〜第二幕〜 |
何だか、足元がふわふわする。 俺、今どこにいるんだろう。 つーか俺、今まで何してたんだっけ? ああそうだ確か。 女王に花摘みに行けとか言われて。 お供とかいってつけられた狩人に、 頭思っくそ蹴られたんだ……!! 「……ふざっけんなてめぇっ、何でわざわざ頭蹴る必要があっ……!!!」 ごんっ。 何だか、ひどく痛そーな音が聞こえました。気のせいでしょうか? まあそんなことはともかく。 お供の蹴り一つで倒されてしまった白雪姫は、ちょっと前まで何故か、 ふかふかのベッドの上にいました。 ちょっと前まで、というのは、今はベッドの上にはいないからです。 ちなみに白雪姫の今の現在地は床の上です。 「……いっ……つッ……!!」 頭を押さえて痛がっているところを見ると、どうやらベッドから落ちたようですね。 そんなのもどうでもいいのです。 「……そういえば……、ここは、どこなんだ……?」 そうそう。 一体ここはどこなんでしょう。 「小人の家だよ」 「ふぅん。小人の…… ……え?」 床の上に胡座をかいて悩んでいたところ、なにやら少年のような、 可愛いらしい声が聞こえました。 どこから聞こえてきたのかわからなくて、白雪姫はあたりをきょろきょろと見回します。 「どこ見てるの。あなたの後ろにいるよ」 「え? 後ろ、……おっわああああぁぁぁッッ!!!」 「……失礼だなぁ……」 声の持ち主を自分の背中に見つけた瞬間大絶叫した白雪姫に、 声の持ち主は面白くなさそうに呟きました。 まあ確かに人を見て大絶叫するというのは、あんまりいいことではありません。 そこにいるのは人ではありませんでしたが。 「なんッ……な、ん、でっ……ねずみがしゃべッ……!!」 「差別はだめだよお姫さま。ねずみがしゃべったっていいでしょ」 「差別とかって問題じゃねぇだろ!! ああもうびっくりさせんなっ……!」 「……あなた、本当にお姫さま?」 世間一般でいうところのお姫様とは思えない乱暴な言葉遣いに、 喋るねずみは不思議そうに首を傾げました。 着てるのがドレスだったから、という理由で彼女(?)をお姫さまだと判断したのですが、 判断間違ったかも、なんて、今は思います。 喋るねずみを目の前に、生物進化論を必死に考えている白雪姫の前に、 「……おにーたん、お姫さま、起きたでちゅか?」 「何? 起きたんだ? ……起きなくてよかったのに……」 「そんなこといっちゃ駄目でしゅよ!」 「お姫様、起きたんだ。良かったねぇ」 「大丈夫なのか? 何か、森の入り口で倒れてたけど……」 「ボク達が運んできたんだよ!」 「……………………」 さらにぞろぞろと、色々現れました。 めんどうなので、紹介は私がしてしまいましょう。 黄色いねずみがピカチュウ、それを兄と呼ぶのがピチュー。 物騒なこと言ってるのが子リンク、それを咎めてるのがプリン。 二人並んで背が高いのが、ポポとナナ。 やたら元気なのがカービィ。 確かに人間もちゃんといますが、よくわからないのが過半数。 「…………何っ……なんだ、お前らはあああぁぁッッ!!」 「小人」 あっさりと答えるピカチュウ。 しかし白雪姫は納得しません。 「小人、で済むか! 小人じゃねぇだろ特にあの辺の背の高い二人とか!! つーか半分は人ですらねぇだろうが!!」 「細かいこと気にしてると、長生きできないよ?」 「可愛らしく首傾げて誤魔化そうとするんじゃねえ!!」 「……じゃあどう言ったら納得してくれるのさ……」 むぅ、と顔をしかめて、ピカチュウは白雪姫を見ました。 その可愛らしい顔を見て思わず、白雪姫は返答に詰まります。 どう言ってくれれば納得するんだろう、俺。 ……自分ですら答えが出ませんでした。 「……ごめん。うん、もう小人でいいです……」 「本当? よかったあー」 へらり、とのんびり笑って、ピカチュウは言います。 何だか思いきり脱力する笑顔でした。 ……はああああぁぁ、と、白雪姫は大きく溜息をつきました。 そして、ふ……と、自分をはっ倒した狩人の言っていたことを思い出しました。 『森の奥で、オレの親友が大所帯で暮らしてる』……。 「……あのさ、小人その1」 「何? その1って」 「喋った順番。……あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど。 俺をしばらくここにかくまってくんねーかな」 「かくまう? ……どうして?」 「根は優しいんだとは思うが表は性悪な女王から身を隠すため」 「……性悪ってひどくない?」 「仕方ねぇだろそう思うんだから。で、いいのか駄目なのか?」 「僕は別にいいけど。みんなは?」 「おにーたんがいいって言うんならいいでちゅー」 「僕はヤダ」 「プリンは全然構わないでしゅー」 「洗濯手伝ってくれるんなら」 「料理手伝ってくれるんなら」 「ボクと遊んでくれるならいいよーv」 「だってさ。はい、じゃあお姫さまのベッドはここね」 「……一つ反対意見があったけど」 「話の進行上の関係で却下。はいこれ毛布」 「……進行上?」 「細かいこと気にしないの! コレはまくら」 「……。……あのさ、小人その1」 まだ気になることがあるらしいです。 「だから僕はその1、じゃなくてちゃんと名前があるんだってば。何?」 「あのさ、背の高い金髪青目の狩人の親友って、あの3人のどれ?」 人間3人を指差し、白雪姫はピカチュウに訊ねます。 人間の親友は人間だろうという、人間の白雪姫にとっては、ごく単純な理由でした。 が、ピカチュウの答えは、 「……ああ、リンクのコトか。リンクは、僕の親友」 「……、……ハイ?」 「もしかして、人間の親友は人間、とか思ってた? だめだよ差別は」 「………………」 ……もはやこうなった以上、何があっても驚いてはいけないのでしょうか。 白雪姫が、何だか泣きそうな気持ちで床を見つめます。 「……」 「……お姫さま、大丈夫でちゅか?」 「……」 ああ、こんな小さいのにまで心配されるようになったか、俺。 「……ああ……。……大丈夫だ、うん……」 「そうでちゅ? ピチュー、お姫さまのために、何でもするでちゅよ!」 しかも励まされちゃってるよ。 「……うん……。……サンキュ、」 ピチューの頭を半ばヤケクソになってぐりぐり撫でると、 ピチューは大喜びしてくれました。 そしてこれから、このわけのわからない集団の中で過ごしていくのかと思うと、 何だかやりきれない気持ちでいっぱいでした。 ですがここのお世話にならないと、明日のごはんの心配をしなければならないのです。 森の中の鹿を剣で狩って焼いて食べるというサバイバル生活もできないこともありませんが、 それよりは多分、小人さん達のお世話になった方が楽に決まってます。 背に腹は変えられません。 白雪姫は覚悟を決めるかのように、頑張れ俺、と拳をぎゅっと握りました。 白雪姫が小人達と暮らす決心を決めたところで、 第二幕は終わり。 続きます。 |
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