「生者を残すな、慈愛を見せるな、歯向かうものはすべて排除しろ。これは戦争じゃねえ、虐殺だ!倫理は捨てろ。連邦の糞野郎どもは全て殺せ!・・・・・・これが、命令だ。」
戦場に近づくにつれ、だんだんと豹変していった隊長のその言葉に合わせ、私たちは動き出した。
そしてこの日、この瞬間から私たちはこの戦争の正史からは姿を消す事になる。
機動戦士ガンダム
神々の旋律byダークパラサイト
第9話『外道』
ガラン。
大きな音をたてて薬莢が地面に落ちた。
直撃すればこの薬莢でも戦車ぐらいならつぶしてしまえるだろう。
だが、それでこの機体の弾薬は全て使い尽くしていた。
「終わったか?ヒュン!」
周囲をはばかる事の無い全周波通信が突然響く。
当然の如くこの通信は敵も傍受している。
ただ、傍聴できたからといって、もうどうにもならないだろう。
死屍累々とまでは行かないものの、周囲には尋常ではない破壊活動の後が無残に残されていた。
通信施設や防衛施設が全滅している事は火を見るよりも明らかだ。
というよりも実際に全ての建造物から火が吹き上がっている。
思う。
これまで一度もこれほどに非道な作戦を決行した事は無かった、と。
あまりの惨状に少し頭がくらくらする。
そのせいだろう。
また呼び捨てにされた事にも気付かなかった。
「はい、制圧完了しました。」
答えながら通信の主を見る。
そこにはこれまで見た事も無いような破壊の後があった。
建物の欠片すら残さず。
動くものは全て焼き払い、撃ち殺し。
その中でただ一騎、黒い天使が踊る。
そして気づく。
自分のやり方でさえなお、甘い。
この舞台では生者は許されないのだ。
その時、一人の兵士がRPGを手にもち、堕天使に突攻をかけようとするのが見えた。
血まみれの服は薄汚れてよく分からないが、白衣のように見える。
だとすればこの施設の研究員だろうか。
「よくも、よくも・・・。」
高性能マイクがその男の張り上げた叫びの一部を微かに拾い上げた。
「あ・・・。」
次の瞬間、ヒュンはそちらを見た事を後悔した。
堕天使の尾が一瞬の躊躇すら見せずに男の身体を刺し貫いていた。
赤い飛沫が散り、グシャッという音をマイクが拾う。
それで男は絶命した。
注意深く聞けばそこら中から怨恨の声があがっていた。
だが、そのどれもが弱々しく、今にも消えそうなものがいくつもある。
あれが・・・堕天使の戦い方か・・・。
話には聞いていた。
敵が白旗を揚げても絶対に攻め手を緩めない、悪逆非道な猛者がいると。
それが、眼前にいる。
これまで自分がしてきた事は子供の遊びだったのだと。
そう宣告されたような気持ちになった。
「ヒュン、残り時間は?」
「あ・・・えっと・・・戻る時間を考えても後五分あります。」
答えてから気づく。
よく考えれば彼の機体にも時計ぐらいは設置されているはずだ。
「あの・・・時計、故障したんですか?」
返答までに暫く時間があった。
その時間が自分を不安にさせる。
「・・・・・・いや、ただの確認だ。」
ザクのカメラアイが微かに動いたのが分かった。
その視線の先を自分のカメラアイも追う。
「すごいですね・・・彼女。」
「ん?・・・ああ、まあな。」
二機の視線の先には見事に胴体、コクピット部分をたてに、横に二等分されたGMが三機、炎と黒煙を吹き上げながら鎮座していた。
あんな攻撃は、自分のドムにも、眼前のザクにも、絶対にできはしない。
そして、その犯人たるグフはすでにその場に留まっていなかった。
自分たちの降下を待たずに敵陣の中央へと突入していってしまったのだ。
「追わなくていいんですか?」
実力の心配はしていない。
ただ、彼女の行動が規約違反に当たらないかだけが気がかりだった。
「アタッカーだからな、問題はないだろう。ちょっと血に酔っただけだ。」
「・・・それって問題あるって言いません?」
少なくとも軍規から言えば大問題である。
「う〜ん、いいんじゃないか?・・・時間さえ守ってれば。」
良いわけがない。
そう思う一方でならどうする?という疑問が浮かぶ。
戦場についてすぐ、彼女は立ちはだかるGMを全て切り捨ててしまった。
一体目は飛び降りざまに縦方向への打ち下ろしで両断。
二体目は返す刀で逆袈裟。
そして、三対目は刀そのものの加速力とホバーの加速力を掛け合わせ、ビームサーベルを振り上げたところを抜き胴で切って捨ててしまった。
銃を撃つ間も、刀を合わせる間も与えない完全な奇襲。
グフスコールでの闘い方としてはベストなものだったと言えるだろう。
「追いついて、止められる自信あるのか?」
「・・・・・・。」
自分の機体を見る。
完全に砲撃戦を主体とした遠距離専用の機体。
並のパイロットが相手なら近接戦であっても勝つ自信はある。
だが、彼女は並のパイロットなどではありえない。
もし本当に彼女が暴走しているのなら・・・止められるとは限らない。
「何かあったら隊長の責任ですから。」
「・・・何もないよ・・・あいつは悪魔の妹なんだから・・・本当に血に酔っただけだ。」
アルフの目が一瞬細められた。
だがそんな動作はザクには伝わらないし、当然ヒュンが知る由もなかった。
自動航行に設定されたド・ダイが戻ってくるまで・・・後、五分。
ちょうどそのころ、セナは作戦区域の最奥まで到達していた。
周囲にはもう動くものは何もない。
敵の殲滅は当の昔に終わっている。
最終攻撃目標も、もう足元に見えている。
後は攻撃目標であるこの施設を叩き潰すだけだというのに頭痛が酷く、動く気になれなかった。
狂ったように剣を振り回して。
出鱈目に機体を走らせて。
動くもの全てに対艦刀を叩き込んで。
気がつけば、一人になっていた。
周囲には味方も敵もいない。
あるのは白い建物と黒い煙、そして真っ赤に染まった空。
その景色に覚えがあった。
「兄・・・さん・・・?」
おぼろげな双子の兄の記憶。
共に遊んだのは・・・研究所。
毎日のように身体検査を受けて、その後夜が更けるまで遊んでは両親にしかられて。
それは・・・ここだったのだろうか?
だから頭が痛むのだろうか?
必死になって記憶の中の実家を探す。
「・・・・・・違う。」
だが、記憶が鮮明になるにつれて目の前にある研究所との違いがゆっくりと明らかになってきた。
あの建物にはドーム上の屋根があった。
あの建物はもっと大きかった。
近くに湖があった。
・・・そのどれも、ここと生まれた家が別の場所である事を示している。
分かったとたん、言い様のない安堵と怒りが押し寄せてくる。
「壊れろ・・・。」
対艦刀が研究所の外壁を砕き、中で行われていた研究も全て無に帰した。
すでにロケット燃料は尽きていたが、そうする事で頭の痛みは消え、何かに酔っていたような気持ち悪さも消えていく。
ズン・・・。
一瞬の時差の後、研究所の地下から炎が吹き上がった。
ガス管を砕いてしまったらしく、火は急速に研究所を包み込んでいく。
セナはあくまで無感情にそれを眺めていた。
外に広がる肉のこげるような臭いは機体の中までは入ってこない。
だからだろうか?
不思議と人を殺したという感覚はなかった。
だが、達成感や満足感といったものもない。
弱いもの虐めでもしていたかのような後味の悪さだけが残った。
ビー、ビー、ビー。
機内でド・ダイ接近を告げる信号音が鳴り響く。
戦いの時間はとっくの昔に終わっていた。
「・・・Mission accomplishede・・・。」
口の中でぼそりと呟く。
・・・ほんの少し、報われた気がした。
後日、次のような二種類の暗号化書類がサイド3コロニー群のはずれにあるシルヴィア社の本社ビルに届けられた。
第6小隊事後報告書
責任者:シルヴィア=ハーディング
作戦内容:ADNOH社極秘研究施設の撃破
戦果:GMタイプMS三機・攻撃目標の撃破及び周辺施設の完全鎮圧。
捕虜:0人
死者:味方、0:連邦、及び周辺住民、計356人
備考:ガンブレード、MS-06BS用テイル、MS-08RT用背部キャノンの破損を確認、強度にやや難、至急代替品を用意されたし。
新型兵装システム開発案
責任者:アルフ=ガレド
兵装名:ミカエルシステム
詳細:二枚目以降に記載
備考:スワロー(ZIONICに知られるな)
あとがき
●| ̄|_・・・<言い訳の言葉を必死で探し中
えっと、ですね・・・今回短かったですね・・・じゃなくて、いや、最初はこんな設定じゃなかったんです。
アルフは改心してたはずだったし、セナは虫も殺せないようないい子・・・のはずだったんですが15kbほど書いたところで面倒になってきまして・・・あはは、何処で歯車がとち狂ったんでしょうね?(笑い事ではない)
・・・まあ、あれですね、ハンドル握ると性格が変わるとか、あんな感じで。(私はキーボードの前では人格が変わる・・・いや、関係無いか。)
元祖(?)強化人間のフォウやロザミィだってMSに乗ると性格変わっていたわけですし、彼女が強化人間かどうかはさておき、セナもきっとあんな感じだったわけですよ!(力説)決して作者の裏の欲望が・・・とかそういうわけじゃありませんから!
・・・・・・せっかく戦闘が終わったんだし、次は少し艦内の人間事情も書いてみようかな・・・このところダーク形ばっかり書いてる気がするし。<自覚はある&現実逃避
といったところで時間なのです。
ではでは〜アヂュ〜
蒼來の感想(?)
コロニー落とし、毒ガス攻撃、核攻撃etc・・・・虐殺や大量殺人兵器は沢山有れど、直接に虐殺はトラウマになる気がしますね・・・
後・・・ってグヘッッ!!
鈴菜「更新止めてて行き成りシリアスから入るなあ!!! エルボ!o(”>_<)っ★(#’3’)痛!,」
・・・いや、しょうがないじゃん!!仕事で忙しいんだよ!!
観月「それらは理由になりません。(-_-)/~~~ピシー!ピシー!」
Yes,Sir!!(>_<)ゝ
鈴菜「あら?o_ _)oドテッ」
観月「どうしました?御姉様?」
鈴菜「いや、蒼來の変わり身の早さにね・・・」
ふっ、シリアスは少ししか持たないのさ。
観月「某スイーパーさんと同じですわ。」
鈴菜「あそこまでかっこよくないぞ?」
そんなのは百も承知!!
観月「で、「後、〜」の続きはありますの?」
うん、あるぞ。
ダークパラサイトさんもキーボードの前だと「なんぴとたりとも、俺の前は走らせねえ!!」とかいってるのかなあと。
鈴菜「・・・Fか」
観月「・・・Fですわ」
うん、Fだ。
(?)「うなわけあるかああああ!!」イケ、ファンネル!! |||(>_<")○ ・:*[‥…━━━☆)゜o゜(★━━━…‥]*:・
グハァァァァァッ!!(空中に吹っ飛ばされて、脳天から豪快に車田落ち!!)・・・ピクッピクッ(痙攣中)&血の海(合掌)
鈴菜「え?!今の誰の攻撃?!」
観月「・・・あっち(作品)から聞こえたような気がしますわ。」
鈴菜「女性の声だからセナさん?」
観月「ダークパラサイトさんには、ファンネルは無理だと思いますが・・・」
鈴菜「だな・・・」
観月「機体はグフスコールじゃあないみたいですわ」
鈴菜「ああ、ドラグーンもファンネルも宇宙だけだからなあ」
観月「ええ・・・あら、蒼來?」
・・・・ア、アイルトン・セナが・・・
二人「ちょっと待て(ちなさい)ーーーー!!!」


