刃の潰された大剣を持ち、マグナがリューグの一撃を受け止め、流す。
 攻撃を防がれたリューグはすぐに体制を立て直し、再びマグナに打ち込んだ。
 自分よりも太い腕をもつリューグの攻撃を受け流しつつ、マグナは体制を崩さない。防戦一方に見えるが、リューグの隙を狙っているわけではなかった。

(確かに、素直で読みやすい太刀筋だよなぁ……)

 直線的に打ち込んで来るリューグの動きに、マグナはいつも自分が言われていることを思い出していた。

 多分、リューグと自分は似ている。

 護りたいもの、求めるもののために、ひたすらに力を求める姿勢、眼差し。
 そこに立つリューグ本人―――マグナ自身―――にはわからないが、対峙することになる者にはわかる。
 『ひた向きすぎる太刀筋』
 『稽古』の名の元に、似た性質をもったリューグと対峙したからこそ、マグナが気づけたこと。

 相手が熱くなればなるほど、自分が冷静になればいい。

 この勝負。
 リューグが有利に見えるが、主導権は完全にマグナにあった。

(……次こそ、ルヴァイドに勝てるかな……?)

 少なくとも、今日自分は一歩前へ進んだ。
 これまで一本もとれていないあの男にも、少しは近付けたかもしれない。

 唇をひき結び、マグナは大剣を低く構えた。

 大剣を扱うマグナに、リューグが選んだ武器も大剣。
 昨日は斧を腰から下げていたが、どうやらこちらの方も扱えるらしい。
 それも、かなり強い。
 辺境の小さな村に埋もれさせておくには惜しいほどの素質。
 ルヴァイドあたりに引き合わせたら、喜んで剣術を仕込むのではないだろうか。

 ――――――それでも、マグナにはまだ及ばない。

 リューグの一撃は確かに重い。
 が、ルヴァイドの一撃の重さには到底かなわない。

 村を護る山々で鍛えた丈夫な足腰を活かし、次々と攻撃を繰り出すリューグ。
 それもイオスのスピードにはほど遠かった。

 負ける気はしない。

 リューグもそれがわかっているのだろう。
 大剣を腰から下げたマグナに力試し、と挑んできたが……勝負をしているというよりは、楽しんでいる表情。
 自分より強い相手に挑めることが、楽しくてしょうがない。

 そんな顔をしていた。