「ごめんなさい。
 私の責任だわ……」

 言葉を探しながらの説明が終わった後、ティアはの思惑通りに『誤解』してくれた。
 深々とに頭をさげ、うなだれている。

「あの、ティアさん……?
 なにも、ティアさんの責任だなんて……」

 誤解させるように言葉を選んだのはだったが。
 こうも上手く信じこまれては、良心が痛む。……とはいえ、そう思い込ませよう、と決めたのはだったのだが。

「いいえ、きっとあなたは私達の疑似超振動に巻き込まれたのよ。
 あなたの服はファブレ邸のメイド達のものとは違うみたいだから、あの屋敷にいたメイドということもないだろうし……
 たまたま飛ばされた先……この場所に居たあなたを巻き込んで、私達がここに現れたんだわ。
 プラネットストームに巻き込まれたのかと思うぐらいの、すごい衝撃だったもの。
 そのショックで記憶が……」

「本当にごめんなさい」と続けるティアに、は心の中で謝罪する。
 そう云えば、ティアという少女はしっかり者の癖に、妙に抜けている所があった。これも、その『抜けている』うちに入るのだろう。巻き込んでしまったルークへの罪悪感と、さらに増えたと『思いこまされた』被害者の存在に、正常な判断能力は落ちている。
 年齢よりしっかりしたティアは、普通の状況にあったのならば、の普通ではない様子に気が付いただろう。
 はまず、服装が違う。軽装というよりは、服の形状そのもの……雰囲気が、オールドラントと日本では違う。
 次には丸腰だ。戦う力があれば子どもでも武器を持ち、戦うというオールドラントにおいて、人の住む場所の外……それも夜の森の中で護身用の武器すらもっていないというのはおかしいはずだ。
 それに気づけない精神状況に追い込まれたティアには悪いが、も背に腹はかえられない。チクリと痛む良心はの呵責は、が受けて当然のものだ。

「あの、ティアさん……本当に、もういいですから……」

 いいわけがない。
 まだ、ティアに旅への同行を許可させていないのだから。

 心は確かに痛むが、肝心なのはこれからだ。

「でも、困りました……ね。
 わたし、どこに行けばいいんでしょうか?」

 ああ、ティア。追い込んでごめんなさい……と内心で謝罪を続けながら、は眉を寄せる。

「それだったら、大丈夫よ。
 あなたが旅人なら、記憶が戻るまで私が面倒をみさせてもらうし、
 近くの村の民間人なら……そこまで送っていくわ」

 そう云って、ティアは名案とでもいうように顔をあげ、に微笑む。

「そうよ。あなたの服装はどう見ても民間人のようだし……」

 民間人は確かに『民間人』だが、そもそもオールドラントの人間ではない。

「森を抜けて、どこかの街や村にいけば、あなたの事を知っている人がいるかもしれないわ」

 それもあり得ない。はオールドラントの人間ではないのだから。

「とりあえず、近くの村か町までは、私が責任を持って送っていくわ。
 その後は……後で考えましょう。
 そこにあなたの家族がいようが、いまいが、とにかくあなたの事は私が責任をもって守るわ。
 ……それでいいかしら?」

「はい」

 当面の行動指針を決めたティアの行動は早い。
 先ほどまでうなだれていたとは思えないほど機敏に立ち上がり、少しだけ高くなった視点で辺りをもう一度見渡した。