ZERO START
ミッション3 逃亡4

「・・・私の両親さ、実は両方とも警察の人間で、テロ組織の幹部クラスを偶然逮捕たりして表彰をもらったりしたのよ。日本でいうなら警視総監賞ものね」
「ふうん」
 リリィの両親って結構凄いな。運が良かったにしてもそんな事を出来るだなんてよかったなぁ。
 でも、一体それがどうしたというのだろう。もしそれが理由で刑事になろうって決めたって話だったら、僕に話すほどのものではないと思うなあ。
 だが、続けてリリィはなった言葉は、僕を驚かすのに充分なものだった。
「でも、両親は偶然にもそのテロ組織が幹部を解放するのを条件とした事件に巻き込まれて死亡したわ。その組織の規模では持っているとは思えなかった武器のせいでね」
「え? それって・・・」
「サイレントが売った物だって確定してるわ。なにを言いたいのかはわかってくれたわね」
 そうか。それが、リリィが警察になった理由か・・・。そんな過去があっただなんて・・。
だけど、何でそんな事を言ったんだ? 僕に言うようなこととは思えないし・・・。第一なんでいきなりそんな話を?
「それはわかったけど・・・。一体なんで?」
 途端、いきなりリリィの表情は真っ赤になった。しかも思いっきり驚いてる。一体何があった?
「り、理由は簡単よ。あなたに知ってもらいたかった。・・・他意はないわ」
 ? なにをいきなり慌ててるんだ? 顔も何故か赤いし、・・・いやまさかな。
 そんな事を考えている間に、リリィの顔色は標準に戻っていた。で、その表情は真剣なものになっていた。
「でもどうする? このままだとあの変態仮面の思う壺だし・・・」
「へ、変態仮面って・・・」
 あのロバートのことか? いくらなんでも変態は失礼な気がするけど・・・、ま、いいか。しょせんたかだかテロリストだし、別に気にするほどのことではないな。うん。
 だか確かにリリィの言うとおりだ。このままだとどうしようも無いけど、それではあいつらの思うがままになってしまう。何とかして脱出しないと、だけど一体どうすればいいんだ? このままだと脱出のしようがない。
 リリィも同じ事を考えていたらしい。しばらく黙っていたが、ため息をつくと肩から力を抜いた。そしてそのままベッドに座り込む。スプリングは硬いだろうけど、まあ床に座るよりましだよね。僕も隣に座った。
「え、ちょ、ちょっと待ってよ。べ、別に座る必要は・・・」
「なんだか立ちっぱなしも疲れるしさ、別にいいでしょ?」
「い、いいけど・・・」
 あれ? またリリィの顔が赤くなったぞ? まさか風邪か? いやだからってなんでこうも途切れ途切れに赤くなる必要があるんだ? ああ、暑いからか。脱水症状が起きるっぽいし。
 ・・・ん? 脱水症状・・・?
「・・・そうだ!!」

「そぉりゃっ!!」
「ふぅんっ!!」
「ゴギャァ!?」
 いきなり起き上がった僕たちに驚いた男は、すぐさま放たれたストレートと蹴りに対応できずに、それぞれ鳩尾と股間に直撃する。想像しただけで冷や汗が浮かびそうなところにダメージが入り、そしてノックダウン。グッナイ、良い夢を。
 しかし、コイツいやらしい顔していたな。なんかいやな予感がするけど大丈夫か? まあ、絶賛気絶中だから大丈夫だとは思うけど。
 さて、リリィは男から拳銃と弾丸を抜き、僕は男から服を奪って着替えて終了。後は連行している振りをして外まで出れば、何とか脱走できるはずだ。まあ、コイツが起きたらことだけど。
「さて、コイツがおきないうちに逃げるわよ。外にはジープがあったし、燃料と水を奪って逃げれば何とか連絡できる場所まで逃げれるでしょ」
「そうだね。だけどアキはどうする? このままだと・・・」
「大丈夫よ。変態仮面かむっつり眼帯の命令で、女を連れて来いって言われたとでも言えば誰かがついてきてくれるだろうしね」
 こんどはジーベルか? 確かに的をいてる気がするけど。ま、いいか。やっぱりテロリストだし気にする事無いよな。うん。それに間抜けが多いからこんな作戦でも上手くいきそうだし。
(ま、ザコの宿命だしね)
「「だから誰!?」」
 再びへんな声が聞こえて同時に突っ込んでしまった。まったく、大声ださせないでくれよ。喉が渇いたしなあ。
 それにしても暑い。この湿度のなか脱水症状で倒れた振りをするというこの作戦は上手く言ったけど、だからといって緊張で汗がかいたからなぁ。しかも一時間に一回水を飲めとか言われてたからな。本当に暑い、汗かきすぎてのどが渇いてきた。
「水・・・飲む?」
「そうね、さっさとのんでさっさと行きましょう」
 男が置いていた水を勢いよくのむ。そりゃあもお腰に手を当てて風呂上りに牛乳を飲む勢いですぐに飲み干す。なんか変な味がした気がするけど気をしない。それにしても上手い!! スッキリした〜。
 直後、リリィもノドを鳴らして飲み干した。
「・・・ぷは〜!! やっぱりのどかわいた時にのむ水は最高ね!!」
「リリィ、オヤジくさいよそれは」
 凄い一面をみたぞ。ビックリした〜。
 その時、基地中に警報が響き渡る。僕たちは同時に驚いて周囲を見渡す。まさかばれたのか!? いや、いくらなんでもそんなことは・・・。リリィもまさかそんなことはと思っていたのだろう。不安げな表情で僕を見る。
「ねえ、これってまずく・・・」
 直後、基地内に放送が入る。おいおい、展開が速すぎるぞ。
『緊急事態発生。女二人に男一人が第二営倉から脱走した。急いで追いかけろ。くりかえす・・・』
「「女二人に男一人!?」」
 二人はアキと永尾だとして、もう一人は一体!?

「と、とにかく探すわよ。いや、この混乱に乗じて脱走するわよ!! あの二人は、とてもじゃないけど気にしている暇はないわよ」
「だあもうっ!! いったいなにがどうなってるんだ!?」
 致し方ないか。このままだと僕たちまで捕まってしまう。それに、永尾はともかくアキは父さんと接点がある。まあ殺されはしないだろう。
「もう!! なんでこんな目にあわなきゃいけないのよ!!」
 まったくだ。僕たちは全速力で走り出しだ。まったく、アキには悪いがこの状況下じゃ助けられそうに無い。何とかなんないの・・・か?
「・・・あれ?」
 なんだ? 急に身体が熱くなってきた。「暑い」ではなく「熱い」だ。なんかわからないけど言ったいどうしたんだ? それに、よく見るとリリィの様子もなんだか変だ。顔が赤いというか、吐息を荒いというか。
「なあ、なんだか身体が熱いんだけど・・・」
「ええ・・・、なんか急に・・・」
 ヤバイ、なんだか頭がぼ〜としてきた。そのくせ、なんかむずむずしてきたというか、なにかしたくてたまらないって言うか・・・。あれ? なんかこの感覚、似たようなものがあったような・・・。
 と、その時突然リリィがへたり込んだ。
「ちょ、リリィ!?」
「・・・あれ? なんだか・・・身体が・・・?」
 リリィが泣きそうな顔でこっちを見てくる。しかも、なんか目が潤んでいるというか、何かに耐えているというか・・・、
「ゴメン、ちょっと・・・そ・・・、・・・ぃ・・」
 ん? 一体なんだ? なんか懇願してるみたいだけど聞こえないぞ? とりあえず耳を近づけてみると、リリィは震える手で僕の手を掴みながら耳に口を近づける。
・・・ってなにぃ!? ・・・あれ? なんだか僕も・・・、

 あの兵士めぇええええええええっ!!! よりにもよって水の中にび、び、媚・・・薬を入れてたとは思わなかった・・・。くそ、おかげで僕はリ、リリィとぉ(涙
「許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さ」
 リリィはリリィであの後ずっとこの調子だし、だからといって隣にいる僕は非常に恐怖感を抱いていたりするわけなんだよな。さっきから拳銃を見ては暗い笑みを浮かべたりするわ、後を向いていた兵士をぶん殴って気絶させてはくっくっくとか笑ったりしてるしで怖いの何の。
しかもやばいのは、リリィが処女だったということなんだ。つまり僕は一時の欲に見事に敗北してそんな大切なものを奪ってしまったわけで・・・。
「・・・ちょっと、何震えながらぶつぶつ言ってるのよ。さっさといかないと置いていくわよ」
「は、ハイッ!!」
 もはや当初の作戦なぞ完全に無視してるし、コレでまだつかまるどころか見つかってもいないというのが奇跡だ。ひょっとして、あまりの殺気を第六感で気付いた兵士が無意識のうちに避けてたりしているのだろうか? いや、この殺気からならありうる。もはや発見されたら容赦なく撃ち殺されそうなほどに怖い。いやマジで。
 と、とりあえず謝ったりしておくべきなのだろうか。奪っちゃったわけなんだし、し、しかも恐らく誰でも予想できてるだろうけどな、中に出しちゃったりしてるわけだし・・・。
ええい! 誰もいないしこの際ヤケだ!! いっせ〜の〜・・・
「あ、そうそう」
 と、いきなり出鼻をくじく感じでリリィが振り返ってきた。その表情には暗い笑みなどないし、殺気もすでに消えている。とりあえずコレで恐怖からは解放されそうだ。たすかったぁ。
「今回のことだけど、別にアンタに非は無いから謝らなくていいわよ」
 へ? 本当にいいの? 思わずぽかんとした表情を浮かべた僕は、言葉を失った。その表情を見て、リリィは急におなかを抱えると笑い出した。
「・・・コラ」
「ご、ゴメン・・・。でもさあ、アンタって妙なところで気を使ってくれるわねえ」
「そう?」
 別に自覚は無いけどそうなのか? いやでも中に出しちゃったわけだし子供が出来たらまずいわけだし、問題だらけな気がするけどなあ。
「悪いのはあの馬鹿兵士なんだからアンタは気にしなくてもいいの。ま、子供が出来たら責任とってもらおうかしら?」
 ゲゲ!? そ、それはまずい。そんなことになったらナナセには完璧嫌われるし、つーかそれ以前に僕は全世界から最低の言葉をもらってしまうだろうし・・・。
「・・・冗談だからね? 本気にしないでよね?」
 あ、なんだ。心底ビックリした〜。
 とまあ、そんな事をやっているうちにいつの間にか施設の外に出た僕たちは、一台のジープを発見した。
こっそり中を覗くと、燃料は満タンでレーションと水もすぐに見つかった。しかも幸い発見されていない。コレはチャンスだ。
「リリィ、車の運転・・・できる?」
「任せなさい。コレでもインターポールなんだから車ぐらい運転できるわよ。それより、さっさと乗りなさい。見つかったら事よ」
 それもそうだな。僕がそう思いながら乗り込むと、リリィは周りの様子を確認してからアクセルを踏む。と、恐ろしい加速でジープが発進した。
「て、ちょ、のわぁああああああああああっ!!!」
 危うく落ちそうになったがリリィに気付かれなかったのは誰にもいえそうにない・・・。
 

続く


あとがき
 さて、ついに「逃亡」意味その2、サイレントからの脱走が始まりました。さてどうなる事か。
 そして・・・、次の話でススムの両腕の秘密が明かされます!! さて、改造人間なのかどうなのかはその話までの秘密。皆さんご期待ください!!!

蒼來の感想(?)
激しく同意!!
鈴菜「行き成り何?!」
ああ、本文の(ま、ザコの宿命だしね)の部分のこと。
観月「確かにそうですわね。特に議「わあ、観月STOP!!やばいよそのネタ!!」・・・そうですか?」
はい、その発言は可也やばいと思われます。(A^^ゞ
それはさておき、女難が出てしまいましたね〜。
しかも野外P
(ドカッ)グファァァァァアァァァ!!!
鈴菜「ここでイって良い事ではないぞーーー!!〇( ゜д゜)=旦)´Д`)・∵. 」

観月「お姉様、カタカナにすると余計に・・・・」
鈴菜「す、すまん観月」
観月「いえ。しかしできちゃったら、如何するのですか楽しみですわv」
鈴菜「さりげなく黒いぞ、観月。まあナナセちゃんに刺される事は確かだな。」
ううう、痛いなあ。風邪引きだと言うのに。まあ女難だからなあ。
観月「そうですわね、まあタイトル通りの逃亡がここから始まります。」
鈴菜「果たして2人は逃げ切れるのか?!そんでもってアキ達を救った人物は誰なのか?!・・・予想だと正義の味方を目指す衛「お姉様、そのネタはやばいですし、クロスオーバーになってしまいますわ!!」あ、やばいかこれも(A^^;)」
はい、最近よく読んでる二次創作の主人公ですが・・・来るかもしんない(−−;
観月「では、ススム君の秘密と更なる女難を期待して待ちましょう!!v」
コメント真っ黒じゃあないかーーーー?!!煤i ̄▽ ̄!!