ZERO START
ミッション1 始まり 1
それは、いつも見る悪夢。昔からよく遊びに来てくれた父の助手が死ぬ前日からその物語は始まっていた。
それは、彼を襲う運命への道しるべ。彼が生きる世の論理と戦う為の意思を伝える一つの形。運命に導かれながらも、決して服従しなかった一人の青年の死。
それは・・・。
「すいませんすいませんすいませんすいませんすいません。本っ当にごめんなさい! こんな遅くなるだなんておもってなくって・・・」
深夜の道を進む車の中で、定光寺ススムは連続して頭を下げていた。車の備え付けられているデジタル時計は01:11と示しており、すでに深夜である事を示していた。しかし、車を運転する青年、科学者であるススムの父親の助手である清川四郎の表情はあくまで穏やかだ。
「気にしなくてもいいよ。もともとボクが誘ったことなんだし・・・」
「・・・そういえば、話は変わりますけど以外ですね。清川さんが肝試しなんて進めるなんて」
肝試し。それこそがこの深夜にススムが車に乗っている理由で、清川に勧められてススムが遠くまで来ている要因であった。最近近くの町で廃校になった学校があり、亡霊が出るといったうわさが飛び交っていた。それを聞いた清川がススムにその話をしたら行きたいといったので、二人はそこまでいったのだが・・・。
「まさか、気絶するとは思わなかったよ」
「ははははは」
清川の言葉に、ススムはため息をつきながら答える。入ってからしばらくして、清川がバケツをうっかり蹴飛ばした時の音でススムが半狂乱になって駆け出した挙句、階段から落ちそうになってしまったのだ。その時は清川がかばってくれたおかげで助かったが、衝撃のせいで気絶してしまったのでここまで遅くなってしまったのだ。
「・・・本当にすいません」
「気にしなくてもいいよ。僕にも責任があるし、このとおりケガもないしね」
清川は片手をハンドルから離すと、ススムにその身体を見せる。そのスーツはドコも破れていなければ、破れてもいない。全く入った時と変わりなかった。
「いや、でも・・・」
清川にフォローされながらも、自分のあまりにもはずかしい行動にススムは落ち込んでしまう。そうしていると、車が減速してやがて止まる。ふと横を見てみればすでに車はススムの家の前に止まっていた。ススムはドアを開けて降りると清川の方をむいてお辞儀をする。
「それじゃあ、僕はこれで」
「ああ、またね」
そういって、清川は車を発進させようとして、一旦止めてススムを見る。ススムは不思議に思って清川を見返す。
「どうしたんですか?」
「いや、落ちた直後に気絶したのかなって思って」
「・・・痛いと思った時にはもうバタンキューでしたけど・・・。それが何か?」
「い、いや、何でもないんだ。それじゃあ!」
清川は慌てて取り繕うと車を発進させる。その姿を見送りながら、ススムはふと疑念にとらわれた。それは清川が服を見せた時のことだ。
「そういや、服汚れてすらいなかったよな・・・。何でだろう?」
ススムはしばらく考えていたが、やがて暗くて見えなかっただけだろうと結論して家のドアを開ける。
そして、それが今生の別れとなった・・・・・・。
「行方不明だなんて・・・。いったいなんで・・・」
ススムは感情のままに走り出していた。そうでもしないと悲しみと後悔で心が砕け散りそうになるから、だから心を守るために走り続けた。
ススムを家に送り届けた直後、清川からの連絡が途絶えてしまった。心配していたススムは、父親から清川が行方知らずになった事を聞かされて、我慢できずに飛び出したのだ。
「なんで、なんで、なんでだよ!! 何で行方不明になんか・・・っ!!」
ススムは走る続ける。まるで走り続ければ消えていった人々が戻るかの様に。だが、それは結局は夢でしかない。だから彼は走る続けることなどできないし、帰ってくる人もいない。そして彼は足をもつれさせて転んでしまう。
「・・・痛ぅ」
痛みと悲しみが涙となってあふれてくる。もう彼は悲しみを抑制する術がなかった。感情の堤防が決壊する。その時、彼に声をかける人がいた。
「・・・大丈夫?」
見上げると、空のように青い髪を持った少女が心配そうな瞳でススムを見ていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言で見詰め合う二人、誰がこのとき予想できただろうか。この出会いが運命すら捻じ曲げる戦いの序曲となることに。
「ススム、そろそろ起きろ〜。もう授業始まるぞ〜」
眠りに落ちていたススムは、その声をきいて意識を覚醒させた。ススムはしばらくの間ぼ〜っとしていたが、頭をふって眠気を捨てると、起こしてくれた友達の方に向き直る。
「悪い悪い。ありがとうシンジ」
関口シンジ。ススムの親友である。色黒で金髪だがクラス内で一番成績が良く、性格も友達思いでPTOをわきまえられるため教師からの評判もいいといった、人は見かけによらないを地でいく少年である。
そして、ススムの男友達はもう一人いる。その少年はいつの間にか後ろに立っていた。めがねを直しなおしながら少年はススムにたいしてため息をつく。
「・・・まったく、どうせ先週発売のファイナルクエストでも徹夜でやってたんだろ?」
「んなわけないよ」
「お前じゃないんだから」
ススムとシンジは同時に突っ込みを入れる。少年の名前は角田ツトム。ゲームやアニメなどに情熱を傾けるいわゆるマニアである。
「なんだ? まさかお前ら、一回もあのゲームで徹夜してないのかよ? 呆れるなぁ」
「あのねえツトム。普通は徹夜しないよ?」
「ススムのいうとおりだよ。徹夜するのが常識みたいないいかたするなよな」
「え? 常識だろ?」
「「常識なワケあるか!!」」
ツトムに対して同時にツッコミを入れる二人。その様子を見ていた少女が腕を組んで、赤い髪のツインテールを振りながら少女が不満げな声を出す。
「ちょっとぉ、そこの二人。ススムちゃんをお笑いの世界に引きずり込まないでよね」
「なんで僕がお笑い界に引きずり込まれるんだよ、アキ」
三舟アキ。ススムとは幼いころからのお隣同士。いわゆる幼なじみの関係な少女。ススムの事を手のかかる弟みたいに考えており、何かにつけてお姉さんぶる癖がある。
「どうでもいいけどさ、まるで俺とツトム協力してるみたいな言い方するなよな。ツトムがバカバカしい事を言ってるだけなんだから」
シンジは唇を尖らせるが、アキは涼しい顔で受け流す。逆に引き合いに抱かれたツトムは声を荒げて反論する。
「なに言ってんだよ!! ファイナルクエストは素晴らしいゲームなんだぞ!? 徹夜するのが礼儀ってモンだろ!?」
「はいはいはいはい。今度徹夜するからもういい加減にしてねツトム」
「ダメよススムちゃん。オタクの世界に足を踏み入れるだなんて私イヤだからね!」
「何で徹夜したぐらいでオタクになるんだよ!!」
「そうだ!! 徹夜をするのが常識なんだぞ!!」
「いや、常識じゃないから、それとススムもツトムにあわせなくていいから」
うんざりした口調でシンジが止めに入り、三人はとりあえず口論を納めた。それと同時にチャイムがなって教師が教室に入ってきて、四人はそれぞれ自分の席に戻った。
ススムはノートを広げながら窓の外を見る。それはいつもどおり青く、雲はいつもどおり白い。日常は変わらず進み、ちょっと平凡じゃない高校生の自分はちょっと平凡じゃない人生を送って天命を全うするのだろう。とススムは考えていた。
だが、この日の夜にその考えはもろくも崩れ去ってしまう。
「んじゃ、そろそろ部活に行くか」
「イヤだよ」
授業が終わった後、ツトムがススムに声をかけるが、ススムはあっさりと断る。途端にツトムは不機嫌な顔になってススムに食って掛かる。
「何でだよ」
「僕たちは学食行ってから部活行くし、第一お前とは部活が違うじゃないか。お前は文芸部。僕はアキやシンジと同じで格闘技同好会だろ?」
「別にいいじゃないか途中まで同じなんだし。それにシンちゃんも三舟も行っちゃったぞ?」
「え!?」
ツトムにいわれて振り返ってみると、確かにシンジもアキも教室から姿を消していた。シンジはがっくりと肩を落としてため息をついた。
「そんなぁ。ツトムと二人っきりだとマニア情報ばかり話してくるからイヤなのに・・・」
言ってから、声のトーンを下げていないことに気付いて慌てて口を塞ぐが、時すでに遅し。ツトムはこめかみに青筋を立てて怒り出した。
「どういう意味だ!! あの素晴らしい情報に対してなんて扱いだ!! こうなったらお前に意地でもゲームの素晴らしさを教えてやる!!」
「さすがは文芸部でゲームのよさを説く小説ばかり作ってるだけあるな・・・。ってそんな!?」
ススムは慌てて逃げ出そうとするが、ツトムは文化系の人間とは思えないすばやさでススムの襟首を掴んで引き寄せる。ススムは逃れようと力を込めるが全く動かない。ツトムの目が怪しく光ってススムに余計な情報を教えようとしたその時、救いは来た。
教室の戸が開いて青い髪を背中まで伸ばした少女が顔を覗かせ、ススムの姿を認めると手招きして呼びかける。
「定光寺君っ、ちょっと修学旅行委員会に来てもらいたい用事があるの。空いてる?」
「辻さん!? 空いてる空いてる! じゃ、ツトム。俺は修学旅行委員の務めがあるからこの辺で」
「あ、オイ!!」
力がゆるんでいたツトムの手を振り解いて、ススムは駆け出した。
教室からある程度離れた後、ススムは隣の少女に礼をいった。
「辻さん、助かったよ。用事ってのは嘘なんだろ?」
「え? なんでわかったの?」
ナナセは目を丸くして驚くが、ススムは逆にちょっと呆れたような表情を見せると軽く肩をすくめる。
「そりゃあ当然だよ。いくらなんでも学級委員長がそんな事を伝えるわけがないだろう?」
辻ナナセ。ススムのクラスの学級委員長だが、別にお堅い性格でもいじめられっこでもない。おとなしい性格で頼まれるとイヤといえないため、この仕事をうけていると言うだけだ。
そして・・・。
「・・・それから、誰も聞いてないみたいだからいつもどおりでいいでしょ? ナナセ」
「・・・そうよね。ススムくん」
二人は一応周りを確認。誰もこちらに視線を向けていないことを確認するとほっとため息。それからふと視線を合わせるとどちらともなく微笑みを浮かべる。
「・・・にしても、あれからもう三年もたつんだよね」
「本当。でも、あの時は驚いたな。倒れているススム君をみて声をかけたら、鼻水や涙でグチョグチョの顔で見られたんだもん」
「・・・それについてはコメントしないでくんない? それよりも・・・」
ススムは頬をかくと、周りの誰もこちらに注意を払ってないことを確認しなおしてからナナセに告げる。
「今日さ・・・あいてる? 家に来ない?」
「え・・・?」
「い、イヤ、そういえば一度も招待したことなかったな〜って思ってさ。ナナセの家に行くのは抵抗あるし、今日は姉さん遅くなるから・・・」
・・・青春である。
続く
あとがき
いやあ、書いてみたら長くなりました。
とりあえず、これはオープニングみたいなものです。つ〜かアクションのつもりですけど、本格的なのはかなり後になります。つ〜か主人公であるススム君は、この状態ではかなり弱いです。本領発揮はかなり後になると思います。
とりあえず、次の話からはススム君の一人称で進めていきます。
感想は掲示板に書いてください。
P.S 十八禁なシーンは本編では飛ばします。隠しHPにでき次第投稿するといった手段で行きます。
蒼來の感想(?)
新規のお客様一名御あんな〜〜〜い!!(ヲイ
というわけで煉獄さんよりオリジナル小説「ZERO START」を頂きました〜
で蒼來が読んで真っ先に思った感想は・・・
・・・御免なさい、味の素の「御飯がススム君」を思い出しました<(_ _)>(激マテ・・・・・
まことに申し訳ない
しかし周りのキャラも一癖二癖ありますね〜
しかも彼女付ですねw(ツトム君除く)
でも後書き見ると・・・18禁はいいのですが・・・ダークや痛いくないことを祈りつつ次回を期待しましょう。
痛くてもダークでも掲載はしますがw
干干 §\(・_・ )三( ・_・)/§ 商売繁盛家内安全無病息災天下泰平学業成就交通安全安産スッポン安全第一青色申告明
読まれた方々は、煉獄さんへの感想を掲示板にお願いします。<(_ _)>
・・・その前に集客力を上げないと・・・(−−;;;;
???「今回は出番なしかあ・・・」
???「仕方ありませんわ、まだ私達の名前決まってないようですし」
???「ったく、私達の名前ぐらい考えとけよなあ!」
???「・・・まあ、蒼來のすることですから・・・」
???「だな、まあ私達のことはもう少し待っててなー」
???「ええ、もしなんなら蒼來へのプレッシャーもお願いしますね」
???「・・・プレッシャーかけてもやるかなあ?」
???「・・・無理っぽいですわね」

