物心がついた時には、僕はソコにいたんだ。
見えるモノ全てが、真っ白に塗られた世界。

部屋も、服も、与えられるモノも。全てが白、しろ、シロ。
不自由はなかったよ?ミンナ、優しくて。

ご飯もちゃんと貰えたし、僕の部屋もあった。
稽古は辛かったけど、生まれたときからソコに居たから。
ソレが当たり前過ぎて、何の疑問も持たなかった。

……でも、記憶があやふやなんだ。よく覚えてないの。

どの位前かな? そんなに前じゃなく、最近のことなんだけど。
凄く、綺麗な人が僕の所に来たんだ。僕と同じ名前で、たつみ様って呼ばれてた。

『目を閉じて。痛いことなんて何もしないよ? 大丈夫。ゆっくりと息を吐いて……』

穏やかな、心地よい声。
ソノ通りに目を閉じて、ゆっくりと息を吐いて……。

気がついたら、僕はベットに横になっていたんだ。

『身体を急に成長させる術を掛けられて、倒れたんですよ』
いつも僕の世話をしてくれるダレかが、僕に言った。
鏡を見たら、本当に僕は大きくなっていた。

それで昨日、急にソノ場所から出されたの。
『海堵の記憶保持者に攻撃しておいで』
って、凄い優しい笑顔で……ダレが言ってくれたんだっけ?

なんかね、本当に虚ろなの。昨日のことなのに、顔とか思い出せないの。
思い出せるのは、あの痛いほどに眩しい白色の部屋と、タツミ様って呼ばれてた人の優しい声。



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