ZERO START
ミッション3 逃亡2
リリィが息を切らせながら走っていく。僕はそれを物陰からみて、ほっと息をついた。額にうかんだ汗をぬぐう。
「なんとか撒いたか・・・」
御田さんの家から出た直後、僕は最高速度でリリィから距離をとった。流石にスパイがいると分かっている状況下でリリィと父さんを合わせるわけにはいかない。うかつに警察と父さんを接触させたらスパイに付け入る隙をあたえることになるからだ。それに、リリィにこれ以上迷惑をかけるわけにもいかないしね。
「隙をみて逃げ出したとでも言えばなんとかなるかな?」
素人考えとは言えど、それだけいえば僕が怒られるだけで済むだろう。リリィには借りもあるし、それぐらいはしておかないとね?
「・・・とりあえず三駅ぐらい離れた所で電車に乗るべきだよなぁ」
「・・・なにやってるのススム君?」
!!!??!?!!??!!?!?!!!!?!? そ、その声はぁっ!?
「な、な、ナナセぇ!?」
「ど、どうしたの? すごく驚いてたみたいだけど・・・」
「短気な怒らせると怖い女性に追われて別荘に逃げようとしている最中」
とりあえず下手なうそで誤魔化した。本当の事をいってナナセを巻き込むのは非常にまずい。
とりあえず、ナナセはこのことを半信半疑ながらも信じてくれたようだ。首をひねりながらも納得してくれた。
「・・・と、とりあえずそういうことだから僕はこれで・・・」
「ススム君、一ついい?」
「・・・な、何?」
「財布もってるの? ポケットぺったんこだけど・・・」
・・・あ、財布を持ってくるの忘れてた・・・。
結局、僕はナナセにお金を借りて別荘まで行く事にした。タクシーを使いたかったけど、お金を借りている状況下で大金を使用するわけにはいかない。リリィに先を越されている可能性もあるけど、まあリリィはあそこの場所を知らないだろうから安心できるかな?
まあそこまではいい。とりあえず別荘まで行って父さんと話しをして、僕の腕の秘密について聞き出せばおしまいだ。だけど・・・。
「え・・・っと、ナナセ?」
「え? どうしたのススム君?」
なんでナナセがついてきてるんだよ! いや、こっちとしてもうかつに勘付かれると心配されるだろうから下手に本当の事を言うわけにはいえないし・・・。くっそ〜。どうしろってんだ!!
いかんいかん。落ち着くんだ僕よ。とりあえず、駅についてからナナセを帰らせれば済む事だ。どうやって返すかを今のうちに考えておけば何とかなる。うん、それでいこう。はっはっは。僕ってあったまいい〜。
「ススム君?」
「え? あ、ごめん。別に何でもないよ」
とりあえず軽く笑ってそう答える。今必要なのは明るくいる事だ。下手に心配させるわけにはいかん。うん、そうだ、心配させちゃいけない・・・。
「ススム君。うそが下手ね」
・・・げ。ばれてる? いや落ち着け。こういうと気にあっさりと白状して、実はカマかけてましたってオチはよくある。ここは冷静に行こう。うん。
「三舟さんが言ってたよ。ススム君、サイレントに狙われているんでしょ?」
って完全にばれてる!? つかアキ、お前少しは口チャックをしてくれよ。
「・・・うん。でもさあ、しってたなら何であっさりとお金貸してくれたの? そして何でついてきたの?」
「うん。ススム君だったら走ってでも行きそうな気がしたから」
うわ、よく分かったなぁ。確かに走って以降かとは考えたけど流石に即座に却下したんだけどね。でも、だからってついてくる理由にはならないと思うけど・・・。
「ついてきたのは、ススム君が帰ってこないんじゃないかと思って・・・」
・・・・・・・・・・・・。
なるほど・・・ね。確かにそう思われても仕方が無いか。
見れば、ナナセは泣きそうになってるのを必至にこらえてるみたいだった。両手は握り締めているあまり白くなってるし、肩もすこし震えている。凄く心配してるんだろう。
だけど・・・、
「・・・大丈夫だよ。僕は必ず戻ってくる」
そっと、そう、僕はそっとナナセを抱きしめた。ナナセはいきなり抱きしめられて驚いていたけど、タガが外れたのか声も出さずに静かに泣き出した。僕は回りに誰もいないことを確認すると、ナナセの顔を僕のシャツに当てるようにしてみた。こういう時ってすがりつかせる何かが必要な気がしたからだ。
そしてナナセもやっぱり僕のシャツを掴むとそのまま顔をうずめるようにして泣き続けた。僕はナナセが落ち着くまで、何も言わずにその頭を撫でた。
三十分ぐらいしてから、ナナセは泣き止んで静かに顔を上げた。目は少し赤くなっていたけど、スッキリしたのか気が楽になってるような気がする。僕は、そんなナナセのほおに手を当てて、僕の方に向きなおさせる。
「必ずもどってくるからさ。だから・・・、安心して待っててくれ。ね?」
「・・・うん、・・・約束だからね?」
静かに僕たちは見詰め合い、そして唇を重ね合わせる。僕たちはほぼ同時に抱きしめあった。このまま時間が止まってもいいんじゃないかと思っていたけど・・・。
ガヤガヤガヤガヤ。
「「・・・あ」」
・・・あれ? なんでこんなに人が集まってるんだよオイ!!
幸いすでに目的地に付いていたので、僕たちは慌てて電車から降りた。
「・・・さて、ナナセはちゃんと帰りの電車に乗せたし、あとは父さんがいるかどうか確認を取るだけだ」
とにかくさっさと行ってさっさと帰ろう。すでに時刻は三時半。今から確認して帰れば五時半には何とか帰れるはずだ。
でも迷わずいけるだろうか。ここにはあまり来た事が無いからなぁ・・・。いや、迷っていても仕方が無い! ここは行くだけ行くか。
「・・・あれ? ススムちゃんどうしたの?」
「あ、君ってたしか定光寺くんだったっけ?」
・・・てちょっと待てい!! 声に反応してみれば、そこにいたのはアキに永尾・・・だったな、うん。ってそんなことはどうでもいい!! とりあえずアキをひっつかんで少し永尾から離れると、ぼくは小声で、
「な、アキぃ!? この状況下でなんで出てきてるんだよ!! つ〜か一体なんでこんな所にいるんだ!? ここ町からかなり離れてるはずなんだけど!? 普通に考えてたった二人で来るようなところじゃないだろ!?」
と一気にいった。アキはちょっと面食らっていたみたいだが、すぐに正気に戻ると、おなじく小声で答えてきた。
「い、いやそのぉ・・・、ホラ、知られたらいろいろ問題がおきそうだったからあまり強く断れなくて・・・、幽霊屋敷をみに行こうって誘われてちゃって・・・」
「わがままな性格なんだなぁ、永尾って」
天は二物を与えず、とはよく言ったものだ。グラマーになった代わりにわがままになったらしい。まったく、もう少し考えてもらいたいよ。ってアキ、ナナセに言ってなかったか? オイ。
「・・・で? 幽霊屋敷ってなに?」
「いや、なんでも人が居ないはずの別荘に明かりがともっているとか、見るからに怪しい男がバイクにのって出て行ったとか・・・」
「なんだよそれは・・・」
などといいながらも、僕は内心でほくそえんでいた。バイクにのった男は、もしかしたら僕を助けてくれたあの人かも知れない。だとすればその幽霊屋敷に父さんがいる可能性は高い。ついてるぞ僕は、
僕が心の中でガッツポーズをとっていると、後ろから永尾が近づいていた。何故か彼女は僕の顔をまじまじと見つめると、首をかしげたまま尋ねてきた。
「・・・定光寺くん? 何か知ってるみたいに見えるんだけど・・・」
す、鋭い!!
まずいな・・・。あまり他人を巻き込みたくは無いんだけどこういうタイプは押しが強いから無理矢理聞きだそうとしてきそうなんだからな、下手をすると口が滑ってしまうかもしれない。
アキの方を見てみたけど、我冠せずと言った感じでそっぽを向いている。ま、まずい・・・。どうしたものか・・・。
と、その時、後ろから足音がした。地面を踏みつけるといった感じの、いかにも怒り心頭な雰囲気がするものだ。それは殺気に満ち、死を運ぶ風をイメージさせる。・・・ってまさか!?
「ようやく見つけたわよぉ・・・? ススム」
げ、この声は・・・、
「り、リリィ・・・さん?」
「あの人誰?」
後ろから永尾が尋ねてくるが、正直精神的にそんなことに答える余裕はまったく無い。リリィの目は本気と書いてマジと読むほどの色に染まっていた。しかも怒りの色とともに・・・。
「さあて、どうやってお仕置きしてやろうかしらぁ?」
懐に手を突っ込みながら拳銃を抜く。全員同時に硬直した。幸いにも、僕は緊急事態になれているのですぐに正気になった。
「に、逃げろぉおおおおっ!!!」
「は、はい!!」
「きゃぁああああっ!!」
僕たちは散り散りに逃げていった。
「どう・・・そろそろ・・・終わりにしない・・・?」
「そうね・・・これじゃあ・・・終わらないしね・・・」
全速力で走る事十分。僕とリリィはすでに死に掛けていると言っても過言ではないぐらい息を切らしていた。とりあえずもう追いかけあわないことを了承した後、僕たちはへたり込んで息を整えた。
「でも・・・、よくここが・・・わかったね・・・」
「アンタの・・・家にいって、住所録とか・・・いろいろ調べたら・・・住所が乗ってたのよ。秋山さんが・・・来てたから、明日辺りにはインターポールが・・・こっち来ると・・・おもうわよ?」
なんだ。だったら僕が焦る必要ななかったな。でも、父さんがスパイの名前を知っているかも知れないし、ついでに聞いておくべきかなあ・・・。いや、どっちにしてもここまで来たんだから行ったほうがいいかな?
「・・・って、そういえばアキの事忘れてた!」
「へ? アンタ以外に誰かいたっけ?」
「気付いてなかったの!?」
ヤバイ、やばすぎる。今頃警察に連絡しているかも知れない。いや、間違いなくしている。・・・という事は・・・。
「ちょっとまずいよ。このままだと君クビに・・・」
「お、追わないとまずい?」
「まずいよ!!」
拳銃もった女の人がいきなり友達を追いかけている。どう考えたって警察が来る事態だ。しかも鬼のような形相で迫っていたから危険度は上昇。誰でも連絡するに決まっている。
「とにかく追いかけて事情を説明しないと・・・」
「でもどこにいったかわかるの?」
しまった。それはマズイ。
どうするどうする? 僕のせいで(半分自業自得だけど)リリィをクビにするわけにはいかないし・・・。
と、そのとき、
「きゃぁああああっ!!」
悲鳴!? いや何所から聞こえてきたんだ!? いやそれ以前にあの声は・・・。
「アキ!?」
マズイ、助けなきゃ!!
僕は一目散に駆け出した。
「ちょっと待ちなさいよ!! うかつに動いたら危険よ!!」
「だからってアキをほっとくわけには・・・!!」
いいながら、僕は悲鳴がしたところにたどり着いた。ってここは・・・
「なんで僕の別荘で悲鳴が上がるんだよ!!」
「何一人で驚いてるのよ!! とりあえず下がってなさい」
リリィが前に出ながら拳銃を構えた。でも彼女のノーコンは分かってるからな・・・。
「脅しぐらいにはなるわよ・・・」
げ、また聞こえてたのか? いや今度こそ何も口にしてないはずだ。うん大丈夫。と言うことは・・・。
「自覚・・・あるんだ」
「うっさわねえ。緊張感が薄れるから黙ってなさい」
あ、顔が赤い。
別荘の中は真っ暗だった。どうやら電気はついていないようだ。しかしアキたちは何所に消えた? あるとすれば・・・。
「とりあえず一回から探すべきだよね」
「そうね。離れちゃダメよ」
僕たちは一塊になって部屋を一つずつ見て回った。だけど何所を見てもアキどころか永尾の姿も無い。いったい何所に消えた? つ〜か悲鳴が上がってから一言も言ってないだなんておかしくないか? まさか・・・。
「! まって、誰かいるわよ」
リリィの声に、僕は咄嗟に部屋の中を見渡した。何所にもいないように見えるが、よく見ると誰かが倒れてるような・・・。
「アキ!」
「馬鹿! うかつに動かない」
リリィが静止の声を上げるが、その声に気を使っている余裕は僕には無かった。アキは大丈夫なのか!?
だけど、ふと後から物音がした。
「ウェルカ〜ム。ってな」
「!?」
誰だ!? だが、僕のその疑問は急に後頭部から走った 衝撃で消えていった。・・・。
あとがき
ハイ、ススム君が捕まってしまいました〜(オイ! ちなみに、「逃亡」の一番最初の意味はリリィを撒いて父を探すと言う意味です。結局逃げ切れませんでしたが(笑
急展開の次回は一体どうなる!? さあ皆さんお楽しみに〜。
蒼來の感想(?)
ススム君女性関係を清さ愚fb期yる7jbgv;ぷjtr:あp
鈴菜「全然違うだろうが!!」(手に血濡れのボーリング玉所持)
観月「じゃなくて女性関係のおさらいですわね」
鈴菜「観月も違う〜ススム君が敵のHGもどきにつかまったお話だろう?」
・・・なんだそのHGもどきつうのは・・・最後の「ウェルカ〜ム。ってな」で勝手に判断したな(−−;
観月「でもナナセさんとアキさんが、ここで出てくるとは思いませんでしたわ」
同感だ、でもそれぞれ役目があったしな。
鈴菜「役目というと・・・ナナセさんが交通費を出すのと彼女としての不安をぶつける役」
観月「アキさんはススム君を罠に嵌める役ですか?」
・・・結果的にそうだが・・・もっと他に言いようがないのか?
鈴菜「蒼來が思いつかないだけだろ」
観月「そうですわね」
・・・_| ̄|○
・・・では、皆さん次回を楽しみに・・・シ○ッ○ーに捕まったススム君の運命は?!でお会いしましょう ̄ー ̄)ノ)))))))) ブンブン
鈴菜「勝手に終わらすなー!!しかもまたそのネタで嘘予告立てるなー!!そんで逃げるなー!!」
観月「皆さんは感想を煉獄さん宛てに出してくださいね。煉獄さんはメールではなく、このHPの掲示板に書いて欲しいとの希望ですので<(_ _)>」


