史上最高のバツゲーム−番外編 −Your Smile−




あのあと続けてベッドの上で捺を抱いて、ぐったりとする彼女と一緒にさっぱりしようとシャワーを浴びようと思ったけれど、ゆっくりお湯に浸かれる方がいいだろうと思い返し、お風呂にお湯を張った。

「捺…大丈夫?」

湯船に2人で浸かりながら、体を預けるように僕の胸にもたれかかる捺に、温かいお湯をかけながらそう問いかける。

すると彼女は少し呆れたように僕を見上げて、プクッと可愛らしく頬を膨らませた。

「もー…大丈夫じゃないぃ。優哉は2回で余裕かもしれないけど、私はそれ以上なんだよ?…激しすぎるよ、優哉」

「クスクス。それだけ話せたらまだ大丈夫だね?」

「なっ!?ゆっ優哉の変態!えっち!!」

「捺にだけね?」

そう耳元に顔を寄せて囁くと、捺は頬を赤らめてパンっと僕の胸を軽く叩く。

だけど、ホントの話だから仕方ないよね?

ここまで相手を求めたのなんて一度もない…捺だけ、そう僕が本気で惚れた捺にだけなんだから。

今だってホラ…こうして寄り添って彼女の体温を感じるだけで、再び自分の体が熱く火照ってくる。


どうしようもなく、僕は今、捺に溺れてる。

いや…この先もっともっと、捺に溺れて行くんだろうな。


「捺…好きだよ…」


捺の首筋に唇を這わせ、耳朶を甘噛みしながら息を吹きかけるように囁く。

すると、彼女はくすぐったそうに身を捩りながらも、私も好き。と、返してくれる。


何度聞いても嬉しくなるその言葉。

思わず捺の体を強く抱きしめ、自分の顔から笑みが漏れてしまう。

「誰にも渡したくないよ、捺だけは」

「優哉…。私だってそうよ?誰にも渡したくない」

「クスクス。僕は大丈夫だよ。なんてたって、女の子から嫌われ者だからね?」

「そんなの、学校だけの話でしょ?外に出ればYUって呼ばれて、すごく人気があるじゃない」

「YUは僕であって僕じゃない。架空の人物だから気にしなくていいよ。どっちかって言うと暗ダサキモ男の方が僕自身に近い存在なんだから」

そう言って捺に向かって微笑むと、それでもやっぱり嫌だもん。と、また少し頬を膨らませて拗ねたように見上げてくる彼女が堪らなく愛しくて。


捺が嫌がるならバンドを抜けても…


なんて、考えてる僕は相当重症なんだろうな。


「でも、優哉にはずっと歌ってて欲しい」

「え…」

捺の言葉に、一瞬僕の考えてたことが分かったのかとドキリとさせられる。

「だって、歌ってる時の優哉って本当に楽しそうなんだもん」

「捺…」

「今日のライブのステージで歌ってる優哉、すごく輝いてた。本当に優哉は歌うことが楽しいんだなって伝わってくるし、迫力ある声、綺麗で繊細で色っぽい声がね、ズシーンって心に響くの。優哉の声は人の心を揺さぶる力がある。だからね、ずっと歌ってて欲しいなぁって思う」

女の子から騒がれるのは嫌だけどね。と、肩を竦めて捺が笑う。

すごく嬉しかった。

捺からそう言ってもらえた事。


だけどね、捺。

今日のライブで輝けたのは捺のお陰なんだよ?

今まで以上に声が出たのも、音楽を最大限に楽しめたのも捺のお陰。

だから捺が歌ってって言ってくれるなら、僕はこの先もずっと歌い続けることができる。

どんな場所にいても、ただ一人の為……捺のために。


「捺?」

「…ん?」

「キスして…」

そう言って捺の体に腕をまわすと、捺は少し照れくさそうにはにかんでから、僕の腕の中でクルッと体の向きを変えて首に腕をまわす。

そして一旦顔を少し近づけてから、ふと思い立ったようにまわした腕を解いて、お湯で濡れた両手で僕の前髪をかきあげた。

「2人の時はこうして目を直(じか)に見てもいいでしょ?」

クスッと小さく笑って再び腕を僕の首にまわすと、視線を絡めながら頬を寄せてくる。

吸い込まれそうなほど綺麗な茶色い捺の瞳。

長く生え揃った睫毛が閉じて、色っぽい表情で近づいてくる。

唇が重なる直前まで、僕はその表情に見惚れていた。


チュッチュッと、お互いの唇を吸いあう音と、キスの合間に漏れる捺の甘い声が浴室に響く。

密閉された小さな個室ゆえに、やけにその音が耳に響く。

僕の手は自然に動き出していた。

滑らかな背中を指先で撫で、手のひらでハリのあるキュッと締まったヒップラインを通って、腿までを伝う。

そして水中を漂わせて更に奥まで進み、彼女の秘部を指先で撫でる。

すると慌てたように、彼女が僕の手を掴み、ん。と、声を洩らして唇を離した。

「も…ダメ、優哉」

「ん?どうしてダメ?」

「だって…たて続けなんだもん…私ばっかり」

そう、若干頬を紅く染めて呟く捺。


そう言われても…ねぇ?

僕の身体が捺を求めてるんだから…


――――あきらめて?


そう耳元で囁こうと顔を近づけた時だった。


「今度は私が優哉を気持ちよくしてあげる」


逆に自分の耳元でそう囁かれて、肌が一瞬にして粟立った。

「え…捺?」

僕の戸惑いをよそに、捺は少し意地悪っぽい笑みを浮かべると、僕に浴槽の縁に腰掛けてと促してくる。

半ば強引に、言われるがままに縁に腰を下ろすと、捺は僕の前に移動してきて、もう既に主張し始めている自身にそっと手を添わせた。

「んっ…」

思わず僕の口から声が漏れ、ビクッと自身が反応を示す。

一瞬驚いたような表情を見せた捺だけど、彼女はそれを口に含み刺激を与えはじめた。

「っ…な…つっ…」

「んっ…気持ちっ…いい?…優哉っ…」

吸い上げる音を響かせながら、色っぽい表情で僕を見上げる捺。

その表情のまま、捺の熱い舌が自身を舐め上げ、チュッと音を立てて先端を吸い上げる。

聴覚、視覚を刺激され、更に捺の刺激によって、自身に熱が集中し始めた。


正直、以前までこの行為はどちらかと言うとされるのは嫌だった。

そこまで気持ちいいとも思わなかったし。


だけど…


「すごい…気持ちいい…よ、捺っ…っ…」

思わず熱い吐息が漏れるほど、気持ちが良かった。

それは捺だから…と、言わなくても分かると思うけど。

それに満足そうに微笑んで、捺は刺激を与える速度を徐々に速めていく。

自身を吸い上げる音と、手のひらを使って扱く音がいやらしく浴室に響き渡る。

徐々に霞み始める意識。

上がり始める僕の息遣い。


ヤバイ…このままだと捺の口に…


ドクドクっと熱いものが自身に集中し始めるのを感じつつ、僕は捺の両脇に手を差し入れて少し引き上げると、彼女の口から自身を引き抜いた。

「んっ…優…哉?」

「も…いいよ、捺」

「え…でも、まだ…」

僕は直接それには返事を返さずに、捺の体と一緒に再び湯船に浸かり、そっと耳元に意地悪く囁く。


「捺…僕にめちゃくちゃにされたいの?」


えっ…。

そう捺の口から言葉が漏れると同時に熱く唇を塞ぐ。

「こんなに僕を煽って…どうするの?」

「んっ…ゆぅっ…ぁっ…」

「めちゃくちゃにしちゃうよっ…捺のことっ…」

「んぁっ…やっ…ダメっ…んっ…」

「嫌だなんて言わせないっ…捺がその気にさせたんだからね?…責任持って…ねっ!!」

「あぁぁんっ!!」

貪るようなキスの合間に言葉を交わし、自身を彼女の入り口にあてがうと、一気に中を突き上げた。

鼻から抜けるような甘い声と共に、捺の顎が上がって上体が反る。

それを支えるように、彼女の背中に腕をまわし、中を激しく突き上げながら、首筋に舌を這わす。

律動に合わせて水面が荒れ、水しぶきを上げて溢れ出す。


「あっ…アンっ…あぁんっ…ゆうっ…やぁっ…あぁぁっ」

「っくっ…すごっ…気持ちっ…いっ…なつっ…ぁっ…」

「あんっ…いっ…優哉っ…気持ちいっ…」

「捺もっ…気持ちいい?」

「んっ…いいっ…すごくっ…気持ちっ…いいっ…あぁんっ!」

「もっと…気持ちよくして…あげるっ…」


繋がったまま、僕は捺の体を抱き上げ浴槽を出ると、そのまま捺を片足で立たせ、もう片方の脚を膝に抱えて体を強く抱きしめる。

そしてそのまま激しく律動を送ると、甘い声を洩らしながら捺が僕にしがみ付いてくる。

「あぁっ…優哉っ…あぁぁんっ…あっ…あぁっ…あぁぁんっ」

「はぁっ…くぁっ…捺っ…すごく…いいっ…ヤバイっ…も…イキそ…」

先ほどの捺からの刺激と直(じか)に触れる捺の中に、いつもより早く自分の果てが近づいているのが分かる。

「んぁっ…いいっ…私もっ…もうっ…あぁぁんっ」

「ごめっ…捺…早めに出なきゃ…だからっ…捺をイかせて…あげられない…かもっ」

下から突き上げるように腰を打ちつけ、体を打ち合う乾いた音を聞きながら、徐々に意識が霞み出す。

捺の弱い部分を集中的に攻め上げ、彼女を高波に導くように身体を激しく揺さぶった。

「ゆうやっ…もっ…ダメ…あっ…あぁっ…あぁぁぁんっ!!」

「んぁっ…なつっ…っく…ぁっ…」

かろうじて捺の強い締め付けを感じ取り、素早く自身を引き抜くと、暫くしてから欲望を吐き出した。


荒く息を吐き出しながら、捺とキスを交わし、彼女の太ももに少しかかってしまったモノを洗い流す為に、シャワーの蛇口を捻る。

サーッと言う音と共に水が飛び出し、お互いの火照った体を冷やしてくれる。

「んっ…ゆぅ…や…」

「なつ…」

徐々に水の温度が上がり出すのを感じながら、互いの名前を呼び合い、舌を絡めてキスを交わす。

頭上から降り注ぐお湯が捺の舌を伝って口の中に流れ込んでくる。

それでも構わずに、僕は捺とのキスに酔いしれていた。


「ごめんね、捺。ちょっと…中途半端だったね」

「そんなことない…すごく気持ちよかったもん…」

そう、可愛らしく僕の目を見て少し首を傾げる捺に、ちょっと意地悪く微笑んでみる。

「あー、ごめん。言い方が悪かったね。中途半端なのは捺じゃなくて僕の方」

「え?」

「まだ、めちゃくちゃにし足りないってこと」

「え゛…」


狂ってるって言われても仕方ない。

今の僕は捺が欲しくて欲しくて堪らないのだから。

身体を重ねても、また更に捺を求めてしまう。


ごめんね…今日の僕は捺でも止められそうにないよ。



「シャワーを浴び終わったら、いっぱいベッドで愛してあげるね?」


今日は眠れない覚悟でいてね…捺。




←back top next→