ZERO START
ミッション4 対決3
眼前に聳え立つ巨人の影・・・。いや、バケモノの姿に僕は思わず動きを止めた。
緑色の硬質化した皮膚で全身を包むその姿は、まさにバケモノの名にふさわしい。その姿は凶暴性を現しているかのように性悪そうで、更に両手には鋭い爪が伸びている。その瞳には殺気の色がありありと浮かんでいて、その視線は僕に向けられていた。
「・・・何をやっている、迎撃しろ!!」
ピリさんの声で我に返った警官や、どこかから増援としてやってきた兵隊達が一斉にバケモノを撃つが、弾丸は皮膚に当たって音を立てるだけで、ほとんど効いてない。バケモノは銃撃を無視しながらこっちを狙って拳を突き下ろす。
「に、逃げなさい!!」
「きゃあっ!!」
リリィが慌てて、アキを突き飛ばしながら距離をとる。御田さんも慌ててはしりだした。が、永尾はあまりの事態に動きを止めていた。このままだとまずい!! 距離をとりかけていた僕は、慌てて引き返すと永尾を抱える。
「永尾っ!!」
「え、ええっ!?」
もうセリフなんぞ言ってられない!! 一瞬で戦闘形態になると、拳がぶつかるより上がる飛び上がった。足が拳にかすったが、かろうじてクリア。
着弾する音と同時に地面にヒビが入り、更にはじけて飛ぶ。だがそんな事を気にしている暇はない。
一瞬の隙が出来たバケモノの足に乗ると、勢いよく飛び上がる。
「きゃ、きゃぁ〜!! スゴイスゴイスゴイ!! こんなに勢いよく飛び上がるだなんて、アキラってもう映画のヒロイン!? 定光寺君サイコーッ!!」
「お、おうわぁっ!?」
いきなり感動している永尾に抱きつかれてバランスを崩すが、とりあえず立て直すと離れた所に着地、すばやく永尾を下ろすと、一気に距離をとってバケモノの注意を引く。
知能があるわけではないのか、バケモノはすばやくこっちに向かって突撃してきた。よっしゃ! とりあえず殴りかかってきたのを横っ飛びとんでかわし、速やかにとび蹴り慣行。だが、バケモノは、あまりダメージを受けていないのかすぐに反撃してきた。とりあえず慌てて回避。
そんなほとんどいつまで立っても決着がつきそうにない戦いの中で、しかし僕は非常に心配になってきた。
いくらなんでもこの状況下は非常にやばすぎる。隠しようもなく僕の秘密をばらしてしまったわけだし、このままではどうなるかわかったもんじゃない。まあ良くて軟禁、酷けりゃ解剖? 正直勘弁してもらいたいけど、はっきりいって生物兵器だからな〜。間違いなくつかまるよな。
「っと!!」
考えながらも攻撃が来たのですばやくかわす。しっかし数の多い奴らだ。このままじゃいつまで立っても終わりそうに無い。いったいどうやって倒す? 頑丈すぎてダメージを与えられそうにないし、かといってロケットランチャーとかがあるわけではない。これではいつまで立っても終わらないし、体力の問題から言って僕のほうが不利なはずだ。
「さてどうするか・・・!」
何度目かわからない攻撃を叩き込む。今度は宙に飛び上がってからのかかと落とし。バケモノの眉間に勢いよく叩き込まれた。
が、やっぱり効いていないのか、バケモノは軽く頭を振ると、すぐさま突撃して攻撃する。
くそっ。このままだとジリ貧だ・・・。だけどこのままだと・・・。
「ススムちゃん! 後!!」
いきなりアキが悲鳴じみた叫びを上げて、僕はうかつにも後ろを振り返ってしまった。視界に壁が移る。だが、それを認識するより早くバケモノの拳が直撃した。
「ガッ!!」
肺から空気が押し出されて意識が遠のきかけるが、激痛が僕の意識を取り戻した。壁に叩きつけられ、しかしその衝撃で容易く崩れる。しかしその痛みも最初のダメージに比べれば何のことは無い。
バケモノはすばやく追撃する。右足を上げてそのまま押しつぶそうとする。だが、激痛のせいで僕は動けない。このままだと間違いなくつぶされる。オイ、動けよ僕の身体!
心の中で叫ぼうが気合を入れようが動けない。衝撃で脳震盪でも起こしちゃったか? これじゃあつぶされる!!
その時、破裂音と同時にバケモノの右目から液体が飛び散ったかと思うと、バケモノは激痛に悶えるかのように急に倒れた。あわてて横を見ると、ライフルを構えたリリィの姿が見える。さすがはワンホールショットの名人。
「なに呆けてんのよ!! 今のうちに動きなさい!!」
こっちの視線に気付いたリリィが大声を上げる。再び体に力を込めると、何とか動き始めた。動きはのろいけどこれなら何とかなるか?
だが、バケモノの復活は早かった。すぐに振り返ると、僕ではなくリリィに飛び掛る。しまった! 動きが鈍い今の僕より、また目をつぶしかねないリリィのほうが脅威と見たか!?
「リリィ逃げろ!!」
慌てて叫ぶが、しかし反応が遅い。そしてバケモノはリリィを踏み潰そうとして、
「させん!!」
いきなり蹴っ飛ばされた。
いきなりバケモノを蹴り飛ばしたその姿は、凄くカッコイイパワードスーツだった。緑色を基調としたカラーリングのそのパワードスーツは、両手に大型のグレネードランチャーを構え、両手には小さくて細長いV字のたてみたいなものがあった。更に、背中にソーサーみたいなものを三つ取り付けている。
両手のグレネードランチャーがすばやく連射される。発射されるのは小型のグレネード弾だけど、グレネードだとは思えないスピードで飛んできて、しかも見事に直撃する。連続して爆発してバケモノがバランスを崩した。
思わず驚いて動きを止めると、パワードスーツを着た人がこっちを振り向いた。途端叫ぶ。
「何をしているんだススム君! 早くトドメを!!」
「え!? ぴ、ピリさん!?」
「警部!?」
着てるのピリさんだったの!? ってんなこと言ってる場合じゃない!! 確かにバケモノは動きを止めているからトドメをさすなら今のうちだけど、だからといってどうやってトドメを差せばいいんだよ。
その時、僕は今まで気がつかなかった違和感に気がついた。なんか腕が武器になっているようなそんな感じがする。もしかしたら、腕についている刃みたいなものって動かせるのか?
てなことを考えていると、バケモノは起き上がって体制を低くして走る。ピリさんが咄嗟に迎撃するが、バケモノは横っ飛びでかわすと飛び掛ってきた。これで勝負を決める気か!!
「ススム!!」
「ススムちゃん!!」
リリィとアキの悲鳴が重なる。僕は僕でパニックに陥りかけている脳をギリギリのところで押さえると、咄嗟に腕を突き出すと同時に、妙な感覚に力を込めてみた。同時に反射的に目を伏せる。
「きゃぁああっ!!」
永尾が甲高い声で悲鳴を上げる。一瞬、僕は自分が死んだのかと思った。だが、五体の感覚はあるし、息を止めていたのか妙に苦しい。そして腕にはなんか生生しい感覚が・・・。
「す、ススム君? 大丈夫かい?」
ねんを押すような感じで御田さんが話しかけてきて、その声と同時に僕は目を開けた。んでもって、目を開けたのをちょっぴり後悔するのと同時に、御田さんが声をかけてきた理由がよく分かった。
腕についていた刃は、前にでてまさに腕からでた剣とでも言うべき形になっていた。そして、その切っ先はバケモノの眉間に突き刺さり、血がドクドクと流れ出している。その血は僕の体にもタップリかかっていた。
バケモノは少しの間痙攣していたが、一瞬こっちに視線を向けると、そのあと動きを止めて、そしてそのままになる。どうやら致命傷だったらしい。とりあえず、これで当座の危機は脱した事になる。
「よくやってくれた、ススム君。大丈夫だったかい?」
ピリさんの賞賛の声が聞こえる。周囲からは褒め称えるような声も幾つか上がっている。だけど、僕はスゴイ吐き気に襲われると、急激に意識が遠ざかってしまった為、たくさんの人たちの声にこたえることは出来なかった。
「ちゃぁ・・・。コリャ服が思いっきり汚れちゃうよな・・・」
そんなことをつぶやくと同時、意識がやみに落ちてしまった。
だけど、僕はその時少しだけ違和感を感じていた。死ぬ直前のバケモノの目は、何故か感謝の念がこもっているような気がしたからだ。
続く
あとがき
バケモノとのボス戦は、ピリさんの援護もあって何とか勝利に終わりました。だが、この戦いはまだまだ序の口。ススム君の戦いは、ついに本番に突入するのです。
さあ、ついに次回は女難に加速がつきます!! こうご期待!!(待てコラぁああああああつ!!! byススム
蒼來の感想(?)
展開が速いなあ・・・
でもピリ警部、パワードスーツってどっから出したの?
鈴菜「・・・乗ってた車からじゃあないか?」
ああ、それで狭かったんだねえ>車
観月「と言うか・・・ススム君、気絶しましたけど・・・」
流石に、色々有って疲れたんだろうね。
しかし、次回を見ないと解らんが・・・トラウマになるかなあ?>化け物退治
鈴菜「解んないなあ・・・」
観月「ならないように祈りましょう・・・」
だな・・・今回は戦闘シーンなので感想は此処まで<(_ _)>
鈴菜「サボりだな」
観月「サボりですわ」
・・・すまん


