12月24日金曜日のクリスマスイブ。

私は外泊の許可をもらい、大手を振って旅行に出かけられる事に有頂天になっていた。

今日と明日とずっと修吾君と一緒にいられるんだ。――――そう思うだけで自然と心も躍り出す。

「クスクス。美菜、すごく楽しそうだね。」

「うん!だって楽しいんだもん、明日までずっと一緒にいれるんだよ?すごく嬉しい。」

ニコッ。と笑って修吾君を見上げると、彼も同じように笑って繋いだ手をぎゅっ。と握ってくる。

「俺も・・・すごく嬉しいよ。」

「えへへっ。だね?・・・でも、修吾君。自分の荷物は自分で持つよ?」

「ん?いいよ、美菜の荷物何が入ってるのか知らないけど、結構重たいから持っといてあげるよ。転ばれても困るからね。」

クスクス。と意地悪く笑われて、私の頬がぷくっ。と膨らむ。

「うっ・・・でも、手を繋いでもらってるから転ばないもん。それに、修吾君が今日泊まる所はすごく寒い所だから防寒対策しておいでって言ったから、いっぱい持ってきちゃったんだよ?」

それに、今日の為に編んだ修吾君へのプレゼントも入ってるんだもん。

だから私の荷物はパンパン。私の分と自分の分の荷物を持ってるから重たいだろうな。

「うん。今日泊まる所は山奥だからね・・・きっともの凄く寒いと思うよ。」

「・・・・・やま・・・おく?」

「クスクス。うん、そうだよ。これから結構長い旅路だからね、覚悟しとくように。」

・・・・・山奥って・・・一体あなたはどんな所に宿泊されるおつもりですか?

駅について修吾君から切符を手渡され、それを見ながら少々不安な気持ちが過る。



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新幹線に揺られる事3時間――――そのままバスに乗り換えて、道中舟を漕ぎバスの窓に頭を打ち付ける事4・5回。そんな、修吾君に笑われながらのバスの旅が2時間。

・・・・・とっ遠すぎないかい?どんな所に泊まらされるんだ、私は。

計5時間の旅路を経て、不安と共にやってきた本日泊まる私達のお宿。

私の想像とは全く違って、まわりを山で囲まれた自然の中に佇む一軒のログハウス風のかわいらしいペンション。

「わぁ。なんか・・・かわいい!!」

「よかった。そう言ってもらえて・・・ここまで来たのに、え〜。とかって言われたらどうしようかって思ってたんだけど。」

「ううんっ!全然、全然!!私も、山奥って聞いてどんな所に泊まらされるんだぁ。って不安だったんだけど・・・すっごく可愛い!!よく知ってたねぇ、こんな可愛いペンションがあるって。」

「雑誌で見つけてね。よさそうだったから予約したんだ。料理も美菜の好きそうな山菜系だったからさ。」

「ほんとぉ?嬉しい!!夕飯どんなかなぁ・・・んん〜っ!なんだろぉ。今から楽しみぃ。」

「クスクス。じゃ、チェックインしよっか。」

「うん!!」

中に入ると、優しそうな小太りのおじさんが出迎えてくれて私達の部屋まで案内をしてくれる。

この人、ここのオーナーさんなのかな?

「遠いところからよく来てくれたね。今年は暖かいからまだ雪も積もってないし山奥だから何にもない所だけど、その分ゆっくり自然を楽しんで帰ってちょうだいな。あ、夕飯は今から1時間後の6時半頃だけどいいかな?」

「あ、はい。それで結構です。」

「1階の食堂に来てくれたらいいからね。何か分からない事があったら気軽に聞いてちょうだいな。」

・・・・・ちょうだいな。これってこの人の口癖なのかな?なんか、妙に耳に残る。




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