<ご注意>こちらの作品は、性的描写が含まれております。
       申し訳ございませんが、18歳未満の方、そういった表現が苦手な方は、ご遠慮ください。



* 天使のかけら *






真っ暗な部屋に響く私のすすり泣く声。

本日私、朝倉遥(あさくら はるか)16歳は、人生最大の不幸のどん底に落ちました。

それは何かと申しますと……そう、失恋です。

中学の頃からずっとずっと好きだった先輩。

ストーカーのように毎日毎日追い続けて、私には無理だと言われた先輩が通うこの高校にも必死に死ぬ気で勉強して、何とか合格する事が出来て。

願掛けをしてたの。

この高校に受かれば、きっと自分の恋も叶うって。

だから意を決して先輩に告白したと言うのに。





「彼女いるから。」





その一言で、私の願掛けは儚くも叶わず見事に散った。

あんなに頑張ったのに。

勉強も………恋も。



もう、嫌。

こんな悲しい気持ちを持ち続けなきゃいけないなんて。

絶対、絶対、今後誰も好きになんてなれない。

私の恋はもう終わり。



「このまま消えちゃいたい。」



ベッドにうつ伏せて、腕の中に顔を埋めたまま涙声の自分の声がどこか遠くに聞こえる気がする。









『ビービー、ビービー。失恋如きで泣いてんじゃねぇよ。』









突如として聞こえてきた誰かの声。

私はビクッと体を強張らせて、辺りをキョロキョロと見渡す。



「だっ、誰?!誰か、部屋にいるの?」



真っ暗な中、微かに見える自分の部屋の間取りを目を凝らして視線を動かす。



『バーカ。そっちじゃねぇよ、こっちだ、こっち。』



こっちって………どっち?



未だに声の出所が掴めず、キョロキョロとしていると、コンコンコン。と窓を叩く音。

その音に反応して、窓の方へ視線を向けた自分の顔が思いっきり引き攣り、体が硬直する。



『よお。』




「うっ…うっ…うわぁぁぁぁっ!!!」






私の視線の先に映ったもの。

少し長めの前髪が風に靡いてふわふわと揺れる、真っ黒なサラサラのショートヘアー。

目はくっきり二重で、透き通るような淡いグレーの瞳。

すっと筋の通った鼻に、形のよい唇。

シャープな顎のライン。

変てこりんな服の袖から伸びる腕は綺麗な筋肉がついていて。

よぉ。と、片手をあげる彼はどこからどう見ても超美男子!!

……いや、そうじゃなくて。

彼は窓の外から私の様子にクスクス。と笑いながら見ていて、ごく自然にその場で胡坐をかく。



『すげぇ反応だな。』



そう、彼はおかしそうに笑うけど……。

当たり前でしょ?

当然でしょ、この反応。

だって、だって…私の部屋って……







2階なんだからぁぁぁ!!







何これ、夢?え…私ってば失恋のショックで頭がおかしくなっちゃった??

ふわふわと浮いてる状態で胡坐をかき、膝の上に肘を置いて顎を乗せている彼はどう見たって……

……………何?

見た目的には同じ年ぐらいのカッコいい男の人なんだけど。

超能力者?……宇宙人?……それとも……?



「あなた、誰?」



私は勇気を振り絞り、高鳴る心臓を抑えるように胸元をぎゅっと握り締める。

心臓はドキドキしちゃってたけど、不思議と彼を『怖い』とは思わなかった。

――――どこか懐かしいような、安心できるような。そんな感じが自分を覆う。



『俺?俺はセナ。天界と下界を繋ぎ、死んだ者の魂を天界へと導き、新たに生を宿した魂を下界へと連れてくる神の使者だ。』



名前がセナ?で…天界がどうで、下界が何だって?



『まぁ、お前ら人間の使う言葉で言うと、「天使」っつぅ事だな。』

「てっ天使?!あぁあなたが……天使?」

嘘。全然イメージと違う。

天使って言ったらほら、金髪の外人さんの子供のような可愛らしくて優しい顔の背中に羽が生えててプカプカ浮いてるイメージ。

なのに。

目に映るセナと名乗る「天使」は、宙に浮いてはいるけれど、羽もなければ「可愛い」・「優しい」などとは程遠い顔立ちで、どちらかと言えば「冷たい」・「怖い」と言った表現の方がしっくり来る。



『何だよ、その反応は。俺が天使に見えねぇって?』



……えぇ。申し訳ないですが、



「見えません。」

『……ムカツク。ハッキリと言いやがって。大体なぁ、お前が持ってるイメージっつぅのは、人間が勝手に創り上げた想像のモンだろうが。実際の天使っつぅのはこういうもんだ、覚えとけ!』



何か。やけに横柄な態度の天使だなぁ。

私の持っている天使のイメージが………崩れてく。



「でも…どうして?どうして、その天使が私の前に現れるの?私はまだ生きてるのに。」

『あぁ、お前7日後に死ぬからな。本来なら死ぬまで明かさない規定なんだが、失恋如きでピーピー泣いてやがるから、教えてやりに来たんだよ。余命7日間、めいいっぱい楽しめよって。』



え……今、何て?私の聞き間違い?

7日後に…私が…死ぬ?



「嘘。」

『天使が嘘ついてどうする?』



その時のセナの微笑みが、悪魔の微笑みに見えた気がした。




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