2011年06月26日(日)20:32
嬲られる女は続かんよ。
ということで、ようやく増えましたねぇ。
さすがに表には置けないので、裏いきです。
しかし、嬲られる女は正しくやおいでございます。
やまなしおちなしいみなし。
なんだろう。明智のみっちゃんが割と当サイトでは<半兵衛だったのが
気に食わなかったのだろうと思います。
…眠い。
2011年05月31日(火)23:55
「…兄さんに、怒られそう」
ぽつんと少女が漏らした声は頼りなく、どこかすがるような響きを孕んでいた。
それを拠り所にしているのが透けて見えるようだ。
それが堪らなく気に入らなく、海動は思わず静子の頬をつかみ
「っぁ?!」
唇と唇を合わせれば、小さな悲鳴が上がった。
そういや、えらいおぼこいからな、こいつ。初めてかもしんねぇ。
どこか頭の隅から浮かんできた考えに、知らず興奮を覚え、海動は更に先に行為を進める。
相手に全く了承も得ないまま、唇から舌を割り込ませて、彼は無理やりに彼女の口内を蹂躙した。
「ん、やっ」
静子の嫌がる様子に、海動は少し気分を良くする。
悲鳴を上げて、こちらの胸を足りない力で押し返す抵抗を、自分がさせているのだと、思えばこそだ。
横井静子という女は強い。
世界を移動し、自分を知るものが一人も居なくなって尚、泣いた所を海動は見たこともない。
危機に面しても悲鳴も聞いたことがない。
おそらくとして、それは己のみならず、彼女に関わってきた人間全てに当てはまるのだろう。
容易く、それには予想がつく。
その彼女に、弱気な行動をさせているのだと思うと、酷く気分が良かった。
そうして、その気分の良さのまま、歯列を舐め上げ、舌を撫でるように絡ませると
潰すようにいつの間にか押し倒していた女は、目を潤ませて
ぽつっと水滴を目から流した。
「う………うぅー…!!」
そのまま、嫌嫌と静子が首を左右に振る。
そんな彼女の抵抗に、海動はなんとはなしに顔を上げ口を離した。
泣きまでするとは思わなかったから、なんとなく、だ。
そしてぱちっと瞬くと、静子はそんな海動の様子に唇を震わせて
続けて文句を言おうとした様子だったが、意味のある言葉は出ず。
代わりにひっくというしゃくりあげる声が部屋に響く。
「ひっひっく、う、うぅー……ひっ」
「うおっすげぇ泣き方だな、おい。そんな嫌かよ」
「い、やとか、そんな、じゃ、ひっ」
ぶるぶると目をこすりながら、目の前の少女が首を振る。
だが、明らかにその反応は嫌だったということだろう。
先ほどと同じ、弱気な反応であるけれども、今度は何故か気にいらず
海動は静子の頬を伝う涙をじっと見つめた。
何が、さっきと違うってんだ?
考えてみるが、考えるということは海動には向かない。
それどころか、イライラとしてきて自分がしたというのに
顔を隠して泣く静子に向かって、泣いてんじゃねぇ、顔を上げてこっちに面見せろよと
非道なことを思う。
なんという人非人ぶりか。
しかし、海動剣はれっきとした人格破綻者で、人非人なのだ。
故に、彼はこうすりゃ嫌でも顔見せんだろと、懸命に目を押さえ
泣き顔を見られまいと隠す彼女の震える唇に、もう一度自分のそれを押しあてる。
…効果はてきめんだった。
横井静子は顔を隠していた手をぱっと離して、ついで顔を赤く染めながら
ぱくぱくと金魚のように口を開閉する。
その口の動きを追っていくと、信じられないと動いていた。
さもありなん。
当然そうだろう。
だが、彼女が対峙しているのは海動なのだ。
彼はその彼女の反応を気にした様子もなく、僅かに首を傾げて
それから静子の口が開いた瞬間を見計らい、己の指を彼女の口の中に突っ込んだ。
「……っ?!」
「金魚みてえなことやってんじゃねぇ」
「だ、れがさせていると」
「俺」
突っ込んだ指を顔を歪め払いながら言う少女に、海動が悪びれもせずに答えると
静子は呆然という表情を浮かべた後、がっくりと項垂れる。
「……………も、なにがしたいの…」
その声は、非常に疲れきっていた。
当然だろう。
海動も、自分でも明確な理由すらつかめぬまま行動しているのだ。
その行動をぶつけられる彼女の方は、更につかめず困惑と疲労を覚えるだけに決まっている。
だけれども。
俯いたせいで、静子の首筋から髪の毛が流れ落ち、うなじがあらわになった。
綺麗な黒髪から覗く白に、海動はまたもや明確な理由をつかめぬままに欲情を掻き立てられ
「あ?……あー…犯りてぇ」
「っ!?ーっ!!」
何を言われているのか全く理解不可能だと、そういう表情をした相手の首筋に
海動は本能の赴くまま、噛みつくように歯を立てた。
2011年05月30日(月)23:22
「おい、横井!」
機体から降りると、下から海動が叫ぶ声が聞こえた。
視線を下におろすと、そこには機体の前に立つ海動の姿。
「…………」
反射的に口を開きかけた静子だが、すぐに彼の特性を思い出して
黙ったまま機体のコクピットから飛び降りた。
すると、彼は不満そうな顔をしながらこちらに向かい歩み寄り
静子の方に腕を載せて唸るような声で。
「んだよ、呼んだらすぐに返事しやがれ」
「そう言いながら、上から返事したら上から話すんじゃねぇって言うくせに」
「あぁ?」
近い顔に、かかる吐息。
おまけにこちらは一つも悪くないのに不機嫌そうな、恫喝するような低い声ときた。
思わず顔をしかめた静子が漏らした一言に、更に海動のガラの悪い顔に皺が寄る。
相変わらず、人の神経を逆なでるのが上手い男だ。
なんとなく相性が悪い男を相手に、簡単に静子のイラっとメーターはふりきれて
反射的にぼそっと言葉が口をついて出る。
「………………チンピラ」
「んだとぉ?!」
挑発的な静子の言葉に、まんまと乗せられて海動がいきり立つ。
しかし彼が彼女の胸ぐらをつかむ前に、割って入る人影があった。
こういう時には必ず現れる由木中尉、その人である。
「やめなさいよ。あんたがそんなだから静子もそう言うんでしょ」
「由木、突っかかってくる代表格のてめぇが言うんじゃねぇ!」
「突っかかってくる?!あんたがおかしいことするから
私が口うるさいこと言わないといけないんじゃないの!」
由木が割って入ったなら、もはや海動の目には静子は入っていない。
由木翼という女は、海動の目をそらすのに非常に役に立つジョーカーだ。
だから始まる、喧々囂々のやり取り。
ギャンギャンキャンキャン。
大型犬と小型犬が喧嘩するような、そんな騒ぎはスカルフォース隊のもはや名物といっても過言でない。
「…また始まった」
『ここ』に来てから幾度も繰り返される二人のそれに、自分が発端だというに
呆れの混じった気持ちを抱いて、静子は肩をすくめる。
その様子は計らずしも彼女が兄と思った人物に似ていたのだけれども
それが分かる人間はここには居ない。
代わりに、自らが発端であるというのに他人事の顔をしている彼女へ
向けられる笑いがあるだけだ。
「ふっ」
小さく洩らされた笑い声。
聞き覚えのある声に、そちらの方を向けば、そこには予想通り真上が腕を組んで立っている。
彼は、静子が視線を向けたのに更に僅かに口の端を上げて
「良いのか?お前が始まりだろう」
「由木中尉の仕事をとるのは気が進みませんので」
さらりと静子が返答を返すと、真上はそれを聞いた瞬間に
くっくと笑い声を洩らした。
珍しく。
「スカルフォース隊に随分馴染んだものだ」
そして続く言葉も好意的なものではあったが、いかんせん声色が皮肉的過ぎる。
素直に受け取れないその言いように、この人もなぁと面倒くさい気分で
静子は気がつかれないよう、こっそりと息を吐いた。
あぁ、あの素直にそのままやり取りを出来ていた場所が懐かしい。
しかしそうして思い返し懐かしんでいても、静子が現在所属しているのが
スカルフォース隊だということに変わりはないので、仕方なく彼女はそれはどうもと返そうかと思った。
「…………褒めて、いませんね?」
が、どうあがいても素直に返すと馬鹿をみそうなので、心の赴くままに言葉を発すると
真上は笑いながら肩をすくめる。
「言葉のままに素直に受け取ったらどうだ」
「その皮肉気な調子を何とかしてもらえれば、そうします」
「減らず口を言う」
「そういうとこ可愛くねぇよな」
のしっと、後ろから体重がかかった。
いつのまにやら近づいてきた海動が、静子の頭を肘置きに使っているらしく
旋毛辺りに結構な負荷がかかっている。
それに静子は眉間にしわを寄せたが、男の手は身をよじっても離れそうには無い。
一瞬、裏拳でもたたき込んでやろうかと思ったが、海動の身体能力は異常だ。
そうした暴力をふるっても、当るとは思えない。
むしろ、反射で殴られるオチが目に見えている。
それが堪らなく気に入らなくて、静子はやめておこうと思ったのに身をよじり
海動の手から逃れようとしたのだが、無論、逃れられるわけがない。
し、逃してくれるわけがない。
どうしてか静子をからかいたがる男は、そんな彼女の反応に面白そうに唇を歪めて
反対に彼女の体を抱え込んで、にひひと楽しげに笑うのだった。
「………セクハラですよ、海動さん」
「今さらだろ」
2011年05月30日(月)00:59
こてんと、女の頭が膝の上に乗る。
「…おい」
「ふぁい」
「寝んのかよ、ひょっとして」
「……んぅ…」
うにゃうにゃと口の中で何事かを言っているようだったが、到底意味のある言葉ではない。
普段のクールさが嘘のように、子供のような表情を見せる少女に
海動が軍人らしかねぇなと、お前が言うなの典型のような事を思えば
「…おねえちゃん」
ふにゃっとだらしなく顔をゆるませて、少女が笑った。
本当に幸せそうな顔をして。
年頃の少女らしい、柔らかな表情に海動は「うぅわっ」と正直な声を漏らし
静子の額に手を当てる。
そうすると、本当に寝てしまったのか、更に海動の膝に加わる重みがその比重を増した。
その事実に困惑を覚えながら、海動は膝で寝だした少女の名を呼ぶ。
「おい、横井」
「……」
「横井静子。お前、俺の膝で寝んのかよ」
「……ん…」
「………本気か?お前」
この少女の、この肝心な所での警戒心の無さが信じ難く、海動が思わず彼女の鼻をつまめば
静子は嫌そうに顔をゆがめた。
が、起きはしない。
相も変わらず、静子はくぅくぅと、よりにもよって海動の膝の上で
気持ち良さそうに寝息を立てている。
年頃の、十七の少女が男の膝で寝るなど、誤解されても仕方ない行為だ。
しかもそれを普段クールぶっているこの少女がやるというのだから、余計に。
だがしかし、そのような事をしながらも、彼女に他意は決してないのだろう。
眠たかったから、ずり落ちて、たまたまその下に海動の膝があっただけ。
そこに慕情だの何だのの感情は無い。
すべてたまたま。
ついでに言えば、襲われる心配も最終ラインではして無いのだろう、この少女は。
…全く。どうやったらこんなのが育つのやら。
海動が困惑するほどに、少女の最終ラインは、甘い。
その事が分かるから海動は、珍しくため息をつくと、諦めた表情で自身も瞳を閉じて
眠りの淵へと誘われることにしたのだった。
考えるのは自分の役目ではないし、ご親切に忠告してやるような人間じゃない。
そうしたならば、面倒くさいからこの状況では寝るに限る。
そういうことだ。
2011年05月30日(月)00:39
WSOには、事務職員も大勢いる。
また、情報分析員もそれなりに数はいて、その中の何割かは無論、女性だ。
後方支援系の職員には女性が多い。
これは男女平等が叫ばれ始めた頃からの黄金法則であり、この荒んだ世界においても
それは有効なのであった。
そしてどうしてこのような話をつらつらと静子が思い浮かべているかと言えば。
「………海動特務中尉って、それなりに格好良いわよねぇ」
「遠目で見るだけならね。でも私は真上中尉の方が良いなぁ」
「えー。あんたああいうすかしたタイプの方が良いのぉ?」
「あんたこそ、ああいういかにも肉食系な男が好きなわけぇ?」
罵りに半ば発展しそうな空気で女二人が姦しく喋っている。
作戦行動の指示を受けるため、本部へと足を運んだスカルフォースメンバーを遠目に見ての
事務職・情報分析員の女性たちの忌憚ないご意見が、食堂で飛び交わされているのだ。
あぁ、本人たちが未だ作戦行動指示中で良かった。
海動は、別段女に興味もないくせに、この女性達のやり取りを聞けば調子に乗るだろうし
真上はあからさまに鬱陶しがりそうだ。
本人たちの反応が分かりやす過ぎるから、静子は目の前に座る由木と二人
彼女達と目を合わさないように、黙って頼んだラーメンを啜る。
「…本部のラーメンって、あんまり美味しくないよね」
「うん。あんまりね」
目立たないように、小声で喋りながら、会話を交わす。
スカルフォースの中で『真っ当』な神経を持つ彼女との会話は楽で良い。
静子も静子で螺子が二本も三本も外れてはいるが
それでもスカルフォース、いやあの二人にはついていけれない。
ぶっとびすぎだよねぇ、あの二人。
元所属していた部隊も変人の集まりのような感はあったが、さすがにあの二人ほど
螺子の外れた人物はいなかった。
それを思えば、顔だけできゃあきゃあと騒いでいる女性たちへの
視線が冷たくなるのも、仕方がないだろう。
「ワイルドなのが良いんじゃない」
「クールなのが良いの」
未だ、言い争って入るけれど、そんなの無意味だ。
確かに顔だけ見れば、海動も真上も格好良いとは思うが。
………でも。なぁ。
結局のところ、人格破綻者だし。
とんだ世紀末野郎な性格をしている両者の性質を知っていれば、顔で騒ごうとは絶対に思わない。
おまけに、少し見ればその世紀末野郎な性質は、顔に十分表れているのだし。
騒ぐ人間の気が知れない。と言っても過言じゃあない。
少なくとも静子にとってはそうだ。
そうして、静子に次いで彼らの傍に在る由木の方も同じくな思いのようで
静子と彼女は視線を合わせると、二人揃って肩をすくめるのだった。
遠目から見れるって幸せですね。
2011年05月29日(日)23:46
びらっとスカートがめくられたのに、静子は無言で相手を見つめた。
「……あの、何してるんですか。海動さん」
「ん。中見てる」
女のスカートをめくり、この平然とした態度。
どうかと思う。
ただ、色めいた視線は感じない上、静子は軍服のミニスカートの下にショートパンツをはいているので
慌てることなく、彼の相棒たる真上へと救いの視線を送った。
「…………真上さん」
だけれどもニヒルクールと言えば聞こえはいいが、ぶっちゃけて非人道的に冷たい真上遼は
彼女の視線に、ひらりと手で追い払うような仕草をしただけで終わらせる。
「俺に振るな。その馬鹿のやることを俺が理解できると思うな」
「なんだと!真上このヤロー!!」
「………言われても仕方がないだろう」
「だってよ。軍人なんだろ、お前」
「はぁ、一応」
本当に、一応だが。
静子はDCから出向している身なので、正規軍人とは言い難いのだが
まぁ、一応軍の命令に従わなければならない、軍の部隊に所属しているので軍人でも間違いでは、無い。
ただ海動はその静子の答えに訝しげな顔をして、めくった静子のスカートをぺらぺらと動かす。
「つって、最初にも言ってたけどよ。
なのになんでこんなピラピラした制服着てやがんだよ、お前。
こんなもん着てたら、セクハラしてくれって言ってるようなもんだろうが」
「いや、そういうのはあったこと無いんですけど」
「マジでかよ。信じらんねぇな。つぅか、お前の所の部隊がお坊ちゃんお嬢ちゃんの集まりなのか」
「否定は、しませんが」
静子の所属していた部隊は、異様に若い人間たちの集まりだった。
まさに、お坊ちゃんお嬢ちゃんと呼ばれても仕方ない年頃の少年少女ばかりが戦って。
軍というよりかは学校と言った方が良いような年齢層の集まりだった部隊を思い出し
あそこでセクハラは発生しまいなと、静子は密かに苦笑した。
確かに、海動のいうとおり、静子の着ている制服は、上はきっちりとしたジャケットだけれども
下はミニスカートでまるで学校の制服のようで、歩くたびにひらひらと揺れる。
そのような制服を荒くれ者の多い軍の中で着ていれば
セクハラをしてください。とプラカードを下げて歩いているようなものだろう。
ただ、静子はαナンバーズという地球圏最強の部隊に所属した
その部隊のエースであり、かつDCの庇護下にあったから、表立ってそのような目に晒された事が無いだけで。
…ということは、とどのつまりここではその肩書きはないのだから、気をつけないと駄目ってことなのよね。
αナンバーズとDC。
ついでにサイコドライバー。
強力な傘を静子に与えていたそれらはこの世界には無い。
世界を超えた転移をしてしまったせいだ。
………だから、もうちょっと気をつけないとだめなのかな。
世界を超えてすぐにWSOに拾われて、それからスカルフォースに配属され
生活面では不自由せずここまで来れたが、これからはこちらに合わせた生活をしなければ、多分、駄目なのだ。
いつか、ただの小学生からパイロットへと無理やりにされた時のように
高い環境適応能力を発揮して、静子が身をここに馴染ます算段をしていると
太ももに、暖かな感触が当った。
その感覚に、意識を戻しもう一度視線を下に落とせば
海動は今度は静子の太ももに手を当てて、眉間を寄せ見つめている。
なんという紛うこと無いセクシャルハラスメント。
もういっそ、呆れの気持ちで男を見つめ、静子は海動を蹴ろうと足を動かしたが
その前にいともたやすく海動は、静子の足を掴んでその動きを止めた。
「んー。一応筋肉はついてんのか。わりとムキムキしてんな」
そうして口を開いた海道が言うたことと言えば、年頃の少女に言うことではとてもなく
静子はびきりとその額に青筋を浮かべる。
よりにもよって、お前。そう言うことを言いやがるか。
静子だとてパイロットなのだから、訓練をしていて
そのおかげで機体を動かす為の筋肉は、十二分に備わっている。
それはパイロットとしては誇るべき所なのだが、いかんせん年頃の少女としては
腹筋が六つに割れていたりだとか、太ももがちょっと太くて筋肉質だったりとか
そういう所は気になるものなのだ。
もっとぶっちゃけて言えば地雷なのだ。
それを堂々というかこの男。
全くもって見かけ通りにデリカシーが無さ過ぎる。
筋肉の付き具合を確かめるように、海動が静子の太ももに当てた手のひらを滑らせたのに
彼女は青筋を立てたまま、彼の相棒たる真上を振り返り
「…………真上さん、この人殴っていいですか」
「好きにしろ。俺にいちいち許可をとらなくても良い」
スカートを左手で持ち上げ、右手で静子の太ももを触る馬鹿を殴る許可を求めれば
いともあっさりとそれが出たので、彼女は右手を動かして
―海動がスカートを掴んでいた手を離し、静子の右手を捕まえたその瞬間
思い切り自身の頭をぶつけヘッドバットをかますのだった。
お前に悪意が無いのは分かるんだけど、いい加減にしとけよこの馬鹿。
〇ATA
2011年04月14日(木)00:00
さて、まだ終わっても無いのに頭の中で回るからと言って吐き出している馬鹿が馬鹿である故にそれだからして現代で大学生でモラトリアムなのでございますけれどもああ別にこの前書に意味は無いのですただ状況説明をしているだけ。さてそういうことなので昔と今を一続きに現代に生息している彼らはと言えば。
「無い」
「無い」
きっぱりと、今川氏真義子兄妹は揃って首を振った。
前とは違って真実血のつながった彼らは、もう一度無い、と首を振ると
揃ってため息をつく。
「ありえないですね、我々が我々であるならば
ありえないです、絶対に」
「だって私、義子じゃ勃たないし」
「わぁ、直接的。慎んだ方が良いと思うよ、氏真」
「そう?ここに居る面子で慎んでも今更ねぇ。
というか、そう。結婚して以来、微妙に冷たい時があると感じていたらお前そういうことを考えていたの、官兵衛」
「…………邪推されたくなければ、そのように振る舞うことだ」
「………まぁ、官兵衛の考えもあながち間違ってはいないと思うけどね」
元就が静かに官兵衛に同意する。
遥か年上だった男は、いつのまにやら同級生。
いやもう、慣れてしまったけれども。
そうしてその元年上を見ながら、義子は額に指を当て、元就さんと、彼の名を呼んだ。
「…兄さんはこう仰っておいでですし
大体が大体、今も昔も私がそういう風に傍に寄るのは官兵衛以外に居ないのに
そのように邪推されても困ります」
「そうそう。なんだか今凄いのろけが来て、うわぁと言いたくなったけど
義子は官兵衛しかそういう目で見てないのに、ないでしょうに。
半兵衛だとて、そう思うだろう?」
「え、俺に振る?折角黙ってたのに。でもそうだなぁ。
官兵衛って、今も昔も馬鹿だよね!」
にこっと半兵衛が笑った。
その辛辣な物言いに、今川兄妹が深く頷き。
元就と官兵衛は、己たちはそこまで変な主張をしたのだろうかと
普通の兄弟よりもあからさまに接触多めの兄と妹を前に
困惑の表情を浮かべるのであった。
頭の中をぐるんぐるん回ってるって言う。
ていうか、拝啓、→まことにを通過して現代に行くと
官兵衛さんが子供が欲しいって飢え飢えしてるので
お前、そんなに子供欲しかったのか、と若干憐れんでしまう。
なんか、兄上にとられそうだし子供作らせてもらえないしずっと不安だったらしいですよ。
本人が気がついたのは、死ぬ間際の話ですけど。
あぁうん、今日拝啓であれを更新したのに今書くなって?
頭の中では終わってるから仕方ないじゃあないですか。
はーちょっとすっきりした。
あとATAはコードATAです。ASH TO ASH。塵から塵に。ようするにごみ箱らしくってことさ。
近々、結婚はいつするか、と聞いて、自活できるようになったらいつでもよいですと答えて
あぁ、そういえばなにかご希望でも?と尋ねられたを良いことに
腹を指さして、子を孕んでもらえれば良い、と答える馬鹿が書きたいですね。
…よし、ちゃんと寝よう。
2011年04月05日(火)21:56
ぼすっと肩に衝撃があって、ハーケンはそちらへと視線を向けた。
見ると、赤い頭が自分の肩にのしかかっている。
「おいおい…」
だから疲れているなら部屋に戻ったらどうだといったのに。
しかしながら、相手が相手だ。
記憶を失っていたときには、あんなにも軽かったというのに
記憶を取り戻した途端に、格好付けのクール野郎だ。
二人称も貴様だし、記憶喪失時は自分に似ているといわれていたが
今は強いて言えばといえばあの、黒い殺デレビューティーに似ているような。
いや、そんなことはどうでもいい。
今重要なことは、男の頭が自分の肩に乗っているということであって
よっかかられて寝られているのが、一番あれでなになのだ。
特別、別にかまうわけじゃないが人に見られると
嫌なことこの上ない。
恋人の言い回しを借りるなら、冗談じゃないこと極まりない、だ。
いい年をした男に肩を貸して寝かせている光景なんて。
だが、しかしだ。
この男がどれほど忙しくしているのか
知ってもいるので、むげに起こすのも気が引ける。
さて、どうしたものか。
体を引いて、そろそろと起こさないように
のけるべきだな、とハーケンが結論を出したところで
「あらあら、仲良しさんですの」
「…OK、声はもう少し落とすべきだぜ、ブルーレディ。
起こしたいんじゃないならな」
「ごめんなさいですの。でも、珍しいですの、ね」
いつの間に入ってきたのか、すぐ後ろに立っている、というか
浮いているアルフィミィ相手に、肩をすくめながら
ハーケンはすやすやと寝ているアクセルを目線で指した。
「これかい?俺も珍しいとは思うが。
困ってるのさ。
横でコーヒーを飲んでいたかと思えば
いつの間にか寝ちまっててな。
しかも寄りかかってきたと来た」
「俺の肩で寝ろ。とかいったわけじゃあ、ありませんのね」
「どんな関係だ。悪いが俺にはそっちのけは無いぜ。」
「でも、起こさないようにはするんですのね。
お優しいですの、ハーケン」
「おっと、褒めても何にも出ないぜ?」
ソファーを回り込んできて、すとんとアクセルとは反対側に座ったアルフィミィに言うと
彼女はハーケンの腕に抱きついて、それからすぐさま目を閉じる。
「……おい……何をしようとしてるんだ、ブルーレディ」
「私も眠くなってきましたの。子供はお昼寝の時間ですの」
「待て待て待て。神夜相手に、子ども扱いするなと言ってるだろ、いつも」
「あるときは子供、あるときは大人。
それが許された年齢ですのよ、ハーケン」
屁理屈だ。屁理屈過ぎる。
しかし相手は強固な意志を持っているようで
ハーケンの腕から離れようとはしない。
相手が女であり、また子供であることも手伝って
ハーケンがきついこともいえないうちに
アルフィミィはあっという間に眠りに落ちた。
…後に残されたのはハーケン一人。
「OK,一人っきりだな、ハーケン・ブロウニング。
だが、これをどうしろっていうんだ……」
右にはアクセル・アルマー
左にはアルフィミィ。
下手に動けば二人とも起きる。
しかし、動かなければ男と幼女にまとわりつかれて
寝られている姿を誰かに見られる可能性がある。
その場合に、からかわれるのは起きている自分だ。
絶対自分だ。
冗談じゃない。
ここのクルー達はエンドレス・フロンティアの住人達ほど
容赦が無いわけじゃないが、だがしかしからかわれると
分かっていて放っておくのは………。
「……俺も寝るか…」
ため息を混じらせながら、ハーケンは呟いた。
悩んでいても、アクセルが思い切り体重をかけてきていて
右手は動かせないし、左手はアルフィミィの枕代わりになっている。
この状況で起こさずに、ここをすり抜けるのは至難の業で
かといって起こすほど、ハーケンは優しさが無いわけじゃない。
そうして、その場合、なにが最善の策かといえば。
起きているから、自分一人がからかわれる状況になるのだ。
寝ていれば、起きたときにからかわれるにしても
その対象はアクセルか自分かのどちらかになり
確立は50%になるに違いない。
(単純計算である。必ずしもそういう風になるとは限らない。
ちなみにアルフィミィはからかわれそうにないので除外)
そうと決まれば善は急げとばかりに、ハーケンは
目を固く瞑った。
すると慣れない土地で、疲れがたまっていたのか
すぐさま睡魔が襲ってくる。
そうやって、左右に重みと熱を感じながら
ハーケンは睡魔に引きずり込まれていったのだった。
………しばらくして、よりにもよってエクセレンが娯楽室に入ってきて
その光景をばっちり写真にまで撮られたのは
ハーケンにとって不幸であるとしか言いようが無い。
2011年04月04日(月)09:51
子供を作ってみたんですが、完璧にオリジナルですねこれは。
というものになったので見にくくしてみるです。
男子の場合は幼名になります。
姉
長男:冬之助
とある(生まれ済み)と十月十日(腹の中)で、地味に二回出演をしているのだけれども
どうでもいい話。
第一子。
見た目は姉に酷似していて、幸村にはあまり似てなく見えるが
残念なことに「お館さまああああ!!」病が伝染している。
あと鍛練・戦闘中においては「父上えええ」「冬之助ええ」病も発症中。
それを見るたびに佐助が『姉ちゃんに全部似ていてくれれば…』としくしくしてるのは内緒の話。
性格は冷静沈着、年に見合わない落ち着きがあるが、上記のような病気持ちなので
周囲からは微笑ましく見守られている。
佐助に預けられた真田夫妻の子供シリーズ第一弾だが、性格が性格なので
「佐助、休め」を佐助に向かって言い続ける小姑めいた生物と化し
佐助に世話を焼かせないという快挙(?)を成し遂げている。
「冬之助なら佐助さんを預けても安心ですね、幸村さん」
「そうでござるな。さすがは姉殿の血を引く子でござる。この歳であれだけの達者さを見せるとは」
「いえ、私じゃなくて幸村さんですよ」
「ちょ、何微笑ましい笑い浮かべてんの。俺様がなんで子供に面倒見られなくっちゃ」
「嫌ならば、僕や母上父上に心配をかけるような、自分をないがしろにする行為は慎むことだ。寝ろ」
「か、可愛くない…!子供ってもっとかわいいもんじゃなかったっけ?違うっけ?!」
「可愛いのが欲しいなら松でも春でも可愛がっていろ」
「え、あ、ひょっとして…拗ねちまったか?あ、えっと、冬之助様も俺様可愛いと思う、ぜ?」
「……………おい、佐助。拗ねてないから気色の悪いことを言ってないで、寝ろ」
「…半眼で見られたよ、ちょっと…」
次男:松乃助
第二子。
見た目が幸村で、性格がなぜか妹という、どうしてこうなったの産物。
お館様病も父上病もない。
佐助に預けられた第二弾だが、こちらの方は手が普通にかかるため
佐助が子供ってこういうもんだよな、とほっとした。
第一子との仲は良好だが、ついてまわり過ぎて冬之助に若干鬱陶しがられては撒かれている。
「佐助、やる」
「…あのさ、冬之助様。自分の弟を猫でもつかむみたいに首根っこつまんで
俺様に渡してくるのはどうかと思うぜ…」
「うん?嬉しかろう、松乃助」
「うん!俺兄上に構ってもらえてうれしいです!」
「と、いうことだ。やる。僕は勉強をするので。申し訳ないが頼んだ」
「あ、ちょ…俺、子守が仕事ってわけじゃないんだけど。お手当も貰ってないんだけど」
「佐助」
「いや、あぁ。嫌ってわけじゃ」
「無いのに、そうやって周囲に対して言い訳をするのは
俺は良くないと思うぞ。俺たちにかまえて嬉しいくせに」
「えぇと、どこ見てそう思ったのか聞いても良い?」
「なんとなく!」
「……………これ、妹ちゃんだよね。ねぇ、この超直感、妹ちゃんでしょ」
長女:日向
第三子。
第三子にして、初めて幸村と姉の遺伝子が混ざったような子供が生まれて(顔的に)
周囲は大はしゃぎ。
蝶よ花よと育てられたせいか、若干ぽえーっとしているのが特徴。
「あー…いたいー?」
「…痛いって、あのね。ふすまに力いっぱい指を挟めばそりゃ痛いだろうよ。
何やってんの、日向姫」
「んー。あ、血が出てきたー。見て見て佐助、つめが割れたー」
「っ!!ば、ちょ、どんだけ強い力ではさんだのあんた!」
「いたーいー」
「そりゃ痛いよ、ちょっと、手当てするからそこにしゃがん」
「あ、兄上ー。見て見て、ちょうはさんだ、ちょういたい!!」
「はぁ?…ば、お前…!!爪が割れているじゃないか!」
「冬之助様、日向様捕まえて!何その子もうどうにかしてよ!」
三男:花太郎
第四子。
個性の強すぎる兄姉に囲まれて育ってせいか
黙って無言で地味に過ごしている第四子は地味に目立たない。
地味だけどいいのかなぁと思われながら過ごしているが
本人目立たないのが良いらしい。
「花太郎」
「あぁ、父上」
「お前はその、自己主張が強くない部類の人間であるから
俺は心配をしておるのだが…」
「いえ、俺は別に。目立つのは兄上と姉上だけで十分です。
俺は、俺自らああいう風に過ごしたいとは思いません故」
「そ、そうか」
「巻き込まれるのは楽しいですけど、人を巻き込むのは俺ちょっと」
「…む…(巻き込む云々が自分に跳ね返ってきて無言)」
「いいんです。老人みたいと言われようが何してようが
縁側でお茶飲んでるのが良いんです」
次女:笹目
第五子。
第一子から第四子まで、個性の確立された兄姉を見てきて
自分は普通に生きようと思っている。
佐助、私は真っ当に育ちますからね!安心なさって!が口癖。
その時点でもうなんか無理なのだけれども。
「私は普通に育ちますよ、兄上」
「そうか。僕に言ってくれなくても良い、笹目」
「いえ、宣言をですね、気合入れのために」
「もう一度言おう。僕に言うな。僕は普通だ」
「………………え?」
「あぁ、父上。僕は至って一般的な子供ですよね」
「うむ。少しばかり利発だがな。某もお前がそのように育ってくれて嬉しい」
「ありがたいお言葉です」
「…え?」
「諦めな、笹目姫。俺も諦めるから…」
「さ、佐助」
「うん」
「諦めたらそこで終了ですよ!気合を入れなさい!!」
「えっえー?!ちょ、何旦那みたいなこと言ってんの!俺はそんな風に姫のこと育てた覚えないからね!」
「育てる育てないではありませんよ!あの人たちに普通を名乗らせてよいものですか!
兄上、父上、自覚なさい!」
「「何をだ?」」
「声をそろえて…!」
「だから、諦めた方が良いんだってば」
…うん、これあれだよね。
真田一家合わせて、佐助を苦労させつつ労わるマッチポンプ隊!で良いんじゃないの?
〇えくすとららら
2011年03月27日(日)23:28
もしもの事を考える。
もしも、少女にどうしようもないことがあって。
少女が少数の犠牲の側に回ったのならば。
自分は少女を、己がマスターを殺せるかどうか。
考える。
時折こちらを気遣わしげに見て、回復をしてくる様子だとか。
折れそうになりながらも、決して膝をつかない姿を思い出して
考える。考える。
優先順位を下げなければならない。
SE・RA・PHに悟られないうちに(否、超規的手段を実行に移される前に)
どうしてこんなことになってしまったというのか。
昔なら、もっと上手くやれたのだ。
感情を殺して、己を無くし、無私を貫くことなど容易かった。
だが、今はどうだ。
少女一人、殺せるか殺せないかで、こんなにも時間をかけている。
あぁ、どうしてか。
例えばこれが、あの赤い少女だったのならば。
生前からの因縁だとか、そういう「しがらみ」のせいかと
納得も(いかないが)いくというのに。
この少女ときたら、召還に応じたときに初めて
顔を見たような人間なのだ。
いや、正確には人間ですらない。
SE・RA・PHの作り出したNPC。
それが意思を持った存在に過ぎない。
要するに、ただのデータだ。
データの海からは出られない、オフラインには
どこまでも存在しない少女。
最初は頼りなげで、何処までも薄い人間だった。
だがしかし。
あぁ、そう。
躊躇う原因はそこだ。
彼女は戦いを重ねるごとに、揺らぎを無くし
そして持たざる強者へと変貌を遂げた。
その成長は、少しだけ、弓兵のなりたかった
実に馬鹿らしい何かを叶えてくれた。
何もわからない、理不尽に耐え切れず死に逝こうとしていた少女を
ここまで、手を取って、一緒に来たのに。
それを壊す・殺す・消すことに、どうして躊躇いを感じないということがあるだろう。
〇緑弓るーとはどこかにおちていませんかー
2011年03月27日(日)22:59
やけにノリの軽い男だった。
緑色のマントをつけた優男は、しかしその軽さとは裏腹に
低い温度を感じさせる。
「あんたがオレのマスター?」
探るような目。
マスター?
何のことか。
分からない。
しかし、否定すれば、何か救いがなくなる気がして。
思わず反射でこくりと頷いてしまうと
緑色の男は、ふぅんと、気のない声で相槌を打った。
「なぁんか、気が抜けてんなぁ。
まぁ、そっちの方が好き勝手出来るっていうか?
楽そうではあるけど。
けど、頼りない」
水が流れるようにすらすらと喋る彼の言葉に、口を挟める余裕はない。
好き勝手やれそうというより、既に好き勝手言いた放題だとか
言ってやりたいけれども、人形に敗北した時の
ダメージが、未だ体を起き上がらせることもさせてくれない。
震える手を支えに、ようやく体を起き上がらせると
崩れこんでいた人形が音を立てる。
かたり、かたかた。かたかた。
まるで命を吹き込まれるように二、三揺れた後、
部屋に入ってきたときと同様に
糸で吊られるようにして、人形は揺れながら起き上がった。
思わず完膚無い敗北を思い出して、体を固くすると
「全く、とんでもないのに当たった気がするね。
オレの気のせいか?気のせいなら良いんだけどさ」
男は、物理法則を無視した光景に動転することもない。
ただ、気安く、軽い口調で独り言を言いながら
人形にあわせて手に持っていた弓を引き絞る。
「さて、いつまでも呆けてるなよ、マスター。
真正面からオレが戦うなんざ笑っちまうが、
それでもデクごとき、後れを取るはずもない」
空気が鋭く尖る。
あぁ、戦いが始まるのだ。
薄く引き延ばしたような意識の中で、はっきりとそれだけが分かる。
どうして、戦うのだろう。
間の抜けた問いが、頭の中を掠めて消える間に
右手が、強くぢかりと痛んだ。
〇ふぁてーえくすーとらー
2011年03月27日(日)22:59
「しろーさん」
驚くしかなかった。
世話焼きのきらいはあるとはいえ
弓兵といえば、皮肉屋とイコールだ。
ことりと首をかしげる動作をした少女は、
確かに可愛いけれども。
しかし目の覚めるような?と問われればそうでもない。
凄まじい魔術師と相対したときのような
威圧感など欠片も感じない。
彼女の伸びた背筋は、心なしか凛とした印象を
少女に与えていたが、ただそれだけで。
マスターだという少女は。
本当に、ごくごく普通の、可愛らしい少女に見えた。
「衛宮さん」
呟くようにして名前を呼んだ後、
マスターの少女はまっすぐにアーチャーを見上げる。
「君の考えていることはおそらく正しい」
「あぁ」
マスターを見ることも無く言うアーチャーと
気にした様子も無く、やっぱりと頷く少女。
そうしてほぼ同時に湯飲みを手にとって
ずずぅっとお茶をすすった後、少女は
「…そうか…最初からガングロじゃなかったのか」
「しつこいな君も!」
さらっと少女が言った言葉に、アーチャーが即座に突っ込む。
「いや、発電所日焼け説は否定されたけど、
それなら生まれたときからこうだった説が浮かんでたから。
否定されたけど。今」
「あぁ、今否定されたな。たった今。
大体、魔術の使いすぎだと話しただろう。
…いい加減思い出したように、間を空けて、ふっと話題を振ってくるのは
止めないかね、マスター」
「わざとやってるわけじゃない」
「余計性質が悪いというのだよ、そういうのは」
湯飲みを持ちながらマスターたる少女。
いささかげんなりした様子で、アーチャー。
頭痛がするといった仕草は、やはり常どおり皮肉気なものだが
少女は、気にした様子も無い。
思いっきり受け流している。
…ある意味、ガンドでの突っ込みよりも
凄いんじゃないだろうか、この対応。
「でも、凄い背丈伸びたんだね」
「マスター。実入りのないことを言うのも大概に」
「あと性格が凄くヒネたっぽい」
「君は、本当に悪態が上手いな」
「アーチャー程じゃないな」
感情を込めて言ったアーチャー相手に、
軽く肩をすくめる少女。
その一連の流れを見ていた一同は、ぽかんとするしかない。
なんだろう、このアーチャーあしらいの上手さ。
無駄に軽やかだった。色々。
そして、そのあしらいの上手さは、否が応にも実感を感じさせる。
即ち、彼女は本当にアーチャーのマスターなのだと。
マスターを、遠坂凛としないアーチャー。
それは、衛宮邸に暮らす者達に、奇妙な衝撃を与えた。
〇ふぁてえくすとらー
2011年03月27日(日)22:57
おねがいは、ないの?
吐息と間違えるような声は、静かに情報の海に消える。
けれども、サーヴァントの優れた聴覚は
その問いかけすらも拾って。
君の方こそ
微かに浮かび上がった願いを打ち消して
弓兵が返すと、彼の主はにこりと笑って
そして弓兵の手を取り、口元まで運ぶと
僅かに指先に口付けた。
その温かみが、もはや薄れようとしていることを
弓兵が知覚する頃には、彼女の輪郭は大分崩れかけていて。
―あぁ
あの日。
朝日の昇った光景を見たときと同じような
なんともいえない寂寥感に襲われる。
納得済みの別れでも、それでも別れはいつでも寂しい。
浮かび上がる飛沫の想いは蛇足に過ぎず。
ただ、主と従者は笑みを浮かべ。
―そして聖杯は、不正データを消去した。
………。
……。
…。
…。
……。
………。
さて、あなた。
あなた。
おかしいとは思わなかっただろうか。
何が?
彼女が幾度か見た夢が。
始まりを忘れないでくれと、願う夢。
幾度か見た欠けた夢は、此度の聖杯戦争の勝者の夢では
ありえないと。
銃を持った兵士が居る場所で誕生まれたのは
【トワイス・ピースマン】だ。
そして2戦目の、ありす。
彼女の事を覚えているだろうか。
死者であるのに、分からず聖杯戦争にエントリーした小さな少女。
彼女は、同じだと言っていなかったか?
誰しもがそれを「体が無い」事だと思ったが
しかし、別の事を指しているのだとしたら。
遠坂凛は、体が無いと言った。
過去も見えないと。
けれどもそれは、不正データ【トワイス・ピースマン】が
彼女の中に、混ざり込んでいたからだとしたら?
浮遊する泥に塗れた池を覗き込んでも、水中は見えまい。
ありすが同じだと言ったのは、【わけもわからず迷い込んだ迷子】
なのだとしたら?
さて、もしもの話。
もしもの話。
だけれど、いくつも重なり合う世界の中では
確率的に本当の話かもしれない話を始めよう。
………目覚めは、異様に緩やかだった。
瞼を開けるのすらも億劫で、いおは目を閉じたまま
前髪をかきあげる。
眠たいわけではない。
むしろ、寝すぎた後特有の鈍痛が頭を揺らしている。
何時から寝ていたのだろうか。
というよりも、むしろ。
むしろ………
「…あ、れ?」
目を閉じたまま疑問を感じ、それからいおは勢い良く
上半身を寝台から起こした。
その反動で、頭の中で響く鈍痛が増して
いおが顔をしかめたその隙に
「遅い目覚めだったな。
あまり寝坊をするのは感心しないが」
耳慣れた声が、鼓膜を震わせる。
「………アーチャー?」
名を呼ぶ声が、訝しげになるのも当然だろう。
なぜならば………自分と彼はとうに消滅したはずなのだから。
いおは、声のほうへと目を向ける。
そこには、やはり見慣れた弓兵の姿があった。
いかにも皮肉そうな印象を受ける、白髪の男。
いつもながらの赤い服装に、何時見ても紅白でおめでたいなぁと
どうでも良い事を思ったのは
彼女なりの現実逃避であったのかもしれない。
ほんの少し前に決めた終わりの決意が、こうして軽々と覆っている事実に、
少しだけ、いおは着いていけていない。
「あー………」
どこからなにをどう問えば良いのか。
そこからまず探っていると、ふと部屋の内装に気がつく。
部屋の中はまるで、あの保健室のようだった。
ベッドと、ベッドを覆うようにして掛かっているカーテンは白く。
違うのは、机がやや小ぶりなことと、薬品棚が無いことぐらいか。
………というか、ここ、病室ではないか?
そこまで考えて思い至ったいおは、もう一度室内を見渡す。
白を基調としたその空間は何処からどう見ても
病院の病室そのものだった。
「あれ?」
何故?こんなところに?
またしても浮かび上がってる疑問に、
頭の回路は吹き飛んでしまいそうだ。
ちょっと誰か、色々と説明をして欲しい。
その誰かが誰になるのかも分からず
ただいおが、呆然としていると
あからさまな溜息を弓兵が零す。
あぁ、そうだ。
彼が居たのだった。
半分存在を忘れていた彼に、顔を向けると
(失礼な態度は気にしない。いつものことだ)
アーチャーは、
「さて、このまま暫く呆けさせておくのも良いが。
先ほど私をアーチャーと呼んだな、マスター」
「え、だってアーチャーはアーチャー………あれ?」
そこではたと、いおも気がつく。
ここがSE・RA・PHでなく、現実世界であるというのなら。
目が覚めたいおが、この弓兵を覚えているはずは無いのだ。
SE・RA・PHで聖杯戦争を戦い抜いたいおは
あくまでもSE・RA・PHが作り出した
NPCであり、その経験が本体に
フィードバックされることなど。
だが、現実的にはいおはアーチャーの事を覚えているし
SE・RA・PHでの聖杯戦争を
仔細語ることが出来る。
これはいかなることか。
アーチャーに向かって目で問うと
彼は首を振る。
…分からない、ということか。
「…というか、アーチャー
ここは、本当に現実世界なの?」
そう、それならばそこから問題になってくるのではないか。
SE・RA・PHの作り出す虚構世界は
五感すら完璧に作られている。
これが虚構世界で無いという証拠は何処にあるのか。
指先足先から伝わる
シーツの固い感触もまた、現実では無い可能性を考えていると
しかし、アーチャーはそのいおの問いには
はっきりと首を振る。
「いいや、それは無いな、マスター。
なぜならば私がSE・RA・PHのバックアップを感じないからだ。
私は現在、君からの魔力でのみ、動いている」
〇剣の王様 賭け事5
2011年03月11日(金)18:31
レオンティウスが多忙、トスカが不在ということで、国王陛下の本日の授業は剣技と戦略である。
昼下がりの陽気な日差しの下、剣を振るチャイリーと、指導するダナトを見ながら
レヴァンは油断無く辺りの気配を探っていた。
国王陛下を王宮に連れてきて一月弱。
そろそろ『大宰相派』の手から、国王を奪い取ろうとする者達が現れても良い頃ではある。
不審者、もしくはそれなりの身分の者が来はしないか、景色を注視するレヴァンだが
生憎と、いや幸いにそのような人間の気配は周囲に微塵も感じられなかった。
目の前に意識を戻すと、チャイリーが突きの練習を終え、薙ぎ払いの型に入るところだった。
つい、この間まで突きだけで息を荒げていたというのに、今はもう普段と変わらない様子で
剣を振り始めた彼女を見て、レヴァンは子供の成長は早いものだと思った。
…昔、ダナトもああだったなと、レヴァンは感傷とも何ともつかない考えを抱いて
すぐさまそれを振り払う。
仕事中に考えるべきことではない。
これが机仕事であるのならば、息抜きともいえたかもしれないが、己の仕事は警護だ。
内宮の庭の造られた緑の中に身を置き、レヴァンはすぅと目を細める。
継承の儀が近い。
それに加えて、レオンティウスに昨夜呼び出された件を思い出すと、自然と眉間に皺が寄った。
…レオンティウスという幼馴染は、昔から予言に良く似た予想を立てた。
得意な人物観察眼と流れを読む力で、物事をぴたりと言い当て、
予想もつかないことすらも、予想してしまうから、だから予言。
その彼が言った言葉に、知らず知らず、レヴァンの口からため息が零れた。
「何を、考えている。レオンティウス」
呟きは誰にも聞こえない。
目の前には、指導を受ける子供と、教える義息子。
和やかな光景ではあるが、同じ内容を聞かされた筈の義息子の平然とした顔に
もう一度、レヴァンの口からため息が零されたのだった。
〇剣の王様 賭け事4
2011年03月11日(金)18:29
王宮に、夕闇が訪れ、やがて去る。
残されたのは、目も眩むような漆黒だった。
曇っているのか星が見えない暗夜には、ランプの灯りだけが頼りで
それを掲げながらダナトがふらふらと廊下を歩いていると、
ふと目立つ頭が前方に居るのを見つけた。
「おやおや」
呟いて注視していると、相手もまた視線に気がついたようでこちらを振り向く。
水色の髪がランプの炎に照らされ、緩く白じんだ。
「…ダナトか」
「はいはい、ダナトです。こんなところでどうしたんですか、トスカ様」
「いや、野暮用で出かけるから、ちょっと用事をすませてた」
面倒そうに言うその様子に、ダナトは苦笑する。
全くこの人ときたら。
その用事とやらも、おそらくは溜め込んだ書類を行く前に片付けて行けと
腐るほど言われて渋々出しただとかに違いない。
実戦以外は不真面目だよねぇと、自分のことを棚に上げてダナトは思う。
「それにしてもあれですか、野暮用って言うと、件のあれ」
「そう。様子を見に行ってくる」
「はぁ、まめですね。いくら自分が養子縁組を取り持ったからって、
そんなにこまめに様子を見に行かなくても良いでしょう」
トスカは時折子供に関することで、慈善を施すことがあった。
ついこの間、子供の居ない老齢の夫婦に、孫ほどの年齢の子供をトスカが紹介したのもそうだ。
まあ、それはいい。
情けは人のためならず。
回りまわって、どこかでそれが役に立つ日が来るかもしれないし、
悪行を行っているわけでもないから、それを非難する気はないがそれにしても
子供を世話したのは、本当にこの間のことなのだ。
しかしこの男と来たら短い期間の中で、既に二度ほど顔を出して、今度で三度目なのである。
短い期間で鬱陶しすぎるのではと正直ダナトは思ったが、
気にした様子も無くトスカは肩をすくめた。
「いいだろ、別に。上手くいってるか気になるし。子供は可愛いだろ」
「そうですねぇ」
こういうときには、適当に相槌を打って、話を合わせるに限る。
あなたは子供以外可愛くないんでしょうに、と後に続けなかったのは、お偉いさんへの遠慮ではなく
ただ単に大きく頷かれるだろうと思ったからだった。
いやはやなんとも。
もうトスカとは十年以上の付き合いになるが、昔から変わらず子供の好きな男だ。
あくまで、仕事に影響のない範囲内で、だが。
出会った当初はそこの辺りを勘違いしていて、この男に子供は殺せないだろうと思っていたから、
襲ってきた子供の暗殺者を、四散させた時には、目を剥いて驚いたものだ。
若かったなと、一昔前を振り返り、目の前の男へと意識を戻す。
「ん?」
「いえ、トスカ様も老けませんよね」
若々しく、自分と同い年だといっても通用するような顔の男に
しみじみと言ってやる。
ダナトは二十四歳、トスカは三十五歳。
十以上離れているくせに、その若々しさはどうなんだという思いを込めてやると
トスカは自分の頬に手をやって、苦々しい表情を浮かべた。
「…羨ましいか、これ」
「いいえ、全く。傍にいて、童顔の苦労は身に染みてよく分かっております。
俺は父さんの様に人並みに老けていくつもりですから」
「人並みかあれが!俺を羨ましいとは思わんのか!」
「人並みでしょう、レヴァン様はトスカ様よりかは。羨ましいかどうかで言えば、ですから、いいえ全く」
例えば新兵と間違われたりだとか、例えば見た目が若造過ぎて中々信頼がもらえないだとか。
先達が辿った苦労を知っていながら、それでも手を伸ばすほど魅力的な物件でもない。
ダナトが緩く微笑みながら断ると、トスカはがっくりと肩を落とした。
「まぁ、いい…。で、そういやお前なんでここに居るんだ、陛下は」
「ああ、陛下はちっちゃい子らしくもうご就寝だそうで、俺は寝ず番の奴らに任せてお休みタイムです」
「もうか」
「もうですね」
ダナトが話を逸らしたかったらしいトスカに付き合ってやると、
彼はぱちくりと目を二三度瞬いた。
夜だとはいえ、まだまだ夜も更けとはいかない時間帯である。
「ちょっと早いんじゃないのか」
「疲れてるんじゃないですかねぇ」
「疲れてるんだろうな」
「そうですね、授業いっぱいですしね」
ほぅと、どこかで梟が鳴く。
その声を契機にして、会話が途切れた。
ほの暗い視界の中、トスカが額に手を当てたのが見えた。
「適当な、お前」
「俺別に子供好きでもないですし」
真実そう思っていることを、じつに正直にダナトが申告すると
トスカがぷいっと横を向いた。
「………目の下にそういや隈あったなぁ」
「ありましたっけ」
「ちょっとよろけてたかも?」
「ありましたっけ、そんなの」
よく見てるなぁと感心半分呆れ半分で言葉を聞く。
するとトスカの方は、思い切り呆れた顔をした。
「………お前な」
「だから、別に俺は子供好きな訳でもないですし、
最悪あのちっこいのは生きてれば何とかなるじゃないですか」
言いたいことは分かるが、最終的にはそういうことだ。
ダナトがそこまで見ている必要は無い。
ダナトの、ダナト達の目的に国王は必要だが
チャイリーという孤児は必要ではない。
誰でもいい。生きていさえすれば。
ただ、動けて礼儀正しく、ちょっとの知識があるのに越したことはないから
そのためだけの教育をして生かしているにすぎない。
ほぅと、梟が鳴く。
「あんまり可愛がったら駄目ですよ?」
にこりと、わざわざランプを目の前に掲げて笑ってやると
トスカは無言でダナトをどついた。
これは果たして分かっているということなのか、うるさいということなのか。
…どちらでも良いか。
結局のところ、トスカもチャイリーという元浮浪児の少女を可愛がっているわけではない。
ただ、連れてこられた子供に優しくしてやっているだけだ。
誰も、名前のついた彼女のことは見ていない。
名前のつかないところだけを見て、行動をしている。
それについてだけは、可哀想と思ってやってもいいなと
傲慢な考えでダナトは思って、夜を見上げた。
「とりあえず、あれです。継承の儀までには帰ってきてくださいね。
護衛の面子の中にトスカ様も含まれてるんですから」
「分かってる。帰るよ。面倒だけど」
面倒だという気持ちは本当で、だけれども彼は必ず帰る。
仕事の、特にレオンティウスから下される命令について、彼は犬のように忠実だ。
それは俺もかと、ダナトが一人突っ込みを入れていると、向こうからぱたぱたと
誰かが駆けて来る音がする。
ランプの灯りを向けると、駆けてきているのはカイアだった。
彼はトスカとダナトの目の前まで走り寄ると、息を乱しながら告げる。
「トスカ様、ダナト様、レオンティウスさまがお呼びです」
それに同時にトスカとダナトは顔を見合わせた。