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妄想散文 うたわれるもの虫食い夢『忘れ形見』

ヤマユラ襲撃、テオルの死のすぐ後ぐらい。




(――――――苦しい……)

胸を締め付ける重圧。
身を包むのは、水分を含んだ冷たい土。
鼻腔に届くものは、水とヒトが灰に変わる匂い。

(ダメ――――――)

胸元で身じろぐ存在を押さえつけ、NoNameは息を潜める……とはいえ、襲撃者から身を隠すためにとった方法が方法なため、身じろぐことは不可能と言った方が正しい。
それにしても――――――

(息、できない……)

苦しい。
冷たい。
寒い。
熱い。

自分達の身に、いったい何が起こったのかはわからない。
ただ、何もせずにいれば、確実に死が待っていることだけはわかった。
だからこそ、NoNameはなけなしの知恵を絞り、戦うのではなく、逃げることを選んだ。
戦うことを選んだ大人たちに、未来を担う子供達を託されて。

(……苦しい。それに)

 重い――――――と、そこでようやくNoNameは眉を寄せる。

(重い?)

なぜ、重いのか。
重いはずはない。
いや、周りを土に囲まれた状況なので、重いのかもしれないが。
それにしても、重いよりも息苦しい方が強いはずだ。
襲撃者から逃れるため、自分は託された赤ん坊を胸に抱き、土の中に潜って――――――

と、そこまで思いだし、NoNameは再び眉を寄せる。
胸に、赤ん坊の重さはない。
が、代わりのように――――――腹部に重みがある。
ただし、こちらはとても赤ん坊の重さとは思えない。
この腹部の重さが、息苦しさの原因だ。
では、一体何が自分のお腹に乗っているのか。






ゆっくりと目を開き、NoNameは腹部へと視線を落とす。
正確にいうのなら、『視線を移動させる』だろうか。
今のNoNameに、視線を『落とす』ことはできない。
なぜならば、NoNameの置かれている状況は意識を失う前とは打って変わっており、質素な作りの寝台の上へと寝かされていた。自分の体が寝ているのだから、『落とす』べき視線は『移動した』だけになる。

「――――――……ア、アルルゥ?」

ぴくりっ――――――と、NoNameの腹部でアルルゥの耳が震えた。
何故アルルゥの頭がが自分のお腹の上にあるのか。
それが解らず、NoNameがアルルゥの頭を見つめていると、アルルゥはゆっくりと顔を上げた。

「ねーちゃ……NoNameお姉ちゃん、起きた」

「ど、したの? 何、泣いて……」

瞳にいっぱいの涙を浮かべ、自分の顔を覗き込んでくるアルルゥに、NoNameは眉を寄せながら身体を起す。腹部の重みが、アルルゥの重みであったことはわかったが、一つ気になることがある。
アルルゥの前に、自分が抱いていた赤ん坊は――――――

「……赤ちゃん……。
 アルルゥ、わたしが抱いていた赤ちゃん知らない!?
 預かったの。安全になるまで預かってって、ソポク姉さんから……」




意外に長くなったな。
そのわりに、描こうと思った部分はまったくかけてない。
書こうと思ったトコ?
NoNameの身のおき方設定(笑)
当然のごとく、ベナウィお相手。

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