本日の宿が決まったあと。
 主人を呼びに行こうとするを、リューグが引きとめた。

 喧嘩騒ぎの後始末をしなくてはならない。

 それには当然、絡まれていた当事者も必要であって。もすぐに立ち止まり、振りかえった――――――が、すぐにリューグに腕を引っ張られ、村の入り口とは違う方向に進むことになる。

「じいさん、あとは任せた」

 すれ違いざまにリューグが祖父の肩を叩く。
 そのままアグラバインの返事も聞かずに歩き出すリューグに、は引っ張られた。遠くから『待つんだ、リューグ!』っと誰かが叫ぶ声が聞こえたが、リューグが止まる気配はない。

 なんとなく、怖くて振りかえれなかった。

 ついでに言うのなら、リューグの顔も見れない。
 後ろから近付いて来る『誰か』に気がついて、リューグは道を変え、仕事を祖父に押しつけたのだ。
 酔っ払い3人に立ち向かったリューグの勇姿を、は目の前で見ている。
 そのリューグが、まるで逃げるように早足で逆方向に歩き出すような人物とは……いったいどんなつわものなのだろうか。
 興味はわいたが、確かめたいとは思わなかった。