ZERO START
ミッション1 始まり 3

 
待ち合わせ時間は十時のはずだったが、学校の校門に着いたときにはすでに二十分も過ぎていた。すでに到着していたトモが僕達に気付いて声を上げる。
「・・・遅いわアンタら。何しとんねん」
「ホントよ。いつまで待たせる気?」
・・・待て、一人多いぞ?
森林のような緑の髪を持つ同年代の女の子で、・・・グラマーだ。間違いなく、完膚なきまでに。つ〜か誰?
「・・・って、永尾!? なんでお前が此処にいるんだよ!! ・・・って、お前がこのネタで来ないわけないか」
 女の子をみたツトムが驚いて、しかしすぐに一人で納得する。
 ツトムの話によると、この女の子の名前は永尾アキラ。文芸部の部員でホラーやSF物の小説をよく書き、そしてそういったものに目がない女の子だそうだ。 
「・・・当たり前でしょ。幽霊が本当にいるのかどうか探そうと思って今夜来て見たら小田さんと鉢合わせしたってわけ。それよりあなたが此処に着てるほうがよっぽどおかしいじゃない」
「確かにな。腕っ節も強くないし格闘技の経験もないしそういったものを全然信じてないのにな」
 永尾の意見にシンジが同意した。まあそれは同感だ。ツトムがここにくる理由なんてあるのか?
「だから面白そうだからだよ。一応、護身用にバットは持ってきてるしな。ホラ」
 ツトムはえらそうにバットを見せる。ついさっきナイフをもった不良とやりあった僕にいわせれば、まあせいぜい頑張れば? 見たいな感じだったけど。
「だいたい永尾はバカバカしいんだよ。この世にオバケなんているわけないだろう?」
 やれやれ口調で肩をすくめるツトム。永尾は不満げに頬を膨らませるとそっぽを向いてしまう。ちょっと言いすぎな気もするけどな。
「あのなあ、痴話げんかならよそでやってくれよ。いるのかいないのかなんて今から分かるだろ?」
 さすがに言いすぎだと思ったのか、シンジがフォローに入るけど、あまり役に立ってないような気がする。まあいいや。僕もフォローしておこう。ツトムに言いたいこともあるし。
「・・・それにさあ。いいじゃないか、お化けがいてもいなくても。ホントにいるかもしれないしさ」
「お前な。仮にも科学者の息子がそういうこと言うか? オバケだぞオバケ? 非科学的なものの象徴だぞ?」
「そうでもないよ。知り合いが言ってたけど、エジソンも霊界通信を作ろうとしていたらしいよ。それに地動説やダーウィンの進化論だって、最初はありえないって言われてたんだから。未来にはオバケとかの存在が科学として認知されるかも知れないだろ? 科学ってのはそういったもんだと僕は思うけど?」
 以上、全部知り合いからの受け売りでした〜。ただ、科学者が全てオバケとかを否定していると思っていたツトムにはショックだったようだ。完全に固まってる。
 それをみたアキがツトムの肩を叩いてせかす。
「ホラホラ。早くしないと警備員に見つかっちゃうわよ。で、何所に隠れるか決めてるの?」
「それなら大丈夫。暗幕のある化学室の窓を開けておいたからっ」
 アイコの疑問に、永尾が元気いっぱいに答えた。機嫌は直ったようでよかったよかった。
 ・・・ツトムのことはほおって置こう。 

「・・・しかし、ハラ減ったな。此処なら火もあるからラーメンでも作らないか?」
 科学室に入ってから少しして、シンジがふとそんな事をいった。まあ気持ちはわかるけど、それは問題があると思うよ。
 案の定、発案者と乱入者がそれを止める。
「ダメにきまっとるやろ!」
「火を使っている最中に、オバケが出たらどうするのよ!?」
「あのなあ、じゃあ何で永尾は此処に侵入したんだよ。意味ないじゃないか」
「そんなことないわよ。暗幕があるから電気もつけれるし、テレビも見れるわ」
「じゃあテレビでもつける? 暇だし」
 これはツトムの意見。だけどお前は精神的ショックを忘れたいだけだろ? まあ言わぬが花だけど。
「・・・思うところはあるけど、まあいいか。つけるよ」
 一番近くにいる僕がテレビをつけると、ちょうどニュースをやっているところだった。
 ・・・マズイ、凄く痛い場面だ。とりあえず簡単に説明すると銃撃戦の真っ最中に大男が現れて、兵士の一人の頭を掴んで握りつぶすという内容だ。うかつに詳細を書けない。
『・・・インターポールが特殊部隊300人を導入した、国際武器密輸シンジゲートサイレントの基地攻略作戦は、サイレントが作り出したサイボーグ部隊によって失敗いたしました。現在インターポールは対サイボーグ用にパワードスーツの開発を開始しています・・・』
「・・・・・・」
 なんだよこのニュースは。サイボーグ兵士って・・・。
「すっげえな・・・」
「ウソ・・・」
「ウソでしょ・・・」
 後ろではツトムやアキや永尾がそれぞれ感想を言っているが、正直僕はそんな言葉は出せなかった。なぜなら・・・。
「そういえば、定光寺のお父さんて、確かロボット工学の専門家やなかった・・・」
「バカッ!!」
 トモが痛いところをついてきて、すぐにシンジがそれに怒鳴ってきた。
「何大声出しとるんや!! ばれたらどうすんねん!!」
「お前が余計な事を言うからだろうが!!」
 ・・・って、二人とも声大きすぎ! 僕は慌てて止めに入った。
「二人とも、声が大きすぎるから落ち着いて! ・・・実際そう思うのが当然だし」
 そう、僕のお父さんは有名な科学者で、ロボット工学の権威だ。
「ススムちゃん。ススムちゃんもやっぱりお父さんが作ったと思ってるの・・・?」
 アキが心配そうにこっちに聞いてくる。どうやらアキは僕に気を使って今まで聴かなかったらしい。
「そういうわけじゃないけど、実際音信不通であんなものまで出てきてしかもそれを作ることができるとくれば・・・」
「身内でも疑うよな・・・」
 僕の言葉をツトムが継いだ。部屋中を沈黙を支配する。どうやってこの空気を変えたものか。
 その時、上の方からピアノに音がひびいてきた。真っ先に永尾が反応した。
「出たわよ!!」
「行くか?」
「行くで!!」
 シンジの問いにトモがすばやく答えて真っ先に科学室を出る。僕たちも急いで後を追った。
「気持ち良さそうに弾いとんな・・・。人の気も知らんで・・・」
「ああ・・・。ついに出たのね・・・。わくわくするわ・・・」
 額に青筋を浮かべて何所から出したのかわからない木刀を握り締めるトモと期待に目を輝かせて何所から取り出したのかわからないカメラを構える永尾という、正反対の反応を示す二人を先頭に近づく僕たち。一歩一歩気付かれないように静かに階段を上っていく。
 アキがふと僕に寄り添ってくる。その顔は少し怯えているようにも見えた。
「やだ。なんか怖くなってきた・・・」
「・・・大丈夫だって。イザとなったら助けてやるから声は出すな」
 僕は他人に聞かれたら誤解されそうな言葉でアキを励まして、行ってから失敗したことに気がついた。ナナセに知られたら関係悪化だな。
 そんな事を言っているうちに、僕たちは音楽室の前まで来た。此処まで着たからにはやけくそだ。トモ、シンジ、僕、アキ、ツトム、永尾の順番で音楽室のドアに近づく。永尾はどうしても一番前に行きたがっていたが、変質者だったりすると非常に危険なのでそれだけは我慢してもらう。
「それじゃあ、あけるで・・・」
「静かにしろよ。静かに」
 シンジの警告に「わかってる」とだけ答えると、トモは静かにドアを開ける。と、同時に音楽が止んだ。気付かれたか!? 
 が、中を覗いていたトモとシンジは何故か動かない。取り付かれたか? と思った瞬間にはなぜかいきなり音楽室に突入。そして二人の怒鳴り声がハモって聞こえてきた。
「何でお前がここにいるんだ(や)!! 出口!!」
 ・・・なんですと?

「・・・話を整理するぞ? つまりお前はどうしてもグランドピアノが弾きたくなって夜学校に来てみたら、警備員の交代時間を知っちゃったもんでその時間だけ此処でピアノを弾いていたってわけか?」
「うん」
 ツトムがしかめっ面で出口に確認すると、出口はにべもなく頷いた。
 出口エイジ。最近転校してきたヤツで、転校時に目の病気で左目に眼帯をつけていることや、この時期に転校してきたことなどが重なって、学校では結構有名なやつだ。変わっている事実は僕も知ってたけど、まさか夜中にピアノを弾くほどとは思わなかった。
「・・・あ〜あ。せっかく幽霊だとばかり思ってたのにな〜。アキラがっかり〜」
 永尾が目に涙を浮かべながらうなだれる。そんなに幽霊がいて欲しかったのか。変わったやつだなあ。
「・・・でも、まさか聞かれてたなんて思ってもいなかったよ。今度その子には謝っておかなくちゃ」
「たのむで〜。その子、ホンマに怖がってたんやから」
 とりあえず、トモの後輩には出口が自ら謝っておくということで話はまとまったようだ。全く、騒々しい一日だったよ・・・。

「典型的なくたびれもうけよね」
「そうだね」
 帰り道、僕とアキは同時にため息をついた。全く、幽霊の正体見たり枯れ尾花とか言うけど、本当に迷惑な話だよ。
「・・・まあ、本当に幽霊が出てこなくてほっとしたよ。正直僕も怖かったから」
「それなのに我慢して私のこと守ってくれるって行ったんだ・・・。ススムちゃんかっこいい!」
 やばい。まだ覚えてたのか(当たり前だけど)。まあ来週にでもなれば忘れてくれるかな? そういうことにしておこう。うん。
 そんな事を考えながら勝手に納得していると、何故かアキがこっちを見ていた。・・・まさか惚れたなんてことは無いだろうな? いやまさかそんな漫画的展開はないだろ。
「ど、どうしたの?」
「前から思ってたんだけど、ススムちゃんがオバケとか信じるのって・・・おばさんの影響?」
「・・・そうかもね」
 正直一瞬グサっと来た。確かにそうだろう。
 僕の母さんは業界では有名な霊能力者だったらしい。五歳ぐらいの時に事故死してしまったせいでよく覚えてないけど、その時は母さんの霊感が乗り移ったのか知らないが、よく変なものが見えたりしていた。
「・・・まあ、別にいいじゃんかそんな事。それよりもう遅いしさ。帰ったら早めに寝とけよ?」
 僕は適当に話を切り上げることにした。こうでもしないと嫌な思い出をたくさん思い出してしまいそうだったからだ。
 その時、後ろからなにやらガチャっとかジャキっとかいう様な音が聞こえた気がした。
「・・・アキ? いま何か聞こえなかったかな?」
「うん、聞こえた気がするけど・・・」
「カンのいいやつだな。そのとおりだぜ、ボウズ」
 後ろから男の声がして振り向くと、真後ろから拳銃をもった二人組みの男が立っていた。しかも照準は何故かアキの方を向いている。僕は慌てて二人の前に立った。
「!? なんだあんたは!? 何でアキを狙う!!」
「勘違いするなよボウズ。そっちの嬢ちゃんには何もしなければ撃ちゃしねえよ」
「そっちの嬢ちゃんを傷つけられたくなかったら、おとなしくお前の親父さんの居場所をいいな」
 男たちは衝撃的な言葉を口にする。父さんに用だと? 一体何の目的なんだ? っていうか・・・。
「って、それはこっちが聞きたいぐらいだ!! というかアイコに手を出すな!!」
 実際、父さんが何所にいるかは全く知らない。そんな事を言われても本当に答えようがないのは全くの事実だ。だが、男達は全く信じていないようだった。
「そんな嘘が通用すると思ってんのか? 怪我したくなかったらさっさといいな!」
 痩せているほうの男が、拳銃の銃口をこっちに向ける。そんなことされても答えようがないのに。
「だから知らないっていってるだろう!! 大体、一体なんでそんな事を聞くんだ!!」
「・・・どうやら、意地でもこたえる気はないようだな」
「いやだから知らないんですけど・・・?」
「仕方のねえヤツだ。俺たちのアジトまで来てもらおうか。そこでゆっくり話をしようぜ?」
 だめだ。全然信じてくれない。しかもこのままだと誘拐される? どうしたもんかな・・・。などと考えていたその時、後ろからアキが僕の肩を叩いてきた。
「・・・これってドッキリ?」
「「違う!!」」
 男達が同時につっこみを入れた。そして僕は同時にこう思った。
 −馬鹿だこいつ等−
「・・・せい!!」
「ゴッ!?」
 とりあえず痩せているほうの顔面に正拳を叩き込んで黙らせる。悪いが眠ってもらうよ。
「相棒!? てめえよくも・・・っ」
 もう片方が拳銃を急いで構える。ちなみに距離はわずか2メートル。一気につっこめばかろうじて先に殴り飛ばせるか? と思ったが。
「はあっ!!」
「ギャッ!?」
 前にも行ったと思うけど、アキも一応格闘技同好会の一員だ。モチロン生身でも強い。横からアキの後ろ回し蹴りを喰らって、男は昏倒した。よし、次にすることは一つ。
「逃げるぞ!!」
「え? きゃあっ!!」
 アキの手を掴んで一気に走る。目標はモチロン僕の家だ。
「ちょっとススムちゃん、あのままでいいの?」
「一応あいては拳銃まで持ってるようなやつなんだから! こういうのは警察に任せるのが一番いいの!! つーかよくあっさりとやっつけれたな僕ら・・・」
 あいつらはいったいなんだったんだ? いくらなんでも格闘技の心得ぐらいあると思うんだけど・・・。
(やられ役の宿命だよ)
 誰だ今の!?

「はあ・・・はあ・・・。よし、何とか家までついた・・・」
 あいつらはまだ気絶しているみたいだ。今のうちにいえに逃げ込んで警察に電話して来てもらえばこっちの勝ちだぜ。はっはっはざまあみろ。一応危険だからアキはそのまま僕んちに入れておくということで・・・。
「姉さんただいま!! 急いで警察に連絡を・・・」
 そこまでいって、僕は完璧に硬直した。ええもう完膚なきまでに。
 僕がそこで見たものは、両腕がまるっきし機械でできた大男のサイボーグと、拳銃を構えている警官たち。
「・・・修羅場?」
 言われなくてもわかってるから、現実逃避ぐらいさせてくれ、アキ。
続く


あとがき
 はい。いきなり修羅場になっています。急展開です。主人公ピンチです。
 とにかくまだこの辺では前フリに近い展開なので、さっさと終わらせることにしています。そして次の話で驚愕の事態が発生します。さてさて、ススム君はどうなることやら。次回を待て!!

蒼來の感想(?)
おお、現○リ○ォ○ニ○州○事参戦ですな!!(激違
んー修羅場には修羅場なんですが・・・何か違うと思うのは私だけでしょうか?
一番気に掛かるのはススム君のお姉さんの安否かな?w(⌒▽⌒;ゞ
???「そこで私達が乱入すると!!」
・・・乱入しません!!つうか煉獄さんのSSに参戦しようとすな!!
???「ええ〜、つまりませんわ〜」
つまらなくてもいいから場を乱すな!!
???「そんなこと言ったてなー」
???「そうですわ、蒼來のSSには今のところ出れないんですから」

まあその通りなんだが・・・
???「で私達姉妹の名前は決まりましたのですか?」
ああ、当初のプラン通り姉が
「鈴菜(仮)」妹が「観月(仮)」で行く
鈴菜(仮)「(仮)って決まってないじゃあないかー!!」
観月(仮)「ホントですわ」

黙れ、当分はこれで行くから変更不可だ。
鈴菜(仮)「ちっ、しょうがない「???」よりはましか・・・元は○○禁ゲームだな」
観月(仮)「私もですね、外見もですか?」

ああ、外見そのままだ。文句があるだろうが他で聞くから
鈴菜(仮)「解った、では読まれた方々煉獄さんへの感想を掲示板によろしくお願いな」
・・・私の台詞取るな・・・