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「……と、言う訳で。智也、早速一緒に帰りましょうか?」

メイは可愛らしい笑みを浮かべて俺の腕に絡みつくとそう言って顔を覗き込んでくる。

「はぁ?何で一緒に帰るんだよ。俺は姉貴と・・・。」

「あら、真由さんは兄と一緒に帰るわよ?」

「なっ?!はぁっ?どういう事だよ、それは!!」

「もぉ。さっきも言ったわよね?学園では恋人よって。恋人なら一緒に帰るのが普通でしょ?」

「帰るって・・・ちょっ待てよ。」

「だーかーらー。家に帰ったら嫌でもずっと一緒なんでしょ?帰ってからイチャつけばいいじゃない。帰る時間ぐらい我慢しなさいよ。」

メイはため息混じりにそう呟き、ほら行くわよ。と強引に俺の腕を引く。

何なんだよっ!突然やって来て仮の恋人になれだとか、恋人なんだから一緒に帰れとか。

急な展開すぎて俺の脳がついていかない。

俺はメイに腕を引かれるまま校庭に出る。



とりあえず、効果覿面?

俺がメイと腕を組みながら校庭を歩くと、周りの奴らがヒソヒソと話し始める。

『やだぁ。長井君、桜庭さんと腕組んで歩いてるーっ!!』

『ちょっちょっとちょっとどういう事?あの2人付き合ってるの?』

『嘘ぉ。やだぁ、長井君狙ってたのにぃ!桜庭さんじゃあ勝ち目ないじゃない。』



・・・・・まる聞こえ。


俺がそんな話に耳を傾けていると、横で小さく、ほらね、効果バッチリ♪って嬉しそうに微笑むメイのヤツ。

そりゃ、効果バッチシかもしんねぇけど・・・こんな、腕を組んだ姿を真由が見たら・・・。

そう思いながら向けた視線の先。


「なっ?!」


俺は小さく言葉を漏らして、視線がある一点に止まる。



「あら、あちらもいい雰囲気じゃない。こうして見ると美男美女カップルよねぇ。我が兄ながら見惚れちゃう。」

クスクス。と笑いながらそう呟くメイの言葉に幾分かカチンとしながら少々声を荒げる。

何が美男美女カップルだ!全然似合ってねぇっつうの!!

「うっせぇ。てめぇは黙ってろ。」

「クスクス。あらら、ヤキモチ?高だか手を繋いで歩いてるだけじゃない。」

「だから黙れっつってんだろっ!!」


・・・んだよ、あれ。


俺が向けた視線の先、桜庭 剛と仲良さそうに何かを話しながら手を繋ぎ歩く真由の姿。

俺だって手を繋いで外を歩いた事なんてねぇのに。

なんて事しやがるんだ。

俺は腹の底が沸々と沸きあがってくるのを感じていた。

「まっ・・・姉貴っ!!」

俺が少し先に歩く真由に向かってそう呼ぶと、ビクッと体を飛び上がらせて、真由が後ろを振り返る。

「とっ智也。」

俺の顔を見て気まずそうな表情になる真由を見ながら、眉間にシワを寄せつつ2人に歩み寄る。

と、真由の隣りにいた気に食わないヤツが俺に微笑みかけてきた。


・・・・・ムカツク。



「どうも、今日から真由の彼氏になった桜庭 剛です。君が今日からメイの彼氏かぁ。申し分ないね。」

「クス。ね、お兄ちゃんもそう思う?」

「手を離せ。」

「え?」

「真由から手を離せって言ってんだよ。気安く触れんじゃねぇ。」

「クスクス。こりゃ失敬。だけど、一応恋人同士なんだから?手を繋いでもいいんじゃない?ほら、君だってメイと腕を組んでるし。」

「俺が組んだわけじゃねぇ。勝手にコイツが組んできたんだ。」

俺がメイの腕を振り払うようにすると、メイは、んもぅ。って呟きながら尚も腕に絡み付いてくる。

「ちょっと、忘れたわけじゃないわよね?今はまだ校内よ?ほら、みんな見てるじゃない。ちゃんと大人しくしててよ。」

そうメイに言われて辺りを見渡すと、生徒達がみんな俺らの方を見て何やら囁きあっている。

・・・そりゃそうだろう。

俺が言うのもなんだけど、長井姉弟と桜庭兄妹は美男美女で有名なんだ。

そのキョウダイ同士が付き合うだなんて事になったら。

恰好の噂のタネだ。

俺は大袈裟にため息を付くと、クソッ。と小さく履き捨てる。

「真由さんも大変ね。こーんな弟に好かれるなんて。」

「なっ?!てめぇ!!」

「あの、いえ・・・それほどでも。」



・・・って、おぃ。お前もそういう物の言い方止めろよ。

それほどでもってどういう意味だよ、それほどでもってよ。


俺が真由の言葉に眉間にシワを寄せていると、横で剛が、クス。と小さく笑う。


・・・・・なんだよ、その人をバカにしたような笑いはよ。



「まぁ仕方ないんじゃない?彼はまだ16歳だからね。まだまだ子供の部分があるって事で。」

「それもそうねぇ。ま、仕方ないか。」



・・・なんか、すげぇ俺がガキみてぇじゃん。

そりゃ、16っつったらまだまだガキだけどさ。

そんなに歳の変わらないお前らに言われたかねぇ!!





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