案内された部屋に入ると、今日がクリスマスイブと言う事もあってか小さな木製のテーブルの上にミニサイズのクリスマスツリーとキャンドルがセッティングされていた。

「わぁっ!見てみて、修吾君。クリスマスツリーが飾ってある!!かわいい〜。」

「ほんとだ。これ見ると、クリスマスって感じがするね。」

「うん!あ、お風呂とかって部屋にもついてるんだぁ。でもでも下にも大きなお風呂があるんだよね。後で入りに行こうっと。」

コートを脱いでクローゼットに掛けてからうろちょろと部屋を見てまわる。

そんな様子の私に、笑いながら修吾君が声を掛けてくる。

「クスクス。美菜って風呂好き?」

「あ・・・今、おばさんチックって思ったでしょぉ〜。恵子もいっつも私におばさん、おばさんって言うんだよ?お風呂って気持ちいいのにね。修吾君はお風呂嫌い?」

「ん?ううん、好きだよ。美菜と入るお風呂は特にね。」

目を細めて、少し意地悪そうな笑みを浮かべて私の顔を覗きこんでくる。

途端に、ぼっ。と顔が真っ赤に変わるのが自分でも分かる。

「わわっ!なっ何を言うんですか・・・今はお風呂の話をですね・・・。」

「今日も一緒に入ろうね。」

「はぅっ・・・・・・大きなお風呂。」

「大きなお風呂にも入って、俺とも後で入ればいいでしょ?」

「うにゃぁ。」

真っ赤になって俯く私の体を後ろから抱きしめて、肩に顎を置くと修吾君が耳元で囁く。

「あれ、美菜は俺と一緒にお風呂入るの嫌なのかな?」

うわっ!きたっ!!こっこれ言われると・・・・・弱い。

うぅ。絶対修吾君、私がこう言われると弱い事分かってて言ってるんだ。

だって、微かに私の肩にのせられた顎が震えてるもん・・・絶対笑いを堪えてる。

「いっ嫌じゃない・・・です。」

「クス。よかった。じゃぁ一緒に入ろうね。」

・・・・・・・くそぅ。



***** ***** ***** ***** *****




「もぉーお腹一杯・・・食べられません。」

私は持っていたフォークとナイフを揃えてお皿に置き、お腹を擦りながら椅子の背もたれに、ふぅっ。と言う言葉と共にもたれる。

「クスクス。でも、全部平らげたね・・・結構量あったのに。」

「うっ・・・だってぇ。美味しかったんだもん。それに全部って、お肉の半分は修吾君にあげたでしょ!」

「あれ、そうだっけ?」

「やっ!ひっどぉい。とぼける気ですか・・・修吾君の意地悪。」

いーっ!と、歪めた顔を彼に向けると、ぶっ。と吹き出されてしまった。

「面白い顔。」

「ぶぅっ。」

そんな事をやっていると、クスクス。と言う笑い声と共に先程部屋を案内してくれた小太りのおじさんがやってきて、優しく微笑みかけてくる。

「クスクス。2人共仲がいいんだね。羨ましいよ・・・あ、そうそう。君達もこの後、あれを見にいくのかな?」

「あ、はい。雑誌でそれを見ていいな。って思って予約したので・・・綺麗に見えますかね?」

「今日は天気もよかったからね、きっと綺麗だよ。都会じゃ見れないからさ、一杯堪能しておいで。」

私は2人の会話が読み取れず、一人首を傾げる。

綺麗に見える?・・・都会じゃ見れない?・・・一体何の話をしてるんだろう。

おじさんがテーブルを離れてから、そっと身を乗り出すと小さな声で呟く。

「修吾君、何の話?」

「ん?それはこれからのお楽しみ。さ、部屋に戻って支度しよう。」

「え、支度って?・・・どこかに行くの?」

「食後の散歩。」

・・・・・こんなに寒いのに?




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