ZERO START
ミッション3 逃亡1

 ホテル襲撃があった次の日。僕たちは別々に護衛がつけられる事になった。とりあえず僕は警察署に避難して、姉さんは大学の方に行くことになった。何でも父さんのコンピューターにプロテクトがかかっていて、それを解くのを手伝うそうだ。
 しかし、こんな事をしていていいのだろうか? 父さんがそんな所に自分の逃げ場を教えるようなまねをするとは思えないし、警察も、どうやら僕たちを見張っていれば父さんの方が来てくれると思っているかも知れないところがある。
 だけど、その可能性はまったくないと思う。なぜなら、あの男の人は父さんが用意した護衛だと思うからだ。父さんの技術はサイボーグに生かせば恐らくとてつもない事になる。それにあの男の人には見覚えがあった。何所であったかは思いだけ無いけれども、それでも強力な味方だと言うことはよく分かる。だから、僕は父さんは絶対僕たちの前に姿を現さないだろう。
 さて、どうしたら父さんの場所が分かるかな? あの男の人と警察が連携をとれば、サイレントも何とかできると思うんだけど・・・。

「どうしたもんかな〜」
 僕は警察から与えられた部屋で大きく伸びをした。お世辞にも豪華ではないけど、家には和室は無いから結構新鮮だ。それに警察の本部という事だからサイレントが来たらすぐ分かる。逃げるにしても守るにしても、かなり安全な部類に入るだろう。
「・・・どうしたって、一体なにが?」
 そう答えたのはリリィ。年齢が近いという事で、リリィは僕の監視役みたいな事をしているみたいだ。そして、警察署の中とは言えど僕がのんびりとしていられるのは彼女のおかげだ。
「別に何でもないよ。それより、なんで僕の腕のこといわなかったの?」
 僕は話しをそらす意味でも一度聞いてみたかったことを聞いてみた。
 僕の腕はハッキリ言って凶器だと思う。一撃でサイボーグにダメージを与え、刀や拳銃にも耐えられる。姉さんにはそれとなく聞いてみたけど何も知らないみたいだし、間違いなくえたいの知れないものだろう。
 それなのに、一度も警察が話をしてこないのは、リリィが黙っていてくれているだけだとしか思えない。だけどいったいなんで? 僕はそれが疑問になっていて離れそうに無かった。
「別に、ただ・・・言ったらやばい事になると思っただけ」
 リリィはそう答えるとそっぽを向いた。あれ? 顔が赤い。もしかして照れてるのか?
「あ・・・ありがと」
「気にしなくてもいいわよ。インターポールとしては失格だもの」
「いや、そんな事無いって」
「あるわよ。警部から何かあったらすぐに報告するように言われていたのよ? それなのにアンタの腕の事を言わなかったのは間違いなく命令違反よ。ばれたらクビね」
 ゲ、それってまずいんじゃないのか? 僕のせいでクビになるだなんて・・・。
「そ、そんな危険を冒してまでかばってくれたの?」
「・・・結局、拳銃持ってたのに役に立たなかったもの」
 そういうと、リリィは今度はうつむいた。確かに、まったく当たっていなかったけど・・・。
「実戦なんてそんなもんじゃないのかな? ヘタしたら死ぬかも知れないんだからさ」
「だけど練習じゃ的のど真ん中に命中するのよ? しかも十発連続で」
「え!? マジ!?」
 どんな腕持ってるんだよ!! ・・・確かに、それで外れるのはかなり凄いな。それにあんなはずし方もある意味凄いけど。
「そんなミスして死ぬかも知れなかったのに、あんたのおかげで助かったもの。だから、借りを返しただけ」
 ・・・そうだったのか。そういえばそうだよな。あの状況下じゃ、普通まず助からなかったからな。だけど、それでもそこまでしてくれるだなんて・・・。
 僕は、リリィを凄いと思っている事に気付いた。

 さて、どうやってリリィの目をかいくぐるものか。
 父さんが何か残してるとしたら可能性があるのは三つ。一つは大学。だけど命がかかってると気に一番狙われるような場所に残すはずが無い。僕だって知らなかったしね。二つ目は家の日記。まあ、その可能性も低いとは思うけどね。警察やサイレントも見てるだろうし。
最後の一つは御田さんの家。父さんが一番信頼している助手で、なんでもそろばん、書道、柔道合わせて六段あるとか言っていた人だ。結構面白い所もあるし、科学者とは思えないほどオカルトや超能力の類に詳しくて僕は好きだ。以前肝試しの時にツトムにいった知り合いとはこの人の事だ。
警察の話じゃ彼も行方不明と言うことだけど、あの人のお母さんは昔合気道の大会で準優勝したらしい人で、しかもしっかりしている人間だ。秘密を喋るなら彼ぐらいだろう。
「・・・よし、御田さんの家に行くべきだよな」
「何所に行くって?」
 あ、リリィがいたの忘れてた・・・・・・。
「い、いや、トイレだよトイレ」
 馬鹿! そんなにどもってたらばれるに決まってるだろうが!! 僕の予想はピッタリ当たっていた。リリィはアホかコイツ、といっためで僕を見ると、額に手を当ててため息をついた。
「あんたねえ、考えてるときに声が出るクセがあるわよ。さっきからまる聞こえよ」
「ゲゲェ!!」
 最悪だ。僕ってそんな馬鹿だったのか?
 リリィが「ま、私は聴力と視力には自身があるからあまり気にしなくてもいいけど?」となぜか笑いながら僕を見てくるが、僕はそんな事を気にしている暇はない。コレじゃあ作戦は失敗か・・・。
「さ、さっさといくわよ」
 へ? いま彼女なんて言った? いくわよ?
「ピリ警部がこっちに来るのは三時間後だし、話し聞くだけなら連れてってもいいわよ。ただし、このことは他言無用で私がアンタの話しをきいて一人で行って来たって事にしておく事。いいわね?」

「で、ここが御田さんの家」
「・・・ふ〜ん」
 タクシーで移動して三十分。僕たちは御田さんの家に着いた。とりあえずおばさんを探さないと・・・。
「ススム君? こんな所で何やってるの?」
 あ、いた。
「おばさん。もしかして事件の事を知ってるの?」
「え、ええ。ホテルにいたのに襲われたってテレビで・・・。それに警察の方がこっちに来ていたし・・・」
「ちょっとよろしいですか? ひとつ聞きたいことがあるんですけど・・・」
 リリィが前に出てきておばさんに話しかけてきた。いったい何のつもりだろうか? 警戒させると話が聞き出せないと思うけど・・・。
「ホテルのニュースはもちろんされましたが、それでも誰を狙ったかについては触れてませんし、サイレントの仕業とも出てないはずです。いったいどうして分かったんですか?」
 確かに、それが本当だったら気になるな。それにちょっと僕も気になる事があるし・・・。
「それに、あなたは息子さんの事をあまり心配してるようには思えないのですが・・・。まさか居場所を知ってるわけじゃないですよね」
 あ、流石はインターポール。分かってたみたいだ。だけどおばさん警戒してるぞ? 大丈夫かな?
「・・・あなたは?」
「私立探偵です。エドガー・アラン・ポーの子孫です」
「・・・マジ(小声で)」
「なんか本当の事をいったら警戒されると思ったからうそいっただけよ(同じく小声で)」
「・・・ちょっと家の中で話しましょう」
 おばさんは僕たちを家に入れると、お茶を出してから静かに僕たちをみた。
「・・・このことは警察の方には内緒にして頂戴」
・・・おばさん。悪いけどここに警察のかたがいるよ。とりあえず視線をかわすとリリィは黙っていてくれると思える視線を返してきたので、信用する事にしよう。
「で、お父さんは何所にいるの?」
「二週間前、息子から電話があったのよ。・・・盗聴されるといけないからって携帯で」
 こりゃ信憑性があるな。
「それで、あなたの家の別荘にいるって」
「よりにもよって五川湖の別荘!? 確かにあそこなら最近行ってないしあまり怪しまれそうにないけど・・・」
「どんな所なの?」
「父さんの研究施設兼別荘。たまにいったことがあるぐらいだよ。でも、なんで警察に連絡しちゃいけないの?」
「息子の話だと、警察の中にスパイがいるみたいなのよ」
 リリィが驚くのが分かった。僕だって驚きだ。もしそれが本当なら、そいつが暗殺者をホテルに入れる手引きをしたかも知れない。つまり僕が見てきた中にスパイがいるかもしれないってことだ。
「とんでもない事になったわね・・・」
 小さい声でリリィが呆然とつぶやくのを僕は聞いた。当然だろう。今までしてきた事が全てサイレントに筒抜けなのかも知れないと思うと、僕だって頭が痛くなる。誰だって落ち込むはずだ。
 だけど、リリィには悪いが僕のすることは決まっていた。
「・・・とりあえず、行ってみるしかないか」
 そう、自分の腕の事も謎の青年の事も、全ては父さんに聞かなければいけない。殺されかけたリリィがスパイなはずがないし、今からいけば誰にも気付かれずに父さんと接触できるはずだ。
 だけど、この考え方はちょっと甘かったみたいだった・・・。
続く


あとがき
 文字の大きさをすこし小さめにしてみましたがいかがでしょうか?
 それはともかく、刺客編がちょっと短めだったのに対して、こっちの逃亡編はちょっと長いです。題名の逃亡も、二重の意味が込められていますので楽しみにしてください。


蒼來の感想(?)
・・・ふむ、ススム君また女性を落としました〜!!
鈴菜「これで何人目だろうな?」
観月「・・・片手は越えてるかも知れませんね」

もう増えないらしいけど・・・増えるような気がするなあw
鈴菜「それより、リリィさんの射撃精度は反則だな」
うむ、ゴ○ゴ○3やシ○ィ○ン○ー並だな。
いや、女性だからグ○ス○ー○かな?
観月「また、一部の人にしか解らないネタを・・・」
いいじゃん、漫画好きなんだから。
鈴菜「読まれた方々は感想を掲示板によろしく〜」
観月「そうですわね、今まで1つもないですし」

まあ、何はともあれ新章スタートの逃亡編ですから・・・お願いします〜(´Д⊂)
鈴菜「ところで、何処へ逃げるんだろうな?それとも敵をまきながら父親を探すのかな?」
観月「まあ、父を尋ねて三千里ですわね」

・・・観月さん、それはやばいんじゃあないか?(−−;