょっと待ってて、とアノー医師が控えていたレイノルド看護師長からエコーを受け取る。
失礼、と残して虎徹の腹を露出させるとジェルを塗ったくって機械を当てた。
「見えるかな?」
そう言われて見たモニタには。
ぐずるように動く子供たちがいた。
「お父さん効果だね。」
それは凄まじく恥ずかしいことではないのだろうか?
そう思うと再び虎徹は真っ赤になってバーナビーを見上げた。
何もかも、コイツのせいだと言うように。
「鏑木さん、ずーっと気を張ってたでしょ。だから、二人ともお母さんに負担掛けないように大人しくしてたんじゃないかな?」
恥ずかしげもなく彼女はあっけらかんと言う。
それに対して。
「いい子たちですね。」
とバーナビーも言うから始末に終えない。
「うん、でも、お父さんは自重してね?」
と辛辣な一言がアノー医師から漏れる。
それが堪えたらしく、バーナビーがすみません、と小さく謝った。
「謝るのは私じゃなくて鏑木さんに。」
バーナビーに向かって笑っているものの、どこか冷たいものを感じてアノー医師の度胸というものを知ったような気がする。
笑顔で辛辣なことを言う所為か、バーナビーも少し及び腰になっているのに気付いて、虎徹は少しだけ笑った。
「鏑木さん、これからはお父さんがいるってことを子供たちも知ってるから。」
もう肩の力抜いてもいいですよ、と付け加えた。
そう言われて虎徹は、ふっと息をつく。
子供たちはお腹にいて、隣にバーナビーがいる。
誰も虎徹を置いていったりしていない。
置いていったりしていなかった。

それから。
お腹の張りが治まるまでは絶対安静と言われたが、仕事もあるだろうに毎日でも通ってくるバーナビーをアノー医師は考慮してくれた。
計画としては何事もなければあと8週間で帝王切開で取り出すつもりと聞かされた。
「最後まで何が起こるか見当が付けられないので。」
とアノー医師は申し訳なさそうに凡その予定しか立てていないことを教えてくれた。
ただ、まだ双子の体重が小さく、もう少しだけお腹の中に留めておこうとアノー医師は判断した。
バーナビーが現れてから、虎徹の数値が劇的に安定したのを見て、バーナビーと暮らすことを条件にシュテルンビルトへ戻ることも許して貰っている。
診察は2週間に1回。
診察時は必ずバーナビーがついて来る。
これからは、子供たちの体重を見ながら取り出すタイミングを測ることが診察の目的となった。
「あぁ、そうだ、アノー先生。」
虎徹のカルテに急いで記入していたアノー医師が、普段の明るさを取り戻したであろう患者にどうしたのかという顔を向けた。
「先生のお兄さん。綺麗な人ですね!!!」
アノー医師の自宅で見た写真がずっと気になっていた虎徹は、やっと言えたというように満面の笑みを浮かべている。
だが、アノー医師の反応は虎徹が思っていたものではなかった。
「うん、私に兄はいないのですが...。」
はて、といった顔でラクウェルは虎徹の顔を見た。
「あれ...お兄さんじゃない?」
おかしいぞ、という顔をして虎徹がラクウェルを見ている。
「先生の部屋にあった写真と、そこの写真の人。同じ人ですよね?」
虎徹が指差した場所には写真立てがある。
その人物を虎徹はラクウェルの兄だと言った。
ラクウェルは笑いが止まらなくなった。
「ふ...くっくっくっくっくっ...ふふふはははははは...」
腹の底からの笑いだった。
そうか、兄と思われたのか。
だけど、もう、写真の中の人物の年齢をラクウェルはすでに追い越していた。
突然笑い出したラクウェルを虎徹は不思議そうに見ている。
なんだか、とっても暖かい。
「鏑木さん。」
笑いを止められずにいるが、それでもいいだろう。
「彼は、私の兄ではありません。」
ラクウェル・アノーに兄はいない。
生まれたときから家族はいなかった。
「彼は、私の母です。以前お話した、命を引き換えに子供を生んだ唯一の男性です。」
本当に笑いが止まらない。
楽しくてたまらない。
だって。
「え、じゃあ、先生!?」
私だって嬉しかったんだ。
私がどのようにして宿り、育ったのかを知れたから。
唯一の知り得なかったことをワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹は教えてくれたのだから。
「大丈夫。彼の生んだ娘は彼の年齢を軽く3つも追い越しました。そして未だに記録を更新中です。だから貴方の子供たちも大丈夫です。」
ここで、手術の時間を告げる声がしてラクウェルは立ち上がる。
ぽかんとしている患者のカルテを所定の位置に戻して、「今、行く。」と返した。
「それじゃ、2週間後に。」
ばたばたと診察室から出ようとすると、一旦引き返す。
滅多に外さない眼鏡を片手にして、
「無理はしちゃだめですよ?」
と顔だけ覗かせれば。
「あ!!!」
写真の中の人物と全く同じ顔だと知れて、実はラクウェル・アノーにとっても鏑木・T・虎徹とその子供たちとは幸運な出会いだったということを思い知らせた。

一際派手な音がしたかと思うと、
「いってぇ!!!」
とアノー医師の悲痛な悲鳴が聞こえる。
そして。
「何やってるんですか、アノー先生!!!眼鏡外して格好つけるからですよ!!!」
追い討ちをかけるようにレイノルド看護師長の声が響く。
その声に、虎徹と付き添っていたバーナビーは声を上げて笑った。

双子の体重が一定の数字を超えたということで、鏑木・T・虎徹は直後に帝王切開に望むこととなる。
多胎妊娠は胎児の大きさがどうしても小さくなること、そしてそれ以上は母体の心臓が持たないという説明を受けた後のことである。

NC1980.06.23
鏑木・T・虎徹は帝王切開にて双子を産み落とした。
元気のいい男女の双子であった。

後に、娘はアストレア・琴・ブルックス、息子は鏑木・B・正宗と名付けられる。
二人共に保育器を2ヶ月で卒業。
生後3ヶ月には、体重も正常値まで増えて無事退院。
その後も順調に発育し、今に至る。
本日、正式にアストレア・琴・ブルックスがバーナビー・ブルックスjr.の養女に、鏑木・B・正宗が鏑木・T・虎徹の養子として認可。
この認可を以ってして、研究内容及び患者の記録を正当に破棄を願うものである。

エスペランサ高等裁判官
藤間 愛紗 殿

エスペランサ研究所外科部長 産婦人科・循環器科外科医師
研究責任者
Raquel Annaud

few years later

「おねぇちゃんに会うの!!!」
手を離すとぱたぱたと走り出してしまった小さな体を追いかけて、虎徹が走る。
「こら!!!」
案の定ばたんと勢いよくこけてしまった小さな体は痛みにふるふると震えていた。
「ほら、走ると危ないって言ったろ。」
小さな体と目線を合わせるために、虎徹はその場に跪く。
よいしょ、と抱き起こすと目にいっぱい涙を浮かべていた。
「正宗、ほら、いたいのいたいのとんでけー!!!」
おしゃまな姉と違って甘えん坊に育った弟は虎徹の脚に纏わりついた。
「ほら、とーちゃん動けないだろ。」
こうなってしまうと虎徹が抱えたほうが早い。
「おとーさんはまさをあまやかしすぎ。」
少し舌ったらずではあるが、姉の権力を振りかざすアストレアはバーナビーに手を引かれていた。
「ほら、正宗。だからレアおねえちゃんに負けるんだろ。」
そう言うと膨れっ面をしてぷいと明後日を向く。
「正宗君、パパのとこくるかい?」
いやいやと首を振ってまた明後日の方向。
折角バーナビーがおいでと両手を差し出しているが、取り付く島もない。
「まさは、パパよりおとうさんのほうがすきだもの。」
今度はアストレアが虎徹の脚に纏わりつく番だ。
「とーちゃん動けないって!!!」
実を言うとアストレアも甘えん坊だ。
双子の姉弟だからしかたない。
「虎徹さんが甘やかすからですよ。」
機嫌が悪そうにバーナビーが言うが、すぐにアストレアを抱えあげてくれた。
そんなことない、と思う。
その甘やかす片棒をバーナビーだって担いでいるのだから。
「おとうさーん!!!」
遠くに楓の姿が見えた。
こっちだ、と手を振っている。
「おねぇちゃーん!!!」
現金なもので。
大好きな姉の顔を見ると、正宗が楓に向かって手を振っている。
今日は虎徹の母安寿の命日だった。
母は正宗を養子にした虎徹に何も言わなかったが、恐らく気付いていたと思う。
何も言わずに母は双子の面倒を手伝ってくれた。
ハイスクール卒業も間近な楓に至っては、堂々と「知っているから家族には隠すな」とさえ言われたが。
それに、年の離れた妹と弟をこよなく可愛がってくれている。
今度は二人揃って楓に纏わりつく番だった。
「ねぇ、虎徹さん。」
楓に向かう小さな子供二人を見守っていた虎徹にバーナビーは声を掛けた。
「んー?」
曖昧な返事で、バーナビーを見る。
「今度、フラタナルに行きませんか?」
シュテルンビルトも以前と比べるとマイノリティに寛容にはなったと思う。
だが。
元ヒーローと元顔出しヒーローのカップルなんて、いいメディアの餌食だった。
しかも、そのメディアを統括しているのはバーナビーだなんて。
虎徹の断固とした反対に合い、二人は正式にはカップルとして認められていない。
フラタナルはシュテルンビルトより先にマイノリティなカップルを認めた地域でもある。
「...うん、そうだな。」
おおっぴらにはできないけれど。
来年はアストレアと正宗もプライマリスクールに通うから大分落ち着く。
落ち着いた頃を見計らってバーナビーと小旅行も悪くない。
それに正式にフラタナルで結婚式をすれば、アストレアも正宗も家族だ。
「それ、いいな。」
虎徹はバーナビーに向かって会心の笑みを零した。

後に鏑木・B・正宗がワイルドタイガーjr.としてヒーローデヴューを飾り、「母はワイルドタイガーです。」と口を滑らせ物議を醸したのはまた別のお話。

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