ZERO START
ミッション4 対決4
その後、僕が起きるまでの間が非常に大騒ぎだったらしい。
御田さんはピリさんとスパイの話しに付いて長い間話し合いを行なっていたらしく、僕は起きた時に幽霊と勘違いして蹴り飛ばしてしまった。疲れがたまっていたのか別に骨を折っていなかったのは幸運だ。アキも永尾もとりあえず冷静になっていてくれているのか、この話は口外しないことになった。親御さんにはピリさんが僕のことを除いて説明してくれるらしい。
リリィの件もかろうじて助かった。僕の腕の方も、僕が正気を保っていること、結局バケモノとの戦いでピリさんがいたから助かったようなものだった事などから危険度は低いと判断して、なおかつその細胞のサンプルデータを入手できたことから、監視にリリィが付くという条件で何とかなるようだ。まあ、それは科学者として有能な御田さんが、パワードスーツ開発に全面協力してくれたりすることと引き換えに取り付けた条件だったみたいだけど、ピリさんの様子から他にも秘密があるのかも知れない。
とりあえず、僕たちは僕が起きたその日のうちに日本に戻る事になった。何かされているかも知れないということで血液検査とかをされたが、対して体に異常があるわけではないことがわかると、あっさりと開放してくれたのは本当に助かる。
「でもさあ、まさか肝試しをした日からこんな事になるだなんて驚きよね〜」
「三舟さん? こういうのは何でもないことが原因になるものなのよ? それがセオリーってものなの」
「アニメじゃないんだからセオリーってのは無いと思うよ?」
飛行機の中で他愛のない会話をしながら、僕たちは飛行機の窓から空を見る。なんだかんだいって、この事件をきっかけに僕は永尾とも仲良くなったようだ。ナナセに嫉妬されるかもね?
でも、アキの言うとおり肝試しの帰りからこの一連の騒動が始まった事を思うと、正直驚かざるを得ない。本当に色々と騒がしい事件だった。まあ、僕は監視付きとは言えど別に束縛されたわけじゃないし、何よりリリィだったら気兼ねなく話せるから、別に自由がなくなるわけじゃない。まあ、母さんが生きていたら心底心配している事だろう。いや、天国で心配しどうしだろうなあ。
でも、よく考えてみると、あの日からもう一週間も経つことになる。ナナセも心配しているし、お土産ぐらい買って機嫌をとるべきだったかなぁ・・・。
「ススムちゃん? なに考えてるの?」
「うわっ!!」
物思いにふけっていたら、いきなりアキがこっちの顔を覗き込んできて思いっきり驚いてしまった。長尾が顔を背けて笑いをこらえているのがよく分かる。ここまでされるとちょっとむっときちゃうな。
「何でも無いよ! ちょっと考えてただけだから気にしなくていいって」
「ふ〜ん。でも、ススムちゃんも大変だよね。・・・これからどうするの?」
「どうするったって、別に普通に生きていくのにそれほど問題があるわけじゃないんだから、大学行ってそれから考えるさ。この能力を活かして正義の味方ってのもいいかもね」
僕は肩をすくめてそういいきった。まあこれから何があっても、アキのこの態度は変わらないだろうし、それなら別にそれでいいと思う。今度生まれ変わったら絶対平凡な人生を選ぶけどね。
空港に着いた時には、もう日本時間で午後八時になっていた。とりあえず今日は近くのホテルに泊まって、明日来るまで家まで送ってくれるらしい。
「本当ならこのまま返してもいいんだけど、流石に疲れてるでしょ?」
ってリリィが進言したらしい。ま、高級ホテルみたいだし、前回は結局一泊も出来なかったから絶対泊まりたい。しかも一人だよ一人!! 備え付けの飲み物だって飲み放題!! これは最高ですよこれは!!
てな感じで賛成して、とりあえず食事をという事で向かった先はレストラン。バイキング形式だからいくらでも取れる。体力を消耗しているし色々あってストレスもたまっているから、ここは元の二倍ぐらいは食べまくってやるぜ!! と行きこんで入りましたが、その視界にとんでもない人が入りました。
間違いない。あのちょっと覇気のない表情を浮かべている姿は・・・、
「ナナ・・・辻さん!?」
「え・・・スス・・・定光寺君!?」
な。な。な、な、な、な、な、な、な、あn、何事ぉおおおおおおおおおおっ!!!!!?????
「なに無言で混乱してんのよ」
「グギャッ!?」
驚いて硬直していると、リリィに真後ろから思いっきりはたかれた。手刀が後頭部に直撃して痛い。もうちょっとぐらい遠慮ってものをですね・・・。
「え、あ、その・・・、何で委員長がここに?」
アキが混乱しながらも問いかける。その言葉にリリィもどういうことか大体察してくれたようだ。助かった助かった。
「え? あ・・・ちょっと色々あって外食って事になって・・・」
ナナセが何故かつまりながら答える。その時、僕はナナセの両親と目があった。ナナセの両親は何故か僕にウインクをしてみせる。なるほど、どうやら僕とナナセの関係を知っているようだ。いらんこと言わないでくれるといいけど、まあこの状況かだ。勘違いしている可能性もなきにしもあらず。とりあえず簡単な紹介ぐらいはしておくべきかなぁ・・・。
そのあと、ナナセの両親が気前良かったのでテーブルくっつけて一緒に食べる事になった。ちゃっかりナナセの隣に座る事も出来たしいやあよかったよかった。アキとかリリィの視線が痛かったのが気になるけど、とりあえずそんな過剰ににやけてはいないはずなので大丈夫だろう。
で、いま僕が何をしているのかといいますと、
「でもさあ、いくら理解があるからって僕の部屋に来ていいだなんて気前いいね、ナナセの両親」
「うん。でもススム君がこんな所にいるだなんて驚いたな〜」
部屋はなんと完璧スイートルーム。しかもナナセと二人っきりというラッキー状態。神様にバチをあてられるんじゃなかろうか。いや、案だけ最悪な目にあったんだからこれぐらいの贅沢ぐらいいいだろう。丸一日存分に羽を伸ばしてやるぜ!! そして・・・
「ススム君。ちょっといやらしいよ」
「・・・・・・すいません」
何を考えている自分。ここは上手く抑えて生活しなくては。まさかいきなりこんなご褒美が待っているとは思っても見ませんでした。そりゃ落ち着かなくもなるわな。
「でも・・・、ススム君が無事でよかった」
「あ・・・」
そういえば、ナナセってとっても心配してたからな。そりゃあきにするだろう。少しは僕も注意して行動しないとな。まあ、これからはもう少し平穏な生活が出来るだろう。っていうかそうじゃないと困る。
「ああ・・・。ま、ちゃんと無事に帰ってきたよ」
誰もいないのをいいことに、静かにナナセを抱きしめる。思わず視線があって、そしてそのまま唇を近づけようとして・・・。
「ススムちゃ〜ん。いる〜?」
瞬時に距離を同時に離し、僕は慌てて声の来た方向を見る。あの声はアキだよな。一体どういうことだよオイ!!
とりあえず深呼吸をしてからドアを開ける。途端、アキの悪意のまったく無い笑顔がそこにあった。
「ススムちゃん、ちょっと入っていい? アキラちゃんがもう寝ちゃったんだけど、でもあんまし眠れそうに無くって。ジュースでも飲みながらお話しよ?」
その言葉に、僕はどうしようかと思いながら後に振り返る。ナナセと一瞬視線があったが、すでに熱っぽさはなくなっている。
くそ、世の中そんなに都合よくは行かないか。人生は戦いだぜ。
翌朝。僕は脱力間を感じながらも眠りから覚める。うん、これこそ朝起きた時の幸せだ。しかも今回はナナセの体温を感じる。あの後の記憶があまり無いけど、確かジュースをがぶ飲みしたあと二人と・・・、
ん? 二人?
自分で言っておいてなんだが、その言葉にふと動きを止める。冷静に考えてみると、僕の両側に体温を感じる。手を動かしてみると、両方共にやわらかい女性の感触を感じる。これって一体どういうことだ。嫌な予感と共に目を開けてみて、そして左右を見渡す。
左側にはナナセの姿、服を着ていないのはやはり一緒に寝てそのまま爆睡してしまったのだろう。これは問題ない。だが、右側をみて、僕はいっしゅんで思考が止まるのを感じた。
アキだ。それは完全に間違いない。その赤毛の髪も間違いなくアキのものだし、髪型はお団子頭、そしてかわいい寝顔があるのも問題ない。が、何でアキまで裸なんだ?
「・・・僕、占いに女難の相ありって出てたっけ?」
「ススム君〜・・・」
「ススムちゃ・・・ん・・・」
顔を思いっきり青ざめさせる僕と、赤らめながら笑顔で寝返りを打つ二人。対照的な姿を残して、朝の光が容赦なく照り付けてくる。これが地獄というものなのだろうか・・・。
続く
あとがき
女難警報最大レベルとなっております今回。いかがでしたでしょうか!
ススム君の女難は最大レベル。しかし更にこれを越えるかも!? いや越えないよね!? それは誰にもわからない。だが一体どうなるのか、まさに急転直下の事態に突入!!
蒼來の感想(?)
煉獄さん、Good Job !!(^^)b
いやあ、もしかして外伝3はこの空白の時間なんですかね〜?
鈴菜「ふむ、この後の展開としては・・・」
観月「リリィさんの強行突入を期待いたしますわ。v」
・・・俺もそれ見たいw
鈴菜「それにしても・・・普通娘の部屋に泊めるかぁ?」
確かに・・・泊めるにしても、大抵は居間とかだよなあ・・・
観月「ジュースに入っていたのはやはり・・・あの時と同じ系統のものなんでしょうか?」
そうとしか考えられないが・・・記憶がないのか?
鈴菜「これは外伝か次回を見ないと、解りようもないなあ。」
うむ
観月「では、外伝の感想に行きましょうか」
え、来るの?Σ(- -ノ)ノ エェ!?
鈴菜「もちろん!!」
観月「今日は大暴れできない分、数で稼がないとなりませんわ。」
・・・了解。


