ZERO START
ミッション2 刺客 3
くそっ、一体なんなんだ。
僕は本当にそう思った。肝試しに言ったかと思ったらいきなりテロリストに狙われて、逃げ込んだ先では命を狙われ、挙句の果てに謎のライダー乱入だと!? 冗談じゃないよ!!
「ちっくしょ〜! 何でこんな目にあわなきゃいけないんだ!!」
なんて叫んでみた所で、状況が変わるわけも無い。しかし、謎のサイボーグと謎の助っ人はそんなものを無視して激戦を始めた。
・・・って何だアレは。目で追えないんですけど。
パンチとキックを連続で繰り出しながら、しかも移動しているのはわかる。それは分かる。だけどあのスピードは少々異常だ。プロバスケットボール選手並のスピードで移動しているのに、それに連続攻撃まで繰り出してるんだから恐ろしい。腕の動きだけ、移動する動きだけなら何とか見れるとは思うけど、同時に見るだなんて僕の動体視力では絶対出来なかった。
「どんな戦いだよ・・・」
「そうね・・・」
・・・あれ? 今の声姉さんのじゃないぞ。声のしたほうを見てみると、赤い髪を短くまとめた、いかにも性格きつそうな目をした少女が隣にいた。
「ピリさん。誰ですかこの女の子」
「失礼ね! 私はこれでも二十一歳よ二十一歳!!」
「うそっ!? 声からして年下かと・・・」
「このクソガキ・・・っ」
やばい、口が滑った。もし彼女が二十一歳だとしたら飛び級で大学卒業したインターポールの刑事か何かか!? だとすると格闘技とかの心得もあるだろうし、ヘタしたらボコられるか!?
だが、流石に護衛対象を殴り飛ばす気は無かったみたいだ。彼女は何とかこらえると、そっぽを向いてしまった。運がよかったのかな?
「で、ピリさん。誰ですか、彼女は」
とりあえず言葉を変えておこう。今度怒らせたら本当に殴り飛ばされかねない。
「あ、ああ。彼女はリリィ・シルフィールド、私の部下の一人だよ。少々気が強い所があって気難しいところがあるから紹介しなかったんだが・・・」
紹介しなくてありがとう御座いました。つ〜かよくインターポールに入れたなあの性格で。
「今、なんかむかつく事言わなかった?」
「いえ何も」
口に出てた? 最近飛んでもないことが連続で起きすぎていたからなぁ、ちょっと脳の機能が停止してるかも。頑張れ僕の脳みそ、もう少しの辛抱だからな?
「と、とにかく今のうちに避難しないと・・・」
姉さんが思い出したように避難の言葉を口にした。そうだった、こんなバケモノたちが戦っている場所でのん気に突っ立てる場合じゃなかった。ヘタしたら瓦礫が崩れてくるかも・・・。
「・・・マズイ!! 離れろ!!」
いきなり、ピリさんが僕を突き飛ばすと、姉さんを押し倒した。
その直後、シャンデリアがついさっきまで僕達がいたところに落ちてきた。うわ危ない。そんな事を思っていたら、後頭部を思いっきりぶつけた。
「ちょっと大丈夫? 思いっきり頭ぶつけたみたいだけど・・・」
「だ、大丈夫・・・」
心配したのか唖然としながらもとりあえず聞いておこうとしたのか判別のつかない様子で声をかけてきたリリィ。とりあえずそう答えたけど、実は全然大丈夫じゃなかったりする。ちょっと意識が遠のいたよ。
「と、とにかく逃げよう。このままだと巻き添えを食って死ぬから」
「そ、そうね。それ以前にホテルは大丈夫なのかしら」
「・・・とりあえず、ここまでくれば大丈夫ね。それよりも、あんた本当に男ぉ? そんなにへばっちゃって情けないわねえ・・・」
うるさいなあ。こっちはただでさえ心臓に悪い出来事を何度もしてるんだから無理言うなよ。
リリィの毒のある言葉に、僕は本気でこう思った。
ホテルからかなり離れた所に僕たちはいた。姉さんたちとははぐれたけど、それでもエリィが通信機でピリさんと話していたからとりあえずは無事みたいだ。
「・・・で、どうする? あの二人はあのまま暴れさせておくしかないとは思うけど、インターポールのメンツってのは台無しだね」
「うるさいわね。つか私は年上なんだから敬語で話しなさい。それから一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」
なんだ? リリィはなぜか真剣な表情で僕の方に視線を向けてきた。何か悪い事でもしたか? いや、確かに敬語を使う気にはならないけど・・・。
「・・・あの男との面識は無いの?」
「へ?」
「だから、いまサイボーグと一対一で戦っている男に心当たりは無いのかって聞いてるのよ!!」
なんでそんな事を聞くんだ? そんな人を知っていたら、真っ先に救援を求めてるに決まってるだろうに。
「なんでそんなこと聞くの? 知ってるわけ無いじゃないか」
僕ははっきりとそういうと、リリィは盛大なため息をついた。緊張感が一気にゆるんだらしい。そして、リリィは人差し指をこっちにビシッ! とつきつけた。
「あのねえ、あの男は明らかにアンタの名前を言ってたのよ? あんたの事を知っているとしか考えられないじゃないの!!」
「あ」
確かにそうだ。でも何で僕の名前をしってたんだ?
「・・・もしかして、今更気付いた?」
「・・・うん」
僕とリリィは同時に見るとため息をついた。先が思いやられるよコレは・・・。
だが、その時銃声が響いた。
「くっくっく。こっちにきてもらおうか?」
慌てて同時に横を見ると、そこに居たのは二人組みの男。
「あ、昨日のザコ敵」
「ザコ?」
「「誰がザコだ!!」」
あなた方だよ。どう考えてもただの少年少女にぶちのめされた人間をザコ以外に認識できるか? オイ。
(だから、それがザコ敵の宿命だってば)
「「アンタ誰!?」」
あ、こんどはリリィも反応した。一種のテレパシーか何かか?
「・・・てめえら、だれに話しかけてるんだ?」
うわ、哀れみに満ちた瞳でみられたよ! って、ちょっとリリィさん?
「け、拳銃抜くのはちょっと・・・」
「相手はテロリストでこっちはインターポールよ!! ここで撃たなきゃいつ撃つのよ!!」
あ、そうか。僕はあっさりと納得した。それ以前にここで止めている僕は結構お人よしなのかも知れないな。
などと考えるとリリィは即座に拳銃を連射。あっという間に撃ちつくしたけど、何故か見事に相手には当たらなかった。いや、またの間やら頭の真上一センチぐらいの所を飛んで行ったりとちょっと凄すぎる気もするけど。
「うそでしょ!? 訓練では当たったのに!?」
いるよな、本番に弱い人って。しっかしいくらなんでもあんなはずしかたは無いだろうに・・・。
「・・・さあて、じゃあまずはそこの姉ちゃんが邪魔だから消えてもらおうか?」
やばい! 男はすぐに拳銃をリリィに向けた。まずい、まず過ぎる。
でもどうする? リリィは拳銃を向けられているからうかつに動けないみたいだし、ホテルではいまだに悲鳴が上がってるからさっきの男の人は助けに来てくれそうにない。そしてピリさんが来てくれるとは思えないし・・・。どうする? どうする? どうする?
「じゃ、死にな」
「!?」
男は引き金に力を込めた。このままじゃ・・・っ!!
「ちっくしょぉおおおっ!!」
そのとき、僕はその声が自分のものだという事に気がつかなかった。そして、気付いたときは男とリリィの間に入っていた。
・・・なにやってんだ僕は!!
などと後悔しても、もう遅い。拳銃の弾丸は確実に発射された。銃身がスライドして薬莢が排出される。・・・あれ? なんでそんなことが見えるんだ?
だけど、そんな疑問には答えるものなど誰もいなくて、弾丸は発射された。弾丸は真っ直ぐ飛んでくる。
そして、今更だけど僕は気付いた。弾丸の飛んでくる方向が分かる。なぜかは分からなかったが、僕は咄嗟に手を弾丸の方向に向けてみた。
金属音が響いて、手に衝撃が走った。腕に激痛が走るけど、どうやら折れてはいないようだ。
そう、僕の腕には傷が無かった。
「・・・あれ?」
「・・・え?」
「・・・なにぃ?」
その場にいた全員がその事態に言葉を失った。まあ、気持ちは分かるし、僕自身、なんで弾丸が防げたのは分からないから首をひねっていたんだけど。
そして、呆然としている時にピリさんの声が聞こえてきた。
「・・・伏せろ!!」
リリィは我に帰ると僕を押し倒すと自分もかばうように倒れた。そして、男達も続けて倒れる。ただし、頭から赤いものを出してだ。つまりは血。つまり頭を打ち抜かれて倒れたのだ。
「・・・へ?」
僕は一瞬、何が起こったのかわからなかった。そして、直後僕の意識は遠くなってきた。
「ちょ、ちょっと!! しっかりしなさい!!」
リリィが揺さぶってくるのが分かるけど、僕はそれには答えられそうには無かった。
続く
あとがき
さて、刺客編はコレにて終了です。次回はちょっと長めの逃走編です。何が逃走なのかは話しの中で出てきますから楽しみにしてください。
そして、その話でススム君のからだの秘密が明かされます。そして、面白い事が続けざまに起きます。面白いキャラも出てきます。真の敵の姿が見え隠れします。
では、お楽しみに
蒼來の感想(?)
さて、
カラータイマーが切れたススム君の運命は?!!
鈴菜(仮)「まだ改造人間ネタ引っ張ってるかよ?!!」
観月(仮)「意味の解らない方は、前話の感想(?)を参考してくださいませ」
いやあ、電池切れたようで・・・しかも女性に押し倒されてとは・・・
鈴菜(仮)「・・・まさに女難だな」
観月(仮)「ええ、これで打ち止めでしょうか?」
さあ?解らん。近いうちに、体の秘密も解るだろうから・・・
鈴菜(仮)「その時にか」
そうだな。
観月(仮)「ではその時まで楽しみにしましょう」
了解。
しかし・・・今日は自棄にあっさり終わるなあ・・・・
鈴菜(仮)「もう一つあるからな」
え?
観月(仮)「ええ、そうですわね」
?????


