「すっっっっっっっっっっっ」

 槍を拾いに茂みに入り、そこで自分の引き起こした惨状を目の当たりにして。

「すみませんっ! すみませんっっっっっっ!!」

 は誰もいない空間に頭を下げた。
 いや、正確には地表にいないのであって、地中には―――あまり考えたくはないが―――いる。

 先日のイオスの石といい、今回のこの惨状といい……やはり『修復』を行える召喚獣は、早急に必要だと思われた。

 槍があたったことで払われたと思われる雪の下から覗いているのは……どう見ても墓石。
 それも少し…いや、かなり。
 はっきりといえば、もう……原型を留めていないほどに。
 それは破壊されていた。

「と、とりあえず……形を整えて、雪も綺麗に払わせていただきますので〜」

 怪しい口調で半分泣きながら、誰もいない空間に謝罪し、手だけは言った通りの作業を進める。
 体を動かしていたとは言え、雪に膝を付き、地面を片付けるのはさすがに寒い。
 それでも物言わぬ墓石とはいえ、放って置くことはできなかった。

 まるでパズルのようだと、少々罰当たりなことを考えながら、は墓石の形を整える。
 なにげなく地面に手をついてから、気が付いた。
 
 『そこ』も、なにやら『ある』らしい感触。

「すっすみません〜っ! オトモダチですか?
 そうですよね、おひとりなはずないですよねっ!」

 っと慌てて飛びのき、『オトモダチ』と思われる『感触』の上の雪を払う。
 そこから現れたのは案の定。
 こちらも所々欠けた墓石だった。

 ――――――とりあえず、聞いている者はいないのだが。

 ひとしきり謝罪の言葉を並べながらは墓の周りを片付け、雪を払う。
 もう一度、今度はちゃんと手を合わせてお詫びをしてから、はある事に気がついた。

「そこで何をしている」

 誰もいないし、こんな街外れにわざわざ足を運ぶ人間はいないだろう。
 がこの場所を訓練場所に選んだのはそんな理由。
 そして今日は不慮の事故とはいえ、破壊行動を行った後。
 一応のお詫びはしたが、気まずいことに変わりはない。
 そこに予期せぬ声をかけられて、は必要以上に驚いた。
 
「はひっ!?」

 びくっと背筋を伸ばして、奇妙な悲鳴に似た返事を返す。
 それからゆっくりと、は声をかけてきた人物に振りかえった。