アン・リーが撮った映画と言うことで、いい作品だと言うのは分かり切っていましたが、最後まで観てこれは凄いと思いました。感想にはネタバレが含まれますので、鑑賞予定の方は鑑賞後にご覧ください。
やっぱりどうしても繰り返し考えてしまうのが主人公の最後の衝撃的な告白です。船が難破後、ボートに四匹の動物が乗り合わせていた時、何かすごく違和感があったんですよね。動物を相手にしているのに、主人公のこの過剰な思い入れは何なんだろうと。そしてトラが出てくるタイミングにも違和感があった。ハイエナの行動の後、突然ボートの中から飛び出してくるんですよね。今までどこに居たのかと言う。それが小説家が言ったように「君がトラか」で全てが分かる。船の遭難からのエピソードに少しずつそう言った違和感があるのを、「奇想天外な話だし」と思いながら観ていたのに、まさかこういった解答が与えられると思っていなくて、これは凄い作品だと思いました。この映画を一度観た後に真実を知って、あの動物四匹が乗り合わせているシーンを果たしてまた観られるかどうか、と思うと恐ろしいです。
ただ、真実が最も素晴らしい話ではない、と言うのは、あまりにも感動的で切ない主人公とトラとの交流に現れていますよね。トラの頭を膝に乗せて語りかけるシーンは本当に美しかったです。ポスターの少年の写真も、ここだったのかー! と…。素晴らしい映像美の海洋冒険物語、それもまた真実なんだと思います。これがもし主人公の「作り話」であっても、海を227日漂流し、様々な神秘的な現象を見たのは紛れもない真実なのですから。
もし主人公が最後に語ったのが「真実」だったとしたら、この「真実」を隠し、少年とトラの美しい漂流物語として大切な友人に、妻に、子に語ったのかと思うと、何と言う強い人なんだろうと思います。
海の映像も美しいですし、主人公の子も本当に美しく撮られていました。少年時代役の子が(トラと漂流する前の少年時代の子)フィギュアスケート選手のアーミン・マーバヌーザデー選手に似ているのにもときめきました(笑)。エキゾチックな風貌の人はいいですねえ…。