音を立てないようにそっと台所のドアをあけ、は台所へと入る。
 開けた時同様に、音を立てないようにドアを閉めると、はその場に座りこんだ。というよりも、むしろ腰を抜かしたと言った方が正しい。

「〜〜〜〜っ!!」

 急速に体中の血液が顔に集まるのを感じ、は床に突っ伏す。背筋を駆けのぼってくるむず痒さに耐えようと拳を振り上げ――――――まさかそのままの勢いで床を叩くわけにもいかず、は振り上げた手で首筋を押さえた。
 の手の下は、先ほどイグラシオが顎を―――髭ともいう―――のせた場所だ。
 チクチクとした髭攻撃の終わりに、ちゅっと唇を落とされた――――――

「…………」

 ぽっと頬を赤く染め、は床に額を押し付ける。
 板張りの床が火照った顔の熱を吸い取ってくれて、気持ちが良かった。
 家人が寝静まった夜中であるため、情けなくも赤面した顔は誰にも見られていないのだが、は恥らって身悶える。

 さすがは騎士。

 たまにが気恥ずかしさで身悶えるような行為を、平然としてみせる。
 親愛のキスや女性を大切に扱うことを当然と考えるイグラシオにとっては、なんの意味もない行為であろう。そう解っているので、その場でうろたえることが悔しく、促されるまま台所へと逃げ出してきたが――――――体を離したために余計に生々しく思い出されるイグラシオの体温と息遣い。それに誘われて思いだされた先日の見事な裸身に、は両手で頬を押さえる。冷たい指先が心地よい。






  

 はむっつりだと思います。