*Obedient You




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俺は次の日、朝から桂木 恵子の家に向かい彼女が家を出てくるのを待った。

玄関先で元気よく家の中に向かって、行ってくるねぇ。という声がして彼女が出てきた。

「えっ?!ひっ柊君・・・どうしてここに?」

「・・・・・言ったろ?俺、本気だって。君からOKの返事が貰えるまで俺は毎日でも君を迎えに来るから。」

「そっそんな事言われても困る。私は朝、美菜と一緒に学校に行く事になってるから・・・それに何も私じゃなくても他に沢山あなたを好きな女の子いるでしょう?」

「俺は君以外興味ねぇから・・・例えどんだけ他の女の子に好かれようとも、君に想われてないなら意味がない。」

「私は・・・・・あなたに興味なんて・・・ない・・から。」

「それでも俺は毎日来るから。」

「・・・・・困る。」

彼女は少し表情を曇らせて俯くと、俺に視線を合わせる事無く横を通り過ぎていく。

彼女の後姿を見送りながら、俺は一つため息を付く。

――――そんな日々の繰り返し。

ここまで来りゃ、俺も歴としたストーカーだよな。

毎日毎日飽きもせず、同じ答えを貰いに彼女の家に通って・・・自分でも頭がどうにかなっちまったんじゃねぇの?ってくらい躍起になって。

自分の行動を思い起こして苦笑が漏れる。

それでもどうしても手に入れたかった彼女の事を。

桂木 恵子の笑顔を・・・全てを全部。


「・・・・・なぁ、どうしたら俺の気持ち分かってもらえる?どうしたら俺は遊びなんかじゃなくて君に毎日会いに来てるんだって分かってもらえるんだよ。」

気が付けば彼女の家に通い詰めるのも1ヶ月近くになっていた。

今日の終業式が終われば、明日から夏休みに入ってしまう。

だから今日・・・意を決していつものように何も言葉をかけずに俺の横を通り過ぎようとする彼女を呼び止める。

「・・・あなたも、どうしたら分かってくれるの?いつまで・・・私をからかったら気がすむの?」

「からかう?・・・からかうだけで毎日毎日俺が通ってると思ってんのかよ。これだけでもどんだけ俺が君に本気になってるか分かんない?」

「困らせないでっ!・・・どうして?どうして・・・私なのよ。他にもっと・・・。」

「その言葉は聞き飽きたよ。他の女なんて関係ねぇだろ?俺の事を嫌いなら嫌いってはっきり言えばいいじゃん。いつもみたいにはっきりとさ。いつもいつも『困る』って言葉だけじゃ俺は諦めらんねぇんだって。」

「・・・・・あなたなんて・・・大っ嫌いよ・・・。」

「それ、俺の目を見て言ってよ・・・そしたら俺、諦めるからさ。」

俺から視線を外し、俯いて小さく呟く彼女に近づき顎に手を当て上を向けさせる。

俺よりも大分と背の小さい彼女。

華奢故にその身体がとても小さく壊れてしまいそうな感覚に陥る。

「からかわないで・・・どうしてあなたを信じられる?・・・いつもいつも周りには女の子達がいて、誰とでも気軽に話しているあなたを・・・惑わせないでよ・・・苦しめないで。」

「・・・・・それは俺が好きだって事?好きだけど信じられねぇって事?信じさせろって事?」

「分からない・・・分からないの。だから・・・もう止めて。私に付きまとわないで。」

その言葉だけで、随分と俺が救われたような気がした。毎日通った健気な俺が。

もうこれって俺を好きだって言ってるようなもんじゃねぇか。

俺は自然に上がってくる口角をそのままに、彼女に向かってこう呟く。

「じゃあ、俺がどれだけ君に本気で惚れてるか証明するよ。」

「へっ?」

「俺が桂木 恵子にどれだけ本気になってるか・・・君がどれだけ俺に惚れてるか証明してやる。」

「私があなたに惚れてるって・・・一言も言ってない。自惚れないでよ。」

「俺にはバンバン感じたね、君からの想いが。自惚れじゃねぇって事も証明してやる。俺も君から離れらんねぇし、君も俺から離れらんなくなるから。」

意味ありげな笑みを彼女に向けると、それを見た彼女が怪訝そうな顔に変わる。

「ちょっと・・・あなた何する気?」

「ん?それは学校でのお楽しみ。ありがと、俺すっげぇ力が湧いてきた。今なら誰を敵にしても怖くねぇ。君も俺の全てで護ってやるから・・・だから。」

俺はそこで言葉を切った。その続きはこれから・・・・・。

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