* 天使のかけら *
どうやら私はセナと全校生徒公認の仲になってしまったようで。 一体全体何がどうなってるんだ。 誰かきっちり分かるように説明して欲しい。 頭の整理がつかないまま、今はセナと2人、中庭のベンチに座って昼食を取ってる私。 「……ねぇ。どうしてこんな事するの?」 「あ?何が。」 「何がってほら。余命を告知したり、突然転校生としてやってきたり……彼氏になったり。」 「やっとお前も俺の事を信じる気になったか?」 「信じたくないけど!あんな能力を見せられたら…信じるしかないじゃない。」 一瞬にして変えてしまったみんなの記憶。 信じたくはないけれど、信じさせられる彼の行動。 「まぁなぁ。何でかって言われっと……まぁ、何だ…泣きっ面のままあの世に連れて行くのが嫌だったからじゃねぇの?」 「どうして私にだけ?」 「……だから言ったろ。泣き面は見たくねぇんだって。お前はいつの時代も明るくて元気で、ちょっと鈍クサイけど笑顔の絶えないヤツなんだ。今回は少し短い人生だったが、それでも最期は幸せな気持ちで送ってやりてぇって思ったから。」 「いつの時代もって……今回だけじゃないの?」 「違うに決まってんだろ?何度も人間は生まれ変わる。お前だってそうだ。人生が終り、天に召され神によって新たな生命を吹き込まれて、また下界で生まれる。俺はずっとお前の魂をそうやって送り迎いしてきたんだ。」 「ずっとって、いつから?」 「いつから……1500年くらい前?」 「せっ……」 1500年前?! いっ、一体いつの時代?!え…セナっていくつ?? いや、深く考えるのはよそう。 頭がおかしくなってしまいそうだから。 それよりも…… 「あの……セナのその能力で私の余命とかって操作は出来ないの?」 「無理。」 ………即答。 「絶対に?」 「絶対。大きく運命を変える事は固く禁じられている。まぁ、俺ぐらいの能力を持ってるヤツだったら出来ない事もねぇけど?」 「じゃぁ出来る?」 「だから言ったろ、運命を変える事はできねぇって。お前の限られた命を延ばす事は大罪なんだ。」 「大罪。」 「あぁ。だから、俺にしてやれる事は残された7日間を幸せなモノに変えてやるくらいだ。」 「セナが彼氏になる事が私の幸せ?」 「……不服かよ。」 …………もうちょっと違う幸せの方が。 そうは思ったけど、少しつまらなさそうな表情を見せるセナに、ちょっとだけ嬉しくなったりして。 なんでだろう? 「おっと。仕事だ。」 「え、仕事?」 「あぁ。3丁目の爺さんを送ってやる時間だ。」 「……天界に?」 「クスクス。遥にしては呑み込み早いじゃねぇか。」 どういう意味だぁ。その遥かにしてはってのは!! セナは笑いながら立ち上がり、一旦私の方を向く。 「……………?」 「じゃぁ、ちょっくら行ってくるわ。」 そう微笑みかけると体を屈めてちゅっと軽く唇を重ねてくる。 「なっ?!」 「結構キスってのもいいもんだな。見る事は何度もあったけど、何がいいんだ?って思ってたんだが。実際やってみると納得。」 じゃぁな、遥。しっかり勉強しとけよ。と、言葉を残してフッ。とセナの姿が消える。 ………消えた。 何度見ても慣れないこの行動。 長い長い夢でも見てるんじゃないかって気さえしてくる。 取り残された私は、一人中庭で真っ赤な顔のままボーっと明日の方角を見ていた。 ←back top next→ |