「……てことで、意見を乞う」
数秒の沈黙の後、弾けるような笑い声が響き渡った。
甲ちゃん甲ちゃん笑いすぎ、と諌める九龍も時折笑い声をあげている。
「笑うなっつったろ…」
「こ、これが笑わずにいられるか…ッ。ひーちゃん、お前、自分で何言ってるかわかってんのか?」
「わかってるよ……」
言うんじゃなかった、と龍麻は頭を抱えている。
「でもそういうのいいな、オレももうちょっと何かすれば良かったかなー」
「あぁ九龍はどうしたんだ?参考までに」
何気なく龍麻が問うと、甲太郎が火をつけようと咥えていたアロマパイプを取り落としそうになった。
「おい、待て」
「えーとね」
「待てッ」
何を話す気だ、と慌てて九龍の口を掌で塞ぎ、甲太郎は肩で息をしている。
「む、ぐ…何すんだよ!」
「こっちの台詞だッ。いいかお前そういう事はな、人にほいほい話すような事じゃ無いんだよッ」
「…へぇ、人に話せないような事をした、と」
「……ッ」
「あー…」
龍麻は調子を取り戻したのか、絶句した二人ににやりと笑いかけていた。九龍は今頃顔を赤くしているが、悪びれる風もなく舌を出している。
「とにかく、龍麻兄は如月さんの誕生日を祝ってあげたいんだよね?」
話題を戻そうと、或いは逸らそうと九龍が切り出すと甲太郎はひっそりと胸を撫で下ろした。
龍麻はそれを眺めつつ、九龍に相槌を打っている。
「まぁ、結論としてはね」
「んで機嫌も直して欲しい…と。これ、ひーちゃんがとっとと謝ればいいんじゃないのか?」
「だよなー」
「煩いな…それはもういいって」
矛先がそちらに向くと居心地が悪そうにする龍麻が面白いのか、甲太郎はここぞとばかりに揶揄するような口調になっている。
「プレゼントはもう決めたの?」
「ん…まぁ、ね」
龍麻はやや言いにくそうにそらとぼけたが、少なくとも九龍はそれに対して特に何も思わなかったようだ。腕を組み、愉しそうに何かを考えている。
「んーじゃあさー、こういうのは?」
「生クリームとかは無しな」
ふと口をついた言葉に、龍麻ははたと凍りついた。九龍はきょとんとしているが、甲太郎は眉をぴくりと動かしている。
「生クリーム?」
「…いや、何でも無い」
「ひーちゃん、こいつに変な事を吹き込まないでくれ。絶対に真似する」
それも物凄く楽しそうに、と想像し甲太郎は溜息をついた。
龍麻も少し想像し、一瞬吹き出しかける。
「真似?」
何でも無い気にするな、と二人に諌められ九龍は一瞬機嫌を悪くしたが、そうそうだからこんなのは?と再び話し始めた。
***
「……ベタ過ぎないかなぁ」
「いやいやこのくらいがいいんだってー」
「俺がやられたら確実に嫌がらせだと思うがな」
「だよな」
まぁそれはそれでいいか、と龍麻は肩を竦め、如月に外泊の連絡を入れようと携帯電話を取り出した。
―――如月翡翠の誕生日まで、あと少し。
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