史上最高のバツゲーム−番外編 −Your Smile−




捺と一緒に歩く帰り道。

いつも通り、先ほどまで「YU!」と叫んでいたファンの子達は僕に気付きもしないで、逆に怪訝そうな表情で僕を避ける。

この様子はいつもの事だから、僕はさして気にもしなかったんだけど、捺には違ったようだった。

それがまた僕の心をグッと熱くした。


「優哉、私ね…YUの姿の時の優哉はすごくカッコよくて素敵だと思う。けど、私は今の優哉の姿の方が優哉らしくて好き…すごく好き」


捺の言葉が深く僕の心に染み渡って行く。

こんな言葉を言われたのは初めてだった。

バンドがキッカケでCLUBで働くようになって、何人かの子に告白されて。

別にいいよって軽いノリで、それでも真面目に付き合ったけれど、みんな僕の普段のだらしなさに耐えられずに去って行った。


寝癖を直して!とか、猫背で歩かないで!、とか、もっとしっかり喋ってよ!そんなんじゃ恥ずかしくて隣りを歩けない!が、彼女達の口癖で。


CLUBでバイトしてる時には、「YUはあたしのモノよ」って誇示するクセに、普段は寄ってくるなと言わんばかりの態度。

正直、僕のどこを好きになってくれたんだろう、と悲しかった、僕は外見でしか価値がないのか、と。

だから、捺の言葉が凄く嬉しかった。

このだらしない暗ダサキモ男の姿も、部屋を片付けられない僕も全部受け入れて僕を好きだと言ってくれたその言葉が。

僕の目に狂いはなかった…やっぱり、僕が本気で惚れた捺だ。

そう、確信が持てた瞬間だった。


僕は嬉しくて堪らず、捺の華奢な体を思いっきり抱きしめた。

想いのたけを全て込めて、彼女の体を強く強く抱きしめた。

そして、唇を重ねてからはもうダメだった。

理性が吹っ飛ぶ1秒前…まさにそんな感じで彼女に深くキスを求める。


「んっ…ゆ…やぁ…」

捺が甘い声で僕の名前を呼ぶ。

「捺…ヤバイ…」

もう限界…捺…

「ん…?」


捺が今すぐ欲しい…捺を今すぐこの手で抱きたい…


「今すぐにでも捺が欲しい…」


僕は捺の返事を待たずに、彼女の手を引いてマンションに向かって足早に歩き出す。

この距離が凄くもどかしかった。

エレベーターが下りてくるまで待ってられずに唇を奪い、乗り込んでからも少し強引な形で捺を壁に押し付けてキスをする。

こんなに余裕がないのは初めてだった。

捺と片時も離れたくない、彼女に触れていたい。

信じられないくらい頭の中は捺でいっぱいで、唇から伝わる彼女の温もりをもっと、もっと、と求めている僕がいる。


部屋に辿り着き、なだれ込むようにベッドに2人して倒れこみ、求め合うようにキスを交わす。

角度を変え、唇を吸い、捺の口内に舌を滑り込ませる。

舌先に感じる捺の舌。

お互いに舌先を弄るように絡み合わせ、それを伝って奥深くでまた絡ませる。

部屋に響く唇を吸いあう音と、捺の口から漏れる甘い声が僕の脳を刺激して、体が更に疼き出す。


「捺…このまま、いい?」


耳元に吹きかけるように囁くと、ビクッと反応を見せ、ん…いい。と、頬を赤らめながら応える捺が堪らなく愛しかった。


捺の首筋に唇を這わす。

捺の腿に指先を滑らす。

それだけで身体の芯が熱く火照り、自身に更に力が漲るのが分かる。


ヤバイ…なんとか抑えないと、捺を壊してしまうかもしれない。


そんな若干の不安を覚えつつ、彼女の肌が微かに震えてるような気がして、耳朶を甘噛みしながら、そっと耳元で囁く。


「捺…震えてる…怖いの?」

「分からないけど震えるの…」


そう、頬を高揚させて小さく呟く捺が凄く可愛らしくて、服を脱がせながら思わず笑みを漏らしてしまう。


「捺の肌が悦んでくれてるのかな?僕に触れられて」


その言葉に、納得したように、はにかんだ捺。

僕もそうだ。

数人と身体を重ねたことはあったけど、ここまで鼓動が高鳴り、気分が高まり、身体全体が相手を求める事はなかった。

僕の全てが悦んでいる…捺の肌に直(じか)に触れられて。


「もっと触れて…優哉…私の身体にもっと…もっと優哉を感じたい…」


捺…そんな可愛いこと言って、知らないからね?

言ったからには全て責任持って受け止めてもらうから。


「心配しなくていいよ、捺。捺が嫌っていうほど感じさせてあげる…僕の身体…僕の心…どれだけ僕の中が捺でいっぱいなのか…教えてあげる」


教えてあげる、捺。

今まで音楽バカだった僕が、それも楽しめないほど君に溺れてるって事を。


再び唇を重ね、激しいくらいのキスを交わす。

触れ心地の良い、滑らかでハリのある捺の肌。

華奢な割りにしっかりと膨らみのある形の良い胸。

捺の肌を全て堪能するように、唇を這わせて舌を滑らす。


「ぁっ…ん…ゆう…やっ…」


捺の可愛らしい甘い声をもっと聞きたくて、指先、手のひら、唇、舌先…それら全てを使って彼女に刺激を与えた。

指先を捺の肌に滑らせ、内腿を伝って秘部に触れると、そこはもう熱い蜜で潤っていて。

舐めるようにミゾにそって指を這わすと、更に蜜が溢れ出す。


「捺?どんどん溢れてくるね…まだ中に入れてないのに、これだけでも気持ちいい?」

視線を絡ませたまま、囁くように少し意地悪く問いかける。

「あっ…んっ…ん…気持ち…いっ…」

そう、瞳を潤わせて色っぽい顔を見せる捺に暫し見惚れてしまう。


可愛いよ、捺…もっとその顔を僕に見せて?


「そう?じゃあ…もっと気持ちよくしてあげる…」

掠れた声でそう囁いてから、僕は角度を変えて捺の熱い蜜で潤った中に指を進ませる。

想像以上に狭く感じる、熱い捺の中。

その中を探るように内壁を擦り、あらゆる角度で刺激を与える。

それに反応して捺の蜜が僕の指に絡み、中が心地よく指を締め付けてくる。


こんな中に入ったら…


「捺の中、すごく気持ち良さそう…僕の指をぐいぐい締め付けてくる…こんな中に這入ったら即アウトかも」

「やっ…ゆうっ…あぁんっ…あっ…あぁっ…ダメっ…そんな…イっちゃうんっ…やぁぁんっ!」

「いいよ、イって?可愛いよ、捺…すごく色っぽい…」


捺のその色っぽい表情をもっと近くで見たくて、僕は彼女の首の下に腕を通して肩を抱き寄せると、彼女を見つめ、激しく中を刺激した。

小刻みに震え出す捺の身体。

息が上がり、更に彼女の口から鼻から抜けるような声が聞こえだす。


もっと聞かせて…捺。

もっと見せて…捺。

僕だけが見れる腕の中の可愛らしい捺を…


「いやっ…いやっ…イクっ…いやぁんっ…あぁっ…優哉っ…優哉ぁぁっ…」

「ヤバイ…今の顔…もっと見せて?その顔…僕だけが見れるその顔を…」

「あぁっ…あぁぁあんっ…ゆ…やぁぁっ!!もっ…ダメ…あぁぁっ!!!」

「捺…ホント、すごく可愛い…このまま軽く先にイカせてあげるね…」


髪を掴まれたまま、僕の腕の中で頂点に達した捺を愛しく見つめながら、彼女に求められるがままに熱く唇を重ね、そして強く彼女の身体を抱きしめた。



捺が僕の与えた刺激によって悦を得られたことにこの上ない満足感が僕を覆う。

でもこれだけじゃ終わらないって言うのは、分かってるよね?…捺。

まだ落ち着きの戻っていない捺の身体に、僕は再び唇を這わせて快感を呼び起こす。

捺は、待って。なんて言うけれど、待てると思う?


こんなに捺の中に這入りたくてウズウズしてるっていうのに。


僕は意地悪く笑って、捺に刺激を与え、再び頂点へ達しようとするギリギリのところで愛撫を止める。

中々の意地悪っぷりだと自分でも思った。

だけどねぇ?そろそろ僕の我慢も限界でしょ。

僕は捺の、一緒がいい。と言う返事に満足げに笑みを浮かべてから、着ているものを自ら脱ぎ捨て、再び彼女の唇に自分の唇を重ねた。


用意していた、健也から貰ったゴム。

少し使う事に躊躇いはあったものの、実際着けてみると意外にしっくりと納まって微妙な気分になる。

僕のってそんなに……?

いや、この際そういう事はあまり深く考えないでおこう。


キスを交わしながら、痛くないようにと、ゆっくりと捺の中に自身を埋め込み、最後まで這入ると同時に僕の口から熱い息が漏れて、体を預けるように彼女の首元に顔を埋める。

「すごく気持ちいい…捺の中…」

そう耳元で掠れた声で囁くと、俄かに捺の中がキュッと締まる。


ヤバ…ただでさえ心地よすぎてイキそうなのに…


すごく熱くて蜜が絡み付いてくる捺の中。

想像以上に心地が良くて、すぐにでも果ててしまいそうなくらい気持ちがいい。

その感触に、全身の肌が痺れそうなくらい、僕の中が高揚していた。


初めてだ、こんな感じ。

ヤバイ、本気で捺を…壊しそう…


「健也の言葉じゃないけれど、惚れに惚れこんだ捺だから…こうして一つになれて、ヤバイくらいテンションが上がってて…このまま行くと捺を壊しちゃうかもしれない」

ゆっくりとした律動を送りながら、熱い視線を向けると、捺は僕の気分を煽るような事を言ってくる。

「いい、よ…優哉が思うように…優哉も一緒に気持ちよくなって欲しいから…」

その言葉にニヤリと口の端が上がってしまう。

「捺…。嬉しい事言ってくれるね。じゃあ、お言葉に甘えて…最初から飛ばしてもいい?」


僕は宣言通り、最初から捺の体を激しく揺さぶった。

体を起こし、彼女の脚を大きく押し広げて中を突き上げる。

脳天を刺激させられるその快感に、意識が徐々に呑み込まれて行く。

角度を変え、体勢を変えてあらゆる角度で捺の中を攻め立てた。

捺が何度か軽い悦を超え、少し意識が飛びかけているのは分かっていた。

だけど、止められそうになかった。

身体を打ち合う渇いた音が部屋に響き、繋がる部分から漏れる水音に脳が刺激されて、更に深く腰を打ちつけてしまう。


「んっ…あぁっ…んぁっ…」

「好きだよ…捺。ずっとこうしたかった…捺をこうして腕の中に抱けたら、どんなに幸せだろうって思ってた…」

「ゆう…や…」

「やっと手に入れられた捺の事…だから、離れるつもりも離してあげるつもりもないから。僕だけの捺だって事、忘れないで」


絶対離さないから…覚悟してね、捺。


僕は少し自分の身体を落ち着かせるように、緩い律動に変えながら、捺の首筋に紅い印をハッキリと残す。

これも今まではしたことがなかった行為だ。

初めてつけた、僕の独占欲の印。


「私も優哉の事、すごく好きよ…初めてこんなにも人を好きになったの。だから離さないで、私のこと…どんなにファンの子に愛されても、私だけ見ていて欲しい」


離すわけがないじゃないか。

僕だってこんなにも人を好きになったのは初めてなんだから。


今の僕には捺しか見えてないよ――――。


「好きだよ、捺」


僕はもう一度囁き、唇を重ねて舌を絡め取る。

再び律動のリズムを変えて、激しく自身を彼女の内壁に擦り付ける。

徐々に肌が痺れてきて、頭の中が白く霞み出す。


「っん…ぃっ…気持ちいい…捺っ…そろそろっ…限界っ…イきそっ…いい?…イっても…」

「いっ…いいっ…私も…もっ…優哉っ…イクっ…んんっ!あぁぁっ…あぁぁんっ!!」

「なつっ…ぁっ、くっ!…イクっ!!」

「いあぁぁぁんっ!!」


捺の強い締め付けに耐え切れずに、幸せな気分に浸りながら、僕は同じように彼女の中で果てた。


お互いに荒く息を吐き出しながら、引き寄せられるように唇を重ねる。

やっと捺が本当に僕のモノになった…そう感じられた瞬間だった。


「好きだよ…捺」

「私も…優哉のことが好き」


そう言って微笑み合い、再び唇を重ねて甘い時間を堪能する。


だけど…

捺?忘れてないよね。

どれだけ僕の中が捺の事でいっぱいか、教えてあげるって言った事。

まだまだ、これからだからね?



健也。不本意だけど、今回は健也に感謝してる。


――――1年近くご無沙汰だから、買い足してねえだろ?そんだけありゃ、今日は心置きなくヤれんだろ。俺ってすげー気の利くお兄さんじゃねぇ?


気の利くお兄さん。って、今日だけは呼んであげるよ。


僕は満面の笑みを浮かべて、再び捺の唇に自分の唇を重ねた。




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