(……あ、泣いてる)
明かりとりの窓から差し込む陽光の中、は礼拝堂の床を磨いていた手を止めた。
それから上半身を起こし、首を廻らせる。長椅子が連なる礼拝堂に、自分以外の人間はいない。子ども達もネノフも、自分たちがなすべき仕事をしていた。その仕事の一つとして、に本日割り振られているのが礼拝堂の掃除だ。
泣き声は礼拝堂の正面にあたる出口からではなく、孤児院への近道となる裏口の方角から聞こえていた。礼拝堂の正面から出て前庭を横切り孤児院の中へと移動するよりも、裏口を出て庭を経由し、また孤児院の裏口から中へとはいる方が早い。裏庭は畑にも繋がっているので、孤児院の敷地を出て村へ降りる意外の用事では、は主に裏口を使っていた。
その裏口方向から聞こえる赤ん坊の泣き声に、は思考を廻らせる。
(この泣き方は……おしめかな?)
そう至った己の考えに、は苦笑を浮かべた。
ミューという名前の赤ん坊が孤児院に着てから、まだ十日も経ってはいない。が、その世話を一任され、ネノフや子ども達の手を借りながらではあったが食事やおしめの世話をするようになり、の耳は自然とミューの泣き声を拾い取るようになった。もちろん、遠く離れ過ぎていれば聞こえるはずもないが。孤児院の敷地中であれば、どこにいてもほぼ聞きのがさない。
抱き上げるのは未だに苦手だが、泣き声だけでおしめが濡れているのか、お腹を空かせているのかは聞き分けられるまでになった。
は腰をあげ、水の入った桶で手を洗う。
おしめを換えるにしろ、お乳の準備をするにしろ、床を磨いていた手は洗わなければならない。
ネノフと共有の前掛けで手を拭きながら、は裏口へと歩き出す。
(イオタには日向ぼっこをさせてあげてって言っておいたから……)
日当たりのよい場所にいるだろう。
そして、泣き声は裏口の方向から聞こえていた。ということは、日当たりの良い玄関ではなく、裏庭にイオタとミューはいる。正面玄関ほどではないが、裏庭の日当たりもよい。他の子ども達が畑を手伝っているので、イオタがその姿が見える場所を選んだとしても、なんの不思議もなかった。
(あれ?)
戸口の前に立ち、は足を止める。
気のせいでなければ、ミューの泣き声はのいる礼拝堂へと近づいてきていた。
(イオタ……にはさすがに無理だよね?
じゃあ、エプサイランが連れて来てくれるのかな?)
見守るぐらいならばイオタに任せても大丈夫だ、とはミューをイオタに任せたが。
連れ歩くという意味では、イオタにミューを安全に運ぶことは無理だ。乳児と幼児とはいえ、体格差はさほどない。移動させるという意味でだけならば可能かもしれないが、大人であるでも長時間抱いているのは重いと感じるのだ。それをイオタが『安全に』『持ち運べる』わけはない。
ということは、裏庭で家畜の世話をしていたエプサイランがイオタの代わりにミューを抱き、のいる場所へと連れてこようとしているのだろう。
ドアの向こうから聞こえてきた泣き声と足音。それから続いたノックの音に、は首を傾げた。
子ども達であれば、ノックなどせずに赤ん坊を連れて飛び込んでくるはずだ、と。
「はい?」
なにか変だ。おかしい。
そう思いながらが裏口のドアを開くと、そこには予想もしていなかった人物が赤ん坊を抱いて立っていた。
「……エンドリュー様?」
ミューを抱いた少年騎士との意外な組み合わせに、は数回瞬いたあと、ますます首を傾げた。
ミューを抱いたエンドリューの姿を、は失礼ながらまじまじと観察した。
違和感がある。が、泣き続ける赤ん坊に対し、まなじりを下げた騎士の姿は情けなくも可愛らしく、逆にしっくりとくる気もしてくるので不思議だ。
日本でいうのなら、まだまだ子どもと見られる年齢のエンドリューではあったが、この世界ではそうでもないらしい。結婚適齢期も早く、すでに結婚をしていてイオタぐらいの子どもがいてもおかしくは無い年齢だと、ネノフから聞いている。幼さの残る顔つきをしているが、ここでは立派な大人として扱われていたし、エンドリューもそれを理解しているのか大人として振る舞い、その責任をしっかりと果たしている。同年代の日本の少年に同じ事を求めても、それは不可能であろう。
は赤ん坊を抱いたまま一言も漏らさないエンドリューに、どう反応を返したものか――――――と考えて、気がついた。
ミューを抱くエンドリューの袖口と、腹部の色が濃い。
つまり、ミューはエンドリューに抱かれている時に粗相をしたのだ。
「……す、すみませんっ!」
既に起こってしまった事実に気がつき、は咄嗟に謝罪の言葉を口にする。
赤ん坊のした事とはいえ、その世話を任されているのは自分だ。赤ん坊の粗相は、の不始末ということになる。
「いえ、赤ん坊のしたことですから」
頭を下げるに、エンドリューは苦笑を漏らす。
言葉も話せず、自分ではまだ移動することもできない赤ん坊が、抱かれている相手の腕の中で粗相をしても、それは抱いていた人間に運がなかっただけだ。――――――そう思うしかない。
それに、エンドリューに害意がなかったとはいえ、赤ん坊にとってエンドリューは見知らぬ人間だ。それに突然抱き上げられて、怖かったのかもしれない。
そう考えれば、赤ん坊を責めることも、その世話を任されたを責めることもできなかった。
「それよりも、いつまでも濡れたおしめでいさせる訳にもいきませんので……」
「あ、そうですね」
エンドリューに差し出されたミューを受け取り、は尻を触る。濡れてはいるが、柔らかい感触は無い。どうやら、おしっこを漏らしただけで、『大きい方』はしていないようだった。これならば、尻をキレイに拭いてやり、おしめを換えるだけで良いから楽だ。
エンドリューの腕から返還されたミューを抱き、はその背中を軽く叩く。おしめが濡れているため、完全には泣き止まなかったが、幾分泣き声は小さくなった。泣くのに夢中での胸へと吸い付いてこない赤ん坊に、はホッと息を吐く。
まずは孤児院の自室へと戻り、乾いたおしめに換えてやらねば、と裏口から一歩足を踏み出すと、孤児院の裏口から双子が飛び出してくる姿が見えた。
「ママ!」
「おしめ、持ってきた」
どうやらミューの泣き声に反応していたのは、だけではなかったらしい。
言葉通り、白い布をもったイータとテータがの元へと走り寄ってくると、は二人に微笑む。
本当に、出産経験もないが無事にミューの世話ができているのは、今のように子ども達が手を貸してくれるからだ、と改めて実感した。
「あら、ありがとう」
そうが礼を言うと、双子もつられた様ににっこりと笑う。
は赤ん坊の世話を支えられて助かっているが、子ども達は子ども達で、その手伝いをできることが嬉しいらしい。
意識せずとも根付いた『支えあい』の精神が、とても尊い物だとはこっそり感謝する。
誰へ捧げられる感謝かは、本人にも解らなかった。
「ママ、がんばれ〜」
「ばれ〜」
イータとテータがおしめの換えを持って来てくれたため、は礼拝堂の長椅子にミューを寝かせる。
手は洗った。おしめは手元にある。問題のミューも礼拝堂へとエンドリューが連れてきた。となれば、礼拝堂で赤ん坊のおしめを換えることになんの問題もなかった。
は乾いたおしめを手に取ると、気を引き締める。
お乳作りは簡単だ。混ぜる物の量と手順を間違えなければいい。
それを与えるのはもっと簡単だ。布に染み込ませて、哺乳瓶のように吸わせてやればいい。
そして、おしめ換えは――――――汚物をキレイにするだけならば簡単だ。それはただの作業であるのだから。
「いきますっ!」
何やら袖捲くりでもしそうな剣幕のに、遠巻きにそれを眺めていたエンドリューは眉をひそめる。
がしようとしている事はおしめ換えであり、剣を持っての戦や薪割りではない。力を込める必要も、気合を入れる必要も、エンドリューには感じられなかった。
ややぎこちないながらも慣れ始めた手つきでは赤ん坊の濡れたおしめをはずす。それから、こちらは手際よくお尻周りキレイに拭いている。今回はおしっこのみなので、作業も少ない。すぐにキレイになったお尻に、乾いたおしめを巻きつけ――――――が妙に気合を入れていた理由を、エンドリューは知ることとなった。
「……完成?」
僅かに不安そうに首を傾げながら、は双子の顔色を伺う。
見た目には、誰が見ても問題がない。ミューのおしめはキレイに巻かれていた。形だけを見るのなら、完璧と言って良い。
が、見た目で判断ができず首を傾げる双子に、はミューの脇に手を入れ、長椅子の上に立たせてみた。
――――――ずるっとおしめはずり落ちる。
それを見た双子は、情け容赦なく判定を下した。
「しっぱーい!」
「やりなおし」
笑顔で再チャレンジを言い渡した双子に、は肩を落とす。
お乳を作るのも、寝かしつけるのも、あやすのも、お尻をキレイにすることも覚えた。が、どうしてもおしめを着けることだけは、未だに覚えられなかった。というよりも、自分はちゃんとネノフの作業を見て、何度も教わりながらそれをやってきている。にも関わらず、一人で挑むと一度では成功しないというのは、どういうことだろうか。完成した形を見る限り、どこかが間違っているとは思わないのだが、いまひとつおしめの安定が悪い。立たせると必ずといって良いほど、おしめはずり落ちた。では、寝かせておくだけならよいか? とも思うが、それだと今度はいつの間にかおしめは解けてしまっている。
この世界に紙おむつがないのは仕方がないのかもしれないが、それが恨めしかった。
「ううっ……」
もう一度、最初からやってみよう、とは乾いたおしめを解き、ミューに向き直る。
「こうして、こうで、こうなって……こうでしょ?」
手際よくミューのおしめを換えていたネノフの手順を思い出しながら、は同じように手を動かす。途中、ポイントとしてビータに教えられたコツも折りいれて、完成。
さて、今度はどうだろうか? と確認のためにミューの脇の下に手を入れて持ち上げると――――――やはりずるりと、おしめはずり落ちた。
「またしっぱい」
「やりなおし」
容赦のない双子の判定に、は眉をよせる。が、投げ出すわけにもいかない。
「……なんで、みんなはパパッとできるの?」
等と泣き言をいいながらも、は三度目の挑戦にうつる。
見目良くおしめが付けらました。
立たせて見せます。ずり落ちました。
はい、もう一度……と繰り返すと双子に、エンドリューは首を傾げる。
エプサイランから、ミューの世話はが任されている、と聞いたので、ミューをの元へと連れてきた。が、これではネノフに直接……もしくは、エプサイランに任せた方が、よほど赤ん坊のストレスも少なく済む。
排泄の処置だけは手早く済ませられたが、いつまでも下半身を露出したままでは、赤ん坊の身体が冷えてしまう。
「……貴女は、何をしようとしているんですか?」
ついつい洩れた険のある声音に、エンドリューは眉をひそめる。
に対する苛立ちが、つい声音に出てしまった。
それに答えるの声も、エンドリューの内心が解ったのか険を帯びる。
「……見たとおり、おしめ換えです」
はエンドリューに振り返らないが、作業の手が止まっていた。
エンドリューは振り返らないに、内心で蟠るものを押し込める。それから可能な限り平静を装って答えた。
「……そんな締め方では、おしめが落ちるのは当たり前です」
「え?」
一瞬前とは打って変わり、いっそ穏やかといって良い響きを持ったエンドリューの声に、は驚いてエンドリューを振り返る。
エンドリューはと目が合うと、すぐに顔を逸らした。
「……エンドリュー様は、おしめ換えができるんですか?」
「できます」
きっぱりと返すエンドリューに、は瞬く。
それから、表情には出さなかったが、内心で毒づいた。
(だったら、何もわたしのトコまで連れてこなくたって……)
エンドリューがミューのおしめを換えても良かったはずだ。
意外な発言ではあったが、それ以上にエンドリューの物言いを不快に思い、は首を傾げる。
まさか、結婚どころか恋人もいない身で『育児を手伝わない夫に不満をもつ妻』の気分を味わうことになるとは思わなかった。
エンドリューは僅かに首を傾げているだけのから、今度こそ『不快だ』と思っていることは間違いないと悟った。お互いに言葉の険はいくらか取れているが、どこかよそよそしい。出合って数回という間柄なので、『他人』であることは確かであったが。
無言のままに自分を見つめるに、エンドリューは口を開く。
何を考えているかは、なんとなくわかった。
「ミューの世話は、あなたの役目だと聞いていましたので」
だから、赤ん坊をの元へと連れてきた。
もちろん、それがこんなにも手際の悪い『母親』だと知っていれば、その場で自分かエプサイランがおしめを換えていた、と言外に込めて。
澄ました顔でそう答えたエンドリューに、は視線をミューへと戻す。エンドリューの顔をこれ以上見ていたら、手を―――むしろ、拳かもしれない―――出さずにいる自信はない。
(なんとなく思ってたけど……)
エンドリューは自分を嫌っている。
そう、確信した。
とはいえ、には嫌われる覚えはない。逆に言えば、好かれる覚えもないが。
出会ったばかりの頃はそうでもなかったが、イグラシオやネノフとは違うどこかを突き放すような響きを持つエンドリューの言葉に、もエンドリューに対してしっかりと苦手意識を持ってしまった。嫌味を言われればそれをそのまま返してしまう相手と、仲良くなれるはずもない。
――――――と、不意にミューが激しく泣き始めた。
どうやら、とエンドリューの険悪な雰囲気を感じとり、不安になったらしい。
抱き上げても、体を揺らしても泣き止まないミューに、とエンドリューは困惑する。一瞬前まで険悪な雰囲気であったことなど忘れたかのように仲良く閉口し、ミューを泣き止ませようと知恵を絞った。
「あらあら、どうしたの?」
不意に聞こえた第三者の声に、これぞ天の助け! とエンドリューとはネノフを振り返る。
二人同時に振り返られたネノフは、苦笑を浮かべていた。
「シスター!」
そう呼ぶの腕に抱かれた赤ん坊が下半身裸でいることに気がつき、ネノフの苦笑は深まる。
この普段は静かな礼拝堂で何が起こり、どうしてミューが裸で泣いているのか、その理由がわかった。
「あらあら、あなたのママは、まだおしめの付け方を覚えていないのね」
泣きやまないミューを受け取り、あやし始めたネノフには情けなくなり、俯く。
たしかに、何度も教わっているというのに、自分は満足におしめを換えられてはいない。
俯いたに気づかず、双子がネノフに『報告』をする。
「あのね、ママ、いっぱい失敗したの」
「だから、エンドリューさまに怒られた」
この『報告』に、自分の成績をばらされたは口を閉ざし、素行を暴露されたエンドリューは絶句した。
や双子は良い。彼女達は自分が何を言おうが、『知らない』のだから。
が、ネノフは『知っている』。
エンドリューがの優位に立っていられる理由と、それ以前の自分の姿を。
「あらあら。
エンドリュー様だって、昔はおしめが換えられなかったのに。
それなのにママに怒るだなんて、おかしいわね」
わざとらしく眉をひそめ、過去の自分を暴露するネノフに、エンドリューは眉間を寄せた。
あまり知られたくない話を、一番知られたくない人物に、そうと知っていてばらされる事ほど、心臓に悪い事はない。
「ネノフ、その話は……」
忘れて欲しい。
そう続けたかったのだが、一番知られたくない人物は、それを聞き逃してはくれなかった。
「え? そうなんですか?」
ちらり――――――とエンドリューの顔色を伺った後、はネノフに言葉の続きを促す。
それを受けて、ネノフの苦笑はさらに深まった。
「うふふ。イグラシオ様のお供で、ここに来るようになってから……
イータとテータのおしめを換えて、覚えられたんですよ」
だから、エンドリューも最初からおしめ換えができた訳ではない。
そう言外に込められたネノフの言葉に、は頬を緩める。
偉そうに『おしめを換えられる』と言ってはいたが、自分だって最初は出来なかったのではないか、と目を細めてエンドリューを見た。
「……なんですか? その目は」
「別に? 偉そうなこと言っておいて、
自分だって最初は出来なかったんだなーなんて、思ってませんよ?」
「思っているじゃないですか」
険悪とは言わないまでも、再び言葉の応酬を始めたとエンドリューに、ネノフは目を細めて笑う。ネノフの腕の中で、ミューの泣き声は治まっていた。
「さあ、。もう一度教えるから……
いえ、エンドリュー様にお手本を見せていただきましょうか」
「え?」
ネノフの言葉に、は首を傾げる。と、そうしている間にネノフはミューをエンドリューの腕へと託していた。
「お願いします」
「……はい」
ミューを受け取り、早速おしめを着けようと長椅子に寝かせたエンドリューに、ネノフは囁く。
「たぶん、はエンドリュー様と同じところで引っかかっているんだと思います」
そう囁くネノフに、は首を傾げ、エンドリューはその視線から逃げるように顔を背けた。
「……で、完成です」
敬愛するイグラシオですらも頭の上がらないネノフにやり込められて、エンドリューは淡々とに説明をしながら赤ん坊におしめを着ける。
無駄のないエンドリューの説明には時折頷きながら、その見事な手並みを見守った。
「……キレイ」
念のため、とミューの脇の下に手を入れて立たせ、おしめがずり落ちないかを確認したが、エンドリューの着けたおしめはぴったりとミューの丸いお腹に着いている。がつけた物と同じ布なのだが、つける人間が違うだけで、こうも違うものか……とは素直に感心した。
「……エンドリュー様も、シスターに教わったんですか?」
すっかり険がとれ、素直な賛美を向けるに、エンドリューは居心地悪く言葉を濁す。
単純で時折驚くほど豪胆な行動を見せるは頭の切り替えも早い。
先ほどまでの険悪な雰囲気など、の頭の中にはもうないのだろう。
「いえ、自分は団長から教わりました」
「……イグラシオ様って、おしめ換えもできるんですか?」
聞き返しながら、想像する。イグラシオの大きな身体で、小さな赤ん坊のおしめを換える姿を。
少々の違和感は拭えなかったが、似合わないこともない――――――かもしれない。そういえば、イグラシオは赤ん坊を抱くのにも慣れているようだった。が押し付けたミューを、慌てることなく抱きとめていたし、片手でやすやすと抱いてもいた。もしかしなくとも、のようにおしめ換えに悩むことも、寝かしつけるのに悩むこともないのだろう。
偉丈夫の代名詞ともいえるイグラシオの意外な姿に、は眉を潜めた。が、エンドリューやイグラシオにしてみれば、年少者の世話をすることなど普通のことだ。が疑問に思うことの方がおかしい。
「さて」
さも意外だ、とばかりに首を傾げるを尻目に、エンドリューはミューの着けたばかりのおしめを解いた。
「あ、え? なんで? 折角つけたのに……」
そう首を傾げるに、エンドリューはしれっと答える。
なんとなく、わかった。がおしめの着け方を覚えない本当の理由を。
「復習です。
ちゃんと覚えたか、今度はあなたが付けてください」
こうやればできる。そう教えながら、教える側が作業を終わらせてしまっては、なんにもならない。
ちゃんと覚えられていないことも、その場では出来ているのだから、これでいいのだろうと半端に覚えたままになってしまう。それでも作業は一応終了するが、結局はのためにならない。
どれだけ時間がかかろうとも、見た目が格好悪くとも、教える側は手をださず、の手で作業を終わらせなければ。
「ううっ……」
恨めしそうに自分を睨むを、エンドリューは無視する。
に睨まれようが、恨まれようが、エンドリューには痛くも痒くもなかった。
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私が赤ん坊の頃は、まだまだ布のおしめだったそうです。さすがに、粉ミルクはあったらしいけど。紙おむつはなかったんじゃないかな。いや、うちが貧乏で、紙おむつより布の方が安かったから?
ベビーパウダーって、どれぐらい昔からあるのかな。
おしめと母乳について、今回ちょっと調べたけど、詳しくは解らなかったです。だから、色んなトコがぼかして適当。
物を書くのは面白い。必要になって調べるから、刺激になる。
今回一番のびっくりは、赤ん坊にはちみつはダメって事でした。
子ども、好きそうなんだけど……?
あと、乳児と幼児の呼び方の違いとかも、出てきた。赤ん坊について調べてみたら。