ZERO START
ミッション5 驚愕 1
アレからよっかほど立った。何でか知らないけど奇妙な具合で始まった僕の生活は、家ではリリィが護衛に突き、ほぼ毎日ナナセとアキが遊びに来ると言う内容で始まっていた。
これが本当に疲れる。なにぶん家に居るのは男一人と女の子数人。しかも全員関係があるわけでありまして、思春期の心はドッキンドッキンと高鳴りまくり。普通ならプッツンときて犯罪しゃになってしまいそうだが、なにせ三人とも関係があるわけでありましてこれがまた何とか上手く言ったりしている。
だけどこれは半分頭がぼーとしてきそうだからはっきり言って辛い。しかも今日はなんと終業式、つまりは学校が終わるわけで、つまり明日から学校に行かないわけで、しかも一応狙われているから家を出るのは感心しないわけであって・・・。
「だああああああああっ!!!! 考えてるだけで意識が飛びそうになる」
こんな生活送ってたら、かなりふしだらな一生を送るんじゃないか? こうなったら毎日シンジやツトムを連れてきてなんとか精神的に安定しないと・・・
「「・・・・・・わっ!!!」」
「どうわあっ!?」
後から大声で叫ばれて、思いっきり驚いてしまった。いや驚いた、マジで驚いた、まじで心臓が止まりかけた。
いったいなんなんだよ、この緊急事態に!! そんな愚痴を心の中で叫びながら振り向くと、そこにはさっき思い浮かんでいたシンジが、なんとトモと一緒にそこにいた。
「シンジ! トモまで・・・何?」
「いや、ちょっとぼーっとしてたから驚かそうと思ってな」
「そんな怖い顔でみんといてえや」
この二人は・・・。僕がどれだけ苦労していると思っているんだ。
まあ別にそんな事を言えるわけもないから口には出さない。とりあえず深呼吸して落ち着いてから、再び話を切り出した。
「で? それだけなんだったら少しお詫び代わりに喫茶店にでも付き合ってくれない? 最近暇なんだよ」
これは嘘だ。正しくは今からいこうとしている喫茶店のとんでもないメニュー代をおごらせる事が目的なのだ。ついでに大量に注文してたらふく食ってやる。
「ふ〜ん。どないする、シンジ」
「ん〜、コイツと帰るのも久しぶりだし、別にいいか」
二人はそんな感じに相談すると、僕のほうを振り向いて頷いた。
そういえば、この二人って一緒にいることが結構多い。もしかして付き合っていたりするのだろうか? 僕とナナセの関係も結構ばれていないし、この可能性はかなり高いな。
「くおらっ!! さっさと案内せんかい!!」
などと考えていたら、後からトモに張り倒されてしまった。相変わらずだけど痛いよこれは。生物兵器と一体化しているとは言えど、痛覚は人並みだってのが問題あるよなぁ。頑丈さではもはや普通の人間を凌駕しているけれど、痛覚が人並みだと色々とやばい時に対処が出来ないもん。
とにもかくにも、不意打ちだったこの攻撃はかなりきいたため僕はしばらく立ち上がれなかった。てか当たり所によっては入院してるんじゃないのかこの攻撃。
「おいおい大丈夫かよ?」
シンジが笑いながら手を差し伸べてきた。正直ムッときたけれど、いくら僕が色々あってなんか微妙に過敏になっているとは言えど、この程度のことで怒るもどうかと思ったので、とりあえず憮然としながらも手をとって立ち上がった。
・・・ま、こんな生活こそが日常的なものなんだけどね。
とりあえず喫茶店に着いた僕は、口八丁手八丁で二人を丸め込んで割勘までもっていく事に成功。とりあえずストレス解消などのために色々注文した。
テーブルに並べられるものをみて、シンジが大きく口をあけて呆然とする、いや呆れる。まあ気持ちはわかるから別に何も言わない。ある程度は言われても黙るつもりマンマンだ。いや当然の事だけど。
だが、トモは呆れるを通り越してうんざりとした目で僕を見てきた。ま、これも言いたい事の予想はつく。
「・・・・・・なんで喫茶店にたこ焼きがあるねんとか、そんな突っ込みはせえへん。やけどな?」
できる限りにこやかな笑みを浮かべてトモは僕が今飲んでいるものを指差す。シンジもそこに視線をもっていき、トモに視線を向けるとやめて置けと視線で訴えた。
だがトモは別に何も言わない。ていうか聞いていないし無視に徹している。そして息を大きく吸うと、喫茶店の客が驚くほどの大声で怒鳴りながら、市内クラスの長さのハリセンを取り出すと(どこから出した?)思いっきり振り下ろした。
「こんな所でスッポンエキス(にんにくしょうが入り)を注文すな、そしておかわりすんなぁっ!!!」
「言うんじゃないって! こっちは気にしないことにしてんだからよ!!!」
大声で突っ込むシンジを無視して、トモが勢い良くハリセンを振るう。僕は強化された身体能力を限界まで引き出して、足でそれを受け止めると追撃が来る前に飲み干した。
あ〜まずい。流石にこれを毎日飲むのはきついな。ま、いいけど。
続けてくるハリセンの乱舞を回し受けで何度もいなす。時折ケリが飛んでくるが、軸足がペタンとくっついているケリなど怖くはない。軽く受け止めてハリセンをつかんだ。
「なんでって、この店の名物なんだよこれは! 近くにラブホテルがあるからもう簡単に手に入って手に入って人気商品で、スタミナのない人にとってこれは目玉商品なんだから」
僕のセリフに、喫茶店にいる人々が無言でうんうんと頷く。
はっきり言って突如始まったこの生活の為にはなんとしてでも必要だ。とにかくスタミナは即座に補給せねば生きてはいけない。いやまじで。
だが、そんな男の事情を受け入れてくれるほどトモはやらしく・・・いや、優しくない。てかまだ処女のはずだし、絶対ありえないよなぁ。
残念なことに、どうやらシンジも同意権だったらしい。無言で視線をそらしながら横を向く。そして手でトモにジェスチャーをよこし、トモはそれをみて満足げに頷いてハリセンをもう一本取り出した。
「ってもう一本!?」
「関西人の誇り、くらいぃや!!」
「スマンな。俺も同意権だ。とりあえず喰らっとけ」
流石にこれはかわせませんでした。
でも直撃するまでの時間が輪からなかったってのはどうよ。間違いなく音速を超えてたような気がするんだけどなぁ。変身していれば弾丸をかわせるぐらいの反応速度がありはするけど、これはかわせないような気がする。何でだろう?
などと考えながら激痛にうめいた。はっきりってこれは拷問だよおい。本当にハリセン? この感覚はタンコブが出来ているというよな、これは。
とりあえず追撃がこないように慌てて離れる。それから顔を上げてみると、トモはハリセンを捨ててテーブルを持ち上げていた。あわててシンジがとり押させる。
「お、落ち着け!! いくらなんでも死ぬってこれは!!」
「止めんなシンジ!! ウチはコイツにトドメささんと気がすまん!!!」
マテマテマテマテマテマテマテマテマテ。いくらなんでも殺されなきゃいけないようなことしましたか自分!?
「わ、わかった! おごるから許して!!」
とりあえず色々あったから警察からの謝礼金はもらっているし、こっそり基地からくすねたお金を換金してポケットマネーを潤している。
が、その程度で何とか出来そうにないのは明らかだった。もう感じなれた殺気の感覚がしっかりと理解できている。
「わ、わかった!! 何でも一つだけ言う事聞くから許して!! ・・・あ、死ねとか殺せとかは無しね?」
これだけ言えば何とかなるか? せいぜい荷物もちとかそんなレベルだろうとは思うけど・・・。
「・・・それホンマ?」
「いや本当だろ。この状況下で嘘はいわねえだろ、普通」
ん? なんか様子がおかしいぞオイ。
トモはシンジと顔を見合わせるとにやっとする。とたんに嫌な予感が身を走るが、時すでに遅し。もう言っちゃったから何でも言う事聞くほかない。周囲の客たちから同情の視線が駆けられた。
「「おっしゃぁあ!」」
二人は笑顔でハイタッチ。は、はかられたぁああああああああ!!!
「・・・で、明日いっしょに廃墟探検に行くって?」
寿司を口に放り込みながらリリィが聞きなおす。僕はお茶を飲みながら無言で頷いた。
僕とリリィの奇妙な同居生活は、ほとんど食事が買って帰るものなのが主流だ。幸い父の開発した物が結構売れているので生活にはまったく困らないし、警察やインターポールが奮発してくれて当座の生活費まで出してくれている。まあ、それは体のいい監視に対する侘び代とかそういうものなのだろうがこのさい結構自由だから気にしない。
とりあえずそんな感じで寿司をとって夕食をとりながら、僕はリリィに明日の行動について話した。
今度のことも以前の肝試しとほぼ同じ展開、つまりはトモの後輩が幽霊を見たとかいっているのでその原因を確かめて、もし偽者だったりしたあかつきには半殺しにして警察に届けるというものだ。しかし毎回毎回気にかけるトモはともかく(ギャグじゃない)、なんで誰もいないようなところに入る事情がある後輩をたくさん持っているんだ?
とりあえずもう少し詳しく説明すると、なんでも後輩が犬を散歩させている時にうっかり縄を落としてそのまま走って行っちゃったらしい。それで追いかけていった先が廃工場。ようやく見つけたと思ったら、いきなりグロテスクなバケモノの姿が目に映ったということだそうだ。
グロテスクなバケモノと言ったって、幽霊の正体見たり枯れ尾花というもんだから、廃材なんかが適当に積み上げられている所を見間違えたと考えるのが妥当だろう。結局この前の幽霊騒ぎも似たようなものだったし。
それでもついていくことにしたのは一重に約束(ほとんど詐欺だったが)に他ならない。だけどここで現保護者といっても過言ではないリリィから止められたら非常に効果的ないいわけになる。彼女だったらトモが約束をたてに迫ってきても対抗できるだろう。いざとなったらインターポールの権力をつかって・・・「いいわよ」うんうんやっぱりってハイ!?
い、い、いま、許可したんですかリリィさん!?
「い、いいの?」
思わず聞き返してしまった。
いやそれは当然の事でしょう貴方。リリィは僕の監視役のはず。だけどこんな所まで突いていったら色々とウワサになると思うんだけど・・・。
「どうせ学校まで着いていってるわけじゃないんだから、携帯もっててくれればそれでいいわよ」
「あ、なるほど」
納得納得。
確かにリリィは学校についていっているわけではない。一応携帯電話―と言っても、かなり金のかかった超高性能の一般市場に出す事を考えていない予算度外視だからすごい性能を持っているけど―を持たせているぐらいでたいした監視を行なっているわけではなかった。
つまり監視なんてほとんど意味ないから好き勝手に行けばというかなり問題のある発言を彼女は言ったわけだ。まあ、イザとなったらあの恐ろしい運転で駆けつけてきてくれるだろうから問題はないか。
できればここで文句の一言でも言ってくれれば良かったんだけど・・・仕方が無いよね?
「わかった。じゃあ明日は朝早くから下手すると遅くなるかも知れないから。お昼はどこかに食べに言ってね?」
「はいはい。・・・何かあっても無理しないでよ?」
リリィはぶっきらぼうにそういってから、ふと潤んだ瞳でそういってきた。正直心臓に悪いというかかなり緊張するんですけどの視線。
アレ以来、この奇妙な日常生活のおかげでリリィとはしょっちゅう顔を合わせることになっているけど、時々こんな視線が飛んでくるから困ってしまう。はっきり言って毎日煩悩に悩まされている日々で、しかも普通は家に居ると気がゆるむからかなり精神的に揺さぶられてしまう。うっかり襲わないかと緊張して緊張して・・・。
「何考えてるの? とりあえずご馳走さま」
パニくっている最中にリリィが食べ終わってそのまま客間に行ってしまった。ちなみに言うと、現在我が家では家事は何かにつけて簡単なゲームの結果で決めているが、夕食の片付けは食べ終わった順番が後の方がすることになっている。しまった。
ついそんな感じで頭を抱えていると、チャイムが鳴った。すぐに近くのインターホンで出る。
「ハイもしもし・・・」
「あ、ススムちゃん? わたしだけど・・・」
この声はアキだな? まったく、いきなり喫茶店でのんだスタミナドリンクの出番だよオイ。
続く
あとがき
はいはい煉獄です。とりあえず一端我が家に帰ってきたススム君の日常を描いてみました。持てる男はつらいね〜まったく。
しかし! 物語の主人公に平凡な毎日というのは存在しない!!(平凡かどうかはおいといて) モチロン明日から大変ですよススムくん!! てな感じでまて次回!!
蒼來の感想(?)
期待してたのと別に意味で修羅場だ・・・
鈴菜「女の修羅場じゃあなくおとこの修羅場かあ・・・」
観月「まあ、探検に行くということで収まったみたいですわ。」
護衛が大変そう・・・でもリリィの反応が薄くて、期待はずれの感が。
そういうもんか・・・しかし鼻血出るぞ、そんなに飲んだら。
鈴菜「スッポン・・・蒼來でさえ、チオビタドリンク7本で鼻血出しのに・・・」
観月「発散するとこがなかっただけでは?」
それを言うなー!!薬局のオープンで外仕事、しかも夏だからしょうがねえじゃん!!
しかしススム君・・・どんだけしてんだ?
鈴菜「可也量だよな・・・しかも常連。」
観月「喫茶店でスッポンドリンクなんて?」
普通は出ませんよ、メニューに無いって^^;
さて5章の始まりです!!どんな驚愕があるか期待しましょう!!

