ZERO START
ミッション1 始まり 2


 
僕の部活の格闘技同好会は、不真面目なヤツラが多いので真面目にくる人は少ない。まあ僕も人のことは言えないんだけどね。
「・・・あ〜ひま〜。先生も全然来ないし、なんで僕は真面目にやってるんだろう」
「・・・今更言うなよ。気分がそがれるだろうが」
「もう、ススムちゃんったら自分が真面目にやってると思うだなんて大丈夫?」
 そこまでいわなくても半分冗談で言ってるから気にしなくてもいいよ、アキ。
「それから、なんで僕を置いていくかなあ。おかげで危うくマニア談義を受けさせられるところだったよ。・・・ハッ! まさかお前ら・・・」
「・・・あのなあ、お前何言ってんだ? さっさと逃げなきゃ巻き込まれるのが目にみえてるから避難してただけだよ」
「・・・ていうか、なんでのこのこ残ってたのよ? どうりで遅れて食堂に来たと思った。もう、ススムちゃんったらどんくさいんだから」
 なんでアイコは時々酷いセリフを吐くかなぁ。
 まあそんなことをいいあいながらそれぞれ勝手に格闘技の訓練をしていると、いつの間にか時間は三時。今日は終業式の日で午前中しか授業が無かったので、結構長い時間部活をしてることになる。
「そろそろ帰るか」
「そうね」
 そういいながら僕たちが外に出ると、ちょうど剣道着を来た少女に出くわした。
「なんや、あんたらも今から帰るんか?」
「トモ、お前いつもこんな時間に帰るのか?」
 小田トモ。僕らのクラスメイトの一人で関西出身の女の子。ちなみに剣道部のエースだ。トモは呆れたみたいにため息をつくと、やれやれ口調で語りかけた。
「あんたらが早すぎるだけや」
「自分が普通に部活をやってると思うだなんて、ススムちゃんって本当に自信過剰ね」
お前が言うな、アキ。
・・・アレ? なんかトモがこっち見てる。
「・・・どうした?」
「ん? ああ、アンタら肝試しに興味無い?」
「は?」
「いや、部の後輩が一昨日忘れ物してな、深夜の学校に忍びこんだんよ」
「素直に言えばよかったのに」
「真面目な子なんや。それでな、十二時に入ったんやけどその時に音楽室でピアノが鳴ったんや。おかげでビビってビビって大変でなあ」
 そりゃ大変だ。正直僕はそういうのを信じているたちだから、その子が怯えているのが手に取るようにわかる。
 ん? でも待てよ・・・
「・・・でもさ、オバケなんて僕たちで何とかできるわけないよ?」
「そういえばそうよね。それに本物だったらたたられたりするんじゃないの?」
「・・・アホなこと聞くなあ。オバケなんているわけ無いやろ?」
 トモはやれやれと肩を落とす。
「じゃあ何で?」
「あのなあ、オバケの振りしてウチの可愛い後輩を怯えさせるような不埒な奴にゃあ鉄拳制裁が必要やろ? かといって相手がなにもんかわからんし、それに一人で夜でるのは親がうるさいからなぁ」
 読めた。つまり一般人より強い人何人か連れて行けば親御さんも安心するだろうと言うことか。そう考えていると、何故かトモがこっちを向いてきた。どうやら、僕が考えてたことに気付いたらしい。
「まあ、アンタの考えのとおりや。アンタらだったら間違いなんて起こらんしな?」
「それ、面白そうね」
「・・・だな」
「本気で言ってるの?」
 正直そういうのを信じている僕としては勘弁して欲しいなあ。まあ、別に適当に言えばいいか。
「・・・わかったよ、考えとく。それじゃあ僕はこれで」

「・・・そういえば、お前とは家が隣同士だったんだよな・・・」
「ススムちゃん、何でそんなに嫌そうなの?」
「だって、最近よく冷やかされるんだよ、付き合ってるだろ〜とか」
 ハッキリいってナナセと(こっそり)付き合っている僕にとってはいい隠れ蓑だけど、やっぱり誤解される可能性もあるわけだしなあ。だけどそんな考えを知ってかしらずか、
「いや〜そんな、付き合ってるだなんて〜」
 照れるな!! いやマジでお願いしますから、違うとわかっていても恥ずかしいから本気で照れるなよオイ!
「まあいいや。それじゃあ俺はこれで」
「またね〜」
 そういって門をくぐった直後、僕はすぐに塀の影に隠れる。僕の父親は有名な科学者で、結構大きな家に住んでいるのだがこういうときには役に立つ。
 耳を済ませて門が開いてしまる音、そしてドアが開いて閉まる音を聞いて、僕はほっと息をついた。
「・・・良し。第一関門突破」
 深呼吸をして鼓動を鎮めて心を落ち着かせる。今から始めるのは人生最大の仕事だ。恐らく成功すれば死んだお母さん対して報告できる。お母さん、僕はついに大人になりましたよと。
「・・・良し、五分で着替えてナナセの家に直行。友達の家に遊びに行くといいわけしたナナセが外に出て少ししてから合流して家に向かう。・・・完璧だ」
 変装用の服もサングラスもすでに準備している。よし、さあ家に帰るぞ!!
 そう考えて家に入った僕を待っていたのは・・・
「あら、お帰りなさい。お友達が来てるわよ」
「あ・・・、ススム君・・・」
・・・まて。いや、その前に紹介しておこう。最初に言葉を投げかけたのは僕の歳のれた姉、定光寺リツコだ。僕と同じ茶色い髪をセミロングにし、そして同じ茶色い目を持つ大学四年生。人工知能の研究をしていて成功作であるシローはほとんど人間と同じ判断ができるという才女である。そこはいい。しかし、
「・・・なんでナナセがここにいるのとか、姉さん遅くなるんじゃなかったのとか、言いたい事はいろいろあるけど一番最初にこれを言いたい。・・・なんで二人とも計ったかの用に最初から玄関で待ち構えてたの!?」
「・・・いやね、ちょっとした事情で早く帰れたんだけど、家に帰る途中でこちらの辻さんに会って、それで・・・」
 ・・・ぬかった。
 まさか姉さんが早く帰ってくるとは、アキが友達と出会って家の前で立ち話しているという可能性は考えていたけどここまでは考えてなかった。でも・・・
「あれ? でもナナセとの待ち合わせの時間はまだだったけど・・・」
「塾の帰りに友達の家に行くっていったから・・・」
 なるほど、余計な気を使わせてしまったらしい。
「じゃあ、部屋にでも行こうか」
「うん」
 
(落ち着け落ち着け)
 心の中で僕は念じ続けていたが、全然鼓動が収まらない。姉さんは帰ってきているし時間はかけられないし問題が山積みなのに、本題に切り出せない自分が憎い。そしてナナセは・・・。
「男の子の部屋ってこんな風なんだ。私初めて見た」
 とまあ興味シンシンで部屋を見てるし、切り出しにくいったらありゃしない。
(いや待てよ・・・。うかつに切り出したら『変態』とか『身体でしか見てなかったの? 酷い!!』とか言われちゃうかも・・・。それに僕も今更なんだけどただ欲望だけでナナセをどうこうしようとは思わないし・・・。どうしようどうしようどうしよう)
・・・いい加減に落ち着けよ自分。といいたくなるけどパニックというのは収まらない。
本当に収まらないもんだから、もしかしたら声に出してパニくっていたかもしれない。そんな状態が一時間ぐらい続いたのだろうか。ふと気付くと、ナナセが顔を赤らめて僕を見ていた。
(やばい、声に出てた!?)
 致命傷だ。二年前、彼女と出会ったおかげで僕は変わったと信じている。少なくとも清田さんが行方不明になったショックからは脱却できたはずだ。
しかしその恩恵もここまで。そして彼女に嫌われた僕はショックで女性不審に・・・。
・・・よくもまあ此処まで脳内でドラマを展開できたな僕は。とにかくそしてその時
ショックで廃人になって病院へと送られるも治らずに一生を終えるといった悲劇が脳内で終了してから我に帰ると、ナナセはじっと僕を見ていた。よく見ると、何所と無く様子がおかしい。
「えっと・・・。何・・・かな?」
「・・・ゴメンね」
 一瞬、なんで謝ってるのか理解できなかった。
「・・・わかってる。ススム君が部屋に入ってから・・・その・・・、そういう事をしようと思ってでもがまんしているだろうなっていうのは気付いてた」
「ナナ・・・セ」
「でも、我慢しなくてもいいから。私たち・・・恋人同士・・・でしょ?」
 照れながらナナセが笑う。僕は我慢できずに、思いっきり抱きしめた。

・・・んでもってどうなったかは誰でもわかると思うので省略します。とりあえず結果だけいうなら、大失敗。理由は簡単。
 明るい家族計画を使うの忘れてたぁ・・・。
(なんで薬局にいって買っていたのに使うの忘れるかな・・・)
 気恥ずかしさと罪悪感を隠す為にいそいそと着替える僕。ナナセも着替えているけど一言も喋らない。やっぱりヘタだった・・・よなぁ・・・。
『ススム?』
「何? ・・・てうわぁっ!?」
「キャッ!!」
 いきなり部屋の中から声が聞こえてきて、僕とナナセは同時に飛びのいた。つーかなんで部屋のなかから!? ど、どこ、どこから・・・
『此処だよ。パソコン』
「・・・ああ、誰かと思えばシロー? 脅かさないでよ。寿命が縮んだ。いやマジで」
 シロー。姉さんが作った人工知能で、身体が無い以外はほとんど人間と変わらない行動がとれる凄い奴。最近姉さんがいらん知識を大量に教えているせいか、時々変な事を喋る癖がある。
 僕のパソコンにもアクセスできるのを忘れてた。昨日使って電源消すのを忘れてたみたいだ。ああビックリした。
 ふとナナセを見ると、ナナセは口をパクパクさせてパソコンを指差していた。まあ普通の反応だよな。
「な、なんでパソコンが喋ってるの?」
「ああ、姉さんが作った人工知能だよ。名前はシロー。・・・ってシロー? もしかして見てた? そして姉さんに教えた?」
『大丈夫だよ。カメラはついてないから見ることはできないし、そういうところを見るのはデリカシーの無い奴のやることだからね』
「姉さんが余計な知識を教えていて助かったよ。いやほんと」
『それから、リツコは買い物に行ってるから。三人分かってきて、しかも奮発するそうだよ』
 さすがにその場にいなけりゃこの微妙な空気の残滓はわからないのか、シローはいつもどおりの口調で用件を伝える。
 でも、今日の晩ご飯の味はわかりそうにないな。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
 困った弱ったどうしよう。
 ナナセを家にまで送っている最中だが、僕もナナセも一言も話せない。いや話さない? どっちでもいいか。とにかく空気が重い。
・・・しかしマズイ。たしか初夜のあとに気まずくなって分かれるってパターンを聞いたことがあるぞ。このままじゃあそれと同じ展開になってしまう。
 ・・・くそ、なんとかしてこの空気を変えなければまずい。 
 こうなったらせめて不良が絡んできてくれないかな? それぐらいなら何とか返り討ちにできて、イメージアップできて男としての株を上げれると思うんだけど・・・。
「・・・なあキミ達ぃ? お兄さん達金無くて困ってんのよ。金貸してくれない?」
「・・・グッドタイミングで出てくるなあ」
 思わずつぶやいてしまった。いいタイミングで出てくるなオイ。
 数は四人。しかも皆さん全員漫画でしか見たことのない不良っぽい格好をしているし、まさにこういう時にピッタリ。モチロン返す言葉は決まっている。
「なんですか一体。迷惑です」
「オイコラ、人が下手にでてりゃいい気になりやがって。ぶっ殺すぞ」
「・・・できるもんならやってみろ。ナナセにかすり傷一つつけたら地獄に叩き落す」
「んだとコラァッ!! 死ねやクソガキ!!」
 ここまでくれば後は予想通り、常識を知らないものらしくナイフを抜いて切りかかってきた。
 とりあえず一番最初に突撃してきた男には、わざと突撃して一瞬動きが止まった瞬間にとび蹴りを顔面に食らわせてKO。男達が驚いて止まった瞬間に、近くにいた男の鳩尾にボディブロー。あっさりと悶絶して倒れた。
「・・・ハッキリいって、ナイフ抜いて脅せばいうこと聞くとおもってるなら大違いだよ。これでも格闘技の心得があるんだ」
 ハッキリいって余裕だ。大抵の不良は力任せに殴りつけるぐらいしかできないから、すばやく攻撃すればあっさり当たってくれる。この調子なら倒すのに時間はかからないな。
 そんなことを思っていたら、片方の男が何故かこっちを無視しナナセに突撃してきた。
「あ、コラ!!」
 あわてて振り向いて殴り飛ばそうとしたけど、同時に他の男が殴りかかってきた。僕は咄嗟にかわそうとして、
「・・・セイッ!!」
「ギャッ!!」
 ナナセが襲ってきた男の鳩尾に正拳突きを叩き込んで悶絶させた。
「「・・・・・・」」
 僕と残った男は一瞬あっけに取られていたが、すぐに僕が我に帰って男の肩を叩くと、男はそそくさと他の男を引っ張りながら逃げていった。気持ちはわかる。
「・・・強いね。格闘技か何かやってた?」
「うん。護身術に空手をちょっと・・・」
 男としてのプライドズタボロですよ。ホント。

「激しく欝だ・・・」
 結局男としてのプライドはズタボロ。もう地獄にでも落としてくれ〜てな感じで落ち込みたくなっちゃいましたよオイ。
「・・・はあ。僕って男としてどうなのかなぁ。やっぱり部活を真面目にするべきなのか? つーかこのままじゃ僕プライドズタボロのまま一生を・・・」
「・・・何言ってんだ? ススム」
「・・・のうわぁっ!?」
 精神的に参っていた僕は、すぐ隣から聞こえてきた言葉でおもわず我に帰って驚愕の声を上げた。
「し・・・シンジ? 一体何の用?」
「なに言ってんだ。小田がいってただろ?」
 ・・・ちょっと待て。それってまさか・・・
「・・・本気?」
「本気も本気。超本気だ」
「俺はオバケなんて信じないけどな。まあ、なんだかんだいって面白そうだしな」
「あんた達だけだと間違いが起こりそうだから私もね」
 うわ。後ろを向いてみたらツトムとアキまでいるよ。
「・・・はあ」
 ああ、ため息が出てきた。こりゃ姉さんから大目玉食らうな。
続く



あとがき
 
・・・あはははは。まさかシンジとアキがカップルだと思われるとは、表現ヘタだなあ俺。
 一応十八禁的展開を考えてるので、主役であるススム君にも面白くてエロイ展開をご用意しています。いろんな意味で期待してください。

蒼來の感想(?)
・・・ススム君はかなりのうっかりさんですねー
まあ一言言うなら「祝!脱○○!!」かな?(ヲイ
アキちゃんとシンジ君はカップルじゃあなかったんですね・・・勘違いしてました<(_ _)>
しかし何気に酷いこと言ってますね、アキちゃん(−−;
・・・まさかススム君に気がある裏返し? ( ̄□ ̄; )!!
などと邪推したりして・・・[壁]`∀´)Ψヶ〜ヶヶヶヶ
・・・ススム君、女性がらみで苦労するのが目に見えてますよ・・・
読まれた方は掲示板に感想をよろしくお願いしますね<(_ _)>

追伸
あの2人は此処で出した方がいいのかなあ?
今回は管理人権限で出しませんでしたが・・・
???「駄目管理人の癖に横暴だぞおーーー!!」
???「そうですわ、私達姉妹の出番作らない癖してーーー!!」
何か聞こえたような・・・(−−;;;;