大嫌い。
大嫌い、人間なんか。
『どうして。……どうして、』
日常を踏み荒らした。
大事なものを奪った。
真っ赤な命を殺した。
『どうして、あの子が殺されなきゃいけなかったんだ。
僕達は、そこにいただけなのに。なのに、どうして』
それでも。
『ピカチュウ、』
恨んで、妬んで、
優しくて、
胸を痛めつけて、
『それでも、オレは、』
大嫌い。
大嫌い、人間なんか、でも、いちばん、大好きな……。
『約束するよ。
お前が言うかぎりは、どこにもいかない』
『うん』
ありがとう。
どうしたしまして。
「どうして。……どうして、」
それは、
「……嫌われ……ちゃったの?」
遠い、空が青い日の。
それは、遥か遠い、ささやかな約束だった。
叶うことのないと、知っている。
○ さよならの会話 ○
中編
「……最低だ……。」
「……。
……なあリンク。いい加減、つっこんでいいか。俺」
リビングのソファーでずっしりと落ち込んでいるリンクに、
キッチンで皿洗いをしていたロイは、かなりいらついた様子でぽつりと言った。
その声でリンクはわずかに視線をそちらに向けたが、
それはすぐにまた、リビングに敷かれたカーペットの模様を追いかけた。
「……。」
「……。
……ったく。何か言いたいんなら、言ってくりゃいいだろーが。
アホか」
大体普段から仲が良すぎるからそうなるんだ、とロイは言う。
リンクからしてみれば、だからといって喧嘩しすぎのお前らはどうなんだ、という話だが。
青い瞳を再びロイに向け、そしてその目は窓の外へと向かった。
高い場所に、青い空が広がっていた。
結局思い出すのは、数日前のあの時のことだ。
歩み寄ってきた小さな子供に、突き放すようなことを言った。
考えていったことではなかった。
考えていったことではないということは、純粋な本心だということだ。
その場出任せの嘘をつけるほど自分は器用ではないと、リンクは知っている。
「……」
「……」
どうして、何であんなことを言ってしまったんだろう。
思い出せば思い出すほど自分が信じられなくて、罪悪感におそわれる。
罪悪感。
……悪いことを言ったのだと、自覚はある。ありすぎるほどに。
だって、何て言った?
約束をした、小さな親友に。
自分がいなくても、平気だろう、なんて。
いや、そんなことよりも、もっと。
一緒にいたくない、みたいなことを言った、なんて。
考えれば考えるほど後悔が心を蝕んで、リンクはどうしようもなくなってくる。
だけど、言ったことだ。あの場の自分が、あの時の気持ちで。
「……」
堂々巡りの思いは、やはり数日前のあの日に戻って。
突き放した、冷たい言葉。
あの子は一体、どんなふうに捉えたのだろうか。
考える間でも無い。
あの言葉を、口にして以来。
二人は、一言も喋っていないのだから。
まるで、喧嘩でもしているかのように。
「……はあ……。」
「……。
……あーもう!! うっとうしいッ!!」
繰り返されるリンクの深い深い溜息の何度目かを聞いて、
最後にフォークの束を洗い終えたロイは、なけなしの忍耐に限界がきたらしい、
何事かを怒鳴りながら、ついにキレた。
手を洗い、外したエプロンをまるめてリビングのテーブルに投げながら、
ロイはつかつかとリンクの方に近づいた。
手を腰に当て、目の前でやたら偉そうに立つロイに、リンクはのろのろと顔を上げた。
碧の双眸が見下ろしてくるのが、いつも以上につらかった。
「……ロイ、」
「あんま詳しいこと知らねーけどさ。うっとうしーんだよ。
つーか、ひどいこと言った、とか、何言ったんだよ?
あんまり落ち込まれると迷惑だ。いい加減言え、ほら」
「…………」
俺は気が短いんだ、と今更なことを言いながら、ロイはリンクの頭をべしっと叩く。
乱暴なことを言っているけれど、これはロイの気づかいだ。
ロイさんほんとは優しいものね、ねずみ、とか言って腹立つけど。
そんな言葉が耳をかすめた気がして、青い瞳を上げたけれど、
そこにはいつもの小さな姿はいなかった。
「……」
「言ーえー。でなきゃ明日の夕飯の当番、お前に押しつける」
「……それは嫌だな」
「うん。俺も嫌だ」
至極真っ当なことを言えば、返ってきたのは至極真っ当な答え。
ふ、と少しなさけなく笑って、リンクはぽつり、と呟いた。
「……よく、わからない……んだけど」
「ああ」
「……あいつ。……いるだろ」
「あいつ? どれ?」
「……ピットだよ。そういえば、あんまり仲良くないよな。お前」
「ああ? あのクソ鳥がどうかしたって。仲良くなってたまるか」
その名前を呟いた瞬間、ロイの顔が思いきり嫌そうに歪んだ。
あんなのと仲良くなるくらいなら、父上に妥協した方がマシだ、と言って。
どうやらあの白い翼の持ち主は、綺麗なものやかわいいものが好きらしく、
ピカチュウを筆頭に、その対象の近くをうろついていることが多い。
その対象には、やはりというか何と言うか、マルスも含まれているわけで 。
潔い素直さをほんの少し羨ましく思い、そしてリンクは声を落とす。
ここ最近もうずっと感じていた、胸の中の奇妙な違和感。
「……仲、良いだろ? あいつと、ピカチュウ」
「うん。まあそうだな。性格悪い同士で」
「……あのなあ」
リンクは別にそうは思っていないのだが、ロイにとっては違うらしい。
「で? 続きは」
「うん。……それで……。いいことだって、思ってる、んだけど。
……ピカチュウ、人間に、人見知り……するから。
だから……。……なん、だけど……。……その……。」
一緒に並んでいる、後ろ姿を見て。
微笑ましく思った。だけど同時に、ひどくさびしかった。
子供みたいな声が、違う名前を言うたびに、言い知れないいらだちを覚えた。
今まで感じたことのなかった、知らないものは。
……どうして?
「それで、何だよ」
「……。……何か、変……っていうか。
……別に、オレとピカチュウは、一緒にいなくちゃいけないわけじゃないのに」
「……」
「……。……不安、なんだ。
……腹が立つんだよ。あの二人……見てると」
「……。……お前、」
かき消えそうな声でそこまで言って、リンクは瞳を伏せた。
顔の半分を手で覆い隠し、やがて表情はロイから見えなくなる。
重たい声。青年の姿をじっと見下ろしながら、
ロイはふと、珍しい、と思った。
目の前の、このお人好しは、そういえば。
そうそう滅多に、人を嫌いだとは言わない、と。
嫌いだと言ったわけではないけれど、ロイには、今のリンクの言葉は。
「……。で。何て言ったわけ」
「……ピカチュウが、オレと出かけたい、って言ったから。
……ピットと行けばいいだろう、って」
「……はーん。……なるほどなー」
あいつなんか、大っ嫌いだ、と。
言っているように、聞こえた。
ロイはわざとらしく溜息をついて、もう一度リンクの頭をべしっと叩く。
それに反応して顔を上げたリンクの目の前に、ロイはぴっ、と人差し指を立ててみせた。
「教えてやるよ。俺、それ、わかる」
「……?」
空みたいに揺らめく青。
ロイは、
「それは、恋だな」
「………………。」
きっぱりと一言、大真面目な顔でこんなことを言った。
まんまるく見開かれる、リンクの瞳。
そして、
「そんなわけないだろーがっ!!」
「うん。よかった、つっこんでくれて」
勢い良く立ち上がり、思わずといった調子で怒鳴ったリンクを諌めながら、
ロイはまあ座れよ、と適当なことを言いのけた。
照れる必要などどこにもないのに、なぜか真っ赤な顔を隠しながら、
リンクはロイをぎっ、と睨みつける。
「……お前なっ……」
「あーよかった。ここでボケられたらどうしようかと思った」
「何がボケだ! オレはこれでも結構本気で考えて、」
「あーはいはい。わかったわかった。偉い偉い」
子供を宥めるような口調。
なんだか妙に腹が立つが、どう反論していいものかわからない。
最近すっかり怒りっぽくなったな、と頭の片隅で考えて、
リンクは離れたソファーに腰を下ろした。
「……」
溜息をついた、リンクの目の前。
ロイは相変わらず、腰に手を当て、やたら偉そうに立っている。
落ちる、視線。
落とされる、言葉。
「……オレは、」
「だから、わかったっつってんだろ。……お前さあ、」
真面目な、声。
揺らぐ、青。
思い出すのは、春に咲く小さな花の、色。
「ピカチュウのことになると、何でそんなに自分本位になるんだよ。
……人の喧嘩はさくっと治められるくせに、本当不器用なんだな」
大きな手、小さな頭。
「……何、」
「ピカチュウの平穏を望んでるのは、ピカチュウじゃなくてお前だろ。
大体、最近ずっと思ってたんだ。
ピカチュウの人見知りがなおった、って、ずっと言ってたけど……」
人間にいろんなものを奪われた、人間じゃない小さな生き物は、
人間が嫌いだった。
人間が嫌いな小さな生き物の、一番近い親友は、人間だった。
約束をした、名前を呼んだ、あの時から。
嫌われていたら、なんて、思ったことは一度も無かった。
だって、親友だったから。
親友。
「お前 そんな義務感で、あいつとずっと一緒にいたのかよ」
「 ……。」
手を伸ばしたのは自分だ。
どこにも行かない、と約束したのも。
だけど。
「……悪い、」
「……」
「……ごめん、……オレ……。」
ロイの真っ直ぐな視線から逃れるように、リンクは立ち上がった。
訝しげな碧色の瞳はリンクを追いかけたが、声は何も言わなかった。
リビングを横切るように、廊下に続く扉に向かう。
緑色の青年の頭の上には、小さな親友が、今日も見つからない。
当たり前のように感じていた日常が、そこにはない。
二人はいつも一緒にいたわけではないけれど、
こんなに離れていることもまた、ロイは見たことがなかった。
「……」
痛い程の視線を背中に感じながら、リンクはドアの前で立ち止まる。
重みの無い背中。頭の中をくるくるまわる、突き放した冷たい言葉。
振り払うように、目の前を見つめる。
リビング側から見て手前に引くドアの、金色のノブに手をかけようとした、
その、瞬間。
「っ!」
「あ」
「わ!」
ノブがぐるりと回り、ドアが勢い良く開かれた。
誰かが、向こうからドアを押し開けたのだ。
ごづっ、とリンクの額から、なんだかとっても痛そうな音がする。
「……うわ。痛そー」
「いっ……、つ……」
同情するようなロイの声。リンクはちょっぴり涙目で、額を押さえる。
指が前髪にふれて、こぼれてさら、と音をたてた。
まわる視界。
青い瞳が、見下ろすと。
「うっわ、ごめん。悪い、大丈夫か? 何かすげえ音したけど、」
「…………っ……。」
最初に目に入ったのは、人間では持ち得ない、大きな白い翼。
そうだ、あの時も、白い翼が奇妙だった。
深海のような、青い瞳。
大地を映すような、茶色の髪。
「許してくれ。わざとじゃないんだ」
「……ピッ、ト」
じ、と見上げて、いたずらめいた顔で笑っている。
白い翼の天使が、そこに立っていた。
「……げ。クソ鳥」
「あ? ああ、何かと思えば、しつけの悪い子犬か。
いいのかよ、ご主人様のご機嫌取りしておかなくて」
「ああ!? 誰が子犬だ、誰がっ!!」
「言葉も通じないなんてな。はっ、これだから野犬は」
ロイとピットは、リンクを間に挟んで目を合わせた瞬間、お互いに罵声を浴びせまくった。
一体何がそんなに気に喰わないのだろうか、この二人は本当に仲が悪いのだ。
広すぎる世界の中で、真の天敵を見つけてしまったような。
境遇も属性も似てはいないだろうに、何なんだろうとリンクは思う。
自分の恋人にちょっかいをかけているからって、それだけではないだろう、とも。
二人の間で困り果てたように押し黙るリンクに、
ピットがふ、と視線を向ける。
彼の身長はマルスとちょうど同じくらいなので、自然と見下ろすかたちになった。
「ま、そこの子犬はともかく。
大丈夫か、勇者さん。ごめんな、誰かいると思わなくて」
「あ……。……ああ、いや……。」
悪びれの無い、なのにまったく憎むことのできない笑顔。
白い法衣を纏う背中で、翼が静かに動いて音をたてる。
向こうではロイがきりきりとピットを睨みつけているが、彼は全く動じない。
「どこか、行く途中だったんだろ?」
「……ああ、うん。……じゃあ、な」
「ああ。じゃあな。また夕飯の時に」
にっこりと、子供みたいに笑うピットにあいまいに微笑み返して、
リンクはロイに背中を向け、ピットの横を通り過ぎた。
横に目を向ける。見たことの無かった、真っ白な翼。
ところどころ藍や藤が混ざった、だけどとても綺麗な 。
「なあ。勇者さん、」
「うん? ……何、」
ドアノブに手をかけた瞬間、背中にピットの声がかかった。
ほとんど反射のように、振り向く。
そこには。
「あの子に。何、言った」
光のような瞳が、あった。
目を潰すように、鋭い。
「……。……え……、」
きっぱりと。
そんな言葉が、落とされた、
あの子。
「……何、」
「ひどいことを言ったんだろう。自分が信じられなくなるくらいの。
自覚はあっても、許す気が無いんだろ? だって、気分が悪いから。
当然だったことが当然ではなくなったから。
あの子は、泣いてた」
どくん、と、胸の奥が疼いた気がした。
無理矢理ふさいでいた傷口を、はがして奥まで傷つけるような。
何、何て、一体何を言っているのだろう。
あの子は、泣いてた。一体、誰が?
何を。
何のつもりで、何の権利があって、そんなこと 。
「……っ、」
「どうして嫌われたんだろうって、もうずっと泣いてる。
泣いてるところを見たくないから、お前はあの子のところに戻らない。
泣いてるのは自分のせいだって、認めたくない。
ああ、随分勝手なものだよな?」
「……何、を、」
ああそうだ、随分勝手なものだ。
離れたのは自分じゃないか。必要無いと言ったのは、自分だ。
なのにどうして泣く必要があるんだ。
悪いのは、
「……何を……、言って……、」
「幸福を願っておきながら、いざ幸福を手に入れると不幸のふりをする、とか。
どうしてあいつは幸福になれるのに、自分は幸福じゃないんだろう、とか。
あいつが幸福なら、自分は不幸でいい、なんて。
本当にそんなふうに思い込める人間なんか、ある意味 」
「……ッ、……お前、が……っ」
リンクは、伏せがちだった瞳をぎっ、とつりあげた。
青い瞳が、いろいろな感情を映してピットを睨む。
目の前の、真っ白な翼を。
あの時の、出会いを。
「元はと言えば、お前が ……!!」
右腕で、リンクはピットの胸倉を掴み上げた。
さら、とこぼれて落ちる髪の流れ。ばさ、と音をたてる翼のざわめき。
ロイが思わず息を詰めるほどの、怒りの入り混じったリンクの声は。
最後まで紡がれることはなく、そこで途切れた。
昼下がりのリビングが、しん、と静まり返る。
リンクの声に、音が全て追い出され、駆逐されてしまったように。
目の前で、空のように青いリンクの瞳を覗きながら。
ピットは、只、笑った。
「俺が、何だ?」
「……っ、」
「俺が悪いなら、そう言えばいいだろう。俺が嫌いだ、って。
別に、いち人間の好き嫌いなんか、どうでもいいけどな。
興味無ぇし」
ゆっくりと指をほどきながら、ピットは歌うように囁く。
明確な記憶。人間のものではないように響く、声。
当たり前だ。この白い翼は、人間ではけっして持ち得ない。
ピットはなおも、子供みたいににっこりと笑う。
何でもないようなそれを、どうして怖いと思うのだろう。
「お前、どうしても諦めきれないもの、とか、無いわけ?」
もう最近、ずっと。
言いようも無い不快感が、胸を満たしていたのは、
誰の、せい?
「それで大事なものを不幸にするんなら、ざまあねぇな。
馬鹿勇者!!」
「 っ……。」
大きく広がる、背中の翼。
フローリングの床を蹴り、ピットの身体が軽やかに浮かぶ。
深海の色をした瞳はリンクを見て、そして相当嫌そうにロイを睨んで、
そのまま外へと向けられた。
ソファーを飛び越えて、ローテーブルを飛び越えて、
庭へ続く壁一面の窓から、楽しそうに外へ出る。
その後ろ姿を、半ば呆気にとられたように見送ったロイは、
やがて我に返ったのか、不機嫌な様子でぽつりと呟いた。
「……何だ、あいつ」
「……。」
「何しにきやがったんだ? 相変わらず性格悪いな。
来なくていいのに、ったく」
悪態をついたロイは、わざとらしく髪をがしがしと掻き乱すと、
マルスと手合いでもしてこようかな、と言って踵を返した。
ロイの声を耳に留めながら、リンクはピットが飛んで出て行った窓の外を見ている。
広い庭。風で僅かに揺れるブランコ。
片隅の、背の高い、細い木。
「……」
「リンク。あんまり気にしない方がいいと思うけど、
……でもさ、」
背の高い木の上に、昔、誰かがいた。
黄色い身体をまるめながら、青い空を見上げていた。
その下で、リンクはその姿を見上げていた。
ひとりぼっちの、小さな背中を。
「あいつの言うこと、あってるとこもあると思うぜ。不本意だけど。
……お前さあ、ピカチュウのこと、どう思ってるんだよ?」
「……どう、……って……」
手を伸ばしたのは自分だ。
どこにも行かない、と約束したのも。
一番近くにいた。
一番近い、友達。
「……」
庭を見渡しても、その姿はどこにも無い。
わずかに緑が薄れた芝生の上には、白い羽が散らばっている。
一体どこへ行ったのだろう、翼の自由に、人間は敵わない。
捕まえることは、けっして出来ない。
最低だ。
馬鹿。
あの子が、人間を好きになったなら。
……それで良いと、思ったんだ。
リンクは青い瞳を伏せる。ずっと以前、ピカチュウが、空と同じといった色の瞳を。
一体何を考えて、どうしたいのかわからなくなってくる。
一つだけわかったことと言えば、そう、
自分は自分の小さな親友から離れていたことに、
正当な理由をつけようとしていた、という、それだけ。
迷っていたのは、理由をつけたくなかったからだ。
元に戻りたい思いと、
このままでいいんだという思いが、
ぶつかって、混ざり合ってしまっていたから。
自分の非を認めればいいのか、認めたくないのか。
リンクには、自分が、どうすればいいのか、わからない。
「……。」
長く、深く息を吐いて、リンクはピットが出て行った窓から、庭に出た。
見上げればそこには、今日も青く澄んだ空がある。
懐かしい思い出に、胸をふさがれながら。
頭の片隅で、誰かの声がまわっているような気がしたけれど、
今はもう何も考えられずに、リンクは喉の奥から出かけた言葉を噤んだ。