出逢った瞬間に判った。彼はあのコの生まれ変わりだと。
僕が守りきれなかった、あの子がもう一度僕の手に戻ってきてくれたのだ。

何よりも大切だと想った。
誰よりも失くしがたい存在だと想った。

あの時と同じことにならないように。
誰の手にも触れさせてはいけない。誰にも見つかってはいけない。

あの子も同じようにして想ってくれていた。
あの子の居場所は此処しかないのだと小さな手で縋りついてきたから。

だから愛おしいと想ったのだ。
そして何処にもいけないようになれば良いと願ったのだ。

さぁ、ニセモノのソラを描こう。
ホンモノのソラでは雨が降って、風邪をひいてしまうかもしれない。

綺麗なソラを見て、もう戻りたくないと言っては困るから。

さぁ、ニセモノの花を飾ろう。
ホンモノの花には害虫が潜んでいて、あの子が刺されてしまうかもしれない。

咲き誇る花々の香りに誘われて、独りで歩き出してしまっては困るから。

大切な大切な存在。
だから、誰にも見付からない楽園を与えてあげる。

其れは美しい檻。
甘く優しい香りを纏い、なにをしなくても与えられたものを受け取れば生きてゆける場所。

誰にも傷つけられないように。

誰にも奪われないように。

あの子が涙を流す、そんなコトが起こらない
全ての世界から切り離された 幸せの楽園を与えてあげる。



でも本当に傷をつけていたのは自分。
守るためではなく、逃げ出せないように鍵を掛けた。



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