緊張の面持ちで、新一が手続きをするのを後ろで見守り、カチコチになりながら案内された部屋へと辿り着く。

そこでも私は驚きのあまり声が出ないでいた。



だって…だって……



高校生が泊まるにしては贅沢すぎるほどの空間。

ソファにしても置かれている家具にしても、どれをとってもピカピカで高級品だと言うことは見て取れる。

いや…高級ホテルなんだから当たり前なんだろうけど。

私はソファにすら座るのも躊躇われて、入り口付近で一人立ち尽くしていた。



「姫子…んなとこで突っ立って、どうしたんだよ?」

「だって…座るの勿体無い」

「あははっ!勿体無いって…座る為のソファだろ?座らなきゃ意味ねーじゃん」

「そやけど…」



それでも渋って立ったままの私を、苦笑を漏らしながら新一は近づいてきて、手を引っ張って半ば強引に私を高級なソファに座らせる。



「うわっ!すごい…ふっかふか」

「な?座っちまえば、どこにでもあるソファと一緒だろ?」



いや…ちゃうし。



肌触りもよく、座り心地のいいソファを私は感嘆のため息を漏らしながら軽く飛び跳ね堪能する。

それを見てクスクスと笑いながら新一は私の手を取ると、急に立ち上がって部屋を歩き出す。


「し、新一?どこ行くの??」

「ん?ベッドルームを確認しておこうと思って?今日は長い夜だからなぁ…居心地がいいか確認しとかなきゃだろ?」

「ちょっ…ちょっと新一?長い夜って…どういう意味よ!!」

「姫子だって分かってるクセにぃ」


その満面の笑みに、私の顔が急激に青ざめる。

明日…無事に家に帰れるだろうか。と、一抹の不安を抱えて。

隣りの部屋にあるベッドルームのドアを開けた途端、またしても私の口から感嘆のため息が漏れる。



……今日は私、ため息を漏らしてばっかりだわ。



目の前に広がる大きなキングサイズのベッドに洒落たベッドカバー。

目に映るもの全てが鮮やかで、口からため息しか出てこない。



「泊まりに来てた時は、いつもファミリータイプだったからベッドも狭かったけど…さすが。すげーな…これで心置きなく姫子を襲える」

「あんたはそれしか頭にないのか!!」

「いてぇってば!イチイチ殴るなってばよ…ケツがでかくなったらどうすんだよ」

「新一がバカな事言うからでしょう?もう…新一のエッチ!!どうしてそういう事ばっかり言うの?」

「………何を今更」



愚問…でしたか。



私は今度は呆れたため息を漏らして、軽く新一を睨んでからベッドの方へと進んで行く。

ベッドを前にすると、人間ってどうしてこういう行動に出ちゃうのか不思議なんだけど……

自然にパフッと体をベッドに投げ込んで数回その上で膝立ちで飛び跳ねてから、仰向けになって寝転ぶ。



「すご〜い。気持ちいい〜〜」

「クスクス。姫子…ガキみてえ」

「な、なによぉ〜」


私と同じように隣りに仰向けに寝転がって、クスクスと笑う新一を睨む。

悪かったですね…ガキで!!



「姫子ぉ〜。キスしよっか?」

「んっ…もう。新一はすぐそういう行動に出る〜」

「イヤ?」

「……じゃ、ないけど」

「じゃ、イタダキ♪」

「おぃ!」


言うが先に新一の体が私に覆い被さってくると、あっという間に唇を塞がれる。

途端に広がる柔らかい唇の感触。

啄ばむようなキスを繰り返されて、次第に脳が犯されていく。

口では渋ったりしてるけど、やっぱり新一とするキスが好き。

一度重なると、離さないで。と言いたくなってしまう。

私は自然に新一の首に腕をまわして、自分からも舌を絡めていた。



「んっ…新一っ…ぁっ…」

「姫子っ…好きだよ。愛してる…」

「ぁっ…ン…私も…好きよ?…愛してる…」

「今日は…いっぱいシテもいい?」

「どさくさ紛れに…んっ…何言って…いつも…いっぱい…してるっ…」

「それ以上に…クリスマスって事で特別に…」



恐ろしい言葉を聞いた気がした。

だけど、新一から送られる甘く刺激的なキスによって、反論できない私が居る。

どんどん深くなる新一とのキス。

熱い舌がいやらしい程に絡み合い、こぼれそうなモノをお互いに吸い上げ飲み込む。



「んぁっ…し…いち…」

「姫子とのキス…すげー好き…マジ…溺れてるよ、お前に…」

「やっ…も…ぁっん…」

「愛してる…姫子…絶対離さねえから…お前だけは…絶対に…」



いつも以上に甘く囁きかけてくる新一の切なく色っぽい声。

キスだけでも、こんなにも体が熱くなるのかと言うくらいに、私の身体は熱く火照っていた。



「姫子?…すげ…シタくなってきた…このまま襲っても…いい?」

「んっ…ダメ…ご飯も食べてないし…お風呂にも入りたい…もん!」

「メシ…か。そうだな…すげえ名残惜しいけど…メシ…食いに行く?」

「ん…行く」


新一にしては意外に素直だったと思う。

最後にキュッと強く抱きしめてきて、軽いキスで締めくくるとニッコリと微笑んで唇を離してくれた。


珍しいこともあるもんだ?


なんて思いつつも、私は新一と一緒に起き上がり服装を整えた。



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