門番が執務室へと持ってきた知らせに、カルバンは一人ほくそ笑む。
この日のために、珍しく兵舎に酒などを差し入れて新入りの兵士を買収しておいた。
日々の公務に終われ、自分では情報を集められない城主とは違い、自らの足でカルバンを見張りに来ることができるイグニスには自分の動向が筒抜けになっている。それが面白くない、と新入りの兵士を取り込んでみたのだが――予想以上の収穫があった。
曰く、兄騎士の方は色街の常連である。
おかげで愛娘に手を出していない事も確認がとれた。
清廉潔白が服を着て歩いているかのような兄騎士の醜聞に、カルバンはほんの少し――それこそ、有るか無いかわからないほど微かに――好感を持った。
(所詮は男よ……)
一日中カルバンに張り付いていては、溜まるものが抜けない。それも、カルバンを見張っている以外の時間は、極上の美少女である姫君の側に控えているのだ。溜まる一方では、男としては辛い。
色街に通うような性の快楽を知っている男なら、なおのこと溜まったものを抜きたくなるはずだ。
一番手軽に、それも後腐れなく抜ける場所で。
(さすがに町へ出たか。さて、予定通り一時間で戻ってこられるかな……?)