* 天使のかけら *






私はその夜、初めてセナに抱かれた。

優しく私の体を這う、セナの唇。

私の存在を確認するように、体をなぞるセナの指先。

それを感じれば感じるほど、体が熱くなり息が上がる。


「あっ…ん…セナ…」

「すげぇ熱い、遙の体。」

「セナも…すごく熱いよ?」


私はセナの綺麗な肌に指先をつーっと這わせて彼の瞳を見つめる。


「あぁ、すごく熱い。体の中が燃えてるみたいだ。」

「熱…あるの?」

「……………お前さー。雰囲気をぶち壊しにするような事言ってんじゃねぇよ。」

「あぅっ…ごめん。」


まぁ、お前らしいけどな。そう言ってセナは少し笑ってから、首筋に唇を落とす。


「んっ…」


セナの唇が首筋を通って、胸の蕾までくると、それを口に含みキュッと吸い上げて舌先でコロコロと弄ぶ。

それに反応して身を捩ると、更にもう片方の蕾を指先で摘んでくる。


「あっ…んっ!」


私の口からは甘い吐息しか漏れてこなくて、自分の中心が熱く潤ってきている事が分かる。

セナはもう片方の手で秘部に触れてくると、ゆっくりとヒダを撫でて刺激してくる。


「あっ…あっ…セナっ…」

「気持ちいいか?遙」


少し掠れたセナの声。

すごく色っぽくて、胸の奥がきゅんとなる。

そのまま指を中に埋めてくると、くちゅっくちゅっと音を立てながら内壁を擦る。

身を捩りながら吐息を漏らす私に、唇を重ねてくると、舌を絡めて口内をも優しく犯してくる。

もう、何も考えられなかった。

私はセナから与えられる悦に酔いしれ、霧の中を彷徨う。

暫くその悦を感じていると、秘部に彼の指とは別の大きな存在を感じた。

……セナが入ってきてる?


「んっ!!」

「痛い…か?」


セナは少し切なそうな声を出しながら、私の顔を心配そうに見つめてくる。


「ん…少し。」

「多分、サイズ的には人間のモノと同じだと思うんだけどな。」


……なんの話をしてるんでしょうか?


訳が分からずに、眉を寄せながら首を傾げると、まぁこっちの話。と言ってセナがそっと額にキスをする。

途端に痛みが消えて、別の感覚が生まれ始める。


「あっやっ…セナっ…んんっ!」

「んっ…遙…」


ゆっくりとした律動から、徐々にリズムが早くなる。

私は自分を見失わないように、セナの背中に腕をまわし、ぎゅっと力を入れてしがみ付く。

腰を打ちつける音と、繋がる部分から漏れる卑猥な水音。

「セナっ…セナっ…あっあぁぁあん!!」

「はるっか!!」


それらを耳で感じ取りながら、私はセナと共に絶頂を迎えた。

頭が真っ白になる直前に、バサッと大きな風を切る音が耳に届いた。



「……綺麗」



荒く息をつきながら、私は部屋中に舞い上がる白い羽と、セナの背中から見える大きくて綺麗な翼を見ていた。

「すげぇな、遙。俺に羽を出させるとはな。」

「え?」

ひらひらと舞い落ちる白い羽を一つ手に取り、セナは小さく笑う。

「俺ぐらいの能力がある天使は、滅多に羽を出さないんだよ。持っている能力を最大限に引き出す時と、感情が一定ラインを超えた時以外はな。」

「そう…なの?」

「あぁ。だから、遙とのエッチは最高によかったっつぅ事だな。」

意地悪い笑みを浮かべて、私の顔を覗きこんでくるセナに途端に頬が真っ赤に染まる。

「うわっ!そっそんなハッキリと!!」

「何、照れてんだよ。天使とエッチしたヤツなんざ、この世にいねぇぞ?誇りに思っとけ。」


そう言ってセナはクスクスと笑う。

そりゃ、そうかもしれないけど……

私はセナが持っていた羽を自分の手に持つと、じっとそれを見つめる。


「どうした?羽なんかじっと見て。」

「ん…セナは本当に天使だったんだなぁって。」

「おぃおぃ、今更かよ。」

「あははっ。そういう事じゃないけど…改めて実感したって言うか…ねぇ、本当にセナはいいの?」

「何が?」

「天使を捨てても。」

「あぁ。覚悟は出来てる、じゃなきゃお前を抱いてねぇし。俺はお前だけの天使になってやる。だから、お前は俺の事を信じて待ってろ。」

「セナ…うん、分かった。信じて待ってるよ…セナが私の所まで帰ってきてくれるまで。それまでこの羽を持っててもいい?」

「はぁ?羽なんて持っててどうすんだよ。」

「お守りにする。セナが天使だったって言う証拠と、これを目印にセナが私の所に帰ってきてくれますようにって。」

そう言ってセナに向かって微笑むと、バーカ。すぐ帰ってくるよ。と髪をくしゃくしゃっと撫でられる。

「セナ…愛してる。ずっと信じて待ってるから…必ず戻ってきて?」

「あぁ。必ず戻ってくるよ…お前の事を愛してるから。」


――――ありがとう、セナ。

私はセナを引き寄せて、そっと自分から唇を重ねた。






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