−3− 「あぁ、クソッ。すっげぇムカツク!!」 俺は自分の部屋に着くや否やカバンを床に放り投げ、ドサッとベッドに身を投げる。 一旦自分の部屋に戻りカバンを置いてきた真由が首を傾げながら俺の部屋に入ってくる。 「もぅ、智也。何怒ってるの?」 「何怒ってるの?じゃねぇよ!人をガキ扱いしやがってオマケにバカにしたようなモノの言い方!!ムカツクだろうが。」 「あぁ・・・その事。」 「お前もお前だ、真由。あいつと仲良さそうに手なんか繋ぎやがって。何考えてんだよっ!!」 「だっだってぇ。剛さんがその方が恋人同士に見えるよ、って言ったから・・・。」 ・・・剛さん? 真由の口から出されたその名前に余計に腹の底がぐつぐつと煮えてくる。 「じゃぁ何か?お前は恋人同士に見えるからキスしよう、って言われたらすんのかよ!!」 「なっ?!やっ・・なんでそうなっちゃうの?そんな事までしないもん。」 「どうだか。」 俺は冷たく言葉を吐き捨てて、真由に背中を向けるようにベッドの上で身を転がす。 「やぁ、もぅ。智也ぁ?どうしてそういう事言うの?私は智也としかキスなんてしないよ?」 「うわべだけの恋人になるって事も、手を繋ぐ事もウマく言いくるめられて従ってるクセに?キスだってその内されちまうんじゃねぇの?」 「そっそんなぁ。」 八つ当たり・・・自分でも分かってる。 俺だってメイのヤツにいいように扱われた訳だし? だけど、どうしても腹の中にあるものを目の前の真由にぶつけてしまうわけで・・・。 ・・・やっぱり俺ってガキかも。 そう思うと更に怒りが増してきて・・・悪循環だ。 「智也ぁ。機嫌直して?」 「・・・・・。」 「とも・・ぁっ。」 真由が泣き声になりながら俺の背中に手をあてた所で真由の携帯がスカートのポケットの中で鳴り出す。 一瞬、ん?と言葉を漏らしながら、彼女が携帯に出る。 「もしもし?・・・えっ?!あ、つっ剛さん??」 ・・・剛っ?! 俺はガバッ。と体を起こして真由に視線を向けると、気まずそうに彼女が視線を泳がせる。 「え?あ、はい。今・・・そうです。え?自分の部屋に・・ですか?ちょっちょっと待ってくださいね。」 そう電話口に向かって話しながら、真由はいそいそと俺の部屋を出て行こうとする。 「真由っ!!」 俺の少し大きな声が真由の背中に当たり、ビクッと大きく彼女が身を震わせる。 ゆっくりと俺の方に向き直る彼女。 「行くな。ここで話せばいいだろ。」 俺の貫くような視線に半べそをかきながら、真由が俺の元へと戻ってくる。 ったく。何なんだよ、剛のヤロー。コソコソとしやがって。 「あのっ・・・ご用件は?」 ベッドの上の俺の傍に腰を掛けながら、少し小さい声で彼女が話す。 「え?明日、ですか?えぇ特に用事は・・・はい。えっ?!あーいぁー・・はい。」 何だよ、何話してやがる?明日・・・明日は土曜日だよな。それがどうした? 俺は真由がヤツと何を話してるのか気になって仕方なくて。 気の無い素振りを見せながら、そっと耳を欹てる。 「あ、そうなんですか?・・・あーぅー・・・そういう事なら。んー・・はい、じゃあ分かりました。それじゃあまた。」 ピッ。と携帯の切れる音がして、真由が小さくため息を付く。 俺はゆっくりと真由に体を向けて後ろから抱きしめた。 「・・・何の話?」 「えっ?!あ・・・の。何でもないよ?」 「・・・・・何でもないわけねぇだろ。明日がどうしたんだよ。」 「・・・明日・・・ちょっとお出掛けしてくる。」 「はぁっ?!誰とだよ。」 「んーと・・剛さん。」 はぁ?!剛と出かけるだぁ?? 「おまっ!何、言ってんだよ。何で学園以外でアイツと会うんだ。フリをするのは学園だけだろうが。」 「やっあの・・・来週メイさんの誕生日なんだって・・・だから一緒にプレゼント選んでくれないかって。」 「んなもんワザワザ真由に頼む事じゃねぇだろ!しかも、何でアイツが真由の携帯番号知ってんだよ。まさかお前・・教えたのか?」 「ちっ違う!私、教えてないよ?」 真由は大袈裟と言うほど首を大きく振り否定する。 ・・・だよな。そうだよな、真由が教えるハズがないんだ。だったら何で・・・。 「とりあえず、アイツにかけなおせ。」 「え・・・どうして?」 「どうしてって・・・。」 ・・・行かせて堪るかそんなもんに!! 「真由は行きたいっつうのかよ!アイツに会いたいとでも?」 「ちがっ・・剛さんに会いたいんじゃなくて。妹さんの為に誕生日プレゼント選んであげるなんて凄いなぁって思って。」 ・・・俺だって真由の為にいつもプレゼント一生懸命選んでんぞ?しかも一人で!それが普通じゃねぇのか!! 「ほら、誰かの為に何かを選んであげるって楽しいじゃない?そういうの好きなんだもん。」 そう嬉しそうに微笑む真由を見ると自分の心が屈しそうになる。じゃぁ行って来いよ、って。 ・・・ダメだ!しっかりしろよ、俺!! 息を吸い込み、『断れ。』そう自分の口から出る前に、今度は自分の携帯がけたたましく部屋に鳴り響く。 んだよっ!今、大事な話ししてんだ。誰だ、こんな時に電話なんて・・・。 俺はため息を吐き捨てながら、登録されてない番号に若干首を傾げながら、ピッ。と通話ボタンを押す。 「・・・だれ?」 『やっほー、智也。あたしー、メイ。』 「なっ?!おまっ・・・何で俺の携帯番号・・」 『クスクス。そんなの調べるのなんて朝飯前よ?ちょちょいーっと男の子に聞いたらすぐに教えてくれた。』 ・・・兄貴の次はお前かよ。何なんだよ、この兄妹はよっ!! クスクス、と向こう側で笑うメイの声に訝しげに俺の眉が寄る。 「で、何?」 『明日デートしよっ♪』 ←back index Next→ |