新一は私のマンションまで辿り着くと、一度ふかしてからエンジンを止めた。

心臓をバクバク言わせながら、バイクから降りると安堵のため息が漏れる。

「もぉぉ。新一っ!ゆっくり行ってって言うたやん!!あんな飛ばして・・・死んだらどうすんのよっ!!!」

「お前ね、死んだらって・・・時速30kmしか出てねぇんだぞ?制限速度だっつうの。これ以上遅く走った方が死ぬって。」

「・・・・・・だけど怖いもん。」

「俺が運転してんだから大丈夫だって。ってか、早く飯食おうぜ!!」

ポンポン。と軽く私の頭を叩いてから、早く、早く。と言うように、腕を掴み歩き出す。

「クスクス。よっぽどお腹減ってるんだね・・・って、私もすっごい減ってるんだけど。私がバイトの間に用意してくれてたんだよね?ね、新一何を用意してくれたの?」

「ん?あぁ、メインのチキンはどう頑張っても俺には出来ねぇからファーストフード買ってきたけど・・・ポテトフライとかサラダとか?ま、その他諸々と。」

「へぇ。ポテト揚げてくれたんだ。クスクス。火傷しなかった?」

「バーカ。んなヘマを俺がするわけねぇだろ?っつうか、旨すぎて涙出んぞ。」

「チキンが?」

「・・・・・・・さ、早くしねぇとイブが過ぎちまう。」

「お〜い、無視かい?」

クスクス。と笑う私の頬を、うるせぇ。と呟いて軽く抓る。

その他諸々って、きっと色々作ってくれたんだろうな。すっごい楽しみ。

メインの「チキン」ではなく「その他諸々」の方がね。



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鍵を開けて先に入って行く新一の後について自分も家の中に入り、ドアの向こう側に用意してくれた空間に私の目が驚きで見開き言葉が漏れる。

「・・・・・・うわぁ。」

いつも使っている小さ目のガラステーブルの上には綺麗に飾られたキャンドルとアレンジメントされた花かご。美味しそうに盛られた食事のお皿が所狭しと並んでいて、どこかのお店に来たのかと錯覚を起こす程。

部屋の隅には立派なクリスマスツリーが置かれていて、チカチカと様々な色を点している。

・・・・・ここまですごい事をしてくれてると思ってなかった。

すごく嬉しくて、目の奥がじんわりと熱くなってくる。

「クスクス。俺、結構頑張ったろ?」

「すごい・・・すごいよ、新一。どこかのお店にきたみたい。ツリーどうしたの?」

「ん?俺ん家にあったのパクってきた。」

「・・・・・怒られるって。」

「大丈夫なんじゃねぇ?あいつら今日から旅行に行ってっし。家にあっても意味ねぇじゃん。だからこっちに持ってきた。クリスマス〜って感じすんだろ?」

嬉しそうに呟きながら、新一が私の体を後ろから抱きしめてくる。

「うん、すっごくクリスマスって感じがする。ありがとう、新一。」

「いえいえ〜。姫子が喜ぶなら何だってやってやるよ。」

「クスクス。そんな上手い事言っても何も出てこないよ?」

「いいよ、俺はお前がいるだけで充分だから。」

そう耳元で囁いて、新一は私の顔を自分の方に向けると唇を塞いでくる。

柔らかい感触が私の唇に伝わってきて、心の奥が、きゅん。となっちゃう。

――――私だって新一がいるだけで充分だよ。

そう心の中で呟いて、私は体の向きを新一の方へ変えると、腕を新一の背中にまわす。

去年は恭子を含め、女の子達だけで開いたクリスマスパーティーでそれはそれなりに楽しかったけど、やっぱり好きな人と過ごすクリスマスって特別だね。




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