* 天使のかけら *
嘘だ、そんなの。 7日後に死んじゃうなんて…。 たった16年しか生きてないのに? 「そんなの冗談だよね?7日後に死んじゃうなんて…何かのドッキリ?」 『……だから嘘はつかねぇって言っただろ。さっき、「消えちゃいたい。」とかって言ってたじゃねぇか。ちょうどよかったじゃん?』 いや。アレはモノの例えで…本気で消えたいだなんて思ったわけじゃなくて。 私は失恋した事など、とうの昔に忘れさっていて、セナから告げられた最終告知が頭の中をぐるぐると回る。 ……後、7日しか生きられない。 …………後、7日。 ………………後。 絶対夢だ。うん、これは夢なんだ。 失恋したショックが大きすぎてあのまま泣き疲れて眠ってるのよ、私。 悪魔のような天使が目の前に現れた事は夢に違いない。 「……ベッドに戻らなきゃ。」 私はくるっとセナに背中を向けると、ゴソゴソと布団の中に潜り込み、瞳を閉じる。 『あっ!コラ、おいっ!!……』 何か聞こえる気がするけど……幻聴、幻聴。 「このヤロー。俺を無視するたぁ、いい度胸してんじゃねぇか。」 「え?ひゃっ!?うわぁっ!!」 いつの間に部屋に入ってきたのか、セナが私のベッドの縁に座り頭から被った布団を引っぺがす。 「お前、俺が言った事本気にしてねぇだろ。」 「そりゃ。突然そんな事言われても…あなたが天使って言うだけでも信じられない事だもん。これは失恋のショックで見ちゃった夢、天使も余命も全部夢…私はそう思うことにする!!」 「クスクス。へぇ、じゃぁそう思っておけばいいんじゃねぇの?明日朝、目が覚めて学校へ行った時に、これが夢じゃねぇって事を証明してやるよ。」 「…どういう意味?」 「ま、明日になってからのお楽しみだ。余命7日、俺が忘れられない最高の日にしてやる。気持ちよくあの世へ行けるようにな。」 じゃぁな、遥。と、言葉を残して、セナの姿がフッと消える。 ……………消えた。 やっぱり夢だ。これは悪い夢!! あぁ、ダメダメ。頭がおかしくなっちゃいそう。 私はぶるぶるっと頭を振ると、ガバッと布団を頭から被り瞳を閉じた。 ←back top next→ |