それは途方も無い矛盾。
それはあまりにも純粋な欺瞞。
それは守るべき姫。
それは倒すべき敵。
それは交わるはずのない平行な直線。
それは常に交わりつづける永遠の同一線。
それは捩れた二重螺旋。
機動戦士ガンダム
神々の旋律byダークパラサイト
第8話『初陣』
苦しいか?
痛いか?
助けを・・・求めるか?
くくく・・・。
残念だったなあ。
助けなんて誰もこねえよ。
俺はおまえを殺さないし、おまえが自ら死ぬことも許さない。
父さん?
ははは・・・おまえは馬鹿か?
よりにもよって自分を捨てた張本人に助けを求めるなんてなあ・・・。
おっと、初耳か?
なら悪かったなあ、希望って奴を潰しちまってよ。
おまえは親父にここに放り込まれた、嘘じゃねえよ。
しかしおまえの親父も悪趣味だよな、保育所代わりにここを使う奴なんか早々いないだろうに。
あ?どうしたどうした、いきなり威勢がよくなったじゃねえか。
俺を殴りたいか?
ならやってみろよ。
そうだ、拳を構えて・・・馬鹿野郎!
そんなパンチが大人にあたるか!!もっと腰使え!腰!
っと・・・そうだ、今のはなかなかよかった。
・・・けどな・・・どんなに本気を出してもおまえみたいな餓鬼が俺にかなうはずが無いんだよ!!
くくく・・・どうした、それで終わりか?
体が痛い?
おいおい、もう弱音かよ。
所詮威勢だけじゃねえか。
そんなんじゃ戦場では生き残れねえ。
そんなんじゃおまえの親父は殺せねえ。
・・・・・・そうだ。
這いつくばってでも相手をにらみつけろ。
両の足が動かなくなっても手だけで相手に近寄れ。
どんなことが合っても相手への殺意だけは忘れるな。
これは・・・命令だ。
ドン!!
白い壁が大きな音を立てた。
よく見れば自分の拳が壁にひび割れを作っている。
「どうしたの?リョウ。」
横に寝ていた女性が不思議そうに俺を覗き込んでくる。
この黒髪の女性は俺のかかりつけの医師で、名はサーシャ=ツダ。
理知的な女性で、基地の皆も一目置いている存在だ。
だが、今は彼女を普段包んでいる白衣は無い。
絹のように白い肌には口唇による吸引後、いわゆるキスマークが無数に残る。
「何でもない、少し夢見が悪かっただけだ。」
「そう・・・。」
彼女は深く追求しようとはしなかった。
俺の頭を掻き抱くようにして自分の豊満な胸に押し付けてくる。
「ねえ、吸って。」
そこにはすでに昨夜のキスマークが大量についている。
だが俺は素直に彼女の言葉に従った。
強弱をつけてその柔らかい肌を吸いたてる。
すぐに彼女の口からは小鳥のような囀りが漏れ始めた。
そのことに気をよくし、さらに彼女の肌へと貪りついていく。
その間、サーシャの手がずっと俺の頭をなでていた。
その感触は俺がこの歳になるまで、この人に出会うまで忘れていたものだった。
「母さん・・・セナ・・・。」
声に出せばそれは涙へと変わる。
涙は肌を伝い、彼女の胸の谷間に落ちた。
「心配しないで。」
サーシャの声が不思議と心に響く。
「あなたが会うことを諦めさえしなければいつか会えるわ。」
だから生き残れと。
彼女はそういいたいのだろう。
だが、俺の望みはそこには無い。
俺は・・・奴を殺す。
それが俺の望みで。
俺の目指すべきものだから。
「アルフ・・・。」
逢いたかった。
殺したいほどに。
全てを壊したくなるほどに。
愛していた。
「シュウ、策敵できてるか?」
リョウが情事を終えたちょうどそのころ、佐渡の沖ではちょっとした異常事態に陥っていた。
「できてるよ。降下予定地点から半径500m以内にGMタイプが3機。2km範囲に航空基地が一箇所。その他はトーチカと戦車が数台。」
深く、岩肌さえ見せないはずの海面に巨大な黒い物体が鎮座している。
鯨などであろう筈が無い。
全長は優に300mを超え、金属質の光沢を放っている。
ましてや背中にカタパルトと進路誘導灯をつけた鯨がいるのであれば見てみたい。
「もう少しわかっていることは無いのか?それではアバウトすぎる。」
海上の巨大物質が異質ならその巨大物質の上空も異質だった。
二機のMSが黒い物体の周囲を飛び交っている(当然ド・ダイに登場しているが)。
「ミノフスキー粒子が濃すぎてこれ以上は不明だよ。あ・・・セナ機、発進シークエンス開始。ド・ダイ接続完了・・・進路クリアー、どうぞ。」
みなまで言わずともよいだろう。
トァハー・デ・ダナンはすでに作戦行動に移っていた。
自艦を空母としての強襲。
潜水艦という兵器の本来の運用法を考えればあまりにも突飛なこの作戦だが、この海域への潜入を果たした事でその八割方を成功させていた。
後はMSパイロットの腕次第。
そしてそのメンバーは疑うに値しない、文句なしの実力者ぞろいだった。
「了解、セナ=ムラサメ、MS−07SS グフスコール・・・出ます!!」
急ごしらえの飛行場から黄土色の塗装の施されたグフが舞い上がった。
セナがこの艦に配属されるのとほぼ同時に配備された特殊改造機で、実質セナにとっての実戦初搭乗機でもある。
一兵卒の身でありながら特機に乗るということは異例中の異例と言ってもいいだろう。
当然の事だが、初めてアルフからこの話を持ちかけられたときはセナも断ろうとした。
自分のような兵学校出の新人が特殊改造機など扱いきれるわけがないというのがその表立った理由である。
もちろんその裏には回りの目線が痛いとか、そういうことも理由として含まれていたのだが、もちろんそんな事を上官に対して言えるわけが無い。
結局、特殊改造機とは言うものの機体としての大きな変更点は少ないからと言い含められてしまった。
確かに、実際に写真で見ても外見上の変更点は少なく、脚部ユニットが肥大化したことと両腕に弾倉が取り付けられたことの他は大きな変更点は無かった。
その上に上官命令やペナルティの件をちらつかされては断る事などできよう筈も無く、不承不承ながらも了承せざるを得なかった。
ただ、本音を言えば特殊改造機に乗る事自体が魅力的な話であったことも確かで、そのときだけは内心で少しほくそえんでいたものである。
特殊改造機は戦場では当然の事よく目立つ。
そうなれば自分の探し人の下にも名前が届くかもしれないと、そんな事を考えていたのである。
だが、現実はそう甘くは無かった。
こんな機体なら無理にでも断っておけばよかった、とセナが後悔したのは機体が艦内に搬入された後の事であり、この機体が「自虐兵器」などという出鱈目な名で呼ばれる失敗作であることを知ったのはもっと後の事だった。
MS史上に残る屈指の名機がガンダムだとすれば、この機体は屈指の迷機だったのだ。
具体的に上げていけば限が無いのでここでは大まかな「自虐的」部分だけをあげてみたいと思う。
まず第一に、この機体には一切の飛び道具が存在しない。
グフはもともと飛び道具が少なく、左手のバルカン以外には何の武装も無い機体だ。
だが、その左の腕部バルカンは完全なフェイクへとその身分をさらに落としている。
ならば背部の武器設置用ジョイントはというと・・・こちらも駄目だった。
本来ならハイパーバズーカやシュツルムファウストを取り付けるべきそこには現在巨大な対艦刀が差し込まれている。
つまるところ極端な話この機体は中距離戦さえ行えない完全な近距離専用機なのだ。
これでは兵器としては・・・最悪の失敗作である。
敵に近づく前に確実に蜂の巣にされてしまう。
武闘家や剣士がAKを持った人間に適うわけが無いのは当然の事だ。
そして、第二はそのものずばり、対艦刀の問題点だった。
某ゲームの武器名そのままにガンブレードと名づけられたこの刀は形状や用途もその武器そのものだった。
柄につけられたトリガーを引く事で武器そのものに変化を与え攻撃力を増す。
だが、少し考えれば分かるとおり、原作どおりに銃弾などを込めてもたいした攻撃力の増加は見込めない。
せいぜい武器そのものの耐久性を大きく落とすのが関の山だろう。
ならどうするか。
この武器の設計者、何を何処でどうとち狂ったものか、ロケット燃料で剣そのものを加速させるシステムを剣の中に組み込んでいた。
当然、嫌がおう無しに武器そのものの威力は上がった。
が、それ以上に武器そのものの危険性が非常に増加した。
取り扱い注意のマークがでかでかと張られた兵器。
そんな危険物を背負って闘う事を心由と思う人間など、ましてやそれしか兵器を持たぬ機体に乗れる人間など、そう多くは無い。
むしろ皆無といってもいいぐらいだった。
それぐらいの兵器なのだ。
グフスコールと名づけられたこの機体、もちろん軍の正式採用機からは外されている。
にもかかわらず。
(一発ももらっちゃ駄目、はきつ過ぎないかな・・・。)
当のパイロットは案外暢気だった
鼻歌をふけるほどではないが、初心兵の気負いもこんな兵器を与えられてしまった事への悲壮感も感じられない。
日ごろの訓練の賜物か。
ただ馬鹿なだけか。
単純に、スキルの問題か。
危なげなく上昇し、すでに飛行していた残りの二機と密集陣形を取る。
そこにちょうどいいタイミングでシュウからの通信が入ってきた。
「おさらいだよ。作戦の成功如何にかかわらず帰艦は一時間後。目標はA-10地点にある研究所。ここまでOK?」
死地へと赴かせる非常な通信。
答えは澱みなく。
滞りなく。
簡潔に。
全員が答える。
「「「OK!!」」」
その答えに満足したのだろう。
若い、いや、幼いオペレーターは返事については何も言わなかった。
「後は各々好き勝手にやってくださいってさ。ただし、赤外線通信はこれ以降完全に不通。指揮権はアルフ中尉に一任されるのでそちらの指示を仰いでくださいって。」
最後の通信を送りながらも、デ=ダナンはすでに潜航の姿勢に移っていた。
ダナンの周囲に無数の白い泡が立ち、その巨体がゆっくりと沈み始める。
「今回の命令は命を大事に、ですから。」
微妙にずれたシルヴィアの交信が最後だった。
従来の潜水艦の規定をはるかに超えた巨体は日本海の黒い海面下に完全に消えてしまう。
だが、というべきか、最悪な事に、というべきか、デ=ダナンの巨体は海中に没してしまえばそのステルス性はアッガイに勝るとも劣らない。
上空に浮かぶ三機のレーダーからもすぐにその姿を消した。
これでもう帰るべき場所はない。
少なくとも一時間、彼女たちは自分たちの帰るべき場所へと帰る術を失ってしまう。
後には元通りの静かな海が残る。
現在地点は佐渡島沖20kmの海上。
風や波はほとんど無く、穏やかな朝といった風情を醸し出している。
「なんだか・・・戦場って感じがしませんね。」
飛行をはじめてから数分後、セナがポツリとつぶやいた。
「初陣なのに気負いとか全然ないんですけど・・・良いんでしょうか、こんなので・・・。」
言葉の前半分は独り言で、後ろ半分は隊長達への質問だった。
この数日で、以前よりは格段に打ち解け、また信頼しあっていた。
とは言ってもそれは二人とも第一印象が最悪だったからに他ならず(それはまた別の機会の話)。
結局のところ関係はあまり変わっていないのだが。
それでもこんな事を相談できるぐらいには信頼関係が構築されつつあった。
目を逸らし自分の操縦桿を眺めてみてもどこか現実にいるとは思えない。
その事が恐怖ともまた違う、一種の不気味さのようなものを感じさせる。
実際には少しでも操縦ミスがあれば海に落ちて一巻の終わり。
これから向かう先でもほぼ間違いなくMS戦になる。
こんな紙くずのような機体で。
操作ミスも。
操縦ミスも。
作戦ミスも。
過信も。
臆病も。
普通でいる事さえも。
その全てが死につながる。
そんな機体だと。
言葉では理解している。
にもかかわらずそれが心に及ぼす影響は限りなくゼロに近かった。
まるで目下の海のように波が立たない。
横を飛ぶドムやザクに目をやってみてもそれは変わらなかった。
そのことがセナを困惑させる。
これでいいのか。
戦場とはもっと恐怖心に満ちた場ではなかったのか?
思考はとめどなく続く。
「確かに・・・変な戦場ね・・・。」
だが、それは前を行くヒュンも感じていたようだった。
しばらくしてやや困惑したような声が返ってくる。
「今これがシミュレーターの映像だって言われたら信じてしまいそうよ・・・。」
状況確認のためだろう。
ドムの背につけられたキャノンが小さく動いた。
「・・・シミュレーターじゃなさそうね。」
どこか安心したようにヒュンの声はトーンを落としていた。
そんな事すらも分からないのだろうか?
それほどまでにこの戦場は狂っているのだろうか?
ふと、不安がよぎる。
だが、それを聞いていたらしきアルフの言葉が不安を一掃した。
「これだけ強い連中集めて、これから行く先には雑魚しかいないんだから、それでいいんじゃないか?」
自身満々に彼はそう言ってのけた。
根拠は・・・ある。
兵学校の主席と。
日本方面軍最強の雌豹と。
黒い堕天使と。
少なくとも現時点ではこれ以上のメンバーは・・・望むべくもない。
これ以上のメンバーは、ありえない。
(そっか。)
(こいつの事さえ考えなければ可、かな?)
その事をセナは無条件に肯定し。
ヒュンは少し捻くれて自分の前衛を任せる少女を睨みつけて。
でもやっぱり肯定した。
「じゃあいっちょやりますか。」
佐渡島は近い。
軽く。
明るく。
だが、確固たる死地へ。
死線の中へ。
合言葉は?
悪魔の地へと向かう言葉は?
「「「GO to hell our God!(我等が主よ、地獄へ落ちろ!)」」」
あとがき
たまには兄の切り口を真似してみよう!な気分のダークパラサイトです。
まず、英語があっているかどうかは不明です。
なので間違いがあったら容赦なく、遠慮なく、不躾に、絶対的な批判をこめて、確実に、・・・メールをください(懇願)。
それだけじゃなくて絵の要請とか、批判とか、作品の要請とか、批判とか、字の間違いの指摘とか、文章の指南とか、作者への個人的な恨み言とか呪いのメールとかウイルスメールとかかみそりメールとか・・・とりあえず何でもいいので。
このところ月に十通ぐらいで結構寂しいです(こんなこと書いてるせいか迷惑メールがほとんどだし。)
そうそう、絵と言えばこの作品のCGをKOTO様にどうこう言ってた話どうなりました?
兄に聞けば管理人が話を通してくれる事になっていたそうで・・・。
もし頼んで駄目と言われたなら何も言いませんが・・・頼んですらいなかったのなら・・・本気で容赦しませんよ?(笑)
っと、忘れるところでした。少し内容的な話をしましょうか。・・・とは言ってもこの話でも結局何も話は進展していないんですよね・・・。
EVAと言い、この話といい、私は終わらせる気があるのかないのか・・・。そもそもこのサイト10年ぐらいは持ちますよね?ね?
・・・脱線してしまいました。
この後の展開としては・・・ぶっちゃけさっさとこの話(0079編)は終わらせてしまいたいんです。
なのでかなり飛ばしぎみにいくと思います。(ご容赦を)
そんな感じです。
最後に、一応一人愚弟を勧誘してきましたが(家族じゃないですよ。年は彼のほうが上ですし。)お気に召しましたでしょうか?
私としてはこいつが変な事を口走らないか?とかすでに口走ってるんじゃないか?とか、いろいろ殺戮のネタが増えそうで嬉しい限りなんですけどね。(笑)
ではでは〜アヂュ〜
蒼來の感想(?)
おお、ようやく兄貴登場ですな。
しかもグフスコール初出撃!!!
・・・今、イグナイテッドと書こうとした・・・<(_ _)>
鈴菜「こらこら、これはSEEDじゃあないぞ?」
観月「ですわね。ところでやはりあの台詞は言うのでしょうか?」
言うんじゃあないか??
鈴菜「ジェットス「お姉様それはドムですわ。」あ、そうか。(・_・ゞ-☆」
ああ、それは私が好きなドム3機の奴だな。
観月「確か、坊「それ違う!!MSじゃあないし!!」あら、そうでしたか?」
・・・危ないなあ。まあ次回には、正解の台詞が聞けるだろ。
それよりも1年戦争だけじゃあなくて星の屑作戦まで行きそうだなあ。
鈴菜「Zまで行くんじゃあないか?映画も公開されたし」
観月「そうですわね、行きそうですわ。しかし、それまでに兄妹が会えるのでしょうか?」
難しいなあ、どうやら兄貴は殺したい相手が居るらしいし。
鈴菜「そっか・・・ところで後書きでCGがという話なんだが・・・」
・・・あれ?だいぶ前に、無理だってメールした覚えがあるんだが・・・
観月「ホントに?」
ああ、KOTOさん可也忙しいので無理という返事を兄の時送ったんだが・・・
あの後聞いてないなあ。
鈴菜「もう一回聞いてみれば?KOTOさん合格したし。」
そうするか、参考はおえかきBBSの作品でいいのかな?
観月「それでいいとおもいますわ。」
ええと来週前までにメール送るね・・・結果は4月の更新ですね。


