「あ、思い出した」

 すっとリズムよく野菜に包丁を下ろした瞬間。
 先ほど疑問に思った事の答えが、の中に浮かんだ。

 にまだ包丁を持たせてもらえないハサハの、菜っ葉をちぎっていた手が止まる。

「ルヴァイドさんと似てるんだ……」

 疑問に感じた事が溶けて、はすっきりとした頭で何度も頷き、野菜を切る。
 突然奇妙な声をあげたあと、嬉しそうに微笑むに、アグラバインとハサハは一瞬顔を見合わせてから、を見つめた。

 一人で納得しているに、ハサハは首を傾げる。

「どうか……したかね?」

 首を傾げるばかりで先を促さないハサハにかわり、アグラバインが疑問を浮かべる。

「あ、いえ……さっき、ご主人様とリューグさんの動きが、
 誰かに似てるなって思ったんです。それが誰だったのか、やっと思い出せて……」

 疑問が晴れて、気分がいい。
 にこにこと微笑む可愛らしい娘に、アグラバインがつられて頬を緩めた。

「それが『ルヴァイドさん』かね?」

「はいっ! ご主人様のお兄さんみたいな人で……とっても優しい人なんです。
 私は剣は少ししか教わっていないから、詳しいことはわからないんですが、
 さっきのご主人様とリューグさん。
 脚の運び方とか、そのままデグレアで見たお二人みたいでした」

 もっとも、役割としてはマグナの動きがルヴァイドに見えたが。
 そこはリューグとマグナの腕の差なのか、マグナに合わせてリューグが普段とは違う武器をもったからか。
 まっすぐに打ち込むマグナと対峙する時の、ルヴァイドの動き。
 それを先ほど、リューグを相手にマグナがやって見せた。

 幸せそうに微笑むに、アグラバインは目を細め、微かに口元をほころばせる。

「その『ルヴァイドさん』とやらも……」

「おねえちゃん!」

 アグラバインの言葉を遮り、ハサハが菜っ葉を盛った大皿を持ち上げる。
 それをに見せるように掲げて、皿の下から様子を窺った。

「はっぱ、ちぎっちゃったよ。
 おにいちゃんのところ、いってもいい?」

 じっと息を潜めて、ハサハが問う。
 大皿に隠れて顔は見えないが、尻尾は元気に揺れていた。
 大好きなマグナを、今すぐにでも迎えに行きたいらしい。

 落とされては料理が台無しになってしまう、とが大皿を受け取った。
 ハサハの手伝った成果を確認するふりをして、苦笑をもらす。

 そろそろマグナたちも汗を流したころだろう。

「ありがとう、ハサハちゃん。
 じゃあ、ご主人様たちを呼んできてくれる?」

「うんっ!」

 に期待どおりの言葉をもらい、ハサハはパッと顔を輝かせる。
 大きく何度も頷いてから、身を翻した。





  

 後書きの類似品。

 本来はタイトルが違ったのですが、書いてて長くなったので、半分に分割してアップ。このタイトルは急遽考えたものです。
 それにしても……明るいんだか、暗いんだか、ほのぼのなのか、萌えなのか……わけのわからない連載になってきてますね(苦笑)
 まあ、それはそれで、書いてル私はたのしいですが(苦笑)

 あまり考えずに書くのですが……今回のこれかいてて気づいたことが一つ。
 ここの連載におけるマグナのモノを計るものさしは……レイムとルヴァイドが基準っぽいです(笑)
 かなりレベルが高そうです(笑)
 イオスなんて目じゃないかもしれません(苦笑)
 
 それにしても……素直な良い子に育ってますね(苦笑)

(2004.09.14UP)
(2008.02.29 加筆修正)