眩しいほどに真白な部屋の中で、卵形の何かに寄り掛かる男。
その横に、先ほどまで鶴亀家にいた鬱灯が立っている。
『やっと、始まったのか』
『えぇ。もう長いこと待たされましたしね。……やっと、ですよ』
『早く、終わってくれればいいのに』
『それは無理でしょう。ま、気長に行きましょう』
気だるそうに言った男に、鬱灯がカラカラと笑った。
その軽い雰囲気に、男が溜息を付く。
『あぁ、そういえば。貴方の命令通りに、辰巳は置いて着ましたよ』
『そうか』
特になんでもない事のように答えたその男を、鬱灯が笑った。
『貴方も大抵甘い人ですよね。私たちが悪役になる必要なんてなかったのに』
まるで嘲るかのような鬱灯の笑い方に、男は何も答えない。
『それでは、先に失礼しますよ』
どの位かたって、鬱灯がそう言った。
やはり男は何も答えようとしない。
ま、良いですけどね。
男には聞かせない程度に呟き、ニコリと笑ってみせる。
『そろそろ貴方も仕事に戻らないと、此処にあるモノが天界にバレてしまいますよ。ねぇ、巽?』
『・・・・・あぁ』
――――― 揺り籠をぶち壊す時が来た ――――――
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