ZERO START
ミッション3 逃亡 5


「あーははははははっ!!! 遅い遅い遅い遅い!! この私に勝とうなどとは百年早いのよおっ!!!!」
「リリィ!? 頼むから落ち着いてってば!!」
 やばい、リリィってばハイになってる。しかもかなり。
 あれから、追撃してきたジープが何台か来たが、リリィは見事な操縦で翻弄。しかも相手を混乱させて事故を起こさせて振り切るなど常識では考えられないような操縦をやってのけた。
 が、いかんせん激しすぎるのにも程がある。操縦は激しくて曲がると同時に僕が頭をぶつけてしまうから痛いわ、ずーっとこんな風に叫び続けるわ、障害物をわざとギリギリのところで避けるわ、とにかく操縦が荒すぎるのだ。いるよな、ハンドル握ると性格かわる奴。
「あーはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」
「てなこと言ってる場合じゃなかった!! 酔うからとーめーてー!!」
 ・・・無理でした

「おっほっほっほっほっほ! あっはっはっはっはっは! ひゃっはっはっはっはっは! うふふふふふ!!!」
「・・・止めてください。吐くぅ〜」
 ヤバイ、三途の川が見えてきたよ。ゴメンね母さん。僕、多分今日そっち行くよ。ああ、死に装束をきた人たちが大勢あっちに見える。あ、手を振ってるやははは大丈夫だよ僕もそろそろそこにいくから心配しなくてもちゃ〜んと行くからね〜ハハハハハ。
 ってアレ? なんか急に浮遊感がし始めた。ああ、何だ。僕もう死ぬのか。まったく僕の命はみじかかったなぁははhっはっははゴゲッ!?
 激痛と同時に頭痛がしてきて目から火花が出てきた。てか遺体―じゃなくて痛い。うっかり誤変換してしまうぐらい脳の機能が抑制されている。よく死んでないな自分。うわあ助かったなぁ。
「ス、ススム!! 前、前!!」
 いきなり正気に戻ったリリィが大声で僕を呼ぶ。どうやら急に我に返るような驚きが急ブレーキを踏ませたのだろう。こんな事ならシートベルトをしておけばよかった。ってジープにシートベルトってあったけって言うか何所だ?
 とりあえず、頭をさすりながら起き上がって前を見ると、そこに一台のジープが止まっていた。どうやら急ブレーキをかけたらしい。そして、そのジープからよく見知った姿がかけてきた。
「ススムちゃん!!」
「アキ!! ・・・てうわっ!!」
 いきなりアキに抱きつかれて、僕はこけそうになるのを必死になってこらえた。なにか言おうかとも思ったけど、アキの泣きそうな顔を見ると何もいえず、しかるにそのままの体制をとらざるをえなかった。
「アキ、怪我・・・無いか?」
「うん・・・うんっ!!」
 まさかここまで心配してくれてたなんて・・・。ちょっと気分いいかも・・・っていかんいかん。僕にはナナセがいるんだ・・・ってリリィと薬のせいとは言えどあんな事をしちゃったんだよなあ。はあ、また欝になってきた。
「・・・ススムちゃん? 大丈夫? なんか泣いてるみたいだけど・・・」
「アキは気にしなくてもいいよ。ああ、気にしなくても・・・」
「あの〜、定光寺君? アキラちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「あの人、定光寺君の知り合いって言ってるんだけど・・・ホント?」
 永尾が指し示す先には一人の男性。よれよれのワイシャツにズボン、しかも髪はボサボサ。ってこの人は!!
「御田さん!?」
「やあ、ススム君。やっと気付いた?」
 このよれよれ具合、まさに御田さんだ!! ・・・こんなのでわかってしまう御田さんっていったい・・・。
 流石にこんな人だとは思っていなかったのか、リリィは呆然としている。無理も無い。とても天才科学者の助手とは思えない風貌をしているんだかそりゃ驚くだろう。・・・別にコレはつかまっていたからではない。いつもの格好だ。
 でも、父さんはもっと凄いんだけどな〜。
「コレが天才科学者の助手・・・?」
「アキラビックリ! 天才科学者の助手がこんな安いシャツ着てるだなんて」
「ハハハ。よく言われるよ」
 リリィと永尾に少々酷いセリフを言われたのにもかかわらず、御田さんは軽くながしてにこやかに笑う。いつものことだけど本当にいい人だ。
 だけどこのひと時々うっかりドジを踏むことがあるからな・・・。まあ実験や研究の時とかは別に大丈夫だけど日常生活でツッコミが必要なことをよく・・・。
「まあ、博士に比べたらこんなの序の口だからね」
「っていきなりよけいな事を言ってるし!! 御田さん、いくら本当のことだからって身内の恥をさらさないでよ!! そりゃ確かにいっつも髪はぼさぼさでフケもよくでて研究に没頭すると一ヶ月ぐらい風呂に入らないこともある典型的な学者タイプな人間だけどさあ!!」
「ススムちゃん。いま一番余計な事を言ってるよ」
 あ、マズった。リリィと永尾が呆然として完璧に動きを止めてるよ・・・。どうしたもんかな。
 そんな事を考えていると、御田さんが真剣な顔を僕に向けているのに気がついた。いったいなんだ?
「ススム君、博士から言付かってる事があるんだ。君の両腕の事なんだけど・・・」
「父さんから? じゃ、やっぱり僕の両腕は機械か何か・・・」
「いや、それならまだマシだったんだけどね・・・」
 御田さんは何故か視線をそらす。その行動に違和感と恐怖心を覚えて、僕はいつの間にか暑さとは違った理由での汗をかいていた。隣で僕を見つめるアキと、少し離れた所から見ているリリィと永尾の視線がいたい。いや、永尾は好奇心のほうが優先されているみたいだからまだマシだけど。
 だけど機械じゃないってどういうことだ? 人工筋肉とか骨とかは確かに父さんの分野じゃないとは思うけど、だからといってそこまで言いにくそうにすることじゃないはず。いったいなんで?
「人工筋肉とかそういうのでもないんですか?」
「いや、僕も博士もそれを使った当初はそうだと思ってたんだ・・・。実は・・・」

すこしの間動きを止めていたが、御田は静かに語りだした。なぜかアキが僕の服の袖を力強く握るが、別に構わない。こうなったらとことんまで聞いてやる。だから気にしている余裕なんて無いんだ。
「十二年ほどまえ、君は精神的ショックが原因で忘れているみたいだけど事故にあってるんだ。その時に君は両手を失っていた。博士はサイボーグ技術で何とかできるだろうと考えていたけど、それだと幼少の君の心に大きな傷が残る。その時、博士の知り合いがある人工筋肉のサンプルを渡してくれて、それを利用して博士は君の今の両腕を作った。だけど、それは人工筋肉じゃなかったんだ」
「ちょっと待った」
 リリィが御田さんの言葉を遮る。彼女はそのまますばやく全員を一通り見てから御田さんに振り返った。
「人工筋肉じゃないってどういうこと? 動物の筋肉とかそういうものじゃないんでしょ?」
「あ、わかった!! もしかして異星人の細胞とか!!」
 永尾が自身マンマンで手を上げるが、すかさずリリィから呆れがこもった視線を向けられる。まったく、この非常時になにを馬鹿な事を・・・。
「よく・・・分かったね」
 ・・・え? それって、どういうことですか御田さん。
「正しくは異星人のじゃなくて、その科学者が試作開発中だった生物兵器の失敗作さ。脳や神経細胞を作り出す事が出来なくて、廃棄された筋肉だったけど、調整する事で人間の四肢の代理となった。だけど、君以外の、その博士の知り合いが試した被験者は全員死亡したんだ」
「どういうこと? 詳しく聞かせなさい」
「その細胞は人間の細胞と拒絶反応を起こして毒物を発生させた。助かったのは一部の、それこそ細胞と共存できたススム君のような人材だけだったらしい。だけど、共存したってことはその毒物のデータがDNAに刻まれたのと同じ事。結果、ススム君の全身の細胞はその影響を受けてパワーアップしているらしい。まあ、博士も人づてに聞いたことだからよく知らないみたいだけど」
 最悪だ。僕はその時本当にそう思い、そして憎んだ。もちろんその腕をつけた父さんじゃない。父さんを騙して自分の研究を進めたその科学者にだ。僕の、いや人のからだを何だと思っているんだ。
 だけど、一つだけ疑問が残る。だったら何で緊急事態にしか怪力が発揮できないんだ? ってか何でもっと早くその兆候が出ない? どうやら疑問に思ったのは僕だけじゃないらしい。特にそういうことに興味がある永尾はすばやく聞いた。
「でも、何でそのバカ力がいっつも出ないの? 変身しないと力が出ないとかそんなんじゃないでしょ?」
「いや、もともと兵器として作られる予定だったから、コントロール装置を神経に取り付けて、何らかの信号を出さないと本当の力は発揮できないようになっているんらしいんだよ。恐らく、ススム君の場合は緊急事態で火事場のバカ力みたいな物じゃないかな? 本当ならもっと戦闘能力があってもおかしくないらしいから」
 アレより凄い力があるのか・・・。いったい僕はどうなってしまうんだろう・・・。ん? まてよもしかして父さんがさらわれたのって・・・。
「まさか、父さんがさらわれたのってその神経に取り付ける機械の開発を手伝わせる為じゃないの!?」
「・・・そうらしい。どうやら彼らはその細胞を受け入れられる人間を見つける方法を発見したらしくて、その細胞を取り込んだ人間を何人か用意しているらしいんだ。そしてその知り合いの博士はその小型化に博士を利用しようとしているらしい。だから僕は博士からあるものをもらってきたんだ・・・」
「ちょっとタンマ。アキラ一つだけ聞きたいことがあるんだけどいい?」
 なんだよアキラ。御田さんが何か取り出そうとしてるとときに。
「あのさあ。その科学者は間違いなくサイレントのひとでしょ? だったらススム君を捕まえようとしてくるんじゃ・・・」
「いや、その心配は無い」
 突如声とともに足音がした。しかも六つ。
 あわてて振り返った僕たちの目に映ったのは、黒い戦闘服に身を包んだ男達と、そしてあの時のゴートとかいったサイボーグ。アキも思い出したらしく、ゴートの方に指を向けた後、一緒にいる五人の男達を見渡して叫んだ。
「ススムちゃん。もしかしてサイボーグ五人ってこの人たちじゃない!? しかもあの時のまで・・・」
「どうやらそうみたいね。一対どういうつもり? 捕まえるためにコレだけの人数を用意したわけじゃないみたいだけど」
 拳銃を向けながらのリリィの声に、ゴートは顔をゆがめると大声で笑った。
「ガハハハハ。その通り、そいつの姉貴がつかまったんでな。我々の敵となりかねん存在は抹殺しろとのお達しがあったんだ。まあ、女は少しのあいだ長生きさせてやるぜ。いいものが手に入ったから、天国をみせてやれるしなぁ?」
「姉さんが!? しかもいいものって・・・」
 やっぱりあの薬だよな。クソッ! このままだとアキは愚か、僕とほとんど接点のないアキラや、本当なら巻き込まれなくてすんだであろうリリィまで巻き添えにしてしまう。どうすれば・・・。
 その時、御田さんがポケットから何かを取り出すと、僕の腕を掴んでいきなり何かのスイッチを入れる。直後、僕の脳に痛みが走るが、同時にからだの動きがスムーズになる違和感を覚えた。
「コレは・・・」
「博士はかなり前から真実に気がついていたんだ! それは君の細胞データを元にして博士がつくった変身キット。神経に繋がなくても電気信号で脳に直接戦闘能力の発揮を指示出来るしろものだ!!」
「バカヤロウ!! とっとと止めろ!!」
 ゴートが叫び、男達が勢いよく駆け出す。どれも常人を越えるスピードでこのままだと機能を使うのが間に合わない。だが、リリィがすばやくジープを打ち抜いた、そしてジープは爆発し、その爆風で男達の動きが乱れる。
「今よ!!」
「サンキュー!! とりあえず・・・ファイティングモード、セェエエット!!」
 突発で思いついた掛け声と共にスイッチを押す。途端、急に力が強くなる感覚と共に、からだが光に包まれた。
 何が起こるかはまだわからない。だけど、このまま負けるわけには行かない。とにかく反撃あるのみだ!!

続く
 


あとがき
 ススム君の腕の秘密は驚きましたか!? 
 さて、次回からは対決編が始まります。六対一プラスαの戦いはここからが本番、こうご期待!! そしてススム君の戦闘能力の詳細は今後をまて!!

蒼來の感想(?)
・・・・・・変身!!Vスリャ・・・グファァァァァァ!!!
鈴菜「ネタの使い回しするなー!!! θ\( ・o・)スリッパアタック!!! ( ・o・)_θ(゚_。)バキ」(MISSION2-2の「蒼來の感想(?)」を参照)
観月「ススム君は改造人間ではないようですよ?どちらかと言うとスクライドのようですわ。」
・・・私もスクライドを詳しく知らんが、そうかも。まあ火事場のくそ力を思い出しますが。
鈴菜「キン○マンネタだな。歳がばれるぞ?」
ほっとけ!!しかし、リツコさんという名前の人は危ない目に合うのが仕様なのか?
観月「どういうことでしょう?」
ああ、知ってる人が多くないと思うが・・・EVAのリツコさんは危ない目・・・通り越して死んじゃったし。
地獄先生ぬ〜べ〜の同僚のリツコ先生も、危ない目に合ってる。名前はうろ覚えだが。
もう一人リツコという名前で、危ない目に合ってるキャラいたはずなのだが・・・思い出せん。
鈴菜「偶然じゃあないのか?」
そうかも知れん
観月「それでは次回のススム君の変身を、楽しみにして待ってましょう!!」
うむ!!しかし、
御飯がススム君の着ぐる身だったら如何しよう・・・
二人「「ネタの使い回しするなー(しないでください)!!」」