守るものがあれば人は強くなれる。


いつだったか、そんな事を聞いた。


凄く納得して、同時に少し怖くなった。


もし彼がいなければ、自分は弱くなってしまうのだろうか?


守る事ができなかったとき、自分はどうなってしまうのか。


考えるだけで怖くて、怖くて、押しつぶされそうになった。


自分が人でないことを思い出す事ができたのは、それからかなりの時間が経過した後だった。









姫君の寵愛byダークパラサイト
第十一話:「轟雷」










その日、東京一体は微かに雲がかかるだけのさわやかな晴れ空だった。


時刻は正午近く。


普段ならば道路を行き交う車や街角で繰り広げられる井戸端会議などといった当り障りの無い光景がそこかしこで見られただろう。


だが、今日だけはそうはいかなかった。


「ただいま東海地方を中心とした関東・中部の全域に特別非常事態宣言が発令されました。速やかに指定のシェルターへ非難してください。繰り返しお伝えします・・・。」


車は止まり、井戸端会議の代わりに、けたたましいサイレンの音と共に町中に設置された全てのスピーカーが一斉に避難命令を発している。


その様に平穏を見出せるはずもなく、あるのは痛々しい喧騒だけだった。


誰もが昼食を取り、テレビをつけ、各々の時間を過ごしている中、スピーカーから、ラジオから、TVから、突然流れ出てきた音。


それは全ての食卓の風景をめちゃくちゃにしてしまうのに十分な効果を持っていた。


第一次直上会戦―――通称E事件から三週間たった今でも、第3新東京市の市民の心の内には未だそのサイレンの音が恐怖の象徴として焼きついている。


誰もが身内の者を失い、身近な者を失った忌まわしい記憶。


そのせいか、どの家庭、職場であってもその避難は驚くほどに早かった。


否、それは避難というよりも逃走といったほうが近かったかもしれない。


押し合い、へし合い、パニックに陥った群衆は我先にと身近なシェルターへと駆け込んでいく。


迷子になった子供の泣き声。


手近なシェルターに避難できなかった者の怒声。


サイレンの中で、ひっきりなしにけたたましいクラクションと何かがぶつかったような衝突音がそこかしこで起こる。


そんな阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる中、この状況を平穏として捉えることのできる数少ない存在であるアキナは、一人避難所とは別の区画へ向けてバイクを走らせていた。


足として使っているバイクは乗り捨てられていた排気量の大きな改造車。


鍵を壊してしまったのでこのままもう一度動かす事はできないだろうが、中々に上々なバイクだった。


その大きさも自分好みだが、何よりも白いボディーに入っている三本の紫色のラインは秀逸だ。


この緊急時にもかかわらず鍵を壊さずに住む方法が無いかどうか探してしまったほどであるといえばアキナがこの車体にどれほどの愛着を抱いたかが伝わるだろうか?


結果としてかぎは壊してしまったが、アキナはこのまま使いまわす気だった。


――――NERV権限で接収しようかな・・・?これ――――


この場合、権限がそこまで及ぶのかという問題は無視しても問題ない。


持ち主には悪いのだがそれぐらいには特務機関NERVの権限は強いし、彼女の地位もそれを裏づけしてくれる。


改造バイクであるということも接収には好影響しか及ぼさないだろう。


排気ガス規正法違反、及び車両の無断改造。


軽犯罪であるとは言え、いずれも立派な法律違反であることに変わりは無かった。


石油を食って排気ガスを吐き出しながら走るこのタイプのバイクは道路交通法が改正された昨今ではほぼ見ることのできない違法車両であり、接収にはそれだけでも十分な条件となる。


「・・・・・・えへへ・・・。」


一体何を想像したのか、アキナはバイクの上で微かに笑っていた。


戦闘開始の二時間前、少なくとも冬月アキナという人物にとって、まだ街は平和な場所だった。









使徒が北極付近で確認されてから数時間。


使徒はゆっくりと、だが確実に日本へと近づいていた。


到達予測地点を示す光点は、日本近海へ向けて着々と進んできている。


「・・・・・・・・・・。」


発令所のモニタを見つめる面々に言葉は無い。


誰もがまだ見ぬ、まだ知らぬ存在が現れるときを見極めるため、両の眼をかっと見開いている。


そんな中、まず真っ先に情報の到来に気付いたのは青葉だった。


「使徒、光学で補足、領海内に進入しました。」


幾分落ち着いた叫び。


それにかぶせられるように正面のモニタに巨大な使徒の全容が映し出される。


そして・・・


「!!」


発令所に集まっていたほぼ全員がその姿に一瞬息を飲んだ。


異様。


その使徒の姿形を形容するにはその一語があれば足りるだろう。


ずんぐりした頭。


芋虫のような細長い身体。


そして、不思議な角度で折りたたまれた二本の腕。


いわゆる3メートルの宇宙人のシルエットに酷似した異質な生物が空を飛ぶ様はことごとく現実感を欠いている。


――――もしここに航空力学の専門家がいれば卒倒するかもしれないわね――――


発令所の片隅でモニタ画面を見ながら、リツコはそんなことを考えていた。


前回の使徒は、まだ許せた。


あり得ない形状とあり得ない強さを有してはいたが、まだ想像の範疇だった。


納得、できた。


だが、今回の使徒はあまりにも現実離れしている。


そのフォルムも、その目的も、そして、恐らくはその能力も。


異質であるために生み出された異質。


未知であるために生み出された未知。


対抗できるかどうかは全くの運任せに近い。


――――・・・・まあ、分かっていた事なんだけど・・・――――


結局、リツコはそう思うことで自分を納得させた。


使徒が異様な存在である事も、自然界の法則が全く通用しない化物である事も、全て分かっていた事だ、と。


それは当然の帰結であり、科学者であるリツコにとってはもっとも許しがたい結果でもあった。


そして、それは味方にしても全く同じ事が言えるのだ。


今回もまた出撃するであろう鬼。


あれもまた、あれの操縦者を含めてその存在そのものが化物だ。


――――化物対化物・・・全く、どこかよそでやってくれないかしら?――――


鬼対宇宙人。


B級ホラーであってもそれほどに陳腐な組み合わせは作ろうとはしないだろう。


アキナの言葉を借りるまでも無い。


銃が強いとか、剣が強いとか、そんな世界は既に外れている。


求められるのはどちらが化物としてよりすぐれているのか、というその結果だけ。


人間などの抵抗は初めから彼らの眼中には無いのだろう。


――――嫌になるわね・・・・。――――


嘲けるような笑い。


それが自分の頬に浮かんでいる事を悟るまで、リツコは暫くの時間を要した。










「カード認証、コード001―087―464:冬月アキナと認定、ゲート、開きます。カードの抜き忘れにご注意ください。」


コンピューター音声のオペレーターの声が定められた警告を継げる。


同時にゴウンゴウン、という重たげな金属音とともにゆっくりと扉が開いていった。


「これはNERV職員専用エレベーターです。NERV職員以外の者のこのエレベーターの利用は認められておりません。もし不正な使用があった場合には戦時法にのっとった対処がなされます、あらかじめご了承ください。また、現在緊急避難警報発令中につき、ジオフロント内では一部電子機器の使用は著しく制限されます。ご確認の上指定の電子機器は電源をおきりください。・・・それでは前へどうぞ。車体の固定が完了し次第エレベーターは動き始めます、座席に座ったまま暫くお待ちください・・・」


半ば記憶してしまった、アキナにとってはあまりにもあたりまえな警告が続く。


それを半ば聞き名不がしながらまるで巨大な生き物の口のようなそこにバイクをゆっくりと押し入れると、少し送れてさほど広くは無い室内に電気が燈った。


同時に背後では再度口が閉ざされていく。


ただ、それらの作業がアキナを喜ばせたかというと必ずしもそうであるとは言えず、むしろ不満点のほうが多かったらしい。


アキナの額には青筋が浮かび始めていた。


何しろ一つ一つの動作が遅いのだ。


どうしようもないぐらいに不効率的な上に、救いようがないほどに愚鈍だときている。


「早く動いてよ!!」


苛立ちを隠せず、アキナは手近な所にあった認証用ボードを殴りつけた。


途端、その行為に抗議するかのような警報音が鳴り響く。


勿論、その行為によってエレベーターが早く動くわけではない。


そもそも、このエレベーターを利用するものがそう多く存在するはずもないのだ。


緊急時とは言え、通常であればNERVの職員はその殆どが本部に詰めている。


アキナのような特殊な事情を持つものがそう多くいるとも思いにくく、自然、スピードよりも頑丈さのほうが優先される。


極端な話、下から上へと避難するためだけに作られたものであるといっていい。


どれだけ叩いても出撃前に手を痛めるという無様な結果しか生みはしないだろう。


「ううぅぅ・・・・。」


即座にそのことを悟ったアキナだったが、威嚇するように唸る事で不満を表現していた。


そんな彼女を見下すように赤色灯が回る。


「さっさとしなさ〜い!!」


叫んでみたりした。


無論、そんな事で弱音を吐いてアキナの言いなりになるようなやわなCPUは、残念ながらこのエレベーターには積まれていない。


「固定完了、稼動します。足元にお気をつけください・・・」


エレベーターは地下800mの奥に広がる巨大な地下空洞、ジオフロントを目指し、ゆっくりとスピードを上げるばかりだった。


「遅い〜。」


だんだんと地団太を踏んでみても意味はない。


残り時間、十分間という時間は誰にでも平等に訪れるものだ。


地上の避難民にも。


地下の戦闘員にも。


どちらにも、全ての民に対し平等に訪れる。


その時間をどう使うのか、その違いしか彼らには存在しない。


「・・・・・・・母さん・・・。」


結局、アキナは十分という時間を微かな隙間から見えるピラミッド状の建物へと視線を注ぐことに費やしていた。


彼女、冬月アキナの目的地にして生まれ故郷。


それなりには巨大な建築物のはずだったが、800mの上空からではさすがに小さく見える。


そこに。


そこに、人類にとっての希望と恐怖の対象が共にいる。


できる事ならば開けたくない、まるでパンドラの箱のようなものだ。


一握りの希望をえるためにはいくつもの厄災が必要となる。


誰にも知られず、厄災達はこのピラミッドの中で牙を研いでいる。


アキナ然り、ゲンドウ然り、その他、いろいろなメンバーも皆、どこかで牙を研いでいる。


――――・・・ほんと、待ったなし、だよね・・・――――


第三使徒の進攻から三週間。


十分な急速は取れたが、それがすぐに準備が完了した事にはつながらない。


シンジはいない。


ゲンドウはいない。


守るべきものは、あまりにも少なく、守ってくれるものは皆無に近い。


頼るべきは己だけなのだ。


――――できる・・・?――――


自問。


サキエル戦の折にも同じ事をした。


それは彼女であって彼女で無かったかもしれない。


だが、答えは変わらない。


――――・・・やる!!――――


それだけだった。







「総員第一種戦闘配備」


ゲンドウが外に出ているため臨時で総司令職についた冬月の号令がかかる。


低く、力強く、ほんのひと時の「ヒト」による抵抗の時間が来た事を告げる。


それに伴って発令所全体があわただしく動き始めた。


上から下へ。


中央から末端へ。


全ての部署が慌しく動き回る。


当然、それらの命令に合わせて地上の対空迎撃システムも作動し始めた。


山腹のミサイル基地や対空ロープウェイ等が途切れることなく火線を吐き出し、幾重にもならんだ戦車大体が集中砲火を浴びせ掛ける。


目標は第四使徒。


現れた新たな天使の横っ腹に、頭に、次々と砲弾は直撃する。


そのたびにモニタ内の使徒の体表に爆発が起こった。


赤い爆焔はそれすらも身体の一部であるかのように使徒を取り囲み、焼き尽くすための熱を放出する。


しかし・・・止まらない。


まるで蹂躙するものがどちらであるのかを見せ付けようとするかのように、ほんの一瞬スピードを緩める事すらしない。


「ATフィールドか・・・税金の無駄遣いだな・・・。」


冬月があきれたように呟くが、それに同意するものはいなかった。


それぞれに、死なないために必死なのだ。


誰もが自分のみを守る事に必死で、その声を正確に聞き取ったものが何人いたのかさえ疑問だった。


できる事なら、EVAなど出したくはないのだ。


狂ったようにミサイルを吐き出し続ける基地が、戦車が、彼らにとっては唯一の希望なのだ。


EVAに縋りたくないのだ。


「使徒、箱根湯本を通過、現在対空防空システム稼働率48.9%」


「第三新東京市への到達予測時刻、午後二時」


だが、各人の奮闘も虚しく第四の使徒はサキエルと同じようにNERVへの道をたどっていた。


ゆっくりと、まっすぐに、確実に。


「委員会からEVAの出撃要請が来ています!」


やがて、「ヒト」による抵抗はほんの一部の策を残し、万策が尽きる。


「ここまで・・・ね。」


何もできぬまま、何もなし得ぬまま。


人は自らの戦いを化物たちに譲る。


万を越える人の行く末を、化物にたくす。


「初号機、及び零号機、スクランブル。発進準備に入れ!」










ズウウウゥゥゥゥンンン


腹の底から響いてくるような重低音が空を震わせる。


一度ではない。


二度、三度。


四度、五度。


まるで花火大会でも始まったかのように空気が切り裂かれ、鳴動する。


そのたびに、東の空が赤く染まる。


その音が何の音であるのか、この町に住むもので知らぬものはいない。


「ねえ、ナッちゃん・・・もう帰ろうよ・・・。危ないよ・・・。」


・・・・・・その場に不釣合いな、泣き出しそうな少女の声が聞こえた。


この時、上空を飛ぶVTOLのパイロットたちがもう少し注意深く地上を眺めていれば、あるいは中々に不思議な事態に遭遇できたかもしれない。


「何言うとるんや?後ちょっと、って看板も出とったやん。」


「だって・・・危ないよ・・・。」


「ほんなことあるかい。あのな、ノゾミちゃん、あんな中でおったかて、死ぬときは死ぬんやで。やったらちょっとでも安全な所のほうがええやん。」


「え・・・うん・・・。」


「ほれにこっちにはノゾミちゃんのお姉ちゃんもおるんやろ? やったらちょっとでもいっしょにおりたいいうんが人情ってやつやろ?ちゃうか?」


「・・・え・・・うん・・・。」


警報の鳴り響く中、二人の幼い少女が広い広い道のほぼ中央で話し合いをしている。


その図は見ようによっては酷く滑稽で、その上シュールだ。


「やったら早よ行こ。時間喰っとったらほんまにミサイル飛んでくるかも知れんし。」


「・・・・・・分かった・・・。」


一人が促し、もう一人が渋々ついていく。


力関係のはっきりした友人関係だった。


だが、それ故に上手くいくのだろう。


特にこの二人の場合その傾向が顕著に表れている。


「ヌエ兄ちゃんやったら、守ってくれる。・・・絶対に。」


関西弁の少女はすぐに弱気を起こし帰ろうとする連れ合いの少女に半ば呆れながらもゆっくりと歩を進めていく。


トイレを名目に小学校に設けられた避難所を抜け出してから十分。


目的とする地はすぐそこまできていた。









「マヤ、出撃の前に一つ・・・いいかしら?」


出撃予定時間の十分前。


パイロット専用更衣室からの突然の呼び出しに、始めは戸惑った。


呼び出したのはNERVナンバーVにして最強のゼロナンバーパイロット、冬月アキナ。


ほんの数週間前に自分を殺そうとした、彫像のように美しい少女。


「はぁ。」


生返事を返すが、アキナはそれを肯定と受け取ったらしい。


じゃあまっているわね、とだけ告げてさっさと通信を切断してしまった。


何が目的なのかすら、わからない。


分からないが、嫌な予感はあった。


正直、行きたくなかった。


憎悪の火の灯った目を身体が覚えていた。


「行かない・・・ってわけにもいかないんだろうな・・・。」


自然溜め息が洩れる。


それでも、まるで呼び出しを喰らった苛められっ子のようにのろのろとオペレーターシートから立ち上がり、マヤは目的地へと向かった。


それほど距離はないが、足が重く、中々思うように前に進めない。


ほんの数十メートルが、遠い。


原因は、あの少女だ。


悪い子ではないのだろうが、自分の欲望に正直すぎるあの少女。


「何で私・・・?」


独り言に近い質問。


薄暗い通路を行き交う人は多いが、答えるものはいなかった。


そのことがさらにマヤを陰鬱にさせる。


「別に・・・他の人でも・・・。」


ぐちぐちねちねちと愚痴を言う。


だが、そうこうしているうちに足は更衣室の前までマヤの身体を運んできていた。


「・・・・・・はぁ・・・・・・マヤです。」


軽い溜め息と共に扉をノックする。


追い返される事を期待していたが、中からは入っても良いという返事が返ってきた。


「では・・・失礼します。」


陰鬱な気分のまま気持ちのまま扉を開ける。


だが、次の瞬間彼女は自分が何のために呼ばれたのかなど全くどうでも良くなっていた。


――――・・・・?!!――――


途端、目の中に飛び込んできたのは鮮やかな朱。


一瞬目が色彩の変化についていかず、朱というその色だけが目の中でいっぱいに広がっていく。


――――赤く


――――紅く


――――朱い


床も。


壁も。


天井も。


林立するロッカーも。


部屋全体が、赤い。


「ああ、やっときたの。」


その赤の中央。


部屋の中で唯一の机に、ナイフを手にした悪魔がわらいながら、彫像のように座っていた。


まるで、それが悪魔だけに与えられた特権であるかのように悪魔は机に座していた。


右手に巨大なカッター状のナイフを。


左手には無骨なサバイバルナイフを。


全身に返り血をあび、足元には細切れの肉片を。


悪魔というより殺人鬼。


殺人鬼というより解体者。


「あんまり遅いから、こんなに小さくなっちゃったじゃない。・・・これじゃ掃除するの大変よ。」


転がった骨の欠片を足先でつつきながら、紫の悪魔は哄笑する。


普段は結ばれている黒髪が、結びを解かれて宙を舞う。


その様を、綺麗だと思った。


思ってしまった。


凄惨な殺人現場であるはずなのに、嫌悪感は沸いてこなかった。


それよりも先に、言いようのない憧憬の念と恍惚感が沸き起こった。


「後片付け、お願いして良いわね?マヤ。」


ナイフを両足のホルスターに収めながら、悪魔は笑う。


笑いながら、近づいてくる。


一歩。


二歩。


三歩でマヤの目の前までたどり着いた。


そこで、まるで幼子がそうするかのように顔を覗き込んでくる。


「いつもならゲンドウかコウゾウに頼むんだけど・・・」


覗き込んでくる目は、以前の妖火など比較にならないぐらいの赤だった。


周りが赤くなれば、目の色は赤くなるのか。


そんなどうしようもない事を考えてしまいそうなほどに、普段黒い目は真紅に染まっている。


「あなたはアキナのお気に入りみたいだから・・・。」


まるで、それが赤の他人の事であるかのように悪魔は言葉を紡いでいく。


だが、その言葉に疑問をさしはさめるほど、マヤの神経は強くも太くもなかった。


「特別に、やらせてあげるわ。」


「・・・・・・。」


そのような光栄は必要ない。


いらない。


言おうとした言葉は言葉にならず、マヤは何が何なのかすらわからぬままにただただ頷くばかりだった。


「じゃあよろしく。」


立った一言を残して悪魔はロッカールームを出て行ってしまった。


退室していく悪魔の目線の先に、マヤはもういない。


まるであきやすい猫のように、彼女はもう既に興味を別のものに移っていた。


「あ・・・・・・。」


また取り残された。


やっと一人になった。


二つの思いが鬩ぎあう。


だが、彼女がすべき行動は一つしかない。


即ち、雑巾を持ってきてこの部屋を掃除すること。


「大変そう・・・。」


血塗れの部屋を見て、感想がそれしか出てこない。


なぜか、少し悲しかった。











あとがき

どうも、暑さで茹蛸同然のダークパラサイトでし。

です、と入れようとしたらでし、になったのでし。

面白いのでこのままいくでし。(一時的MYブーム)

さて、アキナにはどうやら突発的な殺人衝動と盗難癖というなんだか主人公にあるまじき特性があるようでしね。

まあ前者は正確にはアキナのとった行動とは言いがたいのでしがこのままでは行き先は少年院と相場は決まっているのでし。

さっさと少年院でも何処でも入ってシリーズ終わりにならないかな?とか思ってるのは公然の秘密でし。

今回はこんなもんなのでし。



・・・・・・あ、そうそう、前回どこぞのたわけ(自分)が二話構成〜とか言っていたようでしがこのままでは下手をすれば四話構成ぐらいになってしまいそうなのでし。

管理人と作者の両方が生きているならもうすぐ出せると思うのでしが何分自他共に認める嘘吐きの言う事、期待せずに待っているといいのでし。

蒼來の感想(?)
盗んだバイクで走り出すぜ!!
鈴菜「ええと・・・戦国BASARA2の伊達軍だっけ?」
観月「はい、確かバイクではなく馬のはずですが。」

うん、その通り。
元ネタは尾崎豊の「盗んだバイクで走り出す〜♪」つう歌詞がある「15の夜」なんだよね・・・
鈴菜「ああ、蒼來は死んでから5年後にはじめて知った歌手だね。」
それを言うなーw
観月「相変わらず、B'z以外のことには興味を示さないのですわね。>音楽関係」
それも言うなーw
それよりも来ました、第四使徒。
リツコさん・・・そんな細かいこと言わないで簡単に「大人のおも・・
・グフウウウウウウウウッッ!!
鈴菜「 前話からのネタ引っ張るな!!カカトオトシッ ( ・_・)_θ☆( >_<) ゲシッ」
観月「しかも不潔ですわ!!」

ううううう・・・・o_ _)o
鈴菜「じゃあ、十二話も来てるからそっちへ行くぞ。」
観月「先に行きますわね、蒼來。」

あい・・・マヤちょんは潔癖症だから、その場で気絶すると思うのですが・・・
まあ次で描写あるかな・・・では次に逝・・・
ドカッッ!!ひゅ〜〜〜〜(飛んでいく音w)
冬月アキナ「あ、いけない轢き飛ばしちゃった!!・・・ま、いっか、特務権限で黙らせようっと♪」