「……これで、しばらくは全ての昇降口が開かないはずです」

 昇降階段に付けられた端末を操作し、ジェイドが神託の盾騎士団をタルタロス内部へ閉じ込める。
 さすがに、この段階になってしまっては艦橋を取り戻す――――――等とのんきな事は云っていられない。確認できただけでも、艦内に潜入している六神将は黒獅子ラルゴ、魔弾のリグレット、妖獣のアリエッタ、鮮血のアッシュの4人。襲撃をされてから、随分時間が経っている。艦内に残ったマルクト兵は……生存者がいたとしても、戦力にはならないだろう。加えて、時間が経てばイオンとを連れまわしていた別働隊が戻ってくる。そうなってしまえば、イオンとルーク、を守りながら逃げるということ事態、難しくなってきてしまう。
 こうなれば、艦を檻がわりに敵を閉じ込め、稼いだ時間で安全な場所まで逃げる方が得策だ。

「……ところで」

 空から降りてきた金髪の助っ人と、ルークが再会を喜びあっているのをしり目に、ジェイドはに視線を向ける。

「よくわかりましたね」

「? 何がですか?」

 ジェイドの言葉の意味が解らず、は首をかしげる。その横に並んだイオンも、同じように首を傾げていた。

「あなたは、上から助けが来る事を、わかっていたのではありませんか?」

「……っ!?」

 突然核心を突かれ、は背筋を伸ばす。
 それからすぐに、その反応そのものがジェイドに対しては答えになるのだ、と頬を引きつらせた。
 案の定、目の前でジェイドの真紅の瞳が―――楽しそうに―――細められた。

「……わ」

「はい?」

「ワカルワケ、ナイジャナイ……デスカ?」

「目が笑っていませんよ〜?」

 大佐の目は、実に楽しそうに笑っていますね。
 そう云い返してやりたかったが、は頬を引きつらせて笑う。

「……大佐」

「はい」

「なんで、わたしが『わかっていた』と思うんですか?」

 まさか、『ゲームでガイが上から降って来たので、知ってました』とは云えないは、逆にジェイドに問いただす。
 自分は何も、おかしな事は云ってはいないはずだ。
 チーグルの森では、ミュウについてのおかしな知識を披露してしまったが。
 は、あれで十分にこりた。
 ぽろっと余計な事を云い、ルークに殴られたりもしているが、とりあえず、今回に関しては何もおかしなことは云っていないはず。自分が発言したのは、ティアの背後に迫ったライガへの警告のみ……だった。

「目は口ほどにモノを云う……と云うでしょう?
 神託の盾兵に捕まっている『非戦闘員』かつ『民間人』であるあなたの視線が、
 自分の身や、我々の動向よりも気にしていたのが……『上』だったんですよ」

 だからこそ、ジェイドは気がついた。
 地面に落ちたタルタロスの影……その帆先に、動く者がいる事に。
 その姿を認め、安堵の色を浮かべたに賭けてみた。
 わざと背を向け、敵の注意を自分に引き寄せ――――――襲撃者を呼び込んだ。
 そして、その目論みは見事的中し、今こうして自分達は脱出に成功している。

「そんなに、……見てましたか?」

「はい。ばっちりと」

「……以後、気を付けます」

「そうしてください」

 今回は、の不審な行動で助かったが。
 その不審な行動にリグレット達が気付いていたら……逆にガイの不意打ちは失敗に終わっていた。

「さて、何故空から助っ人が入るとわかったのか……
 今すぐ問いつめたい所ですが、まあ、いいでしょう」

「へ?」

 意外な言葉には瞬いた。
 さて、どう誤魔化した物か……そう、言訳を考えはじめていたというのに。
 目の前の男が、あきらかに不審な行動をとった自分を放置する。それを認めたことが不思議だった。

「今はこの場を離れるのが先です」

 ああ、そう云うことか。
 と納得したに、ジェイドはその整った顔で綺麗に微笑む。

(よかったですね、言訳を考える時間ができましたよ)

 ――――――と、にだけ聞こえるように囁く事を忘れずに。






  

気になるんですよ、タルタロス脱出イベントの、ガイが落ちてくるタイミングで大佐が背を向けるのが(笑)
なんでかなーと。
ちゃんとゲームでもこのタイミングで背を向けているので、気になる人はチェック、チェック〜(苦笑)

あと、このイベント。
ガイが女性恐怖症で、イオンとを抱えてルーク達に合流……ができなくてどうしようかと思った(爆)
ゲームでは、イオンが男の子だからこそ、できる芸当ですよね。